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2011年7月16日 (土曜日)

アルミンク/トリスタンとイゾルデ

Pap_0559

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」 (コンサート・オペラ)

演出:田尾下哲
トリスタン:リチャード・デッカー
マルケ王:ビャーニ・トール・クリスティンソン
イゾルデ:エヴァ・ヨハンソン
クルヴェナル:石野繁生
メロート:桝貴志
ブランゲーネ:藤村実穂子
牧童、若い船乗りの声:与儀巧
舵取り:吉川健一
合唱:栗友会合唱団
合唱指揮:栗山文昭

クリスティアン・アルミンク指揮/新日本フィルハーモニー交響楽団
(すみだトリフォニーホール)

過去記事:新国立劇場/トリスタンとイゾルデ

びわ湖ホール「トリスタンとイゾルデ」

アルミンク/ローエングリン

アルミンク/戦争レクイエム

アルミンク&新日本フィル/抒情交響曲

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行ってきた、トリスタン。すっごく良かった。ホントに行って良かった。心の底から生きててよかった、神様助けてくれてありがとうって思うくらい(震災後)。

業務連絡~

第2幕二重唱カットは通常通り。

以上。

まー、このところのオペラ鑑賞で「主役外人よりワキの日本人におおいに期待」といういつものパターン。ブランゲーネに実穂子さん、クルヴェナルに石野さんと、これだけでも定価払ってもいいわくらいのメンバー。しかし。題名主役2人もそんなーに悪くはなかった。エヴァ・ヨハンソンは昔からバイロイトに出てるようなゆーめーな歌手だし、トリスタンの人もびわ湖に比べたら全然許せるレベル。ちゃんと最後まで歌ってたし。

本日は(も)、多少オペラ的演技と演出ありの演奏会形式。セットはほとんどなく(ベンチと魔法の薬入れるコップと薬箱くらい)、衣裳も全員黒づくめ(オケと指揮者まで)、まあイゾルデだけはそれっぽい衣裳だったかなくらい。

目立ったものとしては、舞台全面に巨大スクリーンが貼ってあって、全曲にわたってCG映像が上映されるってこと。演奏会形式でイメージが湧きにくい初心者にもやさしい演出である。(じじばば多いロケーションだし)

演技等はまあ、抑え目かなあと。ローエングリンの時みたいに剣で戦ったりしない(何か素手で空気銃を打つような感じ)。

今日は、とってもいい席で(1階前から9番目端)、とても音響がよくオケの音を堪能。まるで最もいい音で録音された全曲盤をヘッドフォンで聴いてる感じ。それはまあ、オケピでなく舞台上にオケが乗ってるからなのであるが、歌手は大声出さなきゃならんので大変そうだなあと思った。

第1幕

「トリスタンとイゾルデ」PV
http://www.youtube.com/watch?v=XpSNCGej-kc&feature=player_embedded#at=13

↑こんな感じで、海の映像から始まる。
詳しく言うと、海鳥が二羽空を飛んでいて、くわえている紐みたいなのが変化して文字(出演者のクレジット)になる。まことに美しく、センスがいい・・・というかどっかで見たことあるなあ外国映画で。

まるで映画を見ているような始まりで、第一幕の間の映像は海で、ずっと船の上である。じっと見ているとちょっと船酔いしそうなので船に弱い方はあまり映像見ないほうがよいかと。

アルミ君のテンポは、早くもなく遅くもなく、ちょうどよい湯加減である。映像と歌手の熱唱でついついオケの存在を忘れる感じ(注・・・褒め言葉です)。

歌手。

冒頭歌う与儀巧さんという歌手は素晴らしい。美声で聴き惚れた。第1幕と第3幕の冒頭を歌うという大事な役回りだが、見事だった。覚えておかなくちゃ。

エヴァ・ヨハンソンという歌手は何度か映像とか音だけとかで見聴きしてるはずであるが、どうもマイスタージンガーのエヴァとかラインの黄金のフライアとかの印象が強い(私だけ?)。声は?っていうと、うーん、どうしたわけか声の印象が私はない。北欧人らしい容姿(ワーグナー歌う人の中では可憐な感じ)のイメージしかない。視覚的にはイゾルデとしてわりと納得のいくほうである。綺麗な金髪だし遠目に見ればなかなかカワイイ。巨ヌーだし。今日聞いた感じでは声は、とにかくでっかくてよく通るという印象。ワーグナーの巨大なオケと張り合える。声は美しいか?というとかなり微妙。なんか・・・とっちらかっているという印象があった。声の大きさでかなり感銘を与えられたが。

実穂子さん。彼女のブランゲーネをナマで聴くのは初めて。底光りするような声が相変わらず素晴らしい。歌い回しといいきめ細やかな表現といい、よく考えられていて一本芯が通ってる感じがする(その歌と一緒に聞いちゃうとヨハンソンはいかにも苦しい)。おてんばなイゾルデを諭す優しいおかあさんという雰囲気でとっても癒される。

石野さん。言うことなしだ。いつもながら何と言う美声だろう。F=Dに似てるけど、よりいいと思う。しかし、あまり色々聞いたことないので、他の役も聴いてみたいな。グンターとかどうかな。F=Dが歌ってた役ならなんでも歌ってほしいな。でもパパゲーノとかは違うな。

トリスタン役のデッカー。このところのトリスタン役に希望の持てなかった私だが、昨年末のトリスタン(スティーヴン・グールド)にかなり希望を持てるようになってきたので、ちょっと期待したんだけど・・・。ほれ薬飲む前はほとんど声を抑えていた。飲んでから少し声を出すようになった。とにかく日本で2回もトリスタンを歌うんで、色々大変だ。テノーラルな魅力はイマイチのような。最初ハンス・ホップフのような声かなと思ったけどそうでもなく。

で、惚れ薬を飲んでからのオケ素晴らしく。合唱も入りとんでもなく盛りあがって良かった。前に聴いたアルミンクのローエングリンの印象のまま臨んだので、この変化は物凄いものだった。人間、やっぱり変わるんだなあ。視覚的にも、巨漢の歌手二人がいちゃいちゃする後ろで美しいアルミンクの指揮が見え隠れするのもなかなか趣きがあった(あとコンマスのもじゃもじゃ)。

第2幕

映像は森の中。蛍が飛んでたりする。木が一本、燃えたり光ったりするさまはなんとなくバイロイトのヴィデオを思い出す(ルネ・コロの出てるやつね)。ブランゲーネが見張りの歌を歌ってるときは何か石の塔みたいなのが映る。ブランゲーネの見張りの歌、素晴らしい。舞台裏から聴こえる実穂子さんの声が何と幻想的なのだろう。永田音響設計、いい仕事してる。

ヨハンソンは第1幕は黒いドレスだったんだけど、第2幕は衣裳を変えて登場。薄い水色のドレスで巨ヌーを強調。なんかホントにフライアみたいな感じである。トリスタンの人は第1幕より頑張ってる感じ。二人の歌はまあ・・・そこそこ。オケが素晴らしい。雄弁だ。日本のオケ、何と素晴らしいのだろう。

マルケ王登場。この歌手の声はどっから出ているのだろう。不思議な発声。顔からしてかなり癖の強そうな歌手。うまいのかな。

第3幕

拍手なしで指揮者登場。

石野さん鑑賞ターーーイム。もうね、楽劇「クルヴェナル」って言ってもいい第3幕。どんなに心待ちにしてたか。あ、でも牧童の人の声も素晴らしい。この二人のシーンはうっとりして、ずっとこのシーンが続いて欲しいって思ったほどよ。それじゃオペラ進まなくて困るけど。石野さんはオトマール・シェック声楽コンクールで優勝したんだってね(そんなのあるのも知らないわ)。F=Dの歌うシェックの歌曲集持ってたなあ。何で買ったのかしら、そんなしぶいの。びわ湖同様でかいばかりで非力のトリスタンを、「担いでカレオールまで運んできた」という歌詞が、ギャグに聞こえなくなるほど説得力のある歌声。

映像は・・・なんか宇宙。銀河系っていうか。地球が何かに攻撃されたっていう体。オンボロ地球。でも、だんだんと曲が進むにつれて復活してくる。最後は美しい地球に・・・っていうか、演奏に圧倒され過ぎで、あんまりどうでもよくなる感じ。演出の人もそう思って作ったんじゃないかと(違うか)。映像はここでは別にいらない。強いて言えば、台本通りに荒涼とした海原にすればよかったかなと。

トリスタン気がついた。まあ、歌は分厚いオケに対抗して頑張ってた。聴き惚れるほどではなかったけどなかなか頑張ってたと思う。

イゾルデがぶっ飛んでくる。まあ、ホントにパイオツカイデー、じゃなくて声がでっかい。声量に圧倒されて感動してしまう。「愛の死」など本当に感銘深かった。凄い威力だ。

この上ない感動に包まれて幕を閉じるはずだったのに、アルミ君が手を下ろす前に客席後方からフライング拍手&ブラヴォーが。マジで「氏んで」って言いたいくらい憤りを感じた。今日フライングブラヴォーしたヤツは、昨年の抒情交響曲を経験してない奴らだ。みんな、あの素晴らしい沈黙を待っていたのに(泣泣泣)。明後日の公演はちゃんと沈黙してほしい。切に切に願う。

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素晴らしい演奏の余韻を残しつつ、アルカキットのダイソーへ(←えええ~??) 実はウチの近所のダイソーでは入手できない口紅を買いに行ったのだ。100円の口紅・・・どんだけ貧乏なの?ってわけでなく、同じ色を他の普通のメーカーで探したんだけどどうしてもなくて。

Pap_0558 で、ついでにCD売り場を見たら織井茂子&伊藤久男のカップリングがあったので購入。500円+消費税だし5曲しか入ってないけど・・・歌唱は素晴らしい。あけたとたんにCDケースがぶっ壊れた。さすがダイソー。

この二人って何か私と縁がある気がす(伊藤さんは福島生まれで私と誕生日が一緒、織井さんは私と出身地が一緒)。

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追加。

実は、私の隣の席がずっと空いてたんである。てっきり完売なのかと思ってたんだけど。で、演奏中はとても快適だったのだが、もしかして目ざとい後ろのほうの席の人が「そこ、あいてますか?」とかずるして座ろうとしたらどうしよう・・・と休み時間中緊張してしまった。もしかして座ろうとした人が凄い太ってて、汗臭くて、鼻息荒かったら台なしだわ、とか思った。

で、断る理由を考えた。「じ、実は一緒に来るはずだった主人が先日亡くなりまして・・・おそらく主人の霊がここに座っていると思いますが、それでもよければ」とか、涙を浮かべて答えてみようかな、とか。タラソワコーチかよっ。

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コメント

あのフライングの拍手とブラヴォーを本当に許しがたいですね。素晴らしい演奏(と演奏家)への冒涜です。

それにしても本当に素晴らしい公演でした。たしかに歌手には仰るようなデコボコはありましたし、最後の「愛の死」あたりはいっぱいいっぱいという印象が否めませんでしたが、何よりもまずアルミンクと新日本フィルが揺るぎないワーグナー・サウンドのベースを作り上げていました。いつもの丁寧で叙情味の勝った音楽作りで人物の心理の綾を描き出していくその上に、時に熱く激しく盛り上げたり、また時には猛烈に速いテンポをとったりといったあたり、アルミンクの並々ならぬ作品への共感の深さを聴かせてくれたのではないでしょうか。
マルケ王の声質はなんというかユニークでしたね。存在感は十分なのですが、「王」という感じではなかったかもしれません。
演出では、牧童やブランゲーネのバルコニーの使い方が音響的に効いていたように思います。というかブランゲーネの見張りの歌はバルコニーではありませんでしたか?

おまけ。明日のNHK-FMシンフォニーコンサートは飯守さんと関西フィルによる「ジークフリート」第1幕です。二日続けてワーグナー!

投稿: 白夜 | 2011年7月17日 (日曜日) 01時31分

>>白夜さん

おや、また一緒の日だったようですね(笑)。

フライングブラヴォーは頭にはきたものの(何かあのせいでヘンな終わり方になってしまいましたね)、公演自体は本当に素晴らしかったです。まあこの曲は全部ナマで聴くと大体いつも素晴らしいと思うんですが(幸せなことですね)。アルミンクの今まで聴いた中で並みはずれて素晴らしい公演でした。オケが本当によく鳴ってたし、アルミンクのテンポも何処もおかしい所なく意味深いものだったし、どんなに感謝してもし足りないくらい。そういえばブランゲーネ、バルコニーだったかも? 私一番端っこの席であんまり見えなかったんですねバルコニーが。でもバルコニーで歌ったりバンダが演奏したりするのは音響的に効果的で本当によかったと思います、おっしゃる通り。改めていいホールだなと思いました。

ジークフリート、情報ありがとうございます。FMの入りがあまりウチよくないんですが、聴いてみます。

投稿: naoping | 2011年7月17日 (日曜日) 10時45分

たいへんご無沙汰しております。お元気ですか?私も生きてて良かったです。ブランゲーネとクルヴェナールは圧巻であったと思います。

私が思ったことはnaopingさんがほとんど書き尽くされていらっしゃるので、アレなんですが、第3幕にもわずかな(旧時代式の?)カットがあったように思います。

(第3幕のアルミンクの登壇時、トリスタンを踏み潰さなかったか心配でした(笑)。)

あと、第2幕のブランゲーネですが、舞台裏ではなく、右上のバルコニー(第1幕で合唱団が陣取っていたところ)にいたような気がします。

ところで、第1幕のイゾルデのモノローグ、日本語字幕だけでなくドイツ語表記もありましたが、ヨハンソンがモニターで見ていたのでしょうか??

私も師匠と同じく、明日は「オレ様、この曲知ってるんだぜ!」と言わんばかりのフライング軍団がいないことを祈っています。

とりあえず今日は「ジークフリート」第1幕の放送時までゆっくり過ごします。(関西まで行けなくてがっかりしていましたが、NHKに感謝です!)

投稿: Niklaus Vogel | 2011年7月17日 (日曜日) 10時51分

>>Niklaus Vogelさん

おやっ、お久しぶりですhappy01。お元気でいらっしゃったのですね!本当に何よりです。で、同じ日に行かれたのですね。最近ちょっとはお仕事に余裕出てきたんでしょうか。

第3幕カット、ありましたか。なにぶんにも旧時代式の女(メルヒオール時代)なもので気がつきませんでした。

アルミンク・・・カーテンコールの時可愛かったなあと。ちょっと母性本能くすぐられてしまったです(オケをたたせようと手を上げたのに、誰もたたなかったあとのリアクション)。

実穂子さん、右上バルコニーじゃ見えないっすな。私の席右はじだったもので(笑)

>イゾルデのモノローグ
そうそう、そこだけドイツ語の歌詞が映してありましたね。「イゾルデの物語」だから?とか思ってたんですが、まさかヨハンソンちゃんがまだうろ覚えだったとかじゃないでしょうね。

私も・・・ジークフリートで関西行脚を一瞬考えました。聴けるようなので嬉しいですね。

投稿: naoping | 2011年7月17日 (日曜日) 12時28分

今日はフライングありませんでした。
藤村さんと石野さん、本っ当に素晴らしかったです。
オケが炸裂する時の威力は劇場では味わえない、演奏会形式ならではの魅力だと思いました。
デッカーの声は殆ど覆われちゃってましたけど(笑)

投稿: フィディ | 2011年7月18日 (月曜日) 19時26分

>>フィディさん

あ、今日行かれたのですね? フラブラなかったのですね。ほっとしました。やっぱり藤村さん石野さん最強ですよね。
本当に、この公演で「命があってよかった」って思った関東地方のワグネリアンは多かったのではないかと(オーバー?)。ワーグナーのオケの響きを堪能しましたね。

私はW杯とともにいい連休でした。

投稿: naoping | 2011年7月18日 (月曜日) 20時58分

こんばんは。
すっかりオペラにご無沙汰しているわたくしです。
まだ先だろうと思っていたら、もう7月で、もう終わってしまったんですね・・・・。
なんということでしょうか。
自粛生活がすっかり板につき、世間様からすっかり疎くなり、悠久の昔のワーグナーに慰めを見出しているこの頃です。

でも、そんな気持ちをふるい起してくれちゃうnaopingさんの記事。
ヨハンソンは、ボリューミーなゼンタをかつて聴きました。デッカー君も昨年の悪夢を打ち払うものだったご様子。
そして、日本人歌手たちの素晴らしさ。

無性に、ワーグナーの舞台が恋しいですぅ~。
とりあえず、荒川の黄昏で、復活を遂げたい「さまよえるクラヲタ人」でございました。
ちなみに、来春のびわ湖は、「タンホイザー」みたいです。横浜でもやるはずです。

投稿: yokochan | 2011年7月19日 (火曜日) 22時09分

>>yokochanさん

こんばんは。
おお、行かれなかったのですね(悲)。自粛生活ですか・・・実は私もそうなんですが(全然自粛してるように見えない?)。有料のコンサート、以前よりあんまり行ってません。かわりにうまいアマオケを見つけてタダでじゃんじゃん行ってます。そのぶん浮いたお金で高い(でも、せいぜい一万円台)のに行くって感じでやりくりしてます。ということで欲求不満になってませんね。

トリスタン、良かったです。主役二人がイマイチだったけど、日本人があんなに素晴らしい歌唱をしてくれているのでとてもうれしくなりました(欧米人以上!)。やっぱり標題役は新国立のほうが圧倒的によかったです。しかしどんなにしょぼいトリスタンが出てきても「びわ湖よりまし」って思えるようになりました。

荒川の黄昏、行かれるのですか~。実はまだどの日にしようか迷って買ってません。

びわ湖タンホイザー、また石野さんが出るならびわ湖まで行ってもいいかもです。出ないかな?

投稿: naoping | 2011年7月20日 (水曜日) 23時27分

自己レス。石野さんは出ないような。残念。

投稿: naoping | 2011年7月23日 (土曜日) 15時35分

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