びわ湖ホール/「死の都」(第一日目)
コルンゴルト:歌劇『死の都』
パウル 鈴木 准
マリー/マリエッタ 砂川涼子
フランク 小森輝彦
ブリギッタ 加納悦子
ユリエッテ 九嶋 香奈枝
ルシェンヌ 森 季子
ガストン 岡田尚之
フリッツ 迎 肇聡
ヴィクトリン 高野二郎
アルベルト伯爵 与儀 巧
指揮:沼尻竜典
演出:栗山昌良
管弦楽:京都市交響楽団
びわ湖ホール声楽アンサンブル
大津児童合唱団
(3月8日 びわ湖ホール)
過去記事:びわ湖ホール「トリスタンとイゾルデ」(2010年)
隅田川+カーリュー・リヴァー(藝大奏楽堂)
行ってきました、びわ湖。京都に一泊してさっき帰ってきました。体が痛い。疲れた。風邪かも。
琵琶湖、またはその周辺の駅は雪に覆われているようなことがネットにあったので、とてもじゃないけどオペラ観に行く感じではないようなかっこで旅だったのですが、全然雪なんかなく。乗り換えの膳所駅なんて雪積もりまくりみたいに書いてあったのに、どこにあんのよ雪。東京よりあったかいくらいだったの、滋賀県。地方によるのかな。もおおお、しゅららぼん。
まあ、それはいいとして。
「トリスタン」に行ったのがもう4年も前になるのか。東京だってわりとよくやるトリスタンなのによく行ったなあと思うけど、今回は行かないと。マイ・フェイヴァリット・オペラの一つである「死の都」の舞台初演を見逃してはいかん。
まあ、色々書きたいことはあるんだけど、疲れているのでかいつまんで。
席は前から2番目だった。いくらなんでも前すぎだったわ。こんなマイナーオペラなのに結構客席は埋ってる?かな。
うーんと。演出はなんというか古式ゆかしい印象。美術もなにもかも。読み替えとかは全然してないので安心(このオペラにヘンな事したら怒るで~まじで)。第一幕の舞台は向って右がブルージュの教会?なのかな。左半分はパウルの家ってことで。妻マリーが描かれている絵が飾ってある。
前の「トリスタン」でも素晴らしいブランゲーネを聞かせていただいた加納さん。こないだ素晴らしいエルガーの「海の絵」を聞かせて頂いたが、その時は大竹しのぶさんと寺島しのぶさんみたいな印象だったんだけど、今回は黒い制服っぽい衣裳で何故かサスペンスによく出てくる山村紅葉さんみたいな印象。「赤い霊柩車」の。
で、この役は地味だ。最初っから結構歌うとこ多いのに。でもやっぱり加納さんは素晴らしい。好きな声。パウルのお友達の小森さんも役柄的に地味だ。ヴォータンなんかよりは合ってるけど。
で。
主人公であるパウルが・・・いやあたしびわ湖ホールの席について渡されたプログラム冊子を見るまで気付かなかった。鈴木さんは一昨年素晴らしい「カーリュー・リヴァー」の狂女を歌ってた方だったんだね。あのときは女性役だったので女装してたんで、物凄く似合ってたんだわ。
今回は残念なことに男性役だ(←え)。しかし、銀縁眼鏡をかけているので眼鏡フェチのあたしは結構よかった。相変わらず美しいねえ、声も顔も。クレバーな印象。
そして、「ブンダバー!」からの「ヤー、ブンダバー」でマリエッタ登場。今まで異常に地味だった舞台が突然眩しいくらいにお花が咲いたようになる。凄い。衣裳のせいもあるが。
ところで、砂川さんてテレビでしか聴いたことないので生で聴くの初めて。
でまー、でまー。ここに忌憚なく書かせて頂くと。
この「オペラの舞台上演の初演」であるとか、「日本オペラ界を代表する素晴らしいキャスト」とか、まあ色んな意味でも新幹線乗って行った甲斐はあったんだけど。
まあとにかく砂川さんのマリエッタをね、聴けただけでもわざわざ新幹線乗って行って良かったって思った。ホントによかった。
すげえの、砂川さん。
もう他の事はどうでもよくなっちゃうくらい(いや、それは失礼ですけど)。もーね。まずカワイイっつか美しい(私の周りの殿方、こんな前なのに彼女だけオペラグラスで見てたもん)。身のこなしとかすごくうまい。出てきただけでプリマドンナだわああって思う。何故今まで全然舞台見なかったんだろう(←藤原歌劇団だからです)。
で、声が大きい。リリックな声なのに他の人を圧するくらいの声量がすごい。そして綺麗(声が)。高いほうの声もものすごくいい。そして安定している。
で、かなり昔に初めて見聴きしたミレッラ・フレーニ思いだした。そのくらい衝撃的だったわ。
いやもう、素晴らしい。もう一回歌ってほしいわ。演奏会形式でもいいから。おそらく日曜の飯田さんも素晴らしいのでは、という想像はつくんだけど、ホントに砂川さんのマリエッタ聴けて良かった。大感激したわ。何か賞を取るでしょうね、この役で。
で・・・パウル役の鈴木さんも素晴らしかった。パウルってヘルデンテナーの役かと思ってたけど、鈴木さんみたいなバロックとかブリテンとか歌うような高い声の人が歌うのもありなんだなあと。(役柄的には、死んだ奥さん忘れられないウジウジした役だもんなあ。) 歌うとこかなり多いので、最後までスタミナが持つかものすごく心配したんだけど・・・大丈夫でした。まあびわ湖トリスタンのヘタレっぷりを見てしまうとなんか日本人のほうが凄いなあって思うわ。
話は前後するが。第2幕はなんだかホーンテッドマンションみたいな風情。「悪魔のロベール」でちょっとカットあり(他もちょろちょろカットあったのかな?)。女の子の衣裳がベネチアのカーニバルみたいでカワイイわ。
第3幕はまた二つに分かれた舞台。右のほうは宗教的な感じで少年合唱と大人の合唱が歌ってたりする。ステンドグラスの照明が綺麗。
で、沼尻さんの指揮は。聴きなれたラインスドルフ盤よりかなり遅い印象。今まで聴いたトリスタンやトゥーランドットは早めな印象だったので、少し意外でした。テンポの遅さから少し、歌手が手持無沙汰っぽく感じたのはあたしだけかな?でも、迫力あってすごくよかったでした。ナマで聴くのは二度目なんだけど(前回は井上ミッチー&中丸ミッチーの演奏会形式東京初演)やっぱりナマの迫力は違う。
最後は山村紅葉さんが舞台前方のろうそくを後ろに下げて(幕が閉まるように)終わり。何コレ?って思ったけど、このお陰でフライングブラボーやフライング拍手がなくて有難かった。
こんなマイナーオペラなのに、最後はかなりのブラヴォーで。拍手も凄かった。なんか意外だった。まあ、映画音楽みたいだし聴きやすいし、基本的にわかりやすいし、いい曲だもんな。
で、帰りはホールからいつものように大津駅までの送迎バス(有料)。なんというか、今まで同じオペラ見てたとは思えないような全然関係ない会話を関西のおっちゃんたちが楽しそうにしてて、なんか面白かった。関西弁がなんか・・・「赤い霊柩車」に出てくる大村昆さんみたいよ。まるで大村昆さんがいっぱいバスに乗ってる感じ。何この山村サスペンス。まあ、オペラが「死の都」だからいいのかもね。題して「赤い霊柩車・琵琶湖「死の都」殺人事件、瓜二つの女」とか・・かな?
カエルちゃんと琵琶湖。
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コメント
琵琶湖までの観劇、お疲れ様でした。
僕が琵琶湖までゆくのには6時間くらいかかるのですが、東京からだと2時間もかからないのでしょうからウラヤマシイ。砂川さんのマリエッタ、観たかったです(僕もファンなので)。初台も今週からで、マリエッタはミーガン・ミラー(先シーズン、エリーザベト姫で登場)。それも楽しみなんではありますが。
、naopingさんのレポートで、おぼろげながら想像イメージが想像できました。今週土曜日の初台のステージ、楽しみです。
ありがとうございました。
投稿: IANIS | 2014年3月 9日 (日曜日) 22時48分
>>IANIS さん
いえいえ、東京から2時間じゃ行きませんて(笑)。品川から京都までのぞみで3時間ちょいですね。ウチから琵琶湖まで4時間くらいです。(飛行機だったらわかりませんけど)
オペラは3時間くらいなので、日帰りも行けそうな感じですが、忙しいので泊まりにしました。だったら二回とも見たらよかったなあとか思います。
砂川さんは破格の素晴らしさでした。もしコルンゴルトが生きててこの舞台を見たらきっと「ブンダバー!!」って言って砂川さんにチューしちゃうかも。
新国立は私も行きますが、それが終わったらとんだ「死の都」ロスになってしまいそうです。すでに一つ終わって喪失感はんぱないです。
投稿: naoping | 2014年3月10日 (月曜日) 21時32分
遠征、おつかれさまでした。
ちょっと前の「ルル」そして「トリスタン」ときて、「死の都」ですから、びわ湖を継いだ沼尻さんの、若杉さんへの思いも感じられますね。
わたしも行きたかったけど、諸所、自制の生活中なもので。
記事拝読しちゃうと、砂川さんのマリエッタ、観て、聴いてみたかった!
しかし、こんなに集中しないで、ふだん観劇できるレパートリーとなるような動きにして欲しいものですね。
新国も、楽しみですね。
わたしは、千秋楽ですので、まだ先。
情報、シャットアウトして待ちます。
投稿: yokochan | 2014年3月11日 (火曜日) 20時57分
>>yokochanさん
びわ湖、行かれなかったのですね。てっきり行かれたかと。
2度目にして初めてこの歌劇場(って言っていいと思う)の舞台装置の凄さを見ました。
砂川さん、正直言って(ミミとかリューとか)イタオペの人って認識しかなかったのでいい意味で凄い裏切りでした。こんなに凄い人と思わなかった。yokochanさんに聴いて欲しかったです。東京(または神奈川)で再演してくれないかな?
新国立でのトルステン・ケールやミーガン・ミラーも勿論楽しみです。終ったら・・・寂しいだろうな。
投稿: naoping | 2014年3月11日 (火曜日) 23時05分
天井桟敷四千円席で両日を観ました。
その声量の無い鈴木准を、佐渡裕指揮の兵庫芸文「魔笛」のタミーノに抜擢された際、僕は初めて聴きました。こんなにレジェーロで美しいテノールが、日本にも居るんだと感心しました。
その後、BCJを聴きに行ったらソリストでは無く、合唱団のトゥッティに名前があって、驚いた記憶があります。去年はやはり佐渡の「セヴィリャの理髪師」で、アルマヴィーヴァ伯爵を歌って評価された人で、実はコルンゴルトやブリテンを歌うのを、やや意外に感じています。
投稿: Pilgrim | 2014年3月16日 (日曜日) 18時10分
>>Pilgrimさん
2回とも行かれたのですね。私も2回見たかったです。あいにく帰りの新幹線と時間が合わなくて。
鈴木さんは私も全く予想外のキャスティングでびっくりしました。ブリテンでしか聴いたことなかったんで(しかも教会オペラ)。まあ、ブリテンは声質に合っていました。私はイギリス歌曲歌うようなリリックなテノールが好きなので、こんなパウルもいいかなって思いました。新国立じゃキツイかもですが。
投稿: naoping | 2014年3月16日 (日曜日) 21時06分