

ワーグナー:『ニーベルングの指環』
第2夜『
ジークフリート』 (243分)
ジークフリート:ランス・ライアン(テノール)
ミーメ:ペーター・マーシュ(テノール)
さすらい人(ヴォータン):テリエ・ステンスヴォルト(バリトン)
アルベリヒ:ヨッヘン・シュメッケンベッヒャー(バリトン)
ファーフナー:マグヌス・バルトヴィンソン(バス)
エルダ:メレディス・アーワディ(コントラルト)
ブリュンヒルデ:スーザン・ブロック(ソプラノ)
森の小鳥:アラン・バルネス(ソプラノ)
フランクフルト歌劇場管弦楽団
ゼバスティアン・ヴァイグレ(指揮)
収録時期:2012年6月、7月
収録場所:フランクフルト歌劇場(ライヴ)
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ジークフリート見終わった。リングの中では「ジークフリート」って気分的に中だるみになってしまう。「ライン」は最初だから張り切って見るし、「ワルキューレ」は見せ場多いし凄く感動するから一生懸命見るけど、「ジークフリート」ってなんだか・・・見るまではちょっと重いわ。始めの方地味なんだもん。
しかも今回の舞台のセット。ずっと蚊取り線香の上と下で演じられることがほぼ予想されるだけに。余計辛いもんがある。
でも・・・見始めると意外と休みなしに一気に見てしまう。ノートゥング鍛えるあたりからノリノリだぜ。
(ところで、この演出でのノートゥング鍛えるシーンって何だかちょっと「モスラ~やモスラ~」とか「アイヌの火祭り」(?)とかそんな印象。ジークフリートは顔や腕に炭でヘンな化粧し始めるし、踊りもなんかそんな感じ。面白いわ)
歌手はまあ、「ライン」からのこのプロダクションでは、殆ど穴がないというか平均して(今まで見た所)良い感じである。ミーメはラインの黄金の時の歌手とは違うようだが、あんまり覚えてないのでいいや。不思議なのは、ミーメはパーカーの上着に白いエプロンに拡大レンズ付?眼鏡でかなり現代的なコスチュームなのに対し、ジークフリートは今どき珍しいくらいステレオタイプなジークフリートの衣裳なのである。
あたしが、もし紙とえんぴつ渡されて「ジークフリート書いてごらん」と言われたら、全く同じ服と髪形、顔を書いたと思う。たとえて言えば、昔の無声映画のジークフリートそのものである。姿や声は少しだけジェス・トーマスを思わせる(もちろんあんなにかっこよくはないけど)。あと、金髪なのがよい。
で、このジークフリートの人は、最初から力を抜くことなくちゃんと歌っているのだが、最後まで力を持続してちゃんと歌えているのが素晴らしいと思った。この役は大体最後は力尽きてしまうものだと思ってたので。勿論ブリュンヒルデとの二重唱の時は流石にちょっと疲れてたけど、声が垂れ下がることもなく歌いきったし。いいな、このジークフリート。かなり許せる感じ。声も好きだ、ユーゲントリッヒャーな感じで。
ミーメもなかなか良かったけど、どうもこの親子(疑似)は声が似ている気がする。画面から目を離すとどっちだかわからん。
森の小鳥さんは、男性の黒人ダンサーが踊っている(多分ゲイだと思う。「ジー君ったらいや~ん(はあと)」とか言いそう)。声は勿論別人のソプラノで、歌手は出てこない(カーテンコールだけ出てきた)。最初はちっとも可愛くないので「うああああ」と思ったが、慣れた。小鳥さんがジークフリートにおんぶされる所は可愛かった・・・かも。
大蛇は別に大蛇が改まって出てくるわけではなく。くるくる蚊取り線香舞台がそのまま大蛇になるような感じで「なるほど」と思った。ファーフナー本体は理科室の人体模型みたいな(筋肉のやつ)感じ。ちょっとキモイ。
ヴォータンとアルベリヒのシーンはヴォータンがトランプ持参で登場し、二人でポーカー(かな?大貧民ではないと思う)を始めて、微笑ましかった。
エルダは「ライン」の時と同じでっかい歌手だが、本当にこの人うまいわ~。毛の固まりみたいな衣裳で現れたけど。大体エルダとヴォータンってあまり恋愛関係になさそーな感じ(いや、子供産んでますけど)の演出が多いような気がするが、ここでは結構ラブラブな感じでちゅうとかしちゃう。あらびっくり。
女性の演出ということで、相変わらずきめこまやか。ジークフリートとブリュンヒルデの出会いから最後にかけて、二人の距離が縮まったり、また離れたり。誠に微笑ましい。しかし(言うまでもなく)おっさんとおばはんが演じているので決してキュンキュンはしない。残念だ。ジークフリートがブリュンヒルデをおんぶしてべッドから下ろしてあげるのはちょっとカワイかったかな。おんぶ好きなのかジークフリート。
で、最後はやっぱり拍手の嵐。かなりよい公演だったのでは。面白かった。