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2012年10月 8日 (月曜日)

新国立劇場/ピーター・グライムズ

Kc460060 ベンジャミン・ブリテン:歌劇「ピーター・グライムズ」

ピーター・グライムズ/スチュワート・スケルトン
エレン・オーフォード/スーザン・グリットン
バルストロード船長/ジョナサン・サマーズ
アーンティ/キャサリン・ウィン=ロジャース
姪1 鵜木絵里
姪2 平井香織
ボブ・ボウルズ/糸賀修平
スワロー/久保和範
セドリー夫人/加納悦子
ホレーズ・アダムズ/望月哲也
ネッド・キーン/吉川健一
ホブソン/大澤建

新国立劇場合唱団
リチャード・アームストロング指揮/東京フィルハーモニー交響楽団 

(新国立劇場・オペラパレス)

今日、見てきました。
ブリテンのオペラはこの国では上演率がホントに低いので、東京で上演されるならできる限り観てきたつもり。でも、今まで観たのって4つくらい。
・真夏の夜の夢
・ねじの回転
・カーリュー・リヴァー
・ヴェニスに死す

・・・かな?忘れちゃったのもあるかもしれない。

「ピーター・グライムズ」は生で観るの今回が初めて。映像ではブリテン指揮でBBCテレビ制作(ジョン・カルショー)によるDVD、あとメトの舞台を銀座の映画館で観た(見事にガラガラで3~4人しかいなかったっけ)のくらい。CDはブリテンの自演のみ。

ブリテンの指揮によるDVDは本当に素晴らしい。演奏もCDよりやや緊張感があるし、エレン役のヘザー・ハーパーの美しい声といったら。聴いていて心が洗われる。今回予習でさんざんDVDを見聴きしたあと、CDを聴いたらなんだか悲しくなった。クレア・ワトソンも決して悪くはないんだけど。ただ、DVDは音声がモノラル(哀)。あと、海の描写がとても貧しい(布がぷかぷかと浮き沈みする。ドリフのコントみたい)のが気になる。でも、このオペラが好きな人は是非観て欲しいです。

さて。今日の上演。本当に素晴らしかった。演出あんまり色々とこちゃこちゃやってないくてシンプルなので良かった。もうね、何か読み変えとか時代を移すとかやめて欲しいよね。正攻法が一番よ。

セットとかホントに簡素。ほとんどが四角のドアとか壁とかで表現される。舞台は傾斜していて地面が丸見えなもんで(私は2階席左側一列目だったので、余計よく見える)バミってるカラーテープがとてもよく見え。小道具もごくごく最低限。

衣裳も主役以外みんな同し。女性はほとんど喪服っぽい。いのしし亭のパーチーのときに赤い服かなあ?ってくらい。これは無個性でみんな同じ穴のムジナっぽい感じを表しているのかな?集団至上主義みたいな。

ところで。
ブリテンのオペラって、比較的好きなあたしが言うのもかなり申し訳ないけれど、耳で聴いているだけだとあんまり・・・面白くないのである。筋も男女の恋愛ものは皆無だし、ラブストーリー好きな女子向きではないのよねえ。美しいメロディはないし(ただ、ブリテンは言葉を音楽にのせるのがうまいのかなあと思う。例えば♪ア・ジョークス・ア・ジョーク、なんちゃらとか♪オールドジョーなんちゃらとか。音楽的に印象に残る部分が何か所かあり)。でも舞台で生で見聞きするとCDで聴くより何倍も面白い。

今日もだったけど、舞台では観て行くうちにどんどん引き込まれていくのだ。これって(おそらくブリテンがお手本にした)ベルクの「ヴォツェック」と似てる。まあ、演奏にもよるけどね。あと、いつも思うけど場面をつなぐ間奏曲がカッコイイってとこがベルクのオペラに似ている。

今日の指揮者は全然初めて聴く人だ(とか書くと、意外とCD持ってたりするので油断してはいけない)が、指揮に緊張感がありとてもよかった。素晴らしい指揮者。きっと英国音楽の経験の足りない指揮者がやったら凄く間延びしたものになったろう。今日はブリテンの音楽しか感じなかった。東フィルさんもかなり頑張ってたと思う(いつも偉そうですいません)んだけど。例えば間奏のどこかで金管楽器が「ピロピロピローン」とカッコよく演奏しまくるところがあるじゃないですか。あそこはもうね、CDとかだとホントに英国独特のブラスっぽい音がするんですが・・・いやそれを求めては。ワガママというものです。

合唱団、いつもながら素晴らしい。この曲とても難しいと思うんだけど凄く圧倒されました。でも・・・アンブロジアン合唱団に慣れちゃうと(うますぎてかえって不自然なくらい)・・・いやいやこれもワガママです。

ああ、そうそう歌手の皆さまですが。ピーター役のスケルトンという人は初演者のピアーズとはかなりキャラクターが違うのだけど、本来の無骨な漁師って意味ではこっちのほうがアリなんだと。ピアーズは・・・スマートで優しげな、いかにもエゲレスのゲイのおじさんて感じでちょっと違和感あるんだな。スケルトンさんは堂々たる体格で、いかにもヘルデンテナーな感じ。声もしなやかな感じで(ワーグナー歌うとまた違うのかな?)迫力もあったし良かった。大喝采を貰っていた。

エレン役のスーザン・グリットンもかなり熱演だったけど、ああ、いかんせんハーパーに慣れてしまうと普通に聞こえてしまう。ハーパー・ラヴなあたし。

英国を代表する名歌手、キャサリン・ウィン=ロジャースが来てくれたのはホントに嬉しい。ロンドンでのリングの時にエルダと第一ノルンとか歌ってた歌手である。ロンドンはずいぶん前の話なんだが、元気そうでよかった。かなり・・・ふくよかなんだなあというのが改めての印象。やっぱり歌うまいなあと思うけど、もうちょっと歌うとこ多いといいな、なんて。

ジョナサン・サマーズって歌手、昔からいろんなとこで見かけるなあという印象。ものごころついた頃から色々な録音で(雑誌とかカタログとかで)目にしたけど、息が長い歌手なんだなあ。

日本人。望月さんとともに高橋淳さんの出演を楽しみにしてたんだけど、残念健康上の理由で交代。芸達者な彼だからちゃんと出ていたらずいぶん印象に残る演技をされたに違いない。でも、代役の糸賀さんもかなり印象に残った。いい性格テノールになりそうな予感。

望月さん。彼はホントにブリテンの世界に合っている声をしているよ。もっとブリテン他イギリスものをやってほしいです。

加納さんは、麻薬中毒のおばあさん役で気の毒な感じがしました。好きな歌手さんだけに。

それから、こないだサントリーホールただで入れる日のオペラコンサートに出演してはった吉川さんが出演してて嬉しかったでした。

そんなこんなで。
地味で一般受けしそうもない曲なのに、最後はかなりの喝采でちょっとびっくりでした。人は全部入ってたんだろうか(何故かあたしの隣はあいてた。快適)。ロビーはあまりに混んでいて休み時間のおやつのとき座れなかった。何この大盛況。

(いやいや、意外と日本人に受け入れやすいテーマだったのかも? エゲレスと同じく島国に住む日本人だからわかる感覚がこのオペラにはあるなあと。海は荒れると恐いもの、津波や嵐を本当に恐れていること、でもここを離れることはできないこと。観客の皆さんは身に沁みてわかった感。ふむふむ食いついていたのがあたしにも分かった。)

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オペラとは関係ないけど。
初めてコンタクトをして出かけた。
実は私は片目だけもの凄く悪くて(0.1ない)、片目は1.0くらいあるんだわ。なので片方だけコンタクトすればいいわけよ。あー、もう両目ぶん買って損した~。(かたっぽだけ作るってアリなのかね?逆に)

かたっぽだけレンズすると、なんだかちょっと隻眼っぽくて(いや、全然見えないわけではないので違うんだけど)ヴォータンみたい(はあと)なんて思ってしまうのである。(←バカ)

コンタクトレンズでオペラ観ると、メガネの枠が見えなくてとっても快適。そうよ、もっと昔は裸眼で観てたんだからね。メガネかけて観てた今まではちょっと損してたかも。しかし、まだちょっとなじんでなくて・・・少し痛い。

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コメント

こんばんは。
8日公演に行かれたのですね。
5日の金曜公演は、かなりの空席でしたが、それでも喝采は大きく、カーテンコールも数回ありました。
なんといっても、風貌がそれっぽい、スケルトン氏の熱中的な演技に歌がすごかったです。
あの、少年は、カーテンコールに出てこずに残念でした。
もっとも同情を引く出演者だったのに・・・・。

デッカーさんの演出はよけいなことはせずによかったです。
で、もしかしたら、少年ジョンのことを、あえてあまり深く表現しなかったのではと思います。

コンタクトからメガネに全面チェンジして20年。
着脱のうっとうしさから解放されましたが、視界に枠があるうっとうしさは、思えばイヤなものですな。

投稿: yokochan | 2012年10月 8日 (月曜日) 23時34分

ワタクシも、今日(もう昨日か)、観てきました。
いやぁ、ホント、おっしゃるとおりブリテンのオペラは観られるだけでありがたい(笑)。今日の上演は水準も結構高かったと思うし、感動しましたですよ。
yokochanさんは5日とのことですが、今日はカーテンコールに少年ちゃんと出てきましたですよ。2回目のカーテンコールの時なんか、スケルトンと彼だけがまず出てきたりして「ほら、ほんとうはいぢめてなんかいないんだよ」的な(笑)。

しかし、カーテンコールの時は合唱指揮者の三澤さんも手をつなぐ列に加わって欲しかったなぁ。今日の上演の成功の大きな部分を占めていたと思うもの。

そうそう、三澤さん指揮で来年の夏には名古屋で「パルジファル」があるようで。

投稿: ガーター亭亭主 | 2012年10月 9日 (火曜日) 00時50分

>>yokochanさん

こんばんは。よい上演に当たり(今シーズンは私が新国で観るのはこれだけでは?と思います)感動もひとしおです。

私の行った昨日は結構盛況だったのですが、逆に「みんな楽しんでるのかなあ?」と心配してしまっていました。でも、すくなくとも私の印象では新国での「影のない女」や「ヴォツェック」の時のような頭にハテナマークを乗っけて帰る観客はいなかったと思います。日本人にもわかりやすいテーマでしたし、演出もわかりやすかったです。

コンタクト、してらしたこともあったのですね。私は毎日着脱に苦戦していますが、朝 隅田川から観るスカイツリーの細かい網目まで見えた今日はかなり感激しました。

投稿: naoping | 2012年10月 9日 (火曜日) 21時04分

>>ガーター亭亭主さん

同じ日にいらっしゃったのですね。なかなか日本では見れない演目でいい上演で本当によかったです。大枚はたいた甲斐もあるというものです。

少年の役の子はよく頑張ってたなあと。劇団の子なんでしょうけどあんな大舞台でよく演技してたなあと思いました。

合唱団はホントに良かったです。いつもうまいので感心しますが。昔むかし、引っ越し公演で外国の人の合唱を聴いて「やっぱり実力が違うよなあ」とか思ったけど最近は昔ほどは遜色はない気がしてきました。

名古屋でパルシファルですかあ。長谷川顕さんがグルネマンツ・・・。
http://parsifal2013.jimdo.com/


投稿: naoping | 2012年10月 9日 (火曜日) 21時22分

8日の公演に行きました。
とても良い公演でしたよね。
でも最後にエレンが群衆の仲間入りしてしまう
デッカーの演出、あまりにも救いがない。
自分が初めて、この作品を聞いたのはデービス、
ヴィッカーズによるものですけど

>本来の無骨な漁師って意味では、、、

ヴィッカーズのピーターグライムズが、そういう感じで、スケルトン自身はピアーズでなく、どちらかと言えばヴィッカースのようなグライムズを目指している事をインタビューで言ってました。今年の夏のBBCプロムナードコンサートでENOによるコンサート形式の公演がありBBC radio3から録音したのも予習として聞きました。
エド・ガーディナーの指揮は従来からのブリテン・トーンを殺さないながら3幕はヴォツェックやマクベス夫人の色合いも明確に表現していて、こちら熱のこもった良い演奏でした。

投稿: シロクマ雄 | 2012年10月 9日 (火曜日) 23時23分

>>シロクマ雄さん

おお、同じ日だったのですね。いい公演でした~。
確かに演出、最後はエレンも(本当に曲の最後の最後になって)街の人と同化してしまうのだけど、あれは仕方ないなあ、女一人で生きて行くのは大変だもの、とか思ってしまいました。

ピーターはイメージ的にはホントはピアーズよりヴィッカーズなんだろうなあと思いますね(ワタシ聴いたことないんだけど)。ブリテンは何でも愛するピアーズが演じることを念頭に置いて作曲してるので仕方ないけど、ホントはもっと無骨な役ですよね。

今回の公演を見まして、このオペラが”ブリテン&ピアーズ”の亡霊から離れて、イギリス以外の歌劇場で(東洋の島国で!)こんなに素直に受け入れられるんだ!というのを感じまして、嬉しくなりました。この公演に行けたことを、今はブリテンに感謝しつつ「ビリー・バッド」を聴いている次第であります。

投稿: naoping | 2012年10月10日 (水曜日) 20時58分

わたしも8日に観てきました。演出からコーラスに至るまで全てが高レベルの素晴らしい公演だったと思います。
間奏曲も女性の四重唱もピーターの最後のモノローグもみんな素晴らしかったのですが、とりわけ印象に残ったのは演出的に改変されたラストシーン。バルストロードの'Goodbye、peter’の一言と、エレンが村人の側に身を投じていく姿には胸をえぐられる想いが致しました。

今月は「隅田川」と「カーリューリヴァー」の一夜もあるんですよね。まだチケット取ってないんだど、どうしよう・・・・

投稿: 白夜 | 2012年10月11日 (木曜日) 23時03分

11日、観てきました。
舞台全体で感じさせられた“深い”公演でした。申し訳ないけれど、音楽で感動しなかったんです。そうではなく、音楽とストーリー、そして劇詩が一体となり、総合的な力で迫ってくる-。そんなオペラだったのですね。
オーケストラが東京交響楽団だったら・・・とは思いましたが(やっぱ東フィル、上手さに欠けると思います)、アームストロングの指揮が的確でしたし、スケルトンとグリットンの主役がよかったし、ウィン=ロジャースもいい。けれど、そんな突出を感じさせない、演出の力によるオペラのトータルな力が感動を呼ぶのだと思いました。
ただし!観に来たお客さん、何を考えていたんだか・・・。間奏曲になると途端にがさごそ。間奏曲も非常に大事なのに、ぜんぜん気にしない。幕が半分おりたところで、一人が拍手しやがった!こりゃ、「ピピピ」と鳴るよりもっとたちが悪い!「たまには口直しに」なんていう婆さんたちが話していたり・・・。今日は最悪の客でありました。

投稿: IANIS | 2012年10月11日 (木曜日) 23時49分

>>白夜さん

同じ日でしたのですね。

おっしゃる通り、大変レベルの高い公演だったと思います。ワタシ、この頃新国立って一年に一回くらいなんで、今回は運よく良いのに当たったのか、それとも凄くレベルが上がったのかわかりませんが、とても良かったです。私が印象に残ったのは(本文にも書きましたが)第一幕で嵐が来るので大騒ぎ的なシーンで、思わず周りの観客席を見まわしてしまったほど皆が引き込まれたことです。

カーリューはパルシファルの頃に慌てて券を入手しましたが、ずいぶん後ろのほうしか残ってなくてかなりがっかりしました。

投稿: naoping | 2012年10月13日 (土曜日) 11時00分

>>IANISさん

こんにちは。
「音楽で感動しない」っていうのは結構同意しますね。私はブリテンのオペラってホントに生で見聴きするものだと思っています。昔、二期会の「真夏の夜の夢」を観に行ったとき、かなり一生懸命予習をしたのですがそれまで面白くなくて正直「困ったなあ」って感じだったんですけど、いざ本番の舞台を観たら・・・ものすごく面白かったです。他のオペラでもそうなんですけど、プリテンのオペラはホントに総合的な力で訴えかけてくるんですよね。
初演の時に「絶対これ失敗だ」って作曲者は確信してたのに実際は大成功を収めたって解説にありますけど、おそらく作曲者も想像つかないほどの、台本とそれに付けた音楽の力、総合的な力がこのオペラにはあったんだと思います。

しかし、11日はお客さんがこんなじゃちょっと損した感じですね。間奏曲あってのピーター・グライムズが・・・(哀)。

投稿: naoping | 2012年10月13日 (土曜日) 11時17分

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