マスカーニ/イリス in 芸術劇場
マスカー二:歌劇「イリス」
指揮・演出:井上道義
チェーコ(イリスの父):ジョン・ハオ イリス:ミナ・タスカ・ヤマザキ 大阪:高橋淳 京都:大島幾雄 ディーア:国光ともこ 芸者:小林沙羅 乞食:鈴木寛一
踊り子:橘るみ(東京シティ・バレエ団) 人形師:ホリ・ヒロシ
合唱:武蔵野音楽大学 管弦楽:読売日本交響楽団
(2008年12月6日 東京芸術劇場)
過去記事:マスカーニ・イリス
ということで、待ちに待ったこのオペラの上演。私のブログの人気カテゴリー「珍オペ」に咲く一輪の花、イリスちゃんに久々に出会えるのである。「久々」っつーのは1985年の日本初演の舞台から久々って事なんだけど、ま、日本初演はテレビだったのでナマで見るのは私は初めてである。きっと「両方ともナマで見ました」って方もおられるに違いない。
初演の時は、正攻法な舞台で普通の時代劇な感じであった。その頃あまり日本人のイタリアオペラ歌手を知らなかったので、イリス役の松本美和子さんの少女姿(オカッパのカツラをつけてたと記憶)がデフォルトであると信じてた。何か別のコンサートにてコンサートドレス姿で長い髪の松本さんをテレビで見て「あ、普通のオペラ歌手なんだ」って思った。
そういえば、私が生まれて初めて見たオペラって実は「カバレリア・ルスティカーナ」と「道化師」二本立てなんである(もちろんテレビで見た)。当時は「えー、イタリア人ってこんな色恋沙汰の殺し合いばっかしてんの?日常茶飯事?」とか思った(はあ)。「椿姫」に出会う更に前で、男と女の間の長くて深い河はまだよくわかんなかった(今もよくわからんが)。
で、イリスに話をもどそう。そんな日本初演はやっぱり今夜と同じミッチーが指揮してたのである。それほどまでにこの曲に思い入れがあるのか。指揮者みずから演出までして、執念の上演であると感じる・・・何年か前の「死の都」の上演みたいだ。←またやってほしいよ死の都。
会場に入ると舞台の面積が多い。イコール、客席数がずいぶん普段より少ない気がする(ほぼ満員だったが合唱団のご家族も多かったのでは)。私は2階席の前から4番目だったのだがずいぶん前のように感じた。舞台装置はもちろん「シアターオペラ」とのことなので簡素。オケの間を突っ切って黒い石段があり、オケの後方に舞台がある。オケがよく見える。(ついでに言えば、第2幕で気づいたのだが普段はハコの中にいるはずのプロンプターさんが見えてたのが面白かった。総譜を前に、横には指揮者の小さなモニターを見ながら格闘している姿を客席に見せるのは珍しかった。指揮者のように歌手に合図を送ったりもするのが見えた。)
ドラが3回鳴ってさて席に着く(トゥーランドットかい)。最初っから盛り上がりまくるこの曲だから(珍しい出オチな曲である)、期待大である。コントラバスの低ーい音のソロから始まり、どんどん音楽が大きくなってそこら中の入り口から普段着?の大学生の若者たち(武蔵野音大)が入ってきて歌を歌う。オルガンまで加わって大迫力で終わる。もうここでブラボー言って帰ってしまいそうである。
http://jp.youtube.com/watch?v=88M-yzBzq4k
主役のイリスは当初発表の人と違って、ミナ・タスカ・ヤマザキという知らない歌手(まあ、どっちにしろ知らないのだが)になった。ずっと「ミス・タナカ」だと思ってたけど違ったみたい。
まあ、少女というにはかなりキツイ・・・のはオペラの世界ではしょうがない。お声は海外で活躍されている方のようなので(この曲はCDを聴きなれているのでもう一声欲しいなあと思うこともあったけれども)声も2階席までよく届いてたし素晴らしかったと思います。ふうむ。蝶々さんもそうだが、こういう「役は清楚なのに歌はドラマティック」な役は難しいね。
盲目のおとうさん役のジョン・ハオというバス歌手の方は、まだお若いし写真で見るとなかなか素敵なのでもっとカッコイイ役で見てみたいわ。おお、長谷川顕さんに師事なんてなおさら素敵。
お声がまた素敵だったのは最近大活躍の高橋淳さん。ドイツものしか聴いたことなかったんだが、おお、イタオペもよいではないですか。ピンカートンとかやってほしい・・・いややっぱりワーグナーやってね(彼の性格テノール化に期待)。大島幾雄さんはいつも素晴らしい。日本のシェーン博士。
ディーア役の国光ともこさんという初めて聞く歌手のお歌も印象に残りました。個人的には主役の方よりうまかった気がし。
第1幕は少女イリスが好色なオオサカ&吉原のやり手のオッサンのキョウトにさらわれるというのが主なあらすじだが、まあ、マスカーニの音楽の奇麗なこと。筋書きのむちゃくちゃさとのコントラストがすごい。着物(浴衣?)着て川で洗濯しながら歌う少女たちの美しいメロディーは全然日本じゃなくてイタリアのナントカ地方(どこか知らんが)の娘さんたちみたい。ティモテって感じ。そしてどんどん怪しい人たちが入ってヘンな人形芝居を繰り広げる。もはやどこの国かわからん。服も洋装なのか和装なのか。オオサカさんは裃(かみしも)と軍服の合体なのか。
イリスを惑わすための人形劇の人形だけは日本初演よか豪華だったかも。ホリ・ヒロシさん登場。三味線や太鼓の人々も登場。全然メロディは日本じゃないのに三味線。うーん。
イリスはさらわれて、盲目のお父さんには手紙とお金だけが残る。そこへ通りかかった郵便局員と黒猫大和と佐川急便に手紙を読んでもらい事の成り行きを知る。お父さんカワイソス。
第2幕は吉原。ヨシワラって外国で有名なのか? ここでも日本初演と同じように「大蛸にオカされる海女」?の絵が舞台に見える(私、この絵ってイリスの舞台でしか見たことないんだが)。この絵はこの曲のキーワードなのだが、2幕でイリスによって歌われる「ある日お寺で」はある意味凄い・・・どう考えても大蛸が登場するオペラ・アリアは古今東西これだけだと思うんで(歌詞訳を見ながら聴くと大変興味深い)。
第3幕はイリスが投身自殺を図った暗い地底。「吉原遊郭に谷底なんてないでしょ」といった感じの言葉が解説書にはあったが、あたしは絶対にイリスは井戸に身を投げたと信じてる。(のちの貞子である)
最後はまた最初の合唱団が出てきて壮麗な大合唱で終わる。「まあ、結局は何が言いたいのかわかんないオペラだけど最初と最後の音楽が感動的だからよかったんじゃないけ?」って思って帰る人もいたかもしんね。
http://jp.youtube.com/watch?v=0X_5a2CPBsA&NR=1
最後はなかなかの大拍手でありブラボーもあり。「今日はよかったわねえ」と話しながら家路ににつくご婦人方も多く見受けられ。終わりよければすべてよし。よかったよかった。皆さんお疲れ様でした。武蔵野音大の方も熱演素晴らしかったです。
台本はルイージ・イッリカ。ジャコーザと組んでプッチーニの傑作オペラのいくつかを担当しているのは有名である。
この「イリス」での経験から、のちのプッチーニの大傑作「蝶々夫人」が生まれたのかもしれない。(蝶々さんよりイリスが先なのだ!)
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