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2016年1月15日 (金曜日)

ハーディング/戦争レクイエム 新日本フィル

ブリテン:戦争レクイエム op.66
指揮:ダニエル・ハーディング
ソプラノ:アルビナ・シャギムラトヴァ
テノール:イアン・ボストリッジ
バリトン:アウドゥン・イヴェルセン
合唱:栗友会合唱団
合唱指揮:栗山文昭
児童合唱:東京少年少女合唱隊
児童合唱指揮:長谷川久恵
(1月15日 すみだトリフォニーホール)
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仕事にどっぷりでロマンスが不足し過ぎてて、かなり貧乏しすぎたみたいだったので、今年初のすみとりへ。あけましておめでとうダニエル、そしてボストリッジ博士。二人が出演してしかもブリテンなんて、何はなくとも聴きに行かなきゃ。
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この曲をナマで聴くのは「ひい、ふう、みい・・・」と数えてみたら5回目。ブログ始めてからは4回目である。何て多いんだ! 実は最初に行った演奏会の記憶があんまりないんだけど、おそらくイギリス人指揮者でこの曲ナマで聴くの初めてだ。
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目の前には相変わらずひょろっと背の高いボストリッジと、意外と小さい印象のハーディング(すごい身長差だ)。この二人が演奏してると、何だかブリテンとピアーズが生き返って舞台に立ってくれてるみたい。いや、ダニエルとボストリッジはそんな仲ではないでしょうけど。
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そしてまた、演奏が・・・凄いブリテン感なのである。今までナマで聴いてた演奏はそれぞれ素晴らしく、どれも感動はしたものの、「何か違う」感がいつもしてた。ブリテンの曲に聴かれる、ちょっと斜に構えてポケットに左手をつっこんだまま右手で指揮しているような感じ(そんな指揮をブリテンはしてたわけじゃないけど)、あと、耳の後ろを突然羽で触られたようなぞわぞわ感・・・・(←これを理解する人はいないかも)みたいなものが、今までの演奏にはなかった。ブリテンの曲に聴かれるあの独特の「ぱぱーんぱーん」という鋭いトランペットの音が、そしてティンパニーが、ブリテン以外の演奏で初めてブリテンっぽさを感じた。今まで聴いてたナマ演奏はただ「美しい」または「力強い」、「戦争反対」等なアプローチだけだった気が。
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マニアックで、わかる人にしかわかんないんだけど、目の前に浮かぶのは昔映画で見た「夜行郵便列車」の映像だった。ブリテンが映像に音楽をつけたやつね。
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やはり、イギリス人はブリテンの音楽が血となり肉となっているんだろうなあと。それはボストリッジも同じで、もう初演者ピアーズを超えて、詩人オーウェンが降りてきちゃって歌ってる感がある。ほんとに凄い歌手。
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他の歌手、バリトンの人もソプラノの人もいい声だったが、もうちょっとドイツ感、ロシア感が欲しかったところ(バリトンの人ノルウェー人だったけどのう)。
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そして何よりいつも素晴らしい栗友会の合唱。そして東京少年少女合唱隊。これ、アルミンクの時と同じなんだけど、全然アプローチが違う。特に少年合唱がね。アルミンクの時は天使が舞い降りてくる感じだったんだけど、今日のは何かあの世から響いてくる声。少し身震いがした。少年合唱は私の席(一階席)からは全く見えなかったけれど、3階席の後ろのほうで歌ってたみたいです。
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栗友会の素晴らしさはいつも通りなんだけど、昨年聴いた「復活」の時も思ったのだけど、ハーディングの合唱団の使い方は神じゃないかなあ。そもそも凄い実力のある合唱団なのだけど、表現の幅が素晴らしい・・・怒り、悲しみ、そして最後の天国に昇って行くような、荒野に花が咲き乱れるような・・・ホントに信じられないような表現力で、最初から最後まで鳥肌が立ちっぱなしだった。ハーディングの手腕もあるんだろうな。
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そして最後は、曲が終わってからも暫くハーディングは手を下さず、観客もそれに応えて沈黙を守った。かなり長い沈黙だったので、正直お腹が鳴りそうでかなり苦しかったが・・・耐えた。
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ブラボー、大喝采。私の所から全然見えなかった少年合唱団がカーテンコール?ででてきたけど、まさにブリテンの教会オペラの合唱団みたいな白いコスチュームで何か感心した。しかし3階席の人しか見えないんじゃないのかしら。もったいないね。
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素晴らしかった合唱団に感謝と敬意を表し、何人かの観客は合唱団がはけるまで拍手を送り続けた。私も最後まで拍手をしました。本当に素晴らしかった。明日はもっと慣れていい演奏になるでしょう。
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そもそも。開演前のロビーコンサートを目当てで行ったのだが。ボウエンの幻想的五重奏曲は初めて聴いたけど、本当にすごくいい曲だった。イギリスらしさもあり、少し現代の風味もあり。なんかキュンキュンした。バスクラと弦楽器の曲でした。プロの人はやっぱりうまい。

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コメント

僕は2日目の方に行きました。
5回目の貴女は異なって、初ウォー・レクイエム。正直言って、CDでは(ラトル&CBSO)でも、DVDで焼いたネルソンスの演奏でも最後まで起きていなかったものなので、naopingさんが感じられた「かつてない」演奏の凄さは分かりません。
全曲演奏中、意識があったのも半分程度。大体、フォルティッシモの箇所でも、ほとんど夢の中。「ディエス・イレ」なぞ、ヴェルディやモーツァルトの音楽と比べると、申し訳ないが、余りにちゃっちい音楽に興味半減。すぐに眠気に襲われて、心はこの世にあらず状態でした。
ところがピアニッシモでリリカルな箇所になると、逆に現世に戻されるというブリテンのレクイエムの不可思議さ・・・。ですから、「リベラ・メ」は本当に感動させられ、背筋が薄ら寒くなりました。
ボストリッジとシャギムラトヴァ(初めてかと思ったら、去年9月、「ドン・ジョヴァンニ」の堅物女ドンナ・アンナで観聴きしてました)、そして東京少年少女合唱隊の歌っているところ辺り、余りの美しさ-それも、恐ろしく絶望的な-は、深く心に刻まれるものだったと思います。
ブリテンの音楽、初心者には決してとっつきやすい音楽とは思いません。新国の「ピーター・グライムズ」の時もそう。けれど、聴き終わった後の心に刻まれる深く重たい腫物のようなものは共通していると感じさせられました。
ハーディングと新日フィルの演奏は、後7月の1プログラムが残っていますが、昨年7月のマーラー、今回のブリテンと、合唱がついた音楽を指揮したときのダニエル、半端ないですね。

投稿: IANIS | 2016年1月17日 (日曜日) 11時04分

>>IANISさん

土曜に行かれたのですね。土曜日のほうが2回目なのでこなれた演奏だったのではないかと思います。

ブリテンは・・・戦争レクイエムもそうだしオペラもそうなんですけど、ヴェルディやモーツァルトの同様のジャンルのものと違ってちょっと敷居が高いというか、なかなか私でも「楽しむ」感じではないのですね。何度も聴きに行っているのは「この曲大好き!」というよりは「今度こそこの曲を征服してやる!」って思うからかも。(←変ですね)

戦争レクイエム、私が行った5回のうち3回はすみだトリフォニーなんですけど、いつも字幕スーパーなしだった気がします(この曲だけ何でかしら)。初めて聴く人もいるはずなので、不親切だと思います。神奈フィルの時は字幕スーパーどころか映像作家に頼んで映像付でしたから親切でした(それでもあちこちからイビキが聞こえ)。すみだも字幕スーパー付けてほしいなって思います。

この調子で千人も行きたいなあ、とは思っているのだけど・・・券取れるのか心配です。

投稿: naoping | 2016年1月17日 (日曜日) 21時28分

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