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2020年11月 4日 (水曜日)

ヘンデル/歌劇「リナルド」 BCJオペラシリーズVol.2

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ヘンデル:歌劇「リナルド」(セミ・ステージ形式)
鈴木優人 (指揮・チェンバロ)
バッハ・コレギウム・ジャパン (管弦楽)
リナルド:藤木大地(カウンターテナー)
アルミレーナ:森麻季 (ソプラノ)
アルミーナ:中江早希(ソプラノ)
ゴッフレード:久保法之(カウンターテナー)
エウスタツィオ:青木洋也(カウンターテナー)
魔法使い:波多野睦美(アルト)
アルガンテ:大西宇宙(バリトン)
使者:谷口洋介(テノール)
セイレーン:松井亜希(ソプラノ)
セイレーン:澤江衣里(ソプラノ)
砂川真緒(演出)
菅尾友(ドラマトゥルク)
(オペラシティ・コンサートホール)

過去記事:モンテヴェルディ「ポッペアの戴冠」 バッハ・コレギウム・ジャパン

(すでに大反響で大好評のこの公演。もう1日経ってしまって色々書かれたものを読んでしまったので書くことあんまりないんだけど、まあ一応自分の記録として書くね。)

過去記事はこのBCJオペラシリーズの第1回。そもそも海外キャストも交えてのシリーズのはずが、コロナ禍でオール日本人キャストになってしまった・・・というのはこないだの新国立の「夏の夜の夢」と一緒である。しかし、「夏の夜の夢」が「オール日本人でも結構いけるじゃん」な感想だったのに対し、今回のヘンデル「リナルド」は、「これ、オール日本人でこその上演じゃね?」って思った。

そもそも、私はこの公演の券取ってなくて(気が付いたら売り切れてたんだったかな)、コロナ禍からちょっと緩和状態になったので(一人づつ席を空けなくてよくなったので)券が取れたんじゃなかったかな。前回のポッペアでも歌った、レイチェル・ニコルズが魔女アルミーダ役だったのかー、って後で知ったくらいなんだけど。

最近、欧米で流行ってんだかわりとヘンデルのオペラを見聞きするようになったんだけど、それはネット配信とか映画館だけだったんで、実はヘンデルのオペラを生で観るの初めてである。ヘンデルって、子供の頃は音楽の父?で教科書に載ってて、もこもこのカツラ被って音楽室に肖像画貼ってあるってだけの人だったので、大人になって自分が楽しんで観るようになるなんて予想もしなかった。

とくに、こないだ映画館で観たメトの「アグリッピーナ」はホントに面白くて。舞台を現代に移した大胆な演出で、「あれ、もしかしてバロックオペラって何でもアリなの?」って思った。いやこんな、吉本新喜劇みたいなのでいいの?的な。

なので、今回の「リナルド」の演出は、ちょっと頭の古い?聴衆には受け付けないのかもしれないけど(←失礼?)、私はすぐ受け入れられた。まず、最初の写真のように、このオペラはロールプレイングゲーム(RPG)の中の物語として演出されている。(始めに宅急便の荷物を受け取り、その中にゲームの登場人物のフィギュアが入っている)なので、主役リナルドはこのゲームをやってる「ゲームオタク」の少年、という設定である。

ヒーローのはずのリナルドは、前髪を下ろしてメガネをかけた、「R」の文字のついたTシャツを着ている冴えない風貌だ。こないだ新国立で見た藤木大地さんのオベロン役では「なんかムロツヨシっぽい」って思ったけど、今回は・・・なんか「南海キャンディーズの山ちゃん」みたいだなって思った。でも、声はやっぱりいつもの藤木さんの美声で。

ヒロインのアルミレーナは森麻季さんで、それはもう美しかったんだけど、そもそも主人公のオタク青年はゲームの中のアルミレーナのファンであり、写真集(わざわざ小道具として作った)を持ってたりする。このオペラには3人もカウンターテナーが登場するのだけど、かなり沢山の歌を歌うアルミレーナの父ゴッフレートとその兄弟のエウスタツイオも大健闘。

しかしまあ、考えてみるとカウンターテナーの役は、女声のアルト歌手でもできるわけなので、それこそいろいろな演出ができるわけだよね。

そして、リナルドとアルミレーナの十字軍に敵対するエルサレム軍のカップルは、中江早希さん演じる魔女のアルミーダと、大西宇宙さん演じるアルガンテ。いやほんと、この二人は悪役であったのにもかかわらず、主役を食うほどの勢い。大西さんは半ばこの方が目当てで行ったようなものなんで、あいかわらず立派な押し出しと堂々たる歌唱で素晴らしかったのだけど、正直名前さえ知らなかった中江さんは本当に素晴らしい声と演技で。(まあ、今回は色々と行ってよかったって思う要素はあるものの)今回の一番の収穫は彼女の事を知ることができたこと、かな。

実は、私はB席で舞台を見下ろすバルコニー席だったので、舞台の左半分近く見えなかった。だもんで、ちょっと演出的にわからないところもあったのだけど、それでも中江さんのコミカルな演技(一升瓶をラッパ飲みしたりする)と素晴らしい声は伝わってきたし、いや何でほんとあんなに高い声が出るの。第2幕の怒り狂うアリアは(二人のチェンバロ奏者の超絶技巧の掛け合いと共に)、いやほんと素晴らしかったなあ。思わず禁止のブラヴォー言ってしまった客もいたんじゃない?

あと、もちろんBCJの方々の超絶技巧も素晴らしく。とくに大活躍の打楽器の方(稲妻、雨、風なども担当)も素晴らしくて、私なんか「アルプス交響曲」だの「ラインの黄金」だの慣れているはずなのに、稲妻の音にいちいちビックリしたりしました。

それと、私は学生時代にブラスバンドなどでトランペット吹いてたもので、華々しい場面で現れる古楽器のトランペットに大注目。アレ、もしかしてバルブないの?どうやってメロディ吹くの?すごく気になった。だってカウンターテナーの超絶技巧の歌唱と張り合ったりするんだもの。思わずオペラグラスでガン見。

・・・と色々書いてみたけど(まとまらなくてすいません)、今年あんまりオペラみてないけど観たものはみんな良かったです。でも今回はホントに格別。楽しかったなあ。有料のネット配信もあったみたいだけど、本当は・・・それでちゃんと舞台を観たいかな、とも思ったけど我慢我慢。

最後は大拍手がなかなか収まらず。でも、ウィーンでテロがあったせいなのか?(考えすぎ?)若干藤木さんの表情が暗かった気も・・・しました。今は日本にいらっしゃるけど、そもそもはウィーンで活躍されている方だからね。(ウィーン・フィルははるばる日本に来たそうだけど・・・)

しかしまあ、オール日本人キャストならではの演出(外国人勢ではできなかったでしょ)。楽しかった~。行けてよかった。子供の頃は遠い存在だったヘンデルが身近に、バロックオペラがますます好きになった。

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