シューベルト
ガニュメート/糸を紡ぐグレートヒェン/ギリシャの神々/湖にて/憩いなき愛
ワーグナー
『ヴェーゼンドンクの詩による歌曲』
天使/止まれ!/温室で/痛み/夢
ブラームス
セレナーデ/日曜日/五月の夜/永遠の愛/私の愛は緑
マーラー 『少年の魔法の笛』より
夏の別れ/この世の生活/原初の光/魚に説教するパドゥアの聖アントニウス/高き知性への称賛 (アンコール)マーラー/美しさゆえに愛するなら シュトラウス/明日!藤村実穂子[メゾ・ソプラノ]
ヴォルフラム・リーガー[ピアノ] (3月3日 所沢ミューズ マーキーホール)
別に紀尾井町公演も売り切れていたわけでもなかったのだが、(いつもながら)所沢の謎の料金設定のためにこっちをチョイス。行ってから気づいたが、紀尾井と微妙に曲目が違う。紀尾井のマーラーはリュッケルトだったけど、所沢は角笛だった。あまりよく考えないで買ってしまった。私の好きな「真夜中に」と「私はこの世に忘れられ」が聴けなかった。はあ、まあいいか。
所沢は紀尾井の半額で聴くことができる。なんとCD一枚買うのくらいの価格でナマで演奏聴くことができるのである(1等席)。なんと有難いことだろう。(だのに、満員ではなかった。私の席の隣2つ空いてたし。都合でこれなかったのかもだが)
まあ、普段クラシックのコンサートに行かないような客層も存在するのも事実であり、アクシデントもあったけれどしかたないのかな。
実をいうと私はピアノ伴奏のリートのリサイタルはあんまり行ったことない。遠い昔に懸賞で当たって柿ホールのこけら落としの中丸さんのリサイタルに行ったくらいかな。オペラアリアのリサイタルなら何度もあるけどね。
それと、藤村さんのナマの声はオペラの舞台でしか聴いたことなかった。(神々の黄昏の)ワルトラウテとブランゲーネかな。どちらもさすがにバイロイト歌手だなあと思ったけど。しかしながら藤村さんってやっぱりすげえんだなって昨日は改めて思った。
世界レベルってのはこれなんだなと。
ただ歌曲歌ってるだけではなかった。大女優だった。いちいち演じてた。いろんな人になってた。歌手というよりは楽曲の精神を伝える巫女のようであった。凛とした舞台姿素晴らしい。
シューベルトとブラームスは私はあんまり聴かないので、初めて聴く曲も若干あったのだけど(えええ)、どれも衝撃的だった。どれもこれもドラマティック。日本のちょっと地方のコンサートホールの舞台がヨーロッパ各地にくるくる変わるのを目の当たりにした。ちょっとしたヨーロッパ旅行。
私は紙の対訳をめくりながら鑑賞するのがあまり好きではないのだけれど(音が出るから)、入口で頂いた対訳は藤村さん自ら訳をされたとのことなので「これは見ながら聞かなあかんのやな」と、細心の注意を図りながらめくって聴いてた。やはり意味がわかって聴くのとそうでないのは全然違う(当たり前だが)。
まあ、一番のお目当てであったヴェーゼンドンク歌曲集はやっぱり凄かった。たぶんナマで聴いた最高の歌唱であったのでは(シャーガーさんごめん)。まったく見た目東洋人の藤村さんなのに、まるで目の前にマチルデ・ヴェーゼンドンク夫人が降臨したようであり。
.
優美な第一曲「天使」も最初からフルパワーでびっくりした。また、リーガーのピアノの凄いこと。なんとなくだけど、ピアノのほうが歌手の声が引き立つしオーケストラじゃないほうがいいような気がした。藤村さんの声の力が全部聞き取れるから。コンパクト版「トリスタンとイゾルデ」。ゲスの極みワーグナーだけどこの曲が生まれたことに感謝。
残念だったのは終曲の「夢」で最後の最後の静かにピアノがこの名演奏をしめるところで、メール着信音が「ぴろぴろーん」と鳴ったことで。まあ、東京の普通のコンサートでもたまーにあることだけど、それにしても最後の最後はないでしょう。(ああ、自分でなくてよかった。私の携帯と同じ音だったんでひやっとしたわ。無論私はちゃんと切ってたけどね。)
後半のマーラーの「子供の不思議な角笛」はまるで「復活」のコンパクト版を聴いているよう。「原光」からの「魚に説教」(楽章からいうと順番は逆だけど)。コミカルで残酷な「この世の生活」もドラマティック。4人の作曲家の個性がこんなにはっきりと歌唱・演奏されるのを見聞きできて感動した。
ああ、シュトラウスがない・・・と思ったけど、盛大な拍手に応えてアンコールで大好きな「モールゲン」。ピアノ伴奏も極限まで美しく。夜友人らと池袋で寿司を食べる予約があったのでサイン会には参加せず。まあサインはまだいいとしてCD買えばよかったなあと今になって後悔。
改めて思う、藤村さんの声は誰にも似てない。(私の好きな)フラグスタートともフェリアーともマイアーともミントンとも違う。バイロイトでのご活躍や役柄的には「日本のW・マイアー」ともいえるかもしれないけど、それもちょっと違和感。藤村さんは藤村さんでしかないのかな。
(いつもだけど乱筆乱文ごめんなさい)
---
終演後、友人や昔世話になった会社のおっちゃんたちと池袋の寿司会席。お寿司の他に焼き魚やお刺身、茶わん蒸しなどいろんなものが出て飲み放題で3980円。ひな祭りだからお寿司、なのか?
コンサート中どうしてもお腹が鳴りそうだったので、休み時間に珍しくマドレーヌを買って食べたら大変美味しかった。ミューズにあるレストランHIBIKIオリジナルのものだった。さすが茶どころ、抹茶味がこゆくて美味しかった。300円もしたけどこの味なら納得。