ニーベルングの指環抜粋
「神々の黄昏」より ”ジークフリートの葬送”
”ブリュンヒルデの自己犠牲”
「ワルキューレ」第1幕 (演奏会形式、字幕付)
ブリュンヒルデ 池田 香織(ブリュンヒルデの自己犠牲)
ジークリンデ 清水 華澄(ワルキューレ第1幕)
ジークムント 大槻 孝志(ワルキューレ第1幕)
フンディング 大塚 博章(ワルキューレ第1幕)
指 揮:飯守 泰次郎
ゲストコンサートマスター:戸澤 哲夫
(東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団コンサートマスター)
ワーグナー祝祭オーケストラRichard Wagner Festorchester
(アマチュア3団体「新交響楽団」「東京アカデミッシェカペレ」「ザ・シンフォニカ」による特別編成)
(9月16日・サントリーホール)
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いつも飯守さんの指揮の時にお世話になっているアマオケさん、新響さんとカペレさんとシンフォニカさんの合同団体による、演奏会。日本ワーグナー協会の主催ということで、ロビーのあちこちでそれらしき方が見受けられた。
今回も関係者の方のご厚意により、友人とともに出かけることができました。楽しい一夜を過ごさせて頂き大変感謝しております。(何かお礼をと思いつつ、台風が酷くて何も買えず。いつもすいません。)
今月は新日本フィルによるワルキューレ第一幕も聞きに行ったし、それも本当に素晴らしかったので、今回も期待してしまう。飯守さんの指揮だし。
で、新日本フィルの時にも壮観な眺めだったハープ6台は今回もで。さすが飯守さんここらへんは手抜きなしだ。沢山の楽員さんが舞台に乗って圧倒される。
で、前半は「神々の黄昏」から終わりの方の有名曲2つ、休憩挟んでワルキューレ一幕というお腹いっぱいメニュー。リング好きにはたまらない。
今回は歌手の方が4人出演されたが、皆さま私が今まで見聴きしたことのある方々ばかり。とは言うものの、わりとワーグナーでもチョイ役な事が多く、「見たことある・・・なあ・・・多分」な方が多く。ただ、フンティング役の大塚さんは流石にあらかわで主役級だったので覚えていたけど。
<出演の歌手の方で、ワーグナーで今まで見聞きした舞台>
池田香織さん
新国立劇場「ラインの黄金」「神々の黄昏」のヴェルグンデ(ラインの乙女)
大槻孝志さん
東京・春・音楽祭の 「マイスタージンガー」 ツォルン
清水華澄さん
新国立劇場「神々の黄昏」の第二のノルン
同「ワルキューレ」グリムゲルデ
大塚博章さん
あらかわバイロイト「パルシファル」のグルネマンツ
以上、もうちょっと探せばもっと見ているんだと思うけどそんなに探せず。(しかし、ワーグナーのチョイ役は決して他の作曲家のチョイ役と同等に考えるなかれ。とくにいくさ乙女やラインの乙女、ノルン達は、声楽的にホントにうまくないと舞台が映えないと思う。)
前半、神々の黄昏より。最初っから葬送行進曲w。実際はえんえんと長いオペラを見聴きしてから聞く曲だから何か耳がびっくり。まあ、最初の方はやや肩慣らし的な感じではあったけど、後の方は凄い迫力で良かった。いやはや何回聴いてもこの曲はグッとくる。
そのあと超大なリングの最後をしめる自己犠牲。ここは字幕がなく。ブリュンヒルデを歌われた池田さんは、お美しい容姿が印象的。お声も素晴らしい。圧倒的なドラマティックな管弦楽にみんな引き込まれているようで、もうブラヴォー言って帰ってしまいそうになったわ。
ひゃ~こんなに充実した演奏を聴かせて頂いたのに、まだあとワルキューレがあるのね、とまるで夢のような休み時間。まあ、飯守さんの「ワルキューレ」は二期会で全曲を二回聴いているので、どんな感じかはわかる。
飯守さんの指揮は、テンポを不自然に動かしたりしない。聴いていて一番自然なテンポであると思う。こないだ聴いたばっかりのメッツマッハーの指揮は自在にオケをドライブして早い所はことさら早いし、遅いところはことさら遅いという感じだったけど(それはそれでイイ)、飯守さんはそんなことはない。こんなにテンポは自然なのに、一音一音が意味深く感じ。そのヘンはオケの皆さんにかなり叩きこまれたのだと思う。
まるで、昔のバイロイトのような(何度も言うけど行ったことはない)懐かしい音色で。ちゃんと古式ゆかしいワーグナーの音がする。アマオケさんだなんてすっかり忘れて演奏に聴きいってしまうのだ。チェロやクラリネットのソロも美しく響き。
しかしながら、今回の主役は歌手・・・いや、もちろんオケの皆さまがしっかりと演奏されているから、歌唱も映えるのであって。
とくに清水さんのジークリンデは本当に素晴らしく。いやいやこないだのメッツマッハーの時のカウネがあんまり好きな声じゃなかったので余計そう思うのか。深い、よく響くなんという素晴らしい声なのであろう。最初は悲劇の妻らしく控えめで、フンティングを寝かしつけたあとのジークムントとのシーンでの悲しみを語るところは凄い雄弁で、大迫力でホントに涙が出そうになった。飯守さんのご指導が丁寧だったのだろうか。
ジークムントの大槻さんもリリックな声で美しくかっこいい歌唱で引き込まれたし、大塚さんはあんまり悪役っぽくない(いやいや、フンティングはそもそも常識的ないっぱんだんせ~で、逆にこの双子がアウトローなんです!)けど良かったです。
オケの素晴らしさと席の良さも手伝い、ホントに圧倒的な演奏でした。しかしまあ、私もリング歴長いですから何十回もこの曲聴いているので「素晴らしい演奏だった!」とは思ったんですけど。
トンでもない長い拍手のあと、やっと解散!ということになって連れてった友人に「いや~良かったね」と声をかけたところ。
友人はしばらく茫然自失となっており。声も出ず。
やっと口を開いたと思ったらうわごとのように「いや・・・何か圧倒されすぎて・・・何か凄くて・・・・・・・いや、筋書きとかは突っ込みどころ満載だったんだけど・・・もうあまりにドラマティック過ぎて・・・それにあのジークリンデの人・・・うますぎる・・・ファンになった・・・」とぽつりぽつりと語り。そっかー、ワーグナーでもリング関係は初めてだよねえ。そりゃびっくりするよねえ。
で、「いや、これがワーグナーなんだよ。初めて知った? ワーグナーの毒ってこれなんだよ。」ってドヤ顔で言ってやりましたわ。
で、もう時間が遅かったのでまっすぐ帰る予定だったのだが、二人とも演奏に圧倒されすぎて喉がカラカラに乾いて、どうしても帰る気が起こらず、ビールを一杯だけ飲んで帰りました。
関係者の皆様、素晴らしい演奏を有難うございました。厳しい練習に耐え(?)、本当にお疲れ様でした。飯守先生もいつまでもお元気で長生きしてたくさんワーグナーを聴かせてほしいです。