東京二期会/R・シュトラウス「サロメ」
【ハンブルク州立歌劇場との共同制作】
《サロメ》全1幕 日本語字幕付き原語(ドイツ語)上演
指揮=セバスティアン・ヴァイグレ
読売日本交響楽団
演出=ヴィリー・デッカー
ヘロデ=今尾滋
ヘロディアス=池田香織
サロメ=森谷真理
ヨカナーン=大沼徹
ナラボート=大槻孝志
ヘロディアスの小姓=杉山由紀
ユダヤ人1=大野光彦
ユダヤ人2=新海康仁
ユダヤ人3=高柳圭
ユダヤ人4=加茂下稔
ユダヤ人5=松井永太郎
ナザレ人1=勝村大城
ナザレ人2=市川浩平
兵士1=大川博
兵士2=湯澤直幹
カッパドキア人=岩田健志
全く行く予定なかったんだけど、急に思い立って当日にネットで券取って行ってきた。4階席8000円。二期会は手数料なしでコンビニ発券できるので良心的。怖い絵展で買ったサロメハンカチを持って鑑賞。人生初の生サロメ(舞台上演)。演奏会形式は昔、N響で聴いたことあり。
この日はちょうど大阪でも大フィルがサロメを上演するらしい、という情報を得た。そもそも尾高さんの予定がデュトワに交代。キャストはサロメがバイロイト歌手のメルベートと強力。他の役も東京二期会のドイツ物常連のメンバー、福井さん加納さん望月さん友清さんなどがキャスティング。東京二期会はこの方々なしでシュトラウスを上演するのか。
それでもなお、やや若手で組まれたこの日のキャストは強力。前に「ポッペアの戴冠」で素晴らしい歌唱を聴かせて頂いた森谷さんがサロメ。こないだ見事なイゾルデを聴かせて頂いた池田さんがヘロディアス。日本で数少ないジークフリート歌いの今尾さんと万全である。一番楽しみだったのが池田さんで、きっと強烈な歌唱を聞かせていただけると思ったが期待以上だった。自分が一番最初に(中学生のときに)聴いていたカラヤン盤のバルツァを彷彿とさせる・・・いやもっと強烈かも。
情けない役の今尾さんは、美声ながらサロメ親子に圧倒されまくりで情けない感がすごく出てたし、スケベハゲ親父な演出が多いこの役がやや若めな役作りで観やすかったなあと。というかこの演出は全体的にエロ演出少なめで安心する。
最初の方で死んじゃうナラボート役の大槻さんの美声も印象に残り。この役は美声のリリックテノールがキャスティングされるけど、いつも早く死ぬからもったいないね。
ヨハナーンの大沼さんは最初は某尊師みたいな感じもあったけど(日本人が演じるとどうしてもそうなっちゃうよね)、見慣れるとやっぱりいつものカッコイイ大沼さんで、歌唱も見事。サロメも惚れるよなあと。
しかしやはり一番ブラボー(ブラーヴァ)をもらってたのはサロメ役の森谷さん。普段は蝶々さんとかリリックな(でもまあ蝶々さんはドラマティックでもあるけど)役を歌ってると思われる歌手さんだが、声量もあり清楚な印象ながら地声もなんか怖いし、良かった。ただ、お綺麗な方なのに(演出によって)瀬戸内寂聴さんみたいなツルツルの頭だったのでなんか悲しかった。だからと言ってサロメってそもそもどんな髪型が正しいのかなとか思ったけど。なお、ザロメタンツは踊るというよりは階段の昇り降り運動。
演出は、ヴィリー・デッカー。見渡す限り白い階段、歌手たちの衣装もモノトーンで地味。首切りナーマンの王冠だけが何故か真っ赤。演出上はとくに変わった事はしてない印象。印象に残ったのはサロメがヨハナーンの上着を取っちゃって、ヨハナーンの首と上着を組み合わせて階段上に置いて、首だけでなくちゃんと死体が横たわっているように見えるところにサロメがキスするのでグロテスク要素が減って良かったなあと。まあ、首が出てくる時点で十分グロいんだけど。首に血がべっとり、とかもないので良かった。もっとスプラッタな演出がお好みの方は物足りないかもだけど。
そして最後の最後に、サロメが○○する(あと一公演あるので敢えて伏せ字)のは「おお」と思った。そうね、その方が衝撃は少ないかも。
ヴァイグレの指揮はこの曲にある官能があんまり出てない印象。ダイナミックさを前面に押し出した感じ。もっとねっとりドロドロ演奏がお好みな人は物足りないかも。現代的でこれはこれでいいのかな。
終わった後、謎の感動。緊張感で手をぎゅっと握り続け手汗をかいてた。
それにしても気になるのは大阪の演奏会形式のサロメ。相当良かったようでTwitterに興奮が溢れていたが、私の行った上野の上演と大阪の公演は時間が重なっているので、絶対に両方見聞き出来る人は(タイムマシンでもない限り)いないので優劣は付けられない。でも大阪のが聴けた人は羨ましいなって思った。でも上野も大満足。ただ、舞台が奥行きのある階段なので、後ろの方で歌うと声があまりよく聞こえなかったこと、私がケチったので4階の右端のほうの席だったので若干舞台が見切れるところがあったこと、など心残りもあった。ただ、オケはよく聞こえたし演奏するところがよく見えたので安い席もありかなと思った。
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これなーんだ。
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コメント
こんばんは。
一番下の写真は、どこかの庭園の、曲線を生かしたウッドデッキを上から撮影したものですか?・・・ではなく、「壁に耳あり、障子にメアリー( Mary )、ホール壁には反響板!」の諺(?)にあるアレでしょうかね?(装飾効果も兼ねているのでしょうが)。
詳しく知らないのですが、ヘロデ王については「スケベハゲ親父な演出」は多いのですか? わたくしはマルフィターノほか/シノーポリ指揮によるもののDVDを気に入ってしまい、鑑賞するとなればこればかりですが、そこでのヘロデは髪もちゃんとあり、サロメに対して酒や果物をすすめる場面でも、踊りの進展のときにも、それほどには好色的演技ではなかったような・・・例外的ステージ/演出なのでしょうかね。
投稿: クラシカルな某 | 2019年6月11日 (火曜日) 22時11分
>>クラシカルな某さん
そう、反響版ですね。今まで遠くからしか見たことなかったので、近くで見るとずいぶん大きいんだなあと思いました。遠くから見るとなんかボルダリングとか出来そうな感じなのに。
スケベハゲ親父については、たまたまよくヴィデオで見ていたベームの映画の印象が強かっただけですかねえ(一般的には違うのかも?)。
投稿: naoping | 2019年6月11日 (火曜日) 23時26分