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2012年6月10日 (日曜日)

飯守さんの「さまよえるオランダ人」

Pap_0028_3R. ワーグナー/「さまよえるオランダ人」(全曲・演奏会形式)
ダーラント:小鉄和広
ゼンタ:並河寿美
エリック:片寄純也
マリー:小川明子
舵手:高野二郎
オランダ人:大沼徹

指揮:飯守泰次郎
東京アカデミッシェカペレ

すみだトリフォニーホール(大ホール)

過去記事:マイスタージンガー第3幕
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いやあ、行ってきた。飯守さんのオランダ人。
意外や意外、飯守さんが日本でオランダ人振るの初めてなんだそうな。外国では振ってるらしいが。貴重だな。

今回は、このブログを見て下さった関係者の方のご配慮によりこの貧乏人のわたくしが友人(ワーグナーほぼ初心者)をもひきつれてワーグナーのオペラに行くという極めて珍しいパターンになりました。奇跡です、アマオケとは言え、演奏会形式とは言え。本当にありがとうございました。

で。

会場に入るなり、立て看板を見て友人が「ひゃ~」と驚いた。「ええ??今日は休憩時間なしだって??どういうこと??おトイレいつ行くの??」と。
あたしだって驚いた。そうだ全一幕形式もありだってことをすっかり忘れてた。すくなくともバイロイトではそうやって演奏してた気がする。実際あたしが過去に実演で見たのって・・・正直言ってトンでもなく前なので記憶にない。でも休憩あった気がする。

大丈夫かなあ(友人が)。

確かに休憩なしのほうが、この曲のある種の不気味さ、オランダ人が永遠にさまよい続ける悲しさみたいなのは表現できると思う(とあたしは思っている)。休憩時間を入れるとせっかくの緊張感がまた元に戻ってしまうだろう。

でも。今日はアマオケさんなんだよね。アマオケさんが最後まで休憩なしで2時間30分もかかる曲を。大丈夫かな。疲れないかな。ダレたりしないかな。

しかも対訳ないから友人はついていけなくなったりしないかな、というのも心配だった。でもまあもうあとには引けない。

さて。前置きが長くなったがこのアカデミッシェカペレさんの演奏会に行かせて頂くのは二度目である。前も飯守さんの指揮でワーグナーだった。マイスタージンガーの第3幕全曲ってハードなものだったが、正直・・・ブログにははっきり書いてないけど(前の出演者の方ごめんなさい)、まあアマチュアだからなあっていうちょっと点数を甘くしていた部分もあった。

だもんで、正直本日もそれーーーほど多大な期待はしてなかったのでした(ごめんなさい)。

しかし。

最初の序曲から違ってた。何この緊張感。気合いが違う。やっぱりこの序曲は演奏し慣れているのかな。

・・・って思ってたけど、本編が始まってもこの緊張感はずっと続いていて・・・多分全曲終るまでずっと続いていたんだと思う。そりゃ多少、ソロ楽器の音がやっぱりプロとは違うなあと思うこともたまーにあったりしたんだけど、ホントにそれは1~2回のことで、あとは全く気にせずただただ飯守さんのワーグナー・サウンドにのめり込むだけであった。男声合唱の人々も船乗りらしく力強い。女声合唱も優美。

凄いわあ。何か別の団体になったのかと思うくらいでしたわ。トンでもない緊張感と集中力で突き進み、まるで大海を進む船のようであった。幽霊船のシーンでは船、見えたもん。

飯守さんの指揮も冴えに冴えていて(彼には老化というものはないのだろうか)、何一つ疑問に思うテンポはなく・・・まあ褒めすぎかもしれないけどあたし昔のバイロイトにきたのかと思うくらいだった(昔って・・・いつだよ)。演奏会形式ということで余計な演出とか演技とかがない分、演奏に集中できたのかもしれない。

で、このヘンで歌手の方々。どうも今度のパルシファルの歌手を選ぶときに一緒に選んだという情報もあり、本当に素晴らしい人々であった。どなたもよかった。

とくにゼンタ役の並河さん。本当に素晴らしい声でびっくりした。こんなに素晴らしいゼンタ、そうそう聴けるものではない。バイロイトの録音のアニア・シリアがあたしはダメなんだけど、並河さんの声ってどっちかっつーとやや線の細いヴァルナイ・・・褒めすぎ?・・・みたいな感じで大変私好みだった。高い声もよく出ていて気持ち良かった。

小鉄さんのダーラントは言うまでもなく素晴らしい。当たり前でしょ。

大沼さんのオランダ人は、もうオランダ人にしか見えない。かっこいい。声も素晴らしいだけでなく、若さがあるのがよかった。こんなかっこいいオランダ人だったら娘を勝手にヨメにやっても許すよダーラント。

舵手役の高野さんはとてもリリックな美しい声で、最初から舞台が引き締まった。合唱団は歌ばかりであまり演技まで気が回らない(いや、演奏会形式だからいいんですけどね)ところ、一人で(歌ってないときも)ちゃんと演技をしていたのがプロだなあと感心した。

・・・とまあ、全体的に超ほめちぎってしまったけれど、本当に2時間半があっというまに過ぎ、楽しい幸せな時間でした。いい演奏会をありがとうございました。友人も退屈もせず「あっというまに終った」とびっくりしていたので、私もびっくりしました。

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コメント

本当に充実した公演で、飯守さんのワーグナーを堪能することができましたね。飯守さんは妥協なしの本気っぷり。そしてその飯守さんに心から心服して夢中でついていくアカデミっシェカペレ。第3幕の水夫たちの合唱のあたりでの飯守さんの指揮ぶりはもう、踊っているみたいでありました。歌手陣がまた本気の二期会グレードで、実に聴き応え満点。
途中退出が目立ったのはやはり休憩なし字幕なしのせいでしょうか。初めての方には苦行に等しいかもしれません?そう考えるとお友達は素質満点ですね(笑)

投稿: 白夜 | 2012年6月11日 (月曜日) 22時06分

>>白夜さん

行かれたのですね(勿論ですね!)。
本当によかったですね。一日経ってもまだ思い出してウルウルしちゃうくらいです。私はワーグナーの中ではオランダ人ってあんまり?だったのですが、改めて大傑作だと思いました。

踊ってましたか(笑)。
私の席の前の観客の方が座高が高くて飯守さんの指揮があんまり見えなくて少し残念でした。

歌手もみなさん良かったですね、二期会の本気を見ました。とくに並河さんの歌は「しびれるわぁ」と思いました。

友人はタダ券が複数枚手に入るといつも連れて行くのですが、長いつきあいですっかりオペラ通??になりつつあります。

投稿: naoping | 2012年6月11日 (月曜日) 22時36分

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