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2013年11月24日 (日曜日)

あらかわバイロイト/トリスタンとイゾルデ(24日・B公演)

オペラ劇場あらかわバイロイト 第5回ワーグナー音楽祭 「トリスタンとイゾルデ」(B公演)

池本和憲(トリスタン)
福田祥子(イゾルデ)
河村典子(ブランゲーネ)
郷田明倫(マルケ)
杉野正隆(クルヴェナル)
佐藤 圭(若い水夫/牧童)
出沼哲(メロート)
田中拓風(舵手)
指揮:クリスティアン・ハンマー
演出:大島尚志

管弦楽:TIAAフィルハーモニー管弦楽団 (コンサートマスター:三ツ木摩理)

美術・衣装:大島尚志
照明:中村浩実
舞台監督:加藤事務所

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(写真は昨年の使い回し)

今年もやってきた、あらかわバイロイト。

私にとって、あらかわバイロイトは一年に一回だけ(往復)都電荒川線に乗る日。絶対に他に用事ないもん。でも、乗る区間は本当に短いからあっというまなんだけど。もう今年で5回目。ワーグナーの舞台ものに限って言えば、皆勤賞である。

というわけで、今回はなんとトリスタン。自他とも認めるトリスタンマニアなあたしなので、ありとあらゆる形態のトリスタンを見ている。ようろっぱの歌劇場の引っ越し公演だったり、はたまたアマオケだったり、新国立劇場だったり、舞台あり演奏会形式あり形態は色々である。

まあ、どれがベスト公演ってのは・・・ないかも。トリスタンが良かったらイゾルデがいまいちとか、イゾルデはいいけどトリスタンがいまいち?とか。トリスタンとイゾルデはいまいちだけどお付きの者2人が世界一レベルだとか、独唱はベストなのに指揮者がいまいちとか。

まあ、あたしが密かに指針にしてる最低レベルのトリスタンとイゾルデは、トリスタンがびわ湖のときのジョン・チャールズ・ピアーズで、イゾルデがフルトヴェングラー指揮の1947年アドミラル・パラストのライブのエルナ・シュルターである。これらに比べたらまあ大体はクリア。

このトリスタンってオペラに関しては、完璧な公演って一生ない気がする。それっくらい難しい演目。今までの一番は?って聞かれると答えられない。きっと・・・一生そうなんだろうな。

そんな中、あらかわはいろんなハンデがある。低予算のために合唱団がいない(今回は録音である)。考えてみると、合唱団付のアマオケだってあるわけだし、昔聴いた新交響楽団のトリスタン(演奏会形式)でさえちゃんとプロの合唱団が参加してたわけだから、今回は少しさみしい気はした。「トリスタン」においての合唱団は(他のオペラと比べて)そんなに重要ではないけれど・・・第一幕の最後の合唱があるのとないのでは感銘度はかなり違う。「予算ない」ってのはじゅうじゅう承知なんですけど。

今回の演出は、以前のようにそんなに凝ってなくてギリシャ悲劇のような感じである(といってもギリシャ悲劇って見たことないんだけんども)。舞台も衣裳も地味。トリスタンにおいては、あたしは「演奏会形式がベスト」って思ってるからいいんでないの。

さて。

今回は、あたしにとってすこーし違う公演である。何が違うかっつーと、今回は出演者の方からメールを頂き、券を手配して頂いたってことである。なんか・・・お会いしたことないとは言え、見ててどうも緊張してしまった。なんでだろう。「がんばれ、がんばれ」って思っちゃう。まあ、それは第一幕だけで第二幕以降は普通に見れたけども。

毎年ながら、ハンマー先生の安定感はハンパない。毎年聴いてるからどんな演奏かってのは全く予想がつく。テンポを大きく動かしたりとか凄くヘンなことはしない。

ここ何年かのこの「あらかわ」の楽しみ方の一つに、ソリストがちょっと早く出過ぎたり、歌詞忘れちゃったりしたとき、ハンマー先生がどう対処するか・・・である。交通整理のごとくびっくりするほど鮮やかに処理するので、演奏のキズというよりはこれはこれで楽しむのがよいと思う。

で、歌手の皆さま。

イゾルデ役の福田さん、声量があって素晴らしい。日本人には珍しいかなり安心して聴けるイゾルデ。トリスタン役の池本さん、ちゃんと最後までさほど疲れを見せずに歌われていたので凄いなって思った(トリスタン役はコレ大事)。ハンサムだし。ブランゲーネ役の河村さん、イゾルデより一歩下がった歌唱がけなげでグッときたし、苦悩の演技も素晴らしかった。そしてカワイイ。クルヴェナールの杉野さんも抜群の安定感。水夫&牧童役の佐藤さん、美声で素晴らしい。

まあ、中には不調の方もいらっしゃったけれど大体は皆さま宜しかったです。いつもながら大曲、本当にお疲れ様でした。

手がこんな状態(骨折してギブス)なので、拍手ができない。聴衆って拍手でしか感動を表せないのに。申し訳ないので、普段めったにしない「ブラーヴァ」とか叫んじゃった。女なのに。

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コメント

はじめてコメントします。音楽を中心にいつも面白い記事、興味深く拝見しています。私も中1の頃から、かれこれ30年あまり、クラシック音楽をずっと聞いてきて、大体なんでも聞きますが、特に19世紀後半から20世紀前半くらいまでのドイツ・オーストリア圏の音楽が好きです。ワグナーなんかはど真ん中ですね。この夏から仕事でワシントンDCにいますが、ブログを拝見していても、クラシック音楽の環境でいえば、東京の方がはるかに良いですね。トリスタンなんて、昔は来日公演をありがたく拝聴するのがやっとといった感じでしたが、最近は、これも含めて、日本側団体主催の企画も増えてきていいですね。ここでは、クラシック・コンサートとか言っても、チャイコフスキーのピアノ協奏曲とかドボルザークとか新世界(ある意味地元か)とかが多くて(それが悪いとは言いませんが飽きる)、Rシュトラウスの陰のない女なんて絶対やらない様子ですね。

投稿: Herbertoka | 2013年11月25日 (月曜日) 01時56分

 おお、naopingさんも来ておられましたか。

 僕は北とぴあのフィガロと、ミョンフンのトリスタンの序でに行きました。
naopingさんの何時も仰っている通り、ハンマーさんは素晴らしかった。
でも、録音の男声合唱は無しで良かったような気がします。
更に極端な感想を述べれば、歌は一切無しでオケだけの
トリスタンを聴きたかったような気もします。

投稿: Pilgrim | 2013年11月25日 (月曜日) 19時46分

>>Herbertokaさん

初めまして、コメントありがとうございます。

ワシントンDCですか。アメリカってその都市その都市に有名なオケがあるようなイメージがあったんですが、ワシントンって思い浮かばないですね。せめてクリーヴランドとかロスとかだったらよかったのに・・・。

私の会社は社員をやたらと海外派遣させたがっているようで(先日そういった研修を受けました)、もし選べるなら東欧か、アメリカでもいいオケ(もしくはオペラハウス)がある都市に行きたいな~なんて思います。妄想としましてはチェコとかいいなあ、なんて。まあ、行かないでしょうけど(笑)。

昔から考えると、日本人だけでワーグナーのオペラ全曲を上演するなんて奇跡ですよ。二期会だって。ホントに凄い、有難いことです。

投稿: naoping | 2013年11月25日 (月曜日) 21時21分

>> Pilgrimさん

おお、行かれたのですね。
トリスタンのついでに・・・やっぱりトリスタン(驚)。

ハンマー先生のワーグナーは素晴らしいです。なんか地方歌劇場の「たたき上げ」って感じがして好きです。

歌一切なしのトリスタンって・・・まああってもよさそうな気もします。が、私はカラオケと間違えて全曲歌ってしまいそうです。

投稿: naoping | 2013年11月25日 (月曜日) 21時27分

しまった、忘れてしまいました・・・・。
行こうと思ってて、ずっと思ってて、当日でも大丈夫だろう、そしてトリスタンだから覚えてるし・・・とタカをくくっていたら、完璧に失念。

しばらくトリスタン上演はねいですね。
naopingさんの荒川皆勤賞は、アッパレですよ。
わたくしなんざ、最初のパルシファルだけ・・・

回を重ねて、完全に街に定着しましたね。

関係者の尽力にも、naopingさんの情熱にも頭が下がります。
拍手なしの、「ブラーヴァ」、素敵じゃないですか!
早く、拍手ができますように。

投稿: yokochan | 2013年11月26日 (火曜日) 00時30分

Herbertokaです。

ワシントンDCも、一応、ワシントンナショナル(大昔にロストロポービッチがショスタコのレコード作っていたような)というオケがあって、エッシェンバッハが常任やっていたり、近郊のボルティモアシンフォニー(常任は女流オルソップ)の定期演奏会3回の1回はDC郊外でやったりはしているのですが。この人たちが下手という訳ではないですが、プログラムが「ファミリーコンサート」風で、ちょっと食指が動かない感じです。やはり、寄付金で動いているので、そういう方々の好みなのでしょうか。アメリカの金持ちマダムなんかは、確かに、あんまり難しくて長い曲は聴かなそうな気もしますね。

昔、ベルリンとミュンヘンに住んでいましたが、こういう音楽の都みたいなところは別格としても、ドイツは、バンベルクみたいなしょうもない街でも立派なオケがあったりしますし、ましてや、ケルンとか、ハンブルクとか、名のある街だったら、最低一つはちゃんとしたオケがありますね。

プラハだったら、チェコ・フィルはもちろんですが、プラハ・シンフォニーだってかなりうまいオケでした。

加えて、欧州はプログラムが大人もしっかり楽しめるものになっていたのが大きいですね。マゼールみたいに、「前半はブラームスのピアノ交響曲一番、後半はモーツァルトのレクイエム」みたいな変なプロを組んでいる人もいましたが、それが許されるところも、懐が深い感じがありました。

投稿: herbertoka | 2013年11月26日 (火曜日) 04時30分

>>yokochanさん

おお、お忘れだったのですね。
私も関係者の方のご尽力で?観に行くことができました。
ありがたいものです。チョンミョンフンは行けなかったけど・・・。

観客の方はおそらく出演者の方の知人が多いのかなあとも思いましたがなかなか盛況でした。以前はわりとガラガラなことがあったりしたので。

毎年毎年出かけてますが、だんだんとこのシリーズの楽しみ方がわかってきました。オペラ初心者には意外とマニアックかな?と思う上演だと思います。ドイツ地方劇場叩き上げ指揮者の素晴らしい采配と、「この役、歌うの初めて」的な新進歌手のコラボ。マーラーの下積み時代を思い出します。

来年はタンホイザー・・・?どうでしょうか。
拍手はもうそろそろできそうです。

投稿: naoping | 2013年11月30日 (土曜日) 16時12分

>>herbertoka さん

ああ、そうそうワシントンナショナルフィルってありましたね。忘れてました。アメリカの人って意外と保守的なものが好きですよね。メトなんかだとあんまり前衛的な演出や演目が好まれないようですし。

海外というと・・・
以前、友人がニュージーランドに住んでたので、遊びに行く約束をして地元のオケ(オークランド・フィルだかオークランド響だか)のプログラムを送ってもらったのです。イギリスの植民地なこともありエルガーとか英国ものもするので楽しみだったのですが(休みまで貰ったのに)、友人が日本に帰国してしまったので行けなくなり残念でした。

また別の友人が、今年ダンナの転勤でフランクフルトに行ったんですが、もうこれはホントに私からすると羨ましい・・・。でもえてしてそういうのって全然クラシック興味ない人に回ってくる運命なんでしょうね。泊りに行くほど親しいわけでもないし。

投稿: naoping | 2013年11月30日 (土曜日) 16時48分

そう、ワシントンナショナルなんて、私も当地にこなければ、一生聴くことも関心を持つこともなかったと思います。

でも、考えてみると、東京の方が、クラシック音楽の分野限定ですが、ワシントンより環境が良いということは、ある意味、誇らしいことですね。

この間、娘を連れて、バレーを見に行きましたが、音楽が録音でした! バレー鑑賞デビューの娘相手に、「バレーというのは、ダンサー以外にオケも必要で贅沢な芸術なのである」などと、もっともらしい薀蓄を垂れていたのに馬鹿みたいですね。

投稿: Herbertoka | 2013年12月 2日 (月曜日) 13時17分

>>Herbertokaさん

いやあ、私も子供の時バレエ観にいきましたけど(町のバレエ教室の発表会)、録音でしたよ。だもんで、ずっとそういうもんかと思ってました。

大人になって自分でオペラを観にいくようになって初めて知りましたもん、バレエの伴奏が生演奏なんて。

投稿: naoping | 2013年12月 7日 (土曜日) 13時31分

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