2023年6月25日 (日曜日)

森本隼太 ピアノ・リサイタル2023「幻想」 銀座王子ホール

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ラモー:新クラヴサン組曲より「ガヴォットと6つの変奏」「サラバンド」
ショパン:幻想ポロネーズOp.61
ブラームス:幻想曲Op.116
バッハ/ブゾーニ:半音階的幻想曲とフーガ
モーツァルト:幻想曲 ハ短調 K.475
リスト:ダンテを読んで~ソナタ風幻想曲 S.161
(6月24日 銀座王子ホール)

18才の巨匠(私が勝手に呼んでいるだけ)、森本隼太 さんのピアノ・リサイタルに行ってきた。王子ホール は初めて行ったが、ロビーや階段に絵画が貼ってあったり色々豪華だった。王子製紙のコンサートホールである。

曲順はプログラムとは変わって、いきなり幻想ポロネーズから演奏。昨年浜離宮でも演奏を聴いたけど、今回は前から2番目の席だったので、この時も幻想ポロネーズは弾いたが迫力が倍増。ただ、クラシックのリサイタルでは別になくてもいいと思うのに、本人によるMCとかたどたどしい曲目紹介が相変わらずで、微笑ましくて観客の笑いを誘っていた。たまに出る京都弁もかわいらしい。いやはやずっとこんなでいて欲しい。

ラモーは本当に好きなんだなあ、と思うくらい楽しさが伝わってきたし、ブラームスからは何かが彼の体に入って来たのかな、と思うような入神の演奏。バッハ/ブゾーニは流石にイタリアに留学してイタリア人師匠に習ってるだけあるなあと思うし、モーツァルトの解説は面白かったし。でも何と言っても最後のリストの何かに取り憑かれたような演奏が凄かった。前は気付かなかったが演奏中は終始鼻歌を歌ってたり唸ったり、自由な感じだった。アンコールは2曲でマズルカ13番と2曲目は・・・(貼りだされてなくてわかんなかった。あとでHPで確認)

コンサートとは関係ないが、隣の席のご婦人の香水がかなりきつくて、マスクしててもなおしんどかった。外国のオペラハウスではたまーにそういうことはあったが日本ではそうそうない。「出かけるときに旦那さんに言われませんでした?」とか聞きたいくらいだった。

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それにしてもまあ、こんなご時世なのに普通にチャイコフスキー国際コンクールが開催されているようで、普通にYouTubeで中継されている。司会者やスタッフは終始にこやかで、何事もなかったように画面に出ている。ピアノ部門では2名ほど日本から出ているようだが(他の部門は知らん)、どうか何事もなく無事で帰国して・・・いやよい成績を挙げられますようお祈りしています。

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2023年3月26日 (日曜日)

オッフェンバック「ホフマン物語」新国立劇場(千秋楽)

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オッフェンバック:歌劇「ホフマン物語」
【指 揮】マルコ・レトーニャ
【演出・美術・照明】フィリップ・アルロー
【衣 裳】アンドレア・ウーマン
【振 付】上田 遙
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】須藤清香

【ホフマン】レオナルド・カパルボ
【ニクラウス/ミューズ】小林由佳
【オランピア】安井陽子
【アントニア】木下美穂子
【ジュリエッタ】大隅智佳子
【リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット】エギルス・シリンス
【アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ】青地英幸
【ルーテル/クレスペル】伊藤貴之
【ヘルマン】安東玄人
【ナタナエル】村上敏明
【スパランツァーニ】晴 雅彦
【シュレーミル】須藤慎吾
【アントニアの母の声/ステッラ】谷口睦美
【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団
(3月21日 新国立劇場・オペラパレス)

新国立劇場のホフマン物語 の千秋楽を観てきた。3階席だったが後ろの席がフランス語を喋る夫婦で、「なんか感じが出るな(フランス・オペラだし)」と始まる前は思ったが、演奏中も結構ぺちゃくちゃ喋ってたし(とくにダンナ)、椅子もガンガン蹴られて注意もできず、よい公演だったのに若干悲しい気持ちになった。相手が日本人だったらやんわり注意するとこだが、もし観光客でイヤな気分になられたら私の責任で日本がキライになるかも、とか色々考えて黙ってた。こういう時って、係員に相談するべき?

それはさておき。
実はこのオペラを生で観るのはたったの2回目で、1回目はかなり昔にウィーン国立歌劇場でだった。有名なアリアや音楽もあるので初心者向けと思いきや、実は何言ってるかわからない、難解なオペラ。まあ、大体まとめると「ミューズに魅入られたばっかりにことごとく恋愛をぶち壊されるかわいそうな男の話」でok?かしらん。

カラフルな舞台と衣装、合唱は素晴らしいしバレエやカンカンも楽しいし、日本でのワーグナーの上演では欠かせないシリンスの悪役全部も素晴らしかった。

主役のカパルボは初めて観る人だが、なかなかハンサムだし熱演だし良かった。影のようについて回るニクラウス役の小林さんもズボン役似合っててカッコよかった。実は安井陽子さんのオランピアを目当てに行ったのだけど、声は当然素晴らしかったけどロボットの演技もぶっ飛んでて良かった(めっちゃ可愛い)。

第3幕で何故かどうしても泣いてしまうので(内容にっていうより畳み掛けるような音楽に)、生の舞台を観るのを避けていたのだが、今日もかなりヤバく休み時間にトイレに駆け込んで鼻をかんだ。こんな人いますかね?

やっとブラボー解禁になり、みんなこぞってブラボーやブラービ、ブラーバを言いまくっていた。やっぱりブラボーないとつまんないよね、オペラは。

意外と長いのね、このオペラ。


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この日の午前中はWBCの準決勝だった。侍ジャパン逆転勝ちで気持ちよくオペラパレスに向かえたけど、もし負けてたらちょっとイヤな気分で鑑賞するとこだった(前記のフランス夫婦のこともあったし)。

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2023年1月14日 (土曜日)

第20回東京音楽コンクール優勝者コンサート

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第20回東京音楽コンクール 優勝者コンサート
・トランペット:河内桂海 *金管部門第1位
トマジ:トランペット協奏曲
・バリトン:池内響 *声楽部門第1位及び聴衆賞
プッチーニ:オペラ『ジャンニ・スキッキ』より 「声は瓜二つだったか」
モーツァルト:オペラ『フィガロの結婚』より 「訴訟に勝っただと」
ヴェルディ:オペラ『ドン・カルロ』より 「私の最後の日がきました」
・ホルン:吉田智就 *金管部門第1位
R.シュトラウス:ホルン協奏曲第1番 変ホ長調 Op.11
・ピアノ:中島英寿 *ピアノ部門第1位及び聴衆賞
グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16
指揮:高関健
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
司会:朝岡聡
(1月9日 東京文化会館大ホール)

過去記事:第20回東京音楽コンクール 声楽部門・本選 

昨年の東京音楽コンクールの優勝者によるコンサート。声楽部門の本選を聴きに行って、ついでなのでお披露目コンサートも行く事に。しかしまあ上野は混んでいた。開演前に上野公園に行ったら「牡蠣フェス」なる催しをやっていたので、カキフライを並んで買って食べた。一人だったので牡蠣を右手に持ちながらビールを買うのは難しく、断念。しかし牡蠣はとても美味しかった。画学生時代、卒業制作期間中カキフライ弁当を毎日ほか弁で買って食べていたら「もうたくさん」状態だったので、食べるの久しぶり。(生ガキは大好きなので当たりませんようにと毎回祈りながら食べる。)

祝日とあってコンサートはなかなかの人の入り。ロビーは人でごった返していた。イベント割で前売り買っておいたけど、「絶対に陰性証明か接種証明書を持ってきてくださいね」とくぎを刺されていたので今回は忘れず。皆様、文化会館主催のコンサートは接種証明を忘れずに持って行こうね。割引きになるものがあります。

さて演奏。今回は金管楽器の1位がお二人だったので2曲聴けることに(儲かったのかな?)。ピアノとヴァイオリン以外の楽器のコンクールは全く行ったことないので興味深く聴いた。しかしまあ、やはりピアノとヴァイオリンのように演奏家人口が多くない(管楽器は私みたいに学生時代にブラバンでかじってる人は多そうだが)、そもそも有名な協奏曲も少ない。たまたまトマジはCD持ってたけど、実はシュトラウスは初めて聴く。トランペットの子は緊張感がこちらにも伝わってきてしまいどうもリラックスして聴くことができなかった。ホルンの子は(私は3階席だったのでそんなに良く見えなかったが)汗びっしょりで吹いていたようだ(司会者によると)。

声楽部門の優勝者の池内さんは、他のコンテスタントと比べるとかなり年上だしすでにコンサートや舞台で活躍されている人なので、全く緊張感なく見ることができた。途中司会者とのトークも挟まれたが、関西人だけあってトークも慣れたもの。それにしてもマイクいらなくね?と思うほど話す声も大きい。アリア3曲歌われたが、私は前日に「ドン・カルロ」のロドリーゴのアリアはYouTubeのホロトフスキーで予習。ホロ様もかっこよかったが池内さんもかっこよかった。

さてコンサートの花形はさすがにピアノ協奏曲。私はグリーグのピアノ協奏曲にトラウマがあり(学校の音楽鑑賞教室でこの曲が演奏されたが何故か前奏とともに大爆笑が起こり、すでにクラヲタの卵だった私はたいそう恥ずかしかった。それと小学校のときからホフナング音楽祭で育ったのでこの曲は鬼門)、「うわなんでこの曲なの、ブラームスかラフマニノフならいいのに」とか思ったけど、意外なことに大変感動した。この曲ナマで聴いて良かったの初めて。(昔コンサートで聴いたヒロコナカムラの演奏でも「うーん・・・」とか思ったくらい)

ピアノの中島さんは小柄でまだ少年のような外見だったが、実際は20代後半らしい。しっとりと落ち着いたスケールの大きい演奏で、第1楽章から「これは凄いぞ」と思いながら聴いてたら第1楽章の終わりで拍手が起こった。とくにマナー知らずな観客というわけでもない(他の曲は楽章間で拍手なんか起こらなかったし)から、自然に起こった拍手なんじゃないかな。オケと合わせて披露したのこれが初めてらしい。ラフマニノフとかシューマンとか聴いてみたいな。

最後も大喝采でもさすがにこのご時世だったのでブラボーはなし。高関さんの好サポートもあってよい演奏会でした。司会の朝岡さんはこういう催しの時にたまに登場されるけどホントにオペラ好きなんだなって思うわ。局アナの時よりこういう仕事のほうが楽しいんだろうね。(こういった司会とかインタビューとかの才能が全く私はないので仕事にできる人は羨ましい)

帰り道で東南アジア人と思われる男の人に「〇〇駅に行くにはどの電車に乗ったらいいか」と聞かれ、『ああ、まただ』と思った。優しそうで親切そうなオーラが丸出しなのに、実は方向音痴で説明ヘタ英語もヘタ。おまけにコミュ障。よく外人さんに道とか聞かれるのが悩み。まあ、地元だったのでカタコトの英語を駆使し、「this train OK!バイバイ!」みたいな感じで電車につっこんでサヨナラした。まあ、本当にわかんなかったら駅員に丸投げするけど、最近駅員が駅にあまりいなくて困る。

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会社でバディを組んで?働いている会社の女の子が、なんと先週末に陽性になってしまい、今週は休んだりたまに在宅勤務で働いたりしていた。コロナなのに働かせるのかこの会社は~とか思ったけどやっぱり仕事は万全ではなく、そのぶん私の仕事が激増して昨日は夜11時過ぎまで残業。おまけに会社は節電してて寒い(フェイクファーして仕事してるの私くらいか)。他の社員も結構風邪引いたり体壊して休んだりしてるけど、私はただ疲れているだけで風邪とかぜんぜん引いてない。オペラやコンサートの券とってあるから気を付けてるからかなあ。N響のシマノフスキは取れなくて残念だけど、今年はコンサート目白押しなので倒れられない。

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2022年12月25日 (日曜日)

花房英里子(メゾソプラノ)コンサート / 東京文化会館小ホール

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上野deクラシック
レスピーギ:最後の陶酔 P8
4つの歌 P125より 第4曲「昔の歌に寄せて」
ベルク:『7つの初期の歌』より
第2曲「葦の歌」
第3曲「夜鳴きウグイス」
第5曲「室内にて」
第7曲「夏の日」
トマ:オペラ『ミニョン』より 「君よ知るや南の国」
モーツァルト:オペラ『皇帝ティートの慈悲』より 「行こう、だが愛しい人よ」
チャイコフスキー:6つの歌 Op.6より 第6曲「ただ憧れを知る者だけが」
オペラ『オルレアンの少女(ジャンヌ・ダルク)』より 「さあ、時は来た」
ヴェルディ:オペラ『ドン・カルロ』より 「むごい運命よ」
〈アンコール〉
R.シュトラウス:オペラ『ナクソス島のアリアドネ』より 「さあ、仲直りしましょう」
花房英里子 (MS) 木下志寿子(ピアノ)
(12月21日 東京文化会館小ホール)

毒展のついでに何かリサイタルやってないかと探したらたまたまあったので。
1100円なんて安い~と喜んでいたら、どうも「イベント割」対象公演だったらしく、もちろん4回目の接種済であったが証明書も何も持ってなくて(もってたらもっと安かった)、しかたなく定価で入場。かなしす。

お値段のせいか、それと平日午前中だったせいかお年寄りが多め。まあこういう公演は上野とはいえ民度は若干低めなわけでで、隣の老夫婦の奥さんは鈴のついたカバンを始終いじっていたし、なんとびっくりなのは反対隣のお兄さんがベルク演奏中に携帯の着信音を盛大に鳴らしていたことで・・・怒りそうになったが我慢。

1時間ほどのコンサートだったが、イタリア語、ドイツ語、フランス語、ロシア語ともりだくさんな、ご本人の思いの丈を詰め込んだ、贅沢なラインナップ。

花房さんは前回の東京音楽コンクール声楽部門第2位及び聴衆賞とのこと。ポスター写真やアーティスト写真は明るいお嬢さんと言った感じだった(私の勝手な印象)が、今日拝見したところショートの髪形でしっとりとした大人の雰囲気。お声は底光りするような美声で、どのジャンルの曲も歌いこなされていてとてもよかった。 

ベルク目当てで行ったんだけど、後半のチャイコフスキーや有名なエボリ公女のアリアも素晴らしかった。思いがけずアンコールで大大大好きなナクソス島の作曲家のアリアを歌ってくださって本当に行って良かったなあ。っていうかもしかして実穂子さんを意識されてるのかもって思ったり。いつかシュトラウスのズボン役で新国の舞台に立たれますように、応援しております(1月の新国の「タンホイザー」で小姓役でご出演予定。髪型はそのせいかな?)。

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2021年5月30日 (日曜日)

メサジェ/歌劇「お菊さん」(日本初演・初日)

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アンドレ・メサジェ:歌劇「お菊さん」全4幕(全4幕、日本語上演・英語字幕つきピアノ伴奏)
〈指揮〉佐々木 修
〈演出〉日本橋オペラ研究会
〈出演〉福田祥子(お菊さん)、池本和憲(ピエール)、上田誠司(イヴ)、飯沼友規(勘五郎)、大倉修平(サトウ)、田辺いづみ(お梅)、根崎一郎(シャルル)、高橋千夏(お雪)、居福健太郎(p)、 山井綱雄(金春流能楽師)、他
(5月29日 日本橋劇場)

昨日行ってきた。コロナ禍で上演を危ぶんでいたが(私が)、小劇場であり観客数を半分以下にしていたために、めでたく公演が実現したようだ。(本当は昨年上演予定だったがコロナ禍で延期)

日本橋劇場は、私が前にここらへんで勤めていたこともあり「こんなところに劇場があるのか」とお散歩がてら思っていたが、まさか「日本橋オペラ」としての公演があったなんて知らなかった・・・いや、チラシくらいは何かのコンサートで入ってて、スルーしてたのかもしれない。基本的にはちっちゃい歌舞伎とか能とか、落語とか小演劇とかやるくらいの規模のホールである。畳席があり、羨ましかった。

「日本橋オペラ」の会長という福田祥子さんは、ワーグナーを得意としている歌手であり、私は彼女のイゾルデブリュンヒルデ(かみたそ)、アーダ(妖精)を見聞きしている。どの役も素晴らしい歌唱だった(と、過去のブログに書いてあった)。とても声量があり、声質も美しく特に高音の美しさが心に残る。

(私の認識だと)主に「あらかわバイロイト」で活躍されていたようだが、あらかわで相手役のトリスタン歌ってた池本和憲さんが今回も相手役のピエールをつとめ、あらかわでハンマー先生の振らない日に指揮をしていた(私は見てないけど)佐々木修さんが指揮。佐々木さんは「ルナルナ」の人である。

「あらかわバイロイトどうなっちゃったかな~」とか思ってたけど、福田さん、佐々木さんによってこのような形で脈々と公演が続いている。ちなみに「日本橋オペラ」の第一回公演は「トリスタンとイゾルデ」だったらしい。指揮者による室内オーケストラ編曲版とのこと。(今回のプログラムに記載があったが、昨年ドイツのハノーファー劇場では佐々木さん編曲のこの版を用いてトリスタンを上演した、とのこと。)

さて、この珍オペラ「お菊さん」だが、知っている人は知っているが原作者ピエール・ロティが日本に滞在中に芸者と「短期結婚」していた体験をもとに小説化したものを原作としている。音楽的には(おふらんすなんで)同年代のシャルパンティエの「ルイーズ」を思わせる・・・かな。ちなみに作曲者メサジェは「ルイーズ」の初演の指揮をした人である。

プログラムをざっと読ませて頂いた(大変おもしろい)が、メサジェが「お菊さん」を避暑地にて作曲していたその時に同地でプッチーニが「マノン・レスコー」を作曲していたとのことなので、「お菊さん」にところどころ聴かれる「蝶々夫人っぽさ」は・・・はあ、そうなのやっぱりねって感じ。「蝶々夫人」は「お菊さん」のおいしいところを貰って作られたのかな。

また、メサジェは当時絶大な影響力のあったワーグナーにも傾倒していて、お友達のシャブリエとミュンヘンに「トリスタン」を観に行ったり、フォーレとバイロイト行ったりしてたらしい。なるほど、シャルパンティエもワグネリアンだったから、ルイーズっぽさを感じるのはこのへんかな。

<ワーグナーっぽいと感じたところ>
・船の上からオペラが始まる、かじ取りの歌など。
・結婚仲介人の勘五郎が「ダンナ、ダンナ」と連呼して歌うところが「ジークフリート」の第一幕(ジークフリートがミーメに文句を言うところ)に似ている。
・お菊さんの義理の妹のお雪さんの歌は「タンホイザー」の牧童を思わせる。
・第4幕のお菊さんとピエールの愛の場面はまんまトリスタンじゃん。

・・・という感じだが、このオペラがいまいち後世に残ってないのは(アリア以外)、「蝶々夫人」などと比べて若干悲劇性が薄いからかなって思う。蝶々さんは騙されているのも知らずにピンカートンを信じて待ち続け、生まれた子供を取られて自決するなどの強烈な悲劇性がこの「お菊さん」にはない。お菊さんは「短期の現地妻」ということをわかっているので若干ドライで、蝶々さんよりずっと賢く感じる。まあ、現実にはこんな感じの人がいっぱいいたんだろうな、当時の長崎には。

蝶々夫人との類似点はいっぱいあるんだが(重ねて言うが作曲は「お菊さん」のほうが先である)「蝶々夫人」にはスズキさんが出てくるけど、こっちはサトウさん。始めの方にお梅さん(お菊さんの義理の母)が念仏唱えるところ、お菊さんとお雪さんのデュエットは、蝶々さんとスズキのデュエットを思わせる。

さて歌唱だが。主役のお菊さんはそもそも(私の印象として)アリア集などで聴かれるのはスミ・ヨーやバーバラ・ヘンドリックスなどのコロラチュラややや軽い声のリリックソプラノ向けの役だと思ったので、堂々たるワグネリアンソプラノで歌われるお菊さんは新鮮。二階席バルコニーで聴いていたが、声量すごいし、小ホールのすみずみまで響き渡ったのでは。ブラボー言えなくてつらい。

(ところでお菊さんのアリアは意味もなんも知らずに聴いていたが、なんと虫の「セミ」について歌っていたのだって昨日知った。マスカーニの「イリス」のアリアが「オオダコ」について歌ってたので、何か日本人女性の役の歌うアリアってへんなの多いな。)

まあまあ登場人物多いオペラなので(その他おうぜい的な人々にもちゃんと役名がある)、ソリスト級の人が歌っている合唱アンサンブルもなかなか聴きごたえがあり、美しかった。女性はそれぞれ着物を着てて「日本橋っぽい」感じ。端役のソリストもそれぞれ素晴らしかったが、中でもお雪さん役の高橋さんの可憐でさわやかな歌声はとくに印象に残った。

筋書的には、ピンカートンと違ってお菊さんと結婚するピエールはもっと人間的で、一緒に来てた部下のイヴとお菊さんとの仲を疑ってたり、お菊さんがお祭りで人前で歌を歌っただけでめっちゃ怒ったりなかなか嫉妬深いのだけど、(プログラムを見て「あ~?」ってなったが)史実ではイヴと同性愛者だったってことで。そっちか~。

本日2回目の公演があり、もっと演奏はこなれているものと思われる。なお、今回はピアノとトランペット、打楽器のみの伴奏で、曲の美しさは伝わったし違和感のない程度に頑張ってはいたが、「イリス」のようにいつかオーケストラ版、フランス語版で見てみたいな~とは思った。ミッチーなんとかして。

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2020年9月20日 (日曜日)

新日本フィル定期演奏会 サン=サーンス「オルガン付」他

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ストラヴィンスキー:バレエ音楽『カルタ遊び』
リスト:ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調
サン=サーンス:交響曲第3番 ハ短調 op. 78「オルガン付き」
沼尻竜典指揮/新日本フィルハーモニー交響楽団
實川風(ピアノ)石丸由佳(オルガン)
(9月19日 すみだトリフォニーホール)

音楽コンクールの最終戦に二度ほど行った他は、コロナのあと久しぶりに行った演奏会。本当は金曜日の初日に行く気まんまんだったのだが、休み明けが在宅勤務であいにく重たいパソコンを家に持って帰らなければならなかったのでその日は諦めた。コロナってこういうところでも弊害があるのねん(←たいしたことではないけど)。

コロナの影響で、客席はやはり千鳥格子状に座る感じ(席の緩和はしない模様)。まあほぼ埋まってた感。実は珍しく3階席を取ったので全体を見渡したわけではないけれど。ケチったお蔭で舞台の前のほうが手すりで隠れて見えず。指揮者やピアニストはあんまり見えなかった。しかし、「オルガン付き」は曲が曲だけに天から何かが降りてくる・・・ような神々しい感じがとても良かった。上のほうの席がいいこともあるよね。

そもそもこのコンサートはデュトワが振るらしかった。ピンチヒッターは沼尻さん。私の行くコンサートにしては珍しくポピュラーな曲目なため、場内歩き回ったけど知人には出っくわさず。まあ・・・そうかな。

オケの登場で拍手が起こるときと起こらない時があるが、この日はいつもより盛大な拍手が。テレビやネットなどで伝わってくるこのオケの苦難をみな知っているせいなのか。このご時世にコンサートを開いてくれた感謝と、お祝いの意味の拍手だったのかな。オケは弦楽器と打楽器はマスクしてるようだった(よく見えないけど)。管楽器はノーマスクで命がけ。

1曲目の「カルタ遊び」。ブリスの「チェックメイト」オネゲルの「ラグビー」とともに世界三大ゲーム音楽のうちの一曲だが(←大嘘)、私的には子供の頃ラジオでたまに耳にしたくらいであんまり熱心に聴いたことはなかった。私の頭の中ではピカソやブラックのキュビズムの絵画が踊っているようであった。

2曲目のリストのコンチェルト。小学生の時にショパンとともにリストが大好きだったのでこの曲もよく聴いてた。「これがリストだ!」という(企画物でよくありがちの)オムニバスの2枚組を持っていて、とくにこの曲とソナタがお気に入りだった。この協奏曲は第3楽章でトライアングルが活躍するので「当時の評論家からはトライアングル協奏曲と揶揄されていた」との解説をよく覚えている。

ソリストの實川風さん(風と書いてかおると読むのだよ)は中川大志系のイケメンだが(←適当に書いてみたが本当はよくわからない。異論は認める)先に書いた通り3階席であんまり見えなかった。オペラグラスも重くて置いてきたし。うう。ピアノは素晴らしかった。曲はぜんぜん違うけど、やっぱりこのところ足を運んで聴いたコンクールの人たちの演奏とは格が違うなと。盛大なる拍手のあとのアンコールは「火祭りの踊り」。オケに負けないくらいのカラフルな演奏。

こんなご時世でなければブラボー出るやつや。

休み時間のあと、メインのサン=サーンス。この曲はそんなに熱心に聴いたことはなく、もしかしてナマでは初めてかな(ちがったらすいません)。曲の個人的な印象としては、第1楽章の最初はブラームスやシューマンの交響曲みたいなドイツっぽい感じなのに、途中でパイプオルガンが荘厳に入ってきて、第2楽章ではなんかニュース番組のBGMみたいになって、そのうちピアノが華麗に入ってくるので「こりゃ、やっぱりフランス音楽っぽいかな」と思わせといて最後は壮大に終わる感じ・・・かな(なにそれ)。構成は交響曲の伝統とは外れて色々とユニークな曲だが、メロディは聴きなれた感じ。

大体の曲はそうだけど、この曲はナマで聴くべきだなと思った。私の席はオルガンのあるちょうど向かいにあったので、天井から光が降り注いで天使が降りてくるみたいな感じで心が洗われ、ちょっと泣きそうになった。最後は沼尻さんらしく壮大にもりあがり、釣られて聴衆はちょっとフライング拍手っぽくなってしまった。待ちきれなかったなあ。ブラボーが言えないのが苦しい。

 

大拍手の中 団員の方が大きな花束を貰ってたので、定年退職かな?と思った(あとでTwitterで調べてそうらしかった。お疲れ様でした)観客はアナウンスによりコロナ対策のために2回に分かれて退場したけど、すみとりの帰りで飲みに行かずにまっすぐ帰るのって珍しいのでなんか「あ~あ」って思った。ずっとクラヲタ談義をしていない。まあ、健康診断が1週間後だし何にしろダイエット中なのでちょうどいいかもね。


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イベントごとが復活しつつあり、コンサートやオペラの券を大喜びでたくさん予約してしまった。楽しみは楽しみだが、ちゃんとやるのかなあ。ちょっと不安だ。少なくとも自分は健康に気を使って死なないように気を付けよう。死んだらおしまいよ! 

読者の皆様もくれぐれもお元気で。最近訃報が多い・・・。

 

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2019年11月 2日 (土曜日)

マスネー/「ウェルテル」ウィーン国立歌劇場ライブストリーミング

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Jules Massenet Werther

Dirigent Frédéric Chaslin
Regie Andrei Serban
Ausstattung Peter Pabst
Kostümmitarbeit Petra Reinhardt
 
Werther Vittorio Grigolo
Albert Adrian Eröd
Charlotte Elena Maximova
Sophie Ileana Tonca
Le Bailli Hans Peter Kammerer
Schmidt Benedikt Kobel
Johann Ayk Martirossian

ウィーン国立歌劇場ライブストリーミングに課金してしまったため、さほど興味もないオペラも全部観ているが(そろそろ脱退しようとは思っている)、さすがにこの前の「シモン・ボッカネグラ」は私に合わなかったようで半分くらい聴いて諦めてしまった。

今回のマスネーもあんまり興味がなかったし、実は「ウェルテル」もまるで初めて聴くオペラだったのだが、聴いてみてあまりに素晴らしかったので今まで聴かなかったことを若干後悔した。新国立の藤村さんのシャルロットも迷った挙句行かなかったし。

曲も演奏も素晴らしいとは思ったけど何と言ってもタイトルロールのグリゴーロが素晴らしい。ほれぼれとしてしまう美声である。ここらへんの「クラ女子が目をハートにしてしまう系」の歌手にどうも疎いのであまり知らない歌手だが、来日もしているらしいしYouTubeに上がっているアレーナ・ディ・ヴェローナのコンサートでクィーンのブライアン・メイと共演もしている。

マスネーの曲などほぼ興味なかったのにお蔭で3回も聴いてしまった。まあ、ドイツものと比べて短いっつーのもあるけど、美しいメロディに溢れてとても親しみやすく、なるほど、だからマスネーって昔から人気あんのかなとは思った。ギョエテの原作を咀嚼してあるような台本もわかりやすい。おかげでなんか昼メロみたいになってるけど。演出の設定が現代に近いのもなんか珍しくて(シャルロットが部屋でテレビみてたりする)面白かった。まあもうちょっと原作に近い時代設定のほうがカッコイイ衣装のウェルテルを拝めるかなあとも思うけど。

指揮者のシャスランは新国立にも「ホフマン物語」を振りに来日しているようだが、HPの写真がなんかすごく違うので別人かと思った。そんなに昔の話でもないのに。

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日本国民としてごく普通にラグビーW杯を見たりしているが、決勝でイングランドが負けて南アフリカが勝ったというのに表彰式の音楽がホルストの「惑星」の「木星」だったのがなんかよくわかんないな。イングランドの人々もはるばるやってきたヘンリー王子も「なんで?なんで?」と思ったんじゃなかろうか。アレ、イギリスの国民的音楽だぜ、皇室行事にも使われるし。個人的にはデクラークのプリっとしたお尻が好きです。

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2018年10月 8日 (月曜日)

メシアン「アッシジの聖フランチェスコ」カンブルラン/読響(CD)

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昨年聴きに行ったメシアンの「アッシジ」のCDが発売されたというのでぽちった。すでに実演の感想で述べた通り、行ける予定はなかったのに、当日券30枚に並んでいた私の前に天使が舞い降りてきてS席(多分関係者席)の券をタダで下さりお金を払ってないので、迷いもなく購入。今日届いたので聴いている。
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実演の時はとくに思わなかったのだが、改めてCDで聴くとはじめの方はやはり日本のオケの音がする。小澤さんの初演盤(おふらんすのオケである)を聴きなれていたせいなのだろうか。ちっとも悪い意味ではなく、お米、お醤油、お味噌汁、なんか聴いていて落ち着く感。キリスト教関係の音楽なのに何かお経とかお能に近いものも感じる。

演奏(というより曲)についての感想は過去記事にもあまり書いてない(もう、現場に居られただけで有難い感があったもんで)んだけど、CDでの感想はとにかく長い長い。はじめのほうはまだしもCD3枚目くらいからは、「終わるよ~終わるよ~」と思わせておいて、「やっぱり終わらないよ~」と続く。いや、退屈というのではないのだけどね。なんだろう、お寺で延々とお経を聞かされても、「なんかずっと同じ繰り返しだけど、なんか落ち着くな」と思うのに似ている。
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しかしまあ、さすがにフランチェスコの死にさしかかり合唱が「フランソワ~」と歌うあたりから実演の感銘を思い出しグッとくる。合唱がほんとうにうまい。ところでこのCDは外国でも発売されるのかしら。ようろっぱの人にも是非聴かせたい。日本の合唱団とオケはこんなにすごいんだぞって。
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CD化されたのは素晴らしいし有難いとは思うものの、映像でも見たいなあというのも正直なところ(夜中の読響のテレビ番組で一部は見聞きしたが)。美しい天使役の人も観たいし、ワーグナーのオペラに出てくる性格テノールっぽい皮膚病の人もまた観たいし、何より最後のほうの打楽器の人々の熱演とか(ほんっとに凄かった)、オンドマルトノの演奏とかも(1階席からはよく見えなかったので)見たいなあと思った。
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(HMVで買う人はこちら)

『アッシジの聖フランチェスコ』全曲 シルヴァン・カンブルラン&読売日本交響楽団、ヴァンサン・ル・テクシエ、他(2017 ステレオ)(4CD) icon

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余談だが、ノットのゲロンティアスもCD化してほしいね。東響だけど。

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2018年1月27日 (土曜日)

今更アッシジ

会社の用事で必要になった卒業証書を実家に取りに行ったついでに、今更メシアンの「アッシジの聖フランチェスコ」の初演CDを持ってきた。日本語対訳付き。
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Assiji2_2.
小澤さんが若くてびっくりした(そんなに前だったっけ・・・だよなあ)。  なんかまあ・・・つい2か月か前にサントリーで聴いたのに、早くも懐かしいなあという。合唱は(録音が古いせい?気のせいかもしれないけんども)新国のほうがうまく感じる。いやこんなのよく日本でやったよね。
 

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2017年12月 9日 (土曜日)

エマール

先日行かせて頂いた(ホントに行かせて頂いた感が強い)アッシジの演奏から暫くメシアン以外受け付けなくなってたので(今はそんなでもない)、当然ピエール=ロラン・エマールの「幼子イエスなんちゃら」のコンサートも行こうかなと思ったのだけど、時節柄残業で行けず。
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仕方ないので、薬局でおしゃれ着洗いのエマールを買って着古したセーターを洗ったりなどしました。いい匂いです。
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エマールさんがエマールを手にしてる写真や動画を見るたび、どうして無理してでも行かなかったのか・・・と後悔の念。メシアン中毒性がある。
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Dsc_0662

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