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2022年11月 5日 (土曜日)

ヘンデル/シッラ(日本初演) 神奈川県立音楽堂

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ヘンデル『シッラ』全3幕 日本初演(イタリア語上演 日本語字幕付)

ソニア・プリナ(コントラルト/ローマの執政官シッラ)
ヒラリー・サマーズ(コントラルト/ローマの騎士クラウディオ)
スンヘ・イム(ソプラノ/シッラの妻メテッラ)
ヴィヴィカ・ジュノー(メゾ・ソプラノ/ローマの護民官レピド)
ロベルタ・インヴェルニッツィ(ソプラノ/レピドの妻フラヴィア)
フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ(ソプラノ/シッラの副官の娘チェリア)
ミヒャエル・ボルス(バリトン/神)
神谷真士(スカブロ/シッラの臣下 黙役)
桧山宏子 板津由佳(エアリアル)
片岡千次郎(兵士/殺陣)
亀山敬佑(兵士/殺陣)
ファビオ・ビオンディ指揮 エウローパ・ガランテ
台本:ジャコモ・ロッシ
演出:彌勒忠史
美術:tamako☆
衣裳:友好まり子
照明:稲葉直人(ASG)
立師:市川新十郎
台本・字幕翻訳:本谷麻子
舞台監督:大澤裕(ザ・スタッフ)

(10月29日 神奈川県立音楽堂)

実家の親にいろいろあり(今は元気です)、一週間ほど実家で寝泊まりしていてでオペラどこではなかったが、前から券をとっていて楽しみにしていたので何とか鑑賞。行く前は東京からそこそこ遠いし券とっておいて若干後悔したのだが、行って正解であった。オケも独唱者も全員外国からやってきてくださり、しかも実力のある方ばかり・・・ということだが、私はバロックオペラを聴くようになってそんなに経ってないんで、歌手の皆さんは名前も知らず。

ヘンデルのオペラって面白いって思い始めて何回か生で観に行ったけど、ほとんど予習をしたことはない。なんか歴史とかよくわかんなくて。でも当日は凄い超絶技巧のアリアとか美しい古楽器の演奏に引き込まれて、あっという間に時間が経ってしまう。そうそう、何で新国の「ジュリオ・チェーザレ」に行かなかったの?って思うでしょ。いや実は券取ってた・・・つもりだったんだよ。3階席のいいところ。それが、自分の勘違いだったということが直前に発覚し、気が付いたら一番いい席しか残ってなかった。でもなあ・・・私から言わせるとクレオパトラ役は是非モリマキ様でお願いしたいとこだったなあ・・・とか思い(いや別にキャストに文句はないですが)。しかしその頃モリマキ様はあのゲッツェルの椿姫だったしなあ・・・。まあ縁がなかったんかなあ。古楽器のオケじゃないのも(いや東フィルさんには何の不満もないんですけど)ちょっと。(いや本当は行きたかったんだけど)

さてシッラ。
この公演は2年前だかに本当は上演するはずで、あと15時間で初の舞台稽古だという時に、コロナ禍で中止に。そして今年になってほぼ同じメンバーで日本での公演が実現した。私はそのいきさつは全然知らなかったんだけど、そうそうあのびわ湖ホールの「神々の黄昏」と同じような感じだったのね。古楽ファンの悲しみはいかばかりか。しかしまあよく実現できたものだと思う。

とかく演奏時間が長い印象のヘンデル・オペラだが、この「シッラ」は長くない。休憩入れても3時間くらい。シッラという独裁者(妻帯者)と2組のカッポーとのせめぎあいというか、最初は争ったりシッラが奥さん以外の女にちょっかい出したりするけど最後は突然改心してハッピーエンドというわりとわかりやすい内容。あんまり内容は考えずに音楽や歌唱に身を任せるのが正しい感じだ。

まあ、これだけの芸達者な演奏者&歌手が揃っていれば舞台演出などなくても十分楽しめそうなものだが、そうもいかないのが彌勒演出。前に横須賀で上演のブリテンの「カーリュー・リヴァー」の演出を彌勒さんがされてた時も思ったのだけど、恐ろしく衣装が豪華。1回か2回くらいしか使わないのに、絢爛豪華な衣装が逆に(お金大丈夫かなと)心配になる。今回の「シッラ」も最高の席は15,000円であったけど、正直「別に演出なしの演奏会形式でもこの値段でも文句ない」と思った。素晴らしい演奏の上に、大変にカラフルなキラキラしい衣装。あの猿之助さん演出、バイエルン国立歌劇場の「影のない女」を思い出す衣装。

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(神奈川県立音楽堂のTwitterより拝借)
神奈川県立音楽堂は、今回初めて行ったのだけど、どう考えてもオペラ向きにはできてない。全体的に木造で、舞台は狭く、「せり」とかの舞台機構とかは皆無。そこを補った舞台装置、「別にバロックなのだからいらなくね?」と思うような歌舞伎の殺陣や最後にはエアリアル(舞台上からリボンをたらして、それに捕まったダンサーさんが2人アクロバットなどする)などサービス満点。

バロック・オペラにありがちの退屈など皆無。バロック初めてでも十分楽しめるように工夫を凝らした舞台は大変楽しかったけど、そうでない人も若干いたのか、私が観た初日ではなく2日目には(演出に向かって)ブーイングが出たらしい。(ブラボーは禁止されているのにブーはいいのかな)。こんなたった一人の「あなたの感想ですよね」のために観に来て楽しんだ人々は不愉快に感じたのかなと思ったら何だか悲しくなった。初日で良かった。まあ、開演前に(個人的に)不愉快な客を見たんだけど(案内してくれた係員さんが不慣れだったのか、どっかのおっさんが「ここでは使えない従業員を雇っているんだね!」と文句を言ってた。そのおっさんの背広のしっぽがみっともなくひっくり返ってて、自分の服装をちゃんとしてから文句を言えばいいのになと思った)それはちょっと嫌だったな。

公演に関してはとくに文句はなく、よい公演だったのだが本当は個人的にはカウンターテナーが好きなので(外見と声の乖離がすごく好き)、男性役が(神様役のバリトン以外は)全部女性歌手だったのがバロックにしては珍しいと思った。主役のシッラも男性役だけど女性のコントラルトの歌手が演じられていて、歌舞伎でいう隈取の悪役の化粧だったのですごく本人楽しそうにされていてそれは良かった。女性の役はやはり西洋人が着物を着ることになるのでどうしても外国で観る噴飯ものの「蝶々夫人」になってしまうのだけど、まあ・・・歌唱が素晴らしいので慣れた。韓国からいらした(たった一人の東洋人歌手)スンヘ・イムさんはさすがに着物が似合っててチャーミング、声も清澄で素晴らしかった。

バロック・オペラはやっぱり楽しいな、ワーグナーやR・シュトラウスなどのドイツ・オペラも大好きだけど、ヘンデルなどのバロック・オペラもまたずっと観に行ったりしたいな、と思った。・・・と思ったら、入り口で貰ったチラシに、来年のこの劇場での上演予定に鈴木王子指揮BCJによる「ジュリオ・チェーザレ」が。しかもモリマキ様のクレオパトラ、大西宇宙さんもご出演だとのこと。これは新国の上演より(私にとっては)嬉しい。ずっとずーーーと嬉しい。

なお、シッラ当日はNHKの車がお外に止まっていて、映像収録があった模様。2023年1月15日にBSプレミアムで放送予定だとのことで、是非みんな見てね。目も耳もとっても楽しい公演なので是非是非。

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