ジョルジュ・プルーデルマッハー リサイタル/ピアノ版「春の祭典」他
シューベルト:4つの即興曲
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」
ドビュッシー:12の練習曲より
・4度音程のための
・対位法的響きのための
・組み合わされたアルペッジョのための
・和音のための
ストラヴィンスキー=プルーデルマッハー:「春の祭典」(ピアノ版)
ジョルジュ・プルーデルマッハー(ピアノ)
使用ピアノ:スタインウェイ
(4月22日 トッパンホール)
地震後初コンサート出没。東京ではまあまあ普通にコンサートは行われているようだが、外国の指揮者や演奏家はキャンセルしまくり。たまたま東京にいてあの震度5を経験したのに演奏を実行、再度やってきては精力的にコンサートをしてくれる指揮者もいる一方、放射線にビビってトンズラしちゃった指揮者もいる(陽気なインキネンも?)。
昨日、行ってきたコンサートも前売り券は買わず、それどころか券買ったの開演ぎりぎり(・・・道に迷ったので)。まあ、5500円と日本のオケのコンサートだって行けてしまうお金をたった一人の知らないフランスのおっさんのコンサートに費やすのはどうかなあ、と思ったんだけど。ネットで見たらなかなか凄い演奏をする人だっていうし、何よりもこれは
「経済活動」
になる。何でもそう思うと無駄使いでも何でもない。
しかし。凄いコンサートだった。行って良かったと心の底から思った。そんなコンサート、普通にそんなにあるものではない。
まず、前半はごく普通に、独墺系の曲。オーソドックスである。まあシューベルトのこの曲はよく知らないんだけど、「熱情」は子供の頃ケンプの演奏を耳タコができるほど聴いてたのでよく知ってる、好きな曲だ。ナマで聴くのはじめて。
音がでけえ。
初めて行くホールだったので、前から4番目を取ってしまったのだが近すぎた。頭にガンガン響く。このおっさんの打鍵が強すぎるのか、ホールのせいなのかわからん。しかし。
とても色彩的な演奏。何と言うか、ベートーヴェンはシンフォニストだから最初はオーケストラの演奏でこの曲を頭の中でこさえて行ったんじゃないかなと。ひとつひとつのフレーズが「あ、これは弦楽器かも」「ここはオーボエでしょ?」みたいに聴こえてくる。これは驚いた。だって今までこの曲は全部ピアノの音でしか聴こえなかったから。そういう演奏をする人なのかなあ。おもしろい、丁寧なおじぎ。
休憩後、後半は後ろのほうの席に移動して聴く。(7割くらいの入りだったので。)
まずお国もののドビュッシー。なんて色彩的な演奏。自国物だから血となり肉となっている曲なんだろうな(よく知らんが)。うっとりと鑑賞。
さて、お待ちかね?メインのハルサイ。ハルサイは今まで(いろんな人で)ピアノに編曲されていたらしいが、今回はこのピアニスト自身の編曲で。
今まで普通にまじめに演奏していたが(別にふざけてるわけじゃないけど)、この曲で突然このおっさんの個性が炸裂。あいかわらずでっかい音で、オケ版には勝るとも劣らない爆演を繰り広げていく。ホントに一人でやってるの?とナマ演奏じゃなかったら疑うくらいに凄い。凄いテクニック。絶対に手が3つか4つあるんだ、見えないだけで。
残念ながら手元が見えない席だったので、手元の動きはよくわからなかったのだが、たまに「こんな姿勢でピアノを弾いてるのクラシックでは初めて見るわ」みたいな感じでやってる。この人ジャズも演奏するらしいんで、普通なのかな。
で(文章にするのがだんだんあほらしくなった)、もうなんか唖然を通り越してだんだん可笑しくなってきてヘラヘラしてみていた。「このおっちゃん・・・ヘンタイや」と心の中でつぶやいた。この人、ハルサイを演奏するために14時間も飛行機乗ってフランスからやってきたんだ(今回は大阪と東京の2回しかしないみたい)。そう考えると胸が熱くなった。
最後は大拍手でブラヴォーも出た。観客のみんなも大満足だったのに、なかなか帰らない客のために(あんなバカテク演奏のあとで!)4曲も追加演奏。ドビュッシーやラヴェルが本当に素晴らしく、夜のガスパールの「オンディーヌ」ではホールの中が海水でいっぱいになるような感じがした。突然ポピュラーな「楽興の時」はびっくりしたけど、最後までふざけることもなく普通の演奏だった。そろそろこのおっさんを許してあげようよ~と思ったらやっと解散に。ほっとした。「ヘンタイバカテクおやじ」とあたしは名付けた。(フランスのえらい先生に失礼だ、ごめんなさい)
お開き後、お誘い頂いたよこよこさんとお食事(というかビール)。興奮冷めやらぬ中、本当に楽しかったでした(酔うとうるさくてごめんなさい)。お勉強になりました。いいコンサートをご紹介頂き本当に感謝しております。
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↓ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集
帰宅後。いつものように「タモリ倶楽部」を見たらフルトヴェングラー特集だった。酔っぱらってるせいだ、ヘンな夢に違いないと目をごしごし。しかしこれは本当で、「録音に入ってる音楽以外の音」を鑑賞するという特集だった(フルベンの入場の足音など)。何でメンゲルベルクのマタイとかバルビの唸り声が入ってないの?
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コメント
昨夜はありがとうございました。
あのコンサートの後居酒屋っつうのが
また味な(笑)感じで良かったです。
それにしても、
すんごいモノ聴かされちゃったですね。
ホントに言葉にするのがアホらし…
また懲りずに、魑魅魍魎=面白スゴそうなもの
ご同行くださいませ。
投稿: よこよこ | 2011年4月23日 (土曜日) 19時03分
いつも楽しく拝見させていただいております。
初めてコメントつけさせていただきます。
ジョルジュ・プルーデルマッハー氏はみなさまよくご存知の
ブレーズ盤のベルクの「ルル」で
ピアノ・ソロを担当しているので私もよく耳にしています。
(ちなみにヴァイオリン・ソロはピエール・ドゥーカン)
私も15年くらい前に京都に住んでいたおりに
ラヴェルのピアノ協奏曲で実演に接したことがあります。
あのときは指揮者の大友さん目当ての熟女が多いのが目につきました。
すみません。つまらんことでおじゃましました。
投稿: 美東 | 2011年4月24日 (日曜日) 00時53分
>>よこよこさん
こちらこそどうもお世話様でした。コンサート→居酒屋は私の普通のコースでございます(笑)。
いやあ、ホントに素晴らしかったです。終始口があんぐりでした。ラ・ヴァルスが聴きたいからラヴェルのCD買おうかなとまで思いました。
またヘンなもの・・・いえ面白そうな演奏会がありましたら教えて下さいませ。
投稿: naoping | 2011年4月24日 (日曜日) 01時14分
>>美東さん
いつもお読みいただき&コメント頂きありがとうございます。
ベルクのルル・・・これはびっくりです。ご同行頂いた↑よこよこさんにプルーデルマッハーが映画「ある愛の詩」のピアノソロやってたという話を聞き「いろんなことしてる人なんだな」って思ったんですが。ということは昔から(中学生の頃から?)彼の演奏をワタシ、聴いてたってことになります。まあ、素晴らしい。すぐさまブーレーズ盤解説書を引っ張り出してしまいました。何十回(何百回?)も聴いてるはずなのに今まで全然気づかず。今度からもうちょっと意識して聴きますね。素敵な情報ありがとうございました。
投稿: naoping | 2011年4月24日 (日曜日) 01時16分
プルーデルマッハーは昔"フランス音楽のエスプリ"というLPのシリーズものでラヴェルの室内楽をジャリなどとやっていたのを持っていました。
あと、何年か前にフセイン・セルメットと2台ピアノの『ラ・ヴァルス』を東京文化会館でやったのを聴きましたが、あれは凄かったです。
投稿: 蜜 | 2011年4月28日 (木曜日) 20時07分
>>蜜さん
ブルーデルマッハーさんは結構日本に来てるのですね。あまりピアノ関係に縁がなかったので、皆さまに色々と教えられてばっかりです(笑)。
ラ・ヴァルスいいですねえ。私この曲ものすごく大好きなんですけど、この人のピアノでナマでって聴いてみたいです。
投稿: naoping | 2011年4月28日 (木曜日) 22時37分
プルーデルマッハー情報です。
塔にてインタヴュー掲載されてました。
http://tower.jp/article/interview/79362
投稿: 美東 | 2011年7月28日 (木曜日) 03時52分
>>美東さん
情報ありがとうございます。なかなか興味深いインタビューですね。
私はピアノ素人なのですが、この人の演奏に接してからピアノって楽器はオケ以上に凄いなあって思いました。演奏が魔法のようでしたもの。
投稿: naoping | 2011年7月28日 (木曜日) 20時48分