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2019年2月 9日 (土曜日)

新国立劇場「タンホイザー」

Tanheuser1ワーグナー:歌劇「タンホイザー」全曲
指揮:アッシャー・フィッシュ
演出:ハンス=ペーター・レーマン
美術・衣裳:オラフ・ツォンベック
照明:立田雄士
振付:メメット・バルカン
領主ヘルマン:妻屋秀和
タンホイザー:トルステン・ケール
ヴォルフラム:ローマン・トレーケル
ヴァルター:鈴木 准
ビーテロルフ:萩原 潤
ハインリヒ:与儀 巧
ラインマル:大塚博章
エリーザベト:リエネ・キンチャ
ヴェーヌス:アレクサンドラ・ペーターザマー
牧童:吉原圭子
合唱:新国立劇場合唱団
バレエ:新国立劇場バレエ団
管弦楽:東京交響楽団

(千秋楽)
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最終日にやっと行ってきた。実はTwitter等であんまり評判よくないのを見て、奮発してA席買ったのを若干後悔していたが、行ってきてよかった。とても感動した。
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新国立で「タンホイザー」観るの初めて。タンホイザーはあまり得意でないので人生たったの3回目である。前回は(すっごい前)皇太子さまと雅子様がご覧になった日だった。アレは演出エグかったなあ。今回の公演は皇太子さまは水曜日に行かれたようで、皇太子で最後のオペラにお会いできなくて残念である・・・って別に知り合いではないんだけど。
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今回の公演で(わたくし的に)特筆すべきだったのは、序曲がパリ版であることである(解説によるとドレスデン版ウイーン版との折衷版ということだが、よくわからん)。子供の時に(お年玉で)初めて買ったワーグナーのレコードが、カラヤン/ベルリン・フィルのワーグナー管弦楽曲集でありまして、それに入ってたタンホイザー序曲がパリ版だった。中間にカスタネットの「カッカラカッカラ」いうのが入ってて、最後には合唱が入るとても素敵な演奏であった。それで育ってきたから演奏会でタンホイザー序曲が演奏されても決してパリ版ではないので、いまいち物足りなく感じていた。
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今回は新国立バレエ団がおどるヤツで、カスタネットのカッカラッカッカラが聴けて本当によかった。合唱も新国立の合唱団だから美しき事この上なく。バレエもなんか映画の「アバター」を思い出すようなコスチュームだったけど、過剰にエロくなくてよかった。
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さて(私が勝手に)期待していた指揮者のアッシャー・フィッシュだが。残念ながら今回は日本のワグネリアン達には受け入れられなかったようだ。決して悪い演奏ではなかったが、いかんせん日本の聴衆は前音楽監督の熱い演奏に慣れ過ぎており・・・私もつい先日新響の「トリスタン」を聴いてしまったものだから・・・演目は違うものの、今回はやっぱり少し物足りなく感じた。恐らく「ヨーロッパ旅行に行ってたまたまスケジュールが合ってたまたま見たふだんのタンホイザー」くらいな指揮レベルだったのかなあと。
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歌手は総じて良かったように思う。タイトルロール(という割には劇中ではタンホイザーとは呼ばれずハインリッヒって一体お前誰なんだ)のケールは、前に観た「死の都」と同じように、最初の方の公演は悲惨ながらも最後は結構調子よくなるという感じであった。新国立でのケールは最終日とるのがコツよん。
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エロ担当と清純担当のそれぞれの女声歌手さんは、どちらも同じように良かった。どっちが優れているとかそういうのはなく、それぞれ。どちらも役に合った声質かと。
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男声の主要歌手では、やはり妻屋さんはもっぱら安定の歌唱。というか妻屋さんが調子悪いの見たことない。我々新国立民は普通に色んな(人間役でも巨人役でもマッドドクター役でも)妻屋さんを見聞きしているけど、これって凄いことじゃないの?
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ヴォルフラムのローマン・トレーケルは普段はスキンヘッドなのに舞台でカツラ被ると途端にカッコイイパターン。「タンホイザー」を観るたびに思う、「エリザベートはどうしてあんなタンホイザーなんか風俗野郎に夢中なの、ヴォルフラムのほうが絶対いい人なのに、バカじゃないの」って思うけど、今日も思った。「夕星の歌」良かった、泣けた。というかそもそも「夕星の歌」はとってもいい曲だ。
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その他、大変素晴らしかったのは牧童の吉原さん。朝の光に吸い込まれそうな美声で最初からホロリと泣きそうであった。オーボエも(いやこれは奏者が吹いてるんだけど)素晴らしかった。
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演出は、普通に受け入れられやすい演出で、よかった。帰る道々ワーグナーにあんまり詳しくなさそうなマダムたちも「なんか今まで一番良かった」って話すのを聞いたので、わかりやすかったんだと思う。ただ、ヴェーヌスがいつも乗って出てくる「ヴェーヌスベルク号」が最後にゆっくりと後方に引っ込んでいくところがなんかじわじわ来て笑ってしまった。
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しかしまあ、一番良かったのは言うまでもなく新国立劇場合唱団の皆様。もう世界に誇れるレベルかと。トンでもなく昔に聴いたバラッチュ率いるバイロイト祝祭合唱団と張れるよきっと。
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ただ、本日唯一残念だったのが・・・聴衆である我々がいまいち体調がすぐれない人が多かったことで・・・雪が降るような極寒の中やってきて、劇場内は暖房と満席ですっごく暑くて、私は上はブラウス一枚になって観劇してたくらい。いつもよりすごく咳払いが多くて私の前にいたおじさんがブチ切れたりとか、散々な日であった。まあ、体調は急に悪くなったりするし仕方がないんだけどね。

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コメント

コメント連投失礼します。わたしも行ってきました。
>「ヨーロッパ旅行に行ってたまたまスケジュールが合ってたまたま見たふだんのタンホイザー」くらいな指揮レベル。
すべてを言い当てている素晴らしい一言!
感服いたしました。さすがです🙇

新国立劇場もこなれてきたんですね、たぶん😁😅

投稿: | 2019年2月 9日 (土曜日) 22時41分

>>Hiroyuki.shinada 様(たぶん)

あ、行かれてたのですね。新国立もだんだんと欧米の歌劇場みたいにレパートリー化してしまっているのですかね。
なんかそれもさみしい気がします。大枚払っているのだもの、一世一代の名演が聴きたいです。フィッシュも本当はできる子だと思うんですけど・・・。

投稿: naoping | 2019年2月10日 (日曜日) 22時23分

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