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2019年7月 7日 (日曜日)

映画「クリムト  エゴン・シーレとウィーン黄金時代」

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少し前に、会社の近くの映画館で鑑賞。ちょいと忘れかけているが備忘録的に。これは全くのドキュメンタリー映画であり、物語性を求める人にはがっかりさせる内容かもしれない。しかし、私は上野東京都美術館でのクリムト展も新美術館でのウィーン展も行ったばかりなので、とても興味深く観ることができた。作られたのは2018年なので結構新しいので(情報が古すぎるということもなく)ありがたい。ウィーンの景色も私が旅行した頃よりも若干新しい感じはした。何より、ベルベデーレなどで「接吻」の写真が撮影可なのは私の行った頃とは変わらないのだけど、観光客が使っているのはカメラではなくすっかりスマホになっているところが「ああ、ずいぶん時代が変わったなあ」と思った。

内容的には先日出かけた「ウィーン・モダン展」に近い。クリムトやシーレの絵画と、それを取り巻くマーラーやシェーンベルクなどの音楽家やフロイトに代表される精神分析の分野の有名人、それに何よりシュニッツラーなどの文学者が、まるで縦と横の糸で毛織物のように編まれていくような映画である。マーラーやシェーンベルクの音楽に精通していても、それに連なる絵画や文学にも興味を持たないとウィーン世紀末音楽の世界は深くは理解できないと思う。まあ、別にクリムト好きでもマーラーやシェーンベルクは興味ない人なんて沢山いるんだろうな、とは思うけど(日本人はほとんどそうなのかもしれん)。

個人的には、ウィーンでの女性初?のポートレート写真家のドーラ・カルムスに興味を持った。どうも金持ちの娘みたいで親のコネクションが多大であり、ウィーンの文化人や有名人の写真を数多く撮影している。今でいう「盛ってる写真」の先駆者であり、依頼者の希望でネガにレタッチしたりフィルターかけたりして「美しい人はより美しく(そうでない人も)」撮ってくれるので大変人気があったという。まあ、若い頃はウィーン一の美女とあがめられたアルマ・マーラーでさえ、中年の頃には若干太ってたので「もうちょっと細く見えるように撮って(修正して)」と依頼したとか。そして、前から思ってた「アルバン・ベルクのポートレートは何故あんなにかっこいいのか」という疑問がやっと解決した。まあ、そもそもベルクは長身で彫りが深くイケメンなんだろうけど、あのポーズはなんか今みても・・・他の作曲家とは全然違うアーティスティックでカッコイイものだと思っていた。このドーラ・カルムスに撮ってもらってたのか。まるでエゴン・シーレの絵のようなポージング。

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Albanberg1

また、エゴン・シーレの絵が昔はアートではなく「ポルノグラフィティ」として取引されていたということも(日本でいう春画にあたるのかな)なんだかびっくりした。まあ、なるほどそうなのかもしれないけど・・・。それを考えるとウィーンの眼科医がシーレの絵を集めまくって、今やウィーンのレオポルド美術館として立派にウィーンの代表的な美術館として君臨しているのは、先見の明があったんだなあと思った。映画ではシーレの絵とベルクの音楽を組み合わせるなど、なかなかセンスが感じられてよかった。観終わって、ずっしりと心に残る映画。語り役のイタリア人俳優さんもとてもかっこよく、日本語吹き替え版では柄本明さんの息子さんがナレーションをつとめている。解説者はいろいろな分野の専門家が登場し興味深い(とくにノーベル賞を受賞したという神経科学者エリック・カンデルは印象深い・・・なんかやたらと机をたたいて熱弁する)。あと、ピアニストのルドルフ・ブフビンダーが(別にピアノを弾くでもなく)コメンテーターの一人として登場して「ああ、知ってる!」って思った。

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