新国立劇場/アラベッラ (2014)
R・シュトラウス:歌劇「アラベッラ」
【指揮】ベルトラン・ド・ビリー
【演出・美術・照明】フィリップ・アルロー
【衣装】森 英恵
【舞台監督】大澤 裕
【合唱指揮】三澤 洋史
【ヴァルトナー伯爵】妻屋 秀和
【アデライデ】竹本 節子
【アラベッラ】アンナ・ガブラー
【ズデンカ】アニヤ=ニーナ・バーマン
【マンドリカ】ヴォルフガング・コッホ
【マッテオ】スティーヴ・ダヴィスリム
【エレメル伯爵】望月 哲也
【ドミニク伯爵】萩原 潤
【ラモラル伯爵】大久保 光哉
【フィアッカミッリ】安井 陽子
【カルタ占い】与田 朝子
【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
(新国立劇場・オペラパレス)
<あらすじ>
ギャンブル好きの父親のせいで破産の危機にある一家を、美人の長女が玉の輿結婚によって救う。
尾高芸術監督が2010年に就任して最初に選んだオペラ「アラベッラ」を、最後のシーズンに是非取り上げたい、ということで再演。私はその最初の「アラベラ」の初日に行ったわけなんだけどね。結局尾高さんが新国立でオペラ振ったのってなかったのかな。新国立のコンサート(英国もの)は行ったけど。あれはよかったなあ。
尾高さんにはブリテンとか(たとえば「真夏の夜の夢」とか)振ってもらいたかったけどねえ。
このラブリーなオペラ「アラベッラ」は、私はシュトラウスの中では3番目くらいに好きなオペラ。1番はもちろん「影のない女」だし、2番目は「ナクソス」かな。でも、「カプリッチョ」も好きだし、1回も生で観たことない「ダナエの愛」だって大好きだな。「平和の日」もいいしね。このヘンは日によって変わるかな。
(えー?「サロメ」はどうした、そして肝心の「バラ騎士」はどうしたって言われても。)
そんで、4年ぶり?くらいのアラベラ。キャストは外人キャストは総変わりしているものの、安定のヴァルトナー夫妻(もはや、私の中では妻屋さんと竹本さん以外にこの役は考えられないほどになってしまった)とエレメルとドミニクと占い師の人は同じである。
演出とか美術とかは変わってないはずなので(ちょっとは変わってんのかもしれないけどそんなに覚えてないもんねえ)、演奏と歌唱について(と、雑感)のみ。
まずタイトルロール。当然、前の人と比べちゃうわけだが(遠い昔に生まれて初めて観たアラベラはポップだったので、それは別格として)、世間一般の評判として全回のカウネのほうが良かったというのが多い気がする(ネットで見たところ)。しかし、私はカウネは発声があんまり好きじゃないので(ワーグナーはよかったんだけどね)、今回のガブラーちゃんも遜色ないと思う。
ガブラーちゃんは昨年「東京の春」でエファを聴いたんで聴くのは初めてではない。声はやや不安定なとこもあるけど、とりあえず普通に綺麗な人だしスタイルもいいので、アラベラ的には及第点かと。(実は、「予習」と称してようつべで映像を海外の歌劇場のでちょっと見たんだけど、カリタ・マッティラのアラベラはいかにも苦しいねえ、声も容姿も。それと比べたら全然いいと思った。)
マンドリカのコッホは大変立派な声だった。どうもバイロイトでヴォータンを歌った人だったということで、その情報を仕入れてからはもうヴォータンにしか聞こえない。外見は・・・前回のヨハネス・マイヤーとさほど変わらない。
まあ、あのハンス・ホッターだって若い頃はマンドリカは歌ってたからね。いいんでねえの。
この曲は「アラベラ」との題名ではあるが、実際には主役は妹のズデンカである。大体においてアラベラ役よりもズデンカ役のほうが(観客には)魅力的に映ってしまう。しかたないのだが。
そのズデンカ役のバーマン(パーマンではない)はホントに魅力的な歌手である。何より声も容姿も可愛い。ズボン役(そもそも女性の役なんだけど)がとても似合っているし、男の子としてのしぐさもとってもうまい。「なんかに似てるなあ」って思って考えたんだけど、若い頃のマイケル・J・フォックスみたいだった(いや、2階席から見ての印象だけどね)。
で、マッテオに恋する女の子としての演技も可愛い。この曲の公演が成功するか否かは半分くらいはズデンカにかかっている気もする。
で。
今回私が最もキュンキュンした場面は、第3幕でズデンカが「パパー!ママー!」と出てきて、事の顛末をみんなに明かすところで、愛するマッテオに。
「私、本当は女の子なの」
って言ったとこ。あのカワイイ顔で涙目で言われたら、女のあたしだってキュンキュンしちゃう。しかも、これって普通日常ではありえないセリフだなあと。もしも私が生まれ変わってまた女の子になったとしても、絶対にこんなセリフは言う機会はないだろう。少女マンガでしか見たことないセリフだ。例えばボーイッシュな女の子が主人公(僕っ子?)のマンガとか。古くは「リボンの騎士」とか「ベルサイユのばら」とか。
で、ふと思いだしたのは。
一昨日、私が会社の男の人たちと飲んでいて聞いた話。とある社員がシンガポールに出張に行って、ちょっとハメをはずしたくて、ストリートガールを宿泊先に連れてかえってしまったのだそうで。でも、コトが進んで肝心の時に。ベッドの上でストリートガールが、
「私、本当は男の子なの」
まあ、よくある話だけども(ねーよ)。
このズデンカの愛、けなげさにいつも泣かされてしまう。そして姉妹愛の独特さ。これってやっぱり姉妹のいる女の人にしかわかんない感情なんじゃないかなあ。
そんで姉妹ものとして(ふと)思い出すのが、何と言っても今話題の「アナと雪の女王」だねえ。
残念ながら私はまだこの映画見てないの。でも、これって「長女号泣映画」っていうじゃない(マンガ家の久保ミツロウさん談)。映画見たらまたそいうのがわかるかもしれない(私は次女だけどね)。もしかして、このオペラもアナ雪にちょっと参考にされてるのかも?(え、そんなクラヲタはディズニーにはいませんって?)
そういえば。
このオペラの最後の最後、アラベッラはこんなふうに歌うよ。
「私は別のものになることはできません。
どうか私のありのままを受けてください。」
・・・
他、歌手の方々の中ではフィアカーミリの安井さんがチャーミングな美声で印象に残った。あと、歌手のことではないけど、マッテオの役のクズっぷりはいつもながら凄い(シュトラウスはテノール歌手嫌いで有名だからね)。なんであんな男にズデンカは身も心も尽くすのか・・・。
最後に、指揮者について。
どうも前のシルマーの指揮が普通に好演だったのでそれが印象に残っている。ド・ビリーも褒めている人は多いものの、私はテンポを早くしてほしいところ(例えは、第一幕でマンドリカがどうやってお金を作ってウィーンまで飛んできたか、と語るシーンとか)がどうもゆるく感じるので、なんか釈然としない。まあよいところもあったのだが。オケは先週のカヴァパリ同様よかったのですが。
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