ワルキューレ クロブチャール/メトロポリタン ニルソン、リザネク他
ワーグナー:『ワルキューレ』全曲
ビルギット・ニルソン(ブリュンヒルデ)
レオニー・リザネク(ジークリンデ)
ジョン・ヴィッカーズ(ジークムント)
トーマス・ステュアート(ヴォータン)
クリスタ・ルートヴィヒ(フリッカ)
カール・リッダーブッシュ(フンディング)、他
メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団
ベリスラフ・クロブチャール(指揮)
録音時期:1968年2月24日
録音場所:ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場
録音方式:ライヴ (モノラル)
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満を持して(?)、メトの歴史的録音シリーズのワルキューレのレビューをば。大変素晴らしい実況録音で、ワーグナー好きとしては色々と感動的なのだが、まあ問題点はあるので一般的には「絶対これを入手せよ!」などとは書かない。
まず問題点。
・1968年録音なのにモノラルなこと。ラジオ放送用録音なので仕方ないのかな。
・ジークムントがJ・キングじゃなくてヴィッカーズなこと。これだけキャストがそろってるのに惜しい。
・クロブチャールってマイナーな指揮者なこと。
以上の問題点によって、ベーム/バイロイト盤(ルートヴィヒのフリッカを聴くならショルティ盤があるし)を持っていれば、このメト盤は買う必要はあんまりないと思う。
または、別の視点から
・メトロポリタン歌劇場のライブならば、他にもっと条件のよいもの(録音がいいとか、指揮者が有名とか、またはDVDで美しくわかりやすい映像つきのとか)があるのではないか。
以上の問題点によって、(メトの演奏ということで聴くなら)レヴァイン盤があればこの盤は買う必要はないと思う。
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とか言ってしまうとこのCDの存在価値っていったい何なの?何かいいの?何が感動的なの?と思われると思うので、素晴らしい点を。
・意外と?クロブチャールの指揮がいい。いや、ベームなんかと比べるとオケの細かい表現の深みとかはアレだけど(オケや録音のせいもありかも)。ウィーンとかのレギュラー指揮者のシュナイダーとか(たまたま海外旅行に行った時に見る公演ね)結構いいじゃん、あんな感じ。テンポとか安定してるし、第2幕の最初とか力強いし、幕切れとかかなり盛り上がるし。実演で見たらかなり感動しそうだ。
・リザネクが何故か凄い絶好調。リザネク苦手な私でもすごくいいと思った。ド迫力で泣けるレベル。リザネク名物、絶叫の声も勿論入ってる。
・ヴィッカーズがどうもあのキングに慣れてると最初ガッカリ感があるんだけど(あたしだけ?)、リザネクとともに段々と惹き込まれる感じ。大変な熱演。
・ニルソンの熱演も凄い。絶唱というべきか。ルドルフ・ビングにかなりお金を積まれたものと思われる。
・今さら感があるけど、リッダーブッシュの悪者美声ぶりがかなり惚れる。
・今さら感があるけど、ルードヴィヒのフリッカはしみじみ素晴らしい。聴かせるねえ。きめ細かな歌唱が、何故か我らが藤村実穂子さんを思い出した。
・ヴォータンはまあ、スチュワートだなあと。若々しいウォータン。
このシリーズの他のもの(ホフマン物語とか)と同じように、劇場の雰囲気がよく捉えられた録音で、一緒に公演を観てる気になる。演奏上のミスも多少(3幕冒頭ワルキューレの騎行はオケ・歌手とも何だか落ちっぱなし)あるけどそれもまた味。メリケンな熱狂的拍手も長く入ってる。外国の歌劇場に行ってオペラを観たことがある人には、とてもいいかもね。解説書やケースの歌手の写真も何だか懐かしい雰囲気。ああ、昔の歌手って何て神々しいのかしら。
モノラルなのが本当に惜しまれる。音はそんなに悪くないけど、何故か第2幕のジークムントとジークリンデ登場の時からちょっと音がこもったり不安定気味になったりするのは気になる。
このシリーズ、シッパースのマイスタージンガーやベームのフィデリオもあり、なかなかいいのかもしれんね。何このツンデレレビュー。
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シッパースのマイスタージンガー
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コメント
2年前の9月、部屋の床が抜けてCDを買い込むことをやめた。最初、つらかったが最近は平気だ。昔、買ったLP、CD、そして録りためたカセットがあるから、だいたい網羅(ってなんだかよく分かんないが)してるし。と思ったら、シッパーズのマイスタージンガーかよ。桶はどこだ、実況録音盤か、誰がなにをやっているんだ、いや、それより何枚組なんだ? 重量を知りたいんだが。
投稿: 面久院滅多坊 | 2012年1月 8日 (日曜日) 20時31分
>>面久院滅多坊さん
私は部屋の床が抜けないように最初から一階に住んでいます。
シッパースさんのマイスタージンガは↑上にリンク貼りました。カットだらけ3枚組らしいです(笑)。
投稿: naoping | 2012年1月 8日 (日曜日) 20時45分
クロブチャール、むかーしN響アワーで一度観たことあります。たしか「ツァラトゥストラ」を。
どんな演奏かは全く覚えてない(ネットで検索したら、素晴らしかったと褒めてる人はいた)けど、その独特の指揮ぶりだけは忘れられません。
なんか、胸の前に大きなパン生地があって、それを両手のひらで上からグイッグイッと押さえつけるような…うまく表現できないんですが。
たしか年末の第九を振りにきたこともあったような。マタチッチの弟子ということで、日本とも縁があったのかも。
投稿: ぜん | 2012年1月 8日 (日曜日) 21時51分
>>ぜんさん
クロブチャール、名前だけしか知りませなんだ。そうか、N響振ってたのですね。オペラ全曲盤が結構あるから、劇場叩き上げ型な人かなあという印象です。このCDに関してはなかなかいいなって思いました。
指揮ぶり?を観ようと思ってようつべ探しましたが、グンドゥラちゃんの伴奏で映ってるだけでした。パン生地こねてるかな?
http://www.youtube.com/watch?v=5mnFKwD5iYI&feature=fvsr
投稿: naoping | 2012年1月 8日 (日曜日) 22時43分
こんばんは。
クロブちゃんのワルキューレといい、シッパースのマイスタージンガー、どちらもやたらと聴きたいのですが、手がまわりません。
メトの音源はどれも歌手がいいし、指揮者も渋かったり豪華だったりでいいです。
しかしまぁ、いいキャストですこと!
リザネックの叫びは聴きたい!
そしてクロブちゃんは、バイロイトでもかなり活躍した人だし、N響でも馴染みの人。
わたしの印象は、濃い眉毛だったです。
大地の歌を指揮してましたね。
そりゃそうと、naopingさんのbrogで、朝比奈ブルックナーの連続シリーズが始まるとは驚き。
どーかしちゃったのか、と心配しちゃいました(笑)
投稿: yokochan | 2012年1月12日 (木曜日) 22時29分
>>yokochanさん
こんばんは。
このCDはなかなかおすすめです。つか、yokochanさんに是非聴いてほしいなあと思います。まあ、今よりメトのオケが実力不足だったり、録音とか色々とイマイチな点はありつつも、オペラハウスで見聴きする実演の凄さが感じられます。 クロブちゃんもなかなか実力派だと思います。シッパースのはまだ聴いてませんが、かなりのカットがあるということでアレレ・・・。でもキングのワルターは聴いてみたいですね。
朝比奈ブルックナー・・・心配には及びません。そこに朝比奈があるから聴くのです。
投稿: naoping | 2012年1月13日 (金曜日) 22時45分