R.シュトラウス「エレクトラ」ノット/東京交響楽団(ミューザ川崎)
R. シュトラウス 歌劇《エレクトラ》
(演奏会形式/全1幕/ドイツ語上演/日本語字幕付き)
指揮=ジョナサン・ノット
演出監修=サー・トーマス・アレン
エレクトラ=クリスティーン・ガーキー
クリテムネストラ=ハンナ・シュヴァルツ
クリソテミス=シネイド・キャンベル=ウォレス
エギスト=フランク・ファン・アーケン
オレスト=ジェームス・アトキンソン
オレストの養育者=山下浩司
若い召使=伊藤達人
老いた召使=鹿野由之
監視の女=増田のり子
第1の侍女=金子美香
第2の侍女=谷口睦美
第3の侍女=池田香織
第4の侍女/クリテムネストラの裾もちの女=髙橋絵理
第5の侍女/クリテムネストラの側つかえの女=田崎尚美
二期会合唱団
東京交響楽団
(5月12日 ミューザ川崎シンフォニーホール)
過去記事:R.シュトラウス「サロメ 」ノット/東京交響楽団
ノットのエレクトラ 初日に急遽参戦。この日は奇跡的に残業なし。定時に上がって速攻川崎までぶっとんで行きましたよ、ホントに。考えてみると初の生エレクトラ。エレクトラ歌いは世界でも少ないもんだからあんまり上演されない演目。エレクトラを歌ったせいで喉を壊して引退って歌手過去にいたような(うろ覚え)。そして何より複雑怪奇なオーケストレーション。どうも2日間のリハーサルで本番に臨んだという話もネットで見て「プロはすごいな」と思った。
ガーキーは先日METのライブビューイングでオルトルートを見聞きしたんだけど、それも凄かったけど、やっぱり映画は映画だわ。生の声は全然違う。何という凄い声なのかしら。普通の1.5倍はいそうな(100人くらい乗ってたらしい)でっかいオケの大音響を突き抜ける声、オペラのプリマドンナと言うより、「歌う重量挙げの選手」と言った印象。昨年のノットの「サロメ」じゃ踊りは演出に無かったのに、エレクトラは最後に怪しい踊りを踊っててカワイイ。さらに妹役のキャンベル=ウォレスも役柄通りのスリムなボディなのに凄い声量。もうなんか凄すぎて最後は謎の感動が襲い、涙が出てきた。
(ガーキーはあんな凄い歌手だけど、アメリカ人ということもあるんだかものすごくよくしゃべる明るい人なんですよ。ライブビューイングの幕間のインタビューでめっちゃ喋ってた。表情豊かで、なるほど舞台上の演技は彼女の地の部分なのかな、と思った。演技も歌も、過去のYouTubeの映像よりも今回のほうが素晴らしかったように思う。まあ、体感ですけど)
さらに、子供の頃からバイロイトの放送などで聴いていて(シェロー演出の映像って1980年!)、日本に何度もいらしてくれてブランゲーネやフリッカやエルダを聴かせて下さったレジェンド・オブ・メゾのハンナ・シュヴァルツがまだ聴けるとは!なんと79歳!こんなに長く第一線で歌っている歌手っているのかな? 最近でもザルツブルグの舞台に上がっているようだし。登場はやっぱりちょっとよろよろしているし(お付きの役の日本人歌手が本当に介護の人みたいに見える)、声もさすがに往年の輝きはないけど、お元気なお姿を拝見できて嬉しい。長生きしてねハンナ。
オーケストラは「サロメ」の上をいく複雑さだが、応援部隊もいたようだがもうなんか凄いとしか。もちろんCDで聴きなれているサヴァリッシュなどとどうしても耳が比べてしまうけど、もうなんか・・・生で聴ける喜びは代えがたい。始めの方は表現主義的で不協和音が多い音楽だけど、オレストが出てくるあたりからシュトラウスらしい流麗な音楽になり、そのへんの変化も見事。(わたしだけかもしれないけど、シュトラウスの音楽ってたまにすごく「懐かしい」感じがすることがあるんだけど、いかにもその時代を生きてたみたいな。モノクロで映像が浮かぶ。なんでだろう)
ところで、ヴィオラ奏者がヴァイオリンと持ち替えてたっていうのは歌唱に夢中になりすぎてて見逃した。
日本人キャストも「サロメ」を上回る豪華さ。二期会じゃ主役級の人々が端役なの凄い。池田香織さん、増田のり子さん、金子美香さん、谷口睦美さん、田崎尚美さん、伊藤達人さん、歌うところ少ないのに存在感がばっちり。とくに池田香織さん相変わらず表情豊かで素敵でした。
日曜日のサントリーはもっと上をいく演奏になるのかな。
(実はサントリーも券を売り切れる前に入手していたのでエレクトラは2回行ってしまった。若干演出が違ってたけど同様に素晴らしかった)