R.シュトラウス「サロメ 」ノット/東京交響楽団
R. シュトラウス:オペラ『サロメ』
(演奏会形式・字幕付 全1幕・ドイツ語上演)
サロメ:アスミク・グリゴリアン
ヘロディアス:ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー
ヘロデ:ミカエル・ヴェイニウス
ヨカナーン:トマス・トマソン
ナラボート、ナザレ人2:岸浪愛学
ヘロディアスの小姓:杉山由紀
兵士1、ナザレ人1:大川博
兵士2:狩野賢一
カッパドキア人:髙田智士
ユダヤ人1:升島唯博
ユダヤ人2:吉田連
ユダヤ人3:高柳圭
ユダヤ人4:新津耕平
ユダヤ人5:松井永太郎
奴隷:渡邊仁美
指揮:ジョナサン・ノット
東京交響楽団
演出監修:サー・トーマス・アレン
(11月20日 サントリーホール)
沼津旅行の次の日だったので、券を(前から)取っていたのを若干後悔。疲れてて寝てしまうのでは、と危惧していたが、サロメは演奏時間100分と短いため、とくに寝ることもなく鑑賞。パルシファルとかだったら爆睡してしまってたかも。
2018年のザルツブルグ音楽祭ですい星のごとく現れたサロメ、アスミク・グリゴリアンを日本において堪能。なんという幸運。日本に生まれてよかったあ、お魚美味しいし。
ザルツブルグですい星のごとく現れたサロメ、というと(古いけど)カラヤンがみっけてきたヒルデガルト・ベーレンスを思い出す。カラヤンは偉大な指揮者だったけれど、私にとってカラヤンの最大の功績は(全然無名だった)ベーレンスをサロメに抜擢したことだと思う。今回の予習と称してカラヤンのザルツブルグ・ライブをYouTubeで見つけて子供の頃を懐かしんで毎晩聴いていたが、いつのまにか動画が検索されなくなっていた。どこ行ったんだろ。あ、セッションじゃなくてライブね。狂気のサロメ、ベーレンスと咆哮するウィーン・フィル、あれを超える演奏などない、と思ってた。
グリゴリアンのザルツブルグの映像は、BSで観た。よくわからん演出(首が欲しいって言ってるのに首を取られた胴体だけ出てきたり)にまぎれてすっかり演奏などどっかに行っていたが、ショートカットの髪型のせいか「ホラン千秋さんみたい」とか思って見てた。
サントリーで観た時は長い髪?を後ろに編んでまとめて、クノップフやバーン=ジョーンズの絵画に出てくるファム・ファタルな美女を彷彿とさせた。ごっつい名前に似つかわしい眼力のつおい美人。そんでモデルさんみたいな体形(ウエストほっそ!)。胸を大きく開けたせくしいなブラックドレスがお似合い。どうしたらこんな人が生まれてくるのかわからん。私、女だけど眼福でしたわ。前から12番目で良く見えた。41歳って嘘でしょう?ロシアとかあの辺の女性は40超えれば太ってるじゃないか普通(←偏見)。
今回の演奏会(演奏会形式じゃからのう)では、日本人キャストに若干変更があり、そのうち好きな歌手さん、ナラボート役の鈴木准さんとユダヤ人役の糸賀修平さんが急病またはコロナ陽性で交代。しかたないけどなんか悔しい。とくに鈴木准さんのナラボートは聴きたかったなあ。
しかし、ナラボート代役の岸波さんは立派に勤めていらしたのでよかった。サントリーは川崎に続いて2回目の公演だったので、川崎よりこなれていたのかな。曲が始まってすぐに歌いだす責任の重い役ながら、バルト三国美女に迫られて役得かと。
それにしてもまあ、グリゴリアンは素晴らしい。まあ、ジェット機を圧するほどすごくでっかい声というわけでもなく(オケが舞台下に潜ってないのでしかたないか)たまにオケの音に声が埋もれてしまってはいたものの、声量は日本人とかに比べると圧倒的だし、何というか声に色っぽさがあるというか(イタリアものもロシアものもよい)、艶のある声に魅了された。他の歌手のサロメは「そういう役柄だから(周りの男が魅了されまくっても)仕方ない」って思って見るけど、グリゴリアンはいやこんなんナラボートが陥落してもしかたねえな、ヨカナーン呼び出しちゃうなって思った。声や外見だけでなく、演奏会形式ながら若干の演出もあったため、黒猫のごとき我儘でいたずらっぽい表情、そして周囲を(自分では意識してないのに)魅了する妖艶さなどを堪能。こんなに前のほうの席なのに、私の両隣はオペラグラスでガン見。
他の来日組の歌手さんたちも素晴らしかった。なんかユル・ブリンナーみたいなこっちも眼力つおいヨカナーン、毎日お酒ばっかり飲んでるでしょ感の強いヘロデ王、ヘロディアス感の強い声と外見のヘロディアス(ドレスが素敵だった~)、穴はなし。端役ではあるけどナラボートを想う小姓役の杉山さんもこの豪華キャストの中埋もれることなく輝いてらした。他のその他おおぜいの男の人たちもよかった。普段日本人がすると「おーおー」というナザレ人やユダヤ人たちの叫び声はなんか歌舞伎っぽくなったりするのだけど、今回はそんなことなかった。
しかしまあ、歌手が中心なわけでなくこのオペラの主役はオーケストラ。ノットの指揮の演奏会は私は何故か声楽ものばかりでシンフォニーなのは聴いたことないんだけど、今まで外れなく「この曲のトップ演奏!」て思うものばかりだけど、今回のサロメも生で聴いたものの中で1番のサロメであった(そんなに沢山聴いてないけど)。実演とラジオ放送の差はあるけど、たぶんカラヤンのライブと張る演奏だったな。何年か前に聴いた二期会のヴァイグレも素晴らしかったけど・・・なんか凶暴さ、暴れまくりの演奏でノット&東響は圧倒してる。ネットで見ると「今年のベスト1!」という感想で溢れていた。終わってからの拍手(照明が最後に落ちてカッコイイ!)はなかなか止まらず、何回もカーテンコールに呼ばれる出演者たち。ブラボー禁止だから「BRAVO!」と書かれた自作の布を掲げる人も何人かいた。でもブラボーの声出してる人も何人か。しょうがないねこりゃ。
演出はサー・トーマス・リプトン・・・じゃなくてアレン。最少の小道具・最少の演出はさすが演劇の国という感じで(演奏を邪魔することなく)楽しめた。いや、こんなんでいいんだよ。こないだのゲッツェル指揮の「椿姫」もこんな感じ(もうちょっとセットがあったかな)だったけど、余計な演出があるより演奏や曲に没頭出来ていいと思う。そういえば、原作者オスカー・ワイルドはイギリス人だもんなあって終わってから思い出した。
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