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2023年4月10日 (月曜日)

R・シュトラウス  歌劇「平和の日」(日本初演) 初日 東京二期会

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R・シュトラウス  歌劇「平和の日」(日本初演)
包囲された街の司令官:清水勇磨
マリア その妻:中村真紀
衛兵:北川辰彦
狙撃兵:高野二郎
砲兵:髙田智士
マスケット銃兵:松井永太郎
ラッパ手:倉本晋児
士官:石崎秀和
前線の士官:的場正剛
ピエモンテ人:前川健生
ホルシュタイン人 包囲軍司令官:河野鉄平
市長:伊藤達人
司教:堺 裕馬
女性の市民:石野真帆
合唱:二期会合唱団
指揮:準・メルクル
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
(4月8日 文化村オーチャードホール)

過去記事:R・シュトラウス「平和の日」

2015年の「ダナエの愛」以来のメルクル&二期会のシュトラウス。「ダナエ」は日本オペラ上演史に残る(と思う)名演だったが、この「平和の日」もそれに迫る上演。その昔、この曲のCDは入手が困難、「世界初録音盤」しかなかったので聴いてみたくて個人輸入までしてしまった。それが・・・自分の生きている間に生の上演が見られるなんて、本当に信じられなかった。この日は渋い演目&天気悪い&渋谷(駅は工事中で都民でもよくわからんし東急本店まで向かう道が最悪)という悪条件で客の入りは今ひとつだったようだが、私は一階1前から2番目の席でまるで時の権力者みたいな気分(なんか微妙)で堪能させて頂いた。シュトラウスを聴いた、というより思う存分「浴びた」という感じが近い。周囲はいかにもシュトラウス好きそうなおっさんお兄さんだらけであった(なんとなくだけど)。

しかしまあ実は、対訳がついた状態で聴くのは私は初めてで「えーこんな歌詞だったのか」と思った。30年だか戦争が続き、市民たちは飢餓に苦しんでいるシーンが続く。そのうち大砲が鳴り教会の鐘が響き、敵が白旗をかかげ一瞬平和が訪れる。しかし司令官は「いや、騙されているんだ。戦争は終わらせないぞ」と頑なに握手を拒むが、ヨメのマリアの説得で心を開き、戦争は終わる。最後はフィデリオか第九交響曲のようなオラトリオ風の平和賛歌で終わる。なんか(ぼんやりと筋書は知ってたけど)「はあ、そうなのかあ」という感じ。曲は凄く好きなんだけど、内容は素直に喜べない感じだ。やはり第2次大戦直前のあの空気を感じて微妙な気持ち、シュトラウス大好き人間でもそんな感じ。ヒトラーもこの曲はお気に入りで?プロパガンダに利用していたようにも思うが、シュトラウスが(表向きは)ナチ寄りにしていなきゃいけなかったのも、家族(息子のヨメがユダヤ系)の関係で仕方がないんだけど・・・。ナチ寄りとも反ナチとも取れる微妙な造りなのかね?

しかし本場ヨーロッパではなく、日本で上演してくれたこと、シュトラウスやワーグナーの名手であるメルクルの指揮で聴けたことは意義があるし、二期会の若手実力者の歌唱も聴きごたえがあった。

このところの二期会での私の推しバリトンの清水さんは相変わらずの美声で、まるでベルント・ヴァイクルをおもわせる。歌うところ沢山で耳が幸せ。妻役の中村さんの熱演、出てくるところは少ないながら石野さんの演技も印象に残る。二期会のドイツ系演目を担うユーゲントリッヒャー・ヘルデンテノールの伊藤さんの歌唱も素晴らしかった。

オペラコンチェルタンテなので、オケも舞台に乗りその前で歌手は最低限の装置と衣装で歌い演技。むかしのドイツの兵士っぽい衣装からフィナーレは男性はスーツ、女性はコンサートドレスで登場、まるでティーレマン指揮ザルツブルク音楽祭の「影のない女」のフィナーレみたい、って思った。だれも指摘しないけど。

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