二期会/ワーグナー「パルジファル」ヴァイグレ(千秋楽)
ワーグナー:舞台神聖祝典劇「パルジファル」
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
演出:宮本亞門
装置:ボリス・クドルチカ
衣裳:カスパー・グラーナー
照明:フェリース・ロス
映像:バルテック・マシス
合唱指揮:三澤洋史
演出助手:三浦安浩
澤田康子
舞台監督:幸泉浩司
公演監督:佐々木典子
公演監督補:大野徹也
アムフォルタス:清水勇磨
ティトゥレル:清水宏樹
グルネマンツ:山下浩司
パルジファル:伊藤達人
クリングゾル:友清 崇
クンドリ:橋爪ゆか
第1の聖杯の騎士:新海康仁
第2の聖杯の騎士:狩野賢一
4人の小姓:宮地江奈
川合ひとみ
高柳 圭
相山潤平
花の乙女たち:宮地江奈
松永知史
杉山由紀
雨笠佳奈
川合ひとみ
小林紗季子
天上からの声:小林紗季子
少年:近田聖
母:白木原しのぶ
合唱:二期会合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団
(東京文化会館大ホール)
過去記事:二期会/飯守さんのパルシファル 初日
全く行く予定なかったんだけど、3連休は友人と映画観に行く以外結構ヒマだなあと思ったので、一回だけ行く事に。土日のうち「安くて比較的よさそうな席があったらそっちに行く」という感じで、正直ダブルキャストのどっちでもよかった。10年前に観に行ったときに福井さんのパルジファルを間違って2回買ってしまったので、まあたまたま今回は伊藤さんの回でよかったかな。席は3階席の斜めから見下ろす感じ。幸いにも視線の先の2席ほど空いてたので、視界を遮るものがなく良く見えた。
(ところで。今回ティトゥレルを歌われる予定だった長谷川顯さんが闘病の末お亡くなりになったそうで、本当にこの悲しみをどこにぶつけたらいいのか。長年日本のワーグナーのバスと言えばまず長谷川さんで、何度も舞台を見聞きしてきたのでとても残念。まだ65歳という。昨年のマイスタージンガーでハンス・シュヴァルツを歌われたのが私にとって最後である。)
今回タイトルロールを歌われた伊藤達人さんは新国立劇場のマイスタージンガーでダヴィットを歌ったのを見聞きしたのが私は最初。その時は「がんばって歌っているな」以上の感想がなかったので(すいません)、今回の大抜擢はびっくりした。でも、予想以上に素晴らしかった。「日本にもついに新しいワーグナーテノールの誕生か?」と思ったけれど、前に同じように思ったびわ湖テノールの二塚直紀さんが早々に亡くなられてしまったので(縁起でもないですが)、伊藤さんはくれぐれもユーゲントリッヒャー・ヘルデンテノールの喉とお体を大事にして頂きたい。それで是非将来的にはジークムントを歌って欲しいな。
<あらすじ>ママと仲直りしてよかった♡めでたしめでたし。
第1幕
ある住居。少年とお母さんらしき人が登場。なんかちょっと仲悪そう?だが二人で美術館に行く。人類展?(フランス語ようわからん)。絵画などの展示の他に「ネアンデルタール人から人間」?の進化の展示あり。「これはもしかして、上野で上演するからカハクを舞台にしたのか?」と勝手に思ったが、そうでもないのかな。宗教画から抜け出してきたような人々を少年は目撃。まるで映画「ナイト・ミュージアム」のよう。
少年の前で数々の展示の宗教画をバックに、オペラ「パルジファル」の劇が繰り広げられていく。クンドリ登場。そういえば前の二期会のパルジファルでクンドリを演じられていたのは同じ橋爪ゆかさんだった。その時の演出ではクンドリは最後は昇天せずにスーツケース片手に長い旅に出ていたので、今回はまた戻ってきて奉仕をしたり再度パルシファルを誘惑したりするのかな(違うかあ)。
昨年二期会で同じヴァイグレ指揮で「タンホイザー」を上演した時に、ヴォルフラム役で大変素晴らしい美声を聴かせてくれた清水勇磨さんが今回は苦悩のアムフォルタスである。本当にいい声で(本人はお腹の傷が痛くてしょうがない演技なんだけど)聴き惚れてしまった。普段はレパートリー的にはイタオペなのかな?とは思うけど是非これからもワーグナー歌って欲しい。ベルント・ヴァイクルを思わせる美声。
そうしているうちに白鳥を弓矢で撃って大騒ぎのパルジファル登場。なんかさっき出てきた少年と同じ服装みたいよ。なんか前のタンホイザーと同じで謎の少年出すの流行ってるの?いつものようにグルネマンツが謎の聖杯の儀式に勧誘。くれぐれも言っておきたいのがこれは美術館もしくは博物館の中で行われるものだから、なんか係員みたいな男女がキリスト様を包んでた聖布?のようなものを取り出してきて広げると、その後ろからティトゥレル登場。男声合唱団は今戦っているウクライナの人々みたいな風貌(また戦争関係かー、いやだな)。アムフォルタスは中央の手術台みたいなのに乗せられて、係員の人が手術(?)。血がどくどく出てくる。イヤーヤメテー(スプラッタ苦手)。いつものようにさっぱり意味がわからん表情のパルジファル。グルネマンツは「今度は白鳥でなくて嫁でも探せば?」という謎の発言(字幕)。本当はガチョウでも探せ、じゃなかったっけ?
25分休み。外の空気に当たろうと券もって外出すると、パルシファル鑑賞してたと思しきカッポーの会話がたまたま聞こえた。(彼女)「ねえねえ(このクソ暑いのに)なんで(灰色の)パーカー着てきたの?」(彼氏)「だってパルジファルが着てたから・・・(お揃いにしたかった?)」(彼女苦笑)。いやー、その気持ちすごくわかるよ。私もベルリン国立歌劇場の「パルジファル」のDVD見て、シャーガーさんが着てた黒のパーカーを無印まで買いに行ったもん。
第2幕
美術館の中の管理人室。モニターの前にあきらかに怪しげな3~4人。クリングゾルの一団。相変わらず友清さんの美声、カッコイイぜ。この悪役好き殺し。クンドリ登場。10年前に観た時より今回の橋爪さん美しい。前は椿鬼奴さんみたいなメイクだったわ。モニターに映るパルジファルが男たちをバッタバッタとなぎ倒す(映像)。ここですかさず花の乙女たちがパルジファルを誘惑。10年前に引き続き謎のダンスを歌い踊る。パルジファルを少年が登場、花の乙女さんたちはパルジファルを誘惑しつつもクリングゾルの手下にそそのかされて刃物でパルジファルを殺そうとするが失敗。
クンドリが前より着飾って登場。別室のベッドのある部屋にパルシファルを連れて行きいつものようにちゅうをするけれど、そこでパルジファルは知を得てアンフォルタスの苦悩に気付く。そんでもってクリングゾルとその手下登場。パルジファルをかばって少年が槍に刺された! いつもだったら聖槍を投げて空中に止まるとかそういう演出があるんだけど、そういうのはいっさいなし。
第3幕
前奏曲は(ニュースでよく見る)徹底的に爆撃されたウクライナの映像。いやそういうのは・・・。舞台は1幕と同じ宗教画がいっぱい貼ってある部屋。グルネマンツが倒れているクンドリを起こしてあげる。武装した謎の騎士登場(少年をかついでいる)。前より髪が伸びてるねえ。これが前に白鳥殺して大騒ぎだった青年と気が付いて、クンドリその他みんなでパルジファルをキレイキレイしてあげる。お腹の傷イタイイタイのアムフォルタスが聖杯儀式を拒否してたため先王のティトゥレルは死去。クンドリは色々許されて、ピアノ線に釣られて昇天。
第1幕の儀式の部屋で傷だらけの兵士さんがまた集まってくるけど、ティトゥレルの遺体(もうミイラ化してるんで思わず「うわ」って言いそうになった)が出てくるとアムフォルタスを責める責める。そこで聖槍持ったパルジファルが登場。槍で傷をつつくとあら不思議、お腹の傷は治っちゃったよ。一同歓喜。倒れてた少年も槍でつつくと治って起き上がった。パルジファルはアムフォルタスの後を継ぐと思いきや、今まで何度も登場してるゴリラさん?に森に連れられて行ってしまった。少年はお母さんが探しに来てくれて、ハグして仲直り。めでたしめでたし(か?)。
歌手の皆さん、素晴らしかったけれど、やはり主役は読響とヴァイグレか(飯守さんの深い音楽に慣れてしまっているのでやっぱりテンポはやや速いな、軽いな、とは思ったけど)。管弦楽は若干縮小されてた感もあるし、合唱もやや少なかった気はしたが、まあこのコロナ禍ではしょうがないか。演出は・・・賛否両論あったがまあ・・・こんなもんでしょ。ようろっぱではもっと訳が分からん演出が多いかと思う。私のようにパルジファル何回も観てるガチ勢から言うと「わかりやすい・・・でもこんなにわかりやすすぎる必要あるのかな?色々詰め込みすぎでは。」というのが正直な感想。逆に初めてこのオペラ観る勢にはちょっとキツイかも? いろいろ言いたいことはあるんだけど、結局はとても感動したせいで、帰りに上野駅でお弁当買おうとしたけどあんまり考えがまとまらず構内をぐるぐるしてしまった。結局また塚田農場のチキン南蛮弁当で・・・まあ美味しいからいいか。
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某・茂○先生もいらしていたようですが、YouTubeでのレビューを聞いてたんだけど、スタンディングオベーションしたらうしろのおじさんに「立つんじゃねー!見えねーよ!」って怒られた話なのかと思って途中までドキドキしちゃった。
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