東京春祭/グレの歌
シェーンベルク:「グレの歌」
指揮:大野和士
ヴァルデマール王(テノール):クリスティアン・フォイクト
トーヴェ(ソプラノ):エレーナ・パンクラトヴァ
農夫(バリトン):甲斐栄次郎
山鳩(メゾ・ソプラノ):藤村実穂子
道化師クラウス(テノール):アレクサンドル・クラヴェッツ
語り手(バス・バリトン):フランツ・グルントヘーバー
管弦楽:東京都交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:マティアス・ブラウアー
合唱指揮:宮松重紀
今年2グレ目である。3グレ・4グレ行けるかどうかわからん。しかし、いやはや素晴らしかった。途中色々と「アレ?」「ドヤ?」と思うところはあったけれど。
人生5グレ目。それでもなお、初グレの若杉/N響を超える事はできない。YouTubeに残る演奏を折に触れて見聞きするけれど、アレをいまだに超えられない。トゥ—ランガリラがいまだに初めて聴いたサロネン/N響を超える演奏がないように。
それにしても思うのが、日本人は(というか東京のクラヲタは)なんとグレの歌を聴ける機会の多いことか。演奏会やオペラに行くと必ずTwitterで感想を検索して読んでいるけれど、異常なほどみんなの耳が肥えているのがわかる。世界的な歌手・指揮者や合唱団を集めての演奏でも「イマイチ」「行かなかった人正解かも」みたいな感想が並ぶ。
どうして。
先月、カンブルランのグレも聴いた。ホールのせいもあったのかもしれないけど、1階席の前の方だったにも関わらずけっこう混沌としていた。しかも、テンポが遅くて私は付いていけないところもあった。しかし、全体的にはよくまとまっていたし(破綻をきたしていなかった)。
今回の大野さんの指揮は、わたし的には好きな感じだった。緩急がはっきりしていてとても心揺さぶられた。正直カンブルランは・・・若干全体にノロい感じがしたので。ただ、大野さんの指揮は時々びっくりするくらい早くなったりするので歌手や語り手がついていけなくなったりする場面もあり、スリリングではあった。
カンブルランから一か月しか経ってないのでどうして比べてしまうけど、平均的に言ったらどうなんだろう・・・同じくらいなのかな。カンブルランは平均的にすべてよかった。歌手も酷い人はいなかったし(とび抜けてうまい人がいるわけでなく、みなうまかった)。
大野さんの今回のは、歌手のデコボコが激しかった。ネットでもかなりぶっ叩かれてたけどワルデマール王のテノールはほとんど・・・聴こえない。私は2階席の結構舞台に近い席だったのだけど、それでもなお。他の歌手は全員ちゃんと聴こえてたし。オケの音がでっかかったところではなく普通の演奏なときでさえテノールはよく聴こえなかった。なにかの罰ゲームでテノールだけプラスチックの密閉容器に閉じ込められているのでは・・・と思ったほど。テノールの歌うところはオケは抑えめに演奏してたのにも関わらず、それでもあんまり聴こえない。カンブルランの時のロバート・ディーン・スミスがなんと有難かったことか。
トーヴェ役のソプラノはみんなが言ってるほどひどくはないと思う。ただ「少女」ではないなあ。私の好みからいうと立派過ぎる。こればっかりは私のひいきのレイチェル・ニコルズさんの方に軍配を挙げちゃう。
名歌手しかキャスティングされない山鳩は、今や世界最高の山鳩歌手として君臨している藤村さんなので、もう文句はない。はは~~~とひれ伏してしまう。ブランゲーネとヴァルトラウテ(黄昏の)に関しては彼女の右に出る歌手はいないだろう(他の役もだけど)。日本にもイギリスみたいに「サー」とか「デイム」とかの称号があったら藤村さんはデイムにふさわしいと私は思う。
道化師クラウスの人は、ひどく酔っぱらっている体で登場してびっくりしたが、歌唱としては普通かなと思った。
農夫の甲斐さんはとっても素晴らしかった。藤村さんには負けじと・・・頑張ってた感があった。そうよ、海外で活躍されてる日本人歌手は皆さん素晴らしい。
往年のヴォツェックとして名高いグルントヘーバーのキャスティングには驚いたが、80歳超えとのことで杖をついての登場。しかし私は前日たまたまYouTubeで老ハンス・ホッターの見事な語りの映像を見てしまったのでいかんちょっと比べてしまった。大野さんももうちょっとテンポを遅くしてあげればいいのになって思った。
最後の合唱はさすがに東京オペラシンガース。盛り上げるだけ盛り上げて、終わりよければ・・・という感じか。全体的に言うとホールのせいか分離がよかったので細かいところまでよく聴こえてよかった。都響の演奏も美しかった。最初のヴァイオリンソロは「アレレ?」って思ったけどあとのほうはとても奇麗だったし、トランペットの難しいソロも立派に吹けていてよかった(読響のときはおっかなびっくりだったので)。
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コメント
こんばんは。
ご無沙汰してます。日曜行ってきました。最前列通路席でした。とってくれるかみさんに感謝。かみさんが大野のファンなので、逆らえません。藤村の山鳩に、ひっくり返りました。いきなり、涙が出てしまいました、記憶にありません。2幕・3幕後、どうでもいいとも思ってましたが、カーテンコールに出てきてくれたのに、さすが、日本人と思いました。
投稿: Mie | 2019年4月16日 (火曜日) 20時25分
>>Mieさん
行かれたのですね!グレの歌の最前列はド迫力だったことでしょう。藤村さんは日本の宝ですね。スポーツ界で行ったらイチローですかね。
昨日(今日?)の夜中に読響シンフォニックライブでカンブルランの「グレの歌」ハイライトをやってましたが、そちらの山鳩さんも素晴らしかったです。クールな藤村さんとは違う魅力がありました。
投稿: naoping | 2019年4月18日 (木曜日) 22時40分