2019年3月31日 (日曜日)
2019年3月16日 (土曜日)
グレの歌 カンブルラン
メゾ・ソプラノ=クラウディア・マーンケ
テノール=ロバート・ディーン・スミス、ユルゲン・ザッヒャー
バリトン・語り=ディートリヒ・ヘンシェル
指揮=シルヴァン・カンブルラン
読売日本交響楽団
合唱=新国立劇場合唱団(合唱指揮=三澤 洋史)
給与計算真っただ中の中、むりやり業務を終わらせてフレックスで都心から遠く離れた会社から1時間以上かけてサントリーへ。なんと遠くなったのだろう。地方から都心に駆けつけるクラヲタの気持ちが少しわかる。帰りは20分くらいなんだけどね。
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ところで今年はグレの歌当たり年。大規模なオケと合唱・名歌手を必要とするためにそう滅多にやらないこの曲を、3つの日本のオケが取り上げる。もしかして「日本グレの歌選手権」でもあんのかな?と思うくらい歌手が凄いゴーカである。ほぼみな外人で、主役級はバイロイト他世界の歌劇場で歌う名歌手を揃えてきている(藤村さんは言うまでもなく「外国人級」枠である)。とくにノットが語り手に名歌手トーマス・アレンをぶっこんできたのはイギリス人の本気を感じる。
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さてカンブルラン。何年か前の読響「トリスタンとイゾルデ」の時のイゾルデとブランゲーネの役の歌手をキャスティング。テノールにはヘルデン・テナーで有名なロバート・ディーン・スミスと万全である。
とくに清楚にして声量もあるレイチェル・ニコルズのトーヴェを、私は一番楽しみにしてきた。相変わらずのキュートなショートヘア、ワンショルダーのシックでセクシーなドレスがお似合いですわレイチェル。紹介文を見ると近年はシュトラウスのエレクトラを歌ったらしい。えー、バッハの宗教曲のソリストもする人がエレクトラ・・・汚れ役もやるんだねえ。YouTubeを探すと予告編的なのが上がってたけど。
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肝心の演奏だが。カンブルランの演奏は全く意外なことにやや遅いテンポでゆったりと聴かせていた。前の「トリスタン」みたいな快速演奏を想像していたので全く驚いた。しかし、テンポが遅いからと言って全くだれることはない。
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ヴァルデマル王のDスミスは(私は一階席の左端に近い席だったので見えにくかったのだがどうも暗譜だったようだ)とにかく「王様感」が凄い。外見から言ってもう王様そのものである。そこに相手役の清楚な「少女トーヴェ」にニコルズはぴったり。そのままオペラの舞台でもよさそう。二人の歌唱はまったく重なることなく、紅白歌合戦のように世にも美しいメロディーを惜しげもなく交互に歌う。一個一個のメロディをオペラアリアにしてもいいくらいなのに、美メロの無駄遣い。
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さすがにオケの大音量でテノールは埋もれてしまったところもあったけど、後半は力いっぱいの美声で高音を響かせていた。凄い凄い。ニコルズもまるで周りは星空のように輝かしく、不思議な少女トーヴェを歌う。トーヴェはずっとこのまま、舞台に残って歌って欲しいと思ったけど前半しか出ないんだよね。
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さて、もう一人の主役山鳩。前のブランゲーネは主役を食う勢いの素晴らしいマンーケだったが今回の山鳩も素晴らしく。人間じゃなく鳩に何故こんなドラマティックな歌を?といつも思うが、深い表現を求められるので名歌手しか歌わない。(メゾソプラノの目標と思われる役だが、Twitterを漁ってたら清水カスミさんも聴きにいらしてたらしく「いつか歌ってみたい役」とのこと。彼女の山鳩聴きたいな。)
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第1・2部が終わり休憩。ワーグナーのオペラにも増しておっさん率高く、男性トイレの行列が見られた。
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第3部。いつものようにオケの後ろの座席に合唱団が現れたが、意外なくらい人数が少ない。「こんなもんだっけ?」と若干当惑。少数精鋭なのかしら。
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第3部は第1,2部とはちがい、後期ロマン派のねっとりと爛熟の世界から、のちのシェーンベルクの作品に近い無調なエキセントリックな感じになっていく。最初に大部分作曲したあと10年くらいしてあとのほうをオーケストレーションしたもんで(すでに無調の人になってた)、前半と後半の雰囲気が違う。それでふと思い出したが、ずいぶん昔にストラヴィンスキーの「夜鳴きうぐいす」というオペラを聴きに行ったときも同様な事情があり、もう前半と後半がまるで違う作曲家が作ったみたいになっててそれはもう凄い違和感だったのを覚えている。
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私の頭の中では、前半は昨年観たエドアルド・ムンク展の数々の絵画で、後半はこないだネットで観た映画「ティム・バートンのコープスブライド」のストップモーションアニメの白黒の世界が広がっていた。骸骨の家来とともに毎晩荒々しい狩りを続ける王様、怯えて大声を上げる農夫たち、わけのわからない歌詞の滑稽な歌を歌う道化師(中学生のころから「パレ・グローブとエーリク・パーって誰だろう。今は子供だからわかんないけど、大人になったらわかるんだろう」と思って人生を送ってきたけどいまだにわからん)、そして最後はシェーンベルクお得意のシュプレッヒシュティンメの感動的な語り・・・ああ、なんという素敵な世界。シェーンベルクは絵がヘタクソだったから奴に映像化はムリだけど、ティム・バートンに映像化して欲しいな。
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さすがに最後の合唱は新国立だけあって素晴らしかったが、もうちょっと人がいても良かったかな感。フライング・ブラボーもなく、よいお客さんに恵まれた。TVカメラが入り録音もしてたのでもしかしてアッシジみたいにCD化されるのかな。されたら欲しいな、レイチェルさんの歌をまた聴きたい。もうすぐ読響を離れるカンブルランへの感謝の拍手はなかなか終わらず、私も合唱団がはける最後まで拍手をした。まあ、曲に慣れているせいか初アッシジの時みたいな衝撃はなかったけれど、素晴らしい音楽を体いっぱいに浴びてとてもいい気分だった。

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2019年3月 4日 (月曜日)
映画「グリーンブック」
昨日休日出勤して倉庫作業(ダンボール箱をえんえんと組み立てていた)したので、本日は代休のはずが午前中に急な打合せが入り半休になってしまった。そのまま帰るのもなんなので映画を観て帰ることに。月曜日はauマンデイなのでauビデオパスユーザーの人は(tohoシネマだけだけど)1100円で映画が見られるのよ。
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てっきり「翔んで埼玉」を観る気満々だったのだけど、私のテリトリーの日比谷tohoでも日本橋tohoでも「埼玉」はやってない模様。なにい?日比谷だの日本橋だの東京のお上品タウンでは埼玉の映画を上演しちゃいけないってわけ?
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しょうがないので、こないだアカデミー賞作品賞と助演男優賞と脚本賞を受賞した「グリーンブック」を観ることに。平日月曜日の昼間・しかもあいにくの大雨なのに、さすがにアカデミー賞効果。前のほうは空いてたけど、意外と他は埋まっていた。地味な映画なのにね~。
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まあ、まだロードショーになってそんなに経ってないんでネタバレはしないけれど、観終わっての正直な感想は「ああ、いい映画だった。でもそれ以上のものはない。」という感じ。おそらく誰が観ても「よかった」と思うだろうし、皆さんにお勧めする。けれど、私はちょっと一ひねりした映画を好む傾向にあるので、この映画はそんなに刺さらなかった。アカデミー賞作品賞とったのにあんまり評判よくなかった「シェイプ・オブ・ウォーター」のほうが私は好きだ。
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最後の最後にハッピーエンドなのがまあ・・・良かったんだと思うけど、私は「ニガー!ニガー!お前なんかこの部屋から出ていけ!」みたいな終わり方を一瞬想像してしまったので、普通にみんなで和気あいあいとして終わったのが・・・まあ、ホッとはしたものの、やはり予定調和的やなあと思ってしまったのだ。どうしたいのだ、私。
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最後は場内からパラパラと拍手が起こり、まあみんな良かったなあみたいな感じで帰ったみたい。私はやっぱり「翔んで埼玉」が観たかったなあと思った。それと無性にフライドチキンが食べたくなり、買って帰った。ケンタッキーのじゃなくてスーパーのだけど。
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なお、この黒人ピアニストさんはジャズを弾いてはいるものの、そもそもはクラシックのピアニストであり(黒人なのでジャズ弾けみたいな事務所の意向)、ジャズだけでなくクラシカルな曲も作っており、映画でも彼の作品「地獄のオルフェウス」の録音のジャケット写真の紹介が最後のほうにある(ストラヴィンスキーが評価?とかなんとか。忘れちゃったけど)。有難いことに音源はYouTubeにUPされているのでご興味がある方はお聴き下さい。最初の曲しか貼らないけど。印象派風のなかなかいい曲よ。
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