飯守さんの「ラインの黄金」 新国立劇場

指揮:飯守泰次郎 演出:ゲッツ・フリードリヒ
出演:黒田 博/片寄純也/ステファン・グールド/妻屋秀和/クリスティアン・ヒュープナー/トーマス・ガゼリ/アンドレアス・コンラッド/シモーネ・シュレーダー/安藤赴美子/クリスタ・マイヤー/増田のり子/池田香織/清水華澄
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
(新国立劇場・オペラパレス)
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<あらすじ>
トンネルないやつ。
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千秋楽。この上演はさんざネットで語られて、「ぜんぜん楽しくないかも」とか「今さらラインゴールドもねえよなあ」とかちょっと重い気分で臨んだが、やっぱりワーグナー。とっても面白かった。残念な席ではあったが。
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ダナエの時同様午前中は会社で仕事をして(社畜なので)、午後新国立へ。まあまあ会社から近いのでそんな大したことじゃないけれど、やっぱり少し疲れる。なんだかもう・・・この仕事ぶん投げられ加減が非常にミーメだわ。女ミーメって呼んで。
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いつものように、オペラシティのサブウェイのサンドイッチを食べたが、一切水分は取らず。まあ、せいぜい3時間弱だからおトイレ行きたくなっても大人なんだから我慢できるだろうけど、念には念を入れて。
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それでも、やはり耐えかねて途中で外に出られる観客の方も。神様ダンス直前まで頑張って、もうちょっとなのに出てっちゃって・・・惜しい方もおられた。
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これが面白くない・・・という人は多分、「トーキョーリング」しか見てない人なんじゃないかな。トーキョーリングはあまりにも・・・あまりにも面白すぎた。異常だとおもう。
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ゲッツ・フリードリッヒのトンネルリング、まだベルリン・ドイツ・オペラでは上演されてるっつーのは驚く。普通なことなのか?日本にもってきてくれたときは舞台の奥行きがなくてトンネルが二股に分かれてしまった。もし新国立の舞台でやったらできたのかな。知りたい。
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トーキョーリングはあまりにセットが沢山ありすぎて上演は大変そうな感じだが、今回のフリードリッヒのは(トンネルないし)わりと簡素は感じである。お金かけてない感。
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演奏は指揮者登場の拍手もなく静かに始まる。トーキョーリングもそうだったようだ(自分の過去のブログを見て思った)。ラインのお水を表す蛍光灯の細長い奴みたいなのが上下している。舞台はつるつると滑りそうな傾斜。さっきツィッターを見たらラインの乙女の一人がこれで怪我しちゃったらしかった。ちゃんと普通に演技して歌ってらしたので大したことなかったのかな。良かった。
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ラインの乙女、飯守ワーグナーにはよく出演の3人が熱演。みんな素敵だった。でも清水さんが日本人離れしたボリューミーな声でとくによかった。彼女うまいよね。
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ラインの乙女を見ると、ちょっと前に見た「ダナエの愛」のポルックスの4人の姪たちを思い出す。「ダナエ」は一人多いけど、実質的には3人しか歌ってないそうである。謎だが。
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というか、「ダナエの愛」はほとんどリングのアンサーオペラであると思ってしまう。まあ深作さんの演出のせいかもしれないが、色々と気付く点が多く。両方見た方は何倍も楽しめたんじゃないかな。今日も「避けよヴォータン、避けよ!」というエルダの歌も、「選べよ、ダナエ、選べ」というユピテルとミダスの歌を思い出したし。
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ワーグナーが「ラインの黄金」で描いた、「愛をあきらめた者が黄金を得る」みたいなことの、真逆でしょダナエは。黄金より愛を選んじゃうんだよね。
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今回、正直いうと演出はそんなにたいしたことしてない気がする。「いつ見ても、これはいつものラインゴールド」感が強くて、誤解を承知で言うと、「吉本新喜劇みたい」と思った。まああたしは関西人ではないのであんまりよくわからんのだけど、たぶんいつものセットでいつものメンバーでいつものギャグで(パチパチパーンチ!みたいな)・・・みたいな感じがそう思ったのかもしれない。よいマンネリ感。既視感?
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そう思うと、二人の巨人は「でっかい漫才師」にしか見えなくて(「阪神・巨人」じゃなくて、「巨人・巨人」なの)。例の「ダンダンダーンダンダダーン」という巨人が出てくるライトモティーフでは二人で音楽に合わせて足踏みして見せるけれど、ファゾルトはもう終わって歌い始めているのにファフナーはまだ足踏みをしていてファゾルトが「やめんか~い」みたいな身ぶりをしていて(二回くらいやる)、それは可愛かったなあ。二回目に出てきた時にラッパーみたいな後ろ向きのキャップの被り方の巨人・巨人に萌えた。YOーYOーみたいな。
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あと、やはり一番目立ってたのはステファン・グールドのローゲ。でもあんなに恰幅のいいローゲって初めて見たので妙に違和感が。逆に「あ、この声でジークムントとジークフリートが聴けるんだ~~~」という予告編的なワクワク感。
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あと、歌手ではバイロイトのスタメンっつーアルトのおねいさん方お二人は意外と外見に対して声は軽量級な印象。とくにフリッカはラブリーでさえあった(声だけ)。
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アルベリヒとミーメはびっくりするくらいアルベリヒとミーメだった。外見も声も。
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その他気付き案件。
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・フリードリッヒ演出ではドンナーはいっつもボクサーなのか。
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・アルベリヒの化けた大蛇は、緑色のちょっと人相の悪いジバニャンといった感じでしょぼかった。
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・カエルさんはリアルだった。
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・小人たちのキャーキャーはいつもより長めな気がした。
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・巨人さんたちが一生懸命建てた城がしょぼい。今話題の欠陥マンションじゃないだろうね。あんなに黄金を払ったのに!!
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という感じで書きたいことは沢山あるんだけど、とにかくこの上演を持って「つまんない」って言っちゃう日本人ってどんだけ目と耳が肥えてんの?って思った。上演終って歩いてて「つまんなかったね~~」と話しあうおっさんたちに遭遇しちゃって・・・どう思う?萎えるわあ。
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オケは。ダナエとカッシェイ組にいい演奏者取られて、微妙なラインゴールド、という噂をツイッターで見たけど、そんなでもなく。普通に東フィルさんでした。飯守さん、神々の黄昏までホントにお元気でいて欲しい。

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コメント
ワーグナーのオペラの音楽を堪能できた舞台でした。ウォーナー演出だと、舞台で一杯起こっていること、ステージに山ほど盛られた舞台美術を、頭の中でドラマとどういう関係があるのか整理するのに手間取った瞬間があって、大変だった記憶があります。
飯守御大指揮する深めのピットから出てきた音の壮大な響きは立派でしたね。「ダナエ」組が戻ってきたのでしょうか(「ダナエ」が「リング」のアンサー・オペラだという貴女の指摘、私も賛成です)?
男三人衆だけでドラマの中心を為している-それがはっきりしたグールド=ラジライネン=ガゼリは良かったなぁ。グールドのジークムントとジークフリート、来年、再来年が楽しみです。ラジライネン、演出のせいかも知れませんが「トーキョー・リング」の時のショぼさがなくって、彫りが深くなっていたように思います。「ワルキューレ」第三幕の最終場面、イケそうです。
シモーネ・シュローダーのフリッカ、体形はちょっぴりメタボですが、声は可愛くて、ツィトコーワより声がとおっていたよう。
演出は「並み」かもしれないけれど、音楽に集中でき、ワーグナーの音楽対するリスペクトを感じ取れます。普通に「リング」の音楽を楽しむんだったら、これで正解なのでしょう。いつも僕は3階で観てますので、先のブログで書かれていたnaopingさんの1階席の、視界を遮る前席の不満がないのは、“いいこと”なのですね。音はちょっと遠いですが。
投稿: IANIS | 2015年10月18日 (日曜日) 00時01分
>>IANISさん
そう、最初は「おお、ルードヴィヒ二世のような席じゃ」と思ってたのだけど、前の席のびっくり座高のバレンボイム頭のおっちゃんが座ってきた日にゃねえ・・・。もう、席は時の運ですな。意外と後ろの方がいいかなって思うんですけど、安い席はみんな狙ってるのでなかなか手に入らないです。
キース・ウォーナーとか、こないだの深作ダナエもそうなんですけど、面白すぎる演出も(まあとても楽しいんですけど)次に他の演出見た時にものたりなくなっちゃうなあという危惧はあります。シェロー=ブーレーズのとか当時は画期的だったようだけど今観ると普通ですし。
今回の演出は(飯守さんリスペクトもあったと思うけど)飯守さんの演奏にぴったり合ってたんじゃないかな。ウォーナーの時はメルクルが良かったと思うんでメルクルってそういう意欲的演出と合ってるのかも?と思います。
フリッカ、予想してた声と違ってちょっとびっくりしました。カワイイですよね声。
投稿: naoping | 2015年10月18日 (日曜日) 10時15分