マリインスキー・オペラ「影のない女」その2
その1
<第3幕>
よくわからんが、あたしのような「影のない女」マニアは(映像を見ていても舞台でも)第3幕になるといやにドキドキする。とにかくカットの仕方がその時によって色々なので、音楽にやや没頭できなくなるのである。こないだの新国立のときもそうだったんだけど。
舞台上。何もかもぶっとんだバラクん家の家具やら洗濯機やら車やらが上からぶらさがってる。バラクと妻が離れて伏せってる。2重唱。今ごろだけど、このバラクの妻役の歌手はなかなか素晴らしい。
乳母。バラクん家のちゃぶ台の舟をこいで登場。皇后にあいそを尽かされる。半狂乱。ここらへんの歌カット。まあしょうがない。
皇后の独白(だんだんアタシも書いていて疲れてきた)。まあ当然カットされるんだろうなあと思いながらドキドキしてたら・・・あらカットなしなの? きゃあ。ロシア人がドイツ語を覚えるのは大変(まあプロンプターはいるにしろ)。オケとのタイミングを合わせるのも大変。皇后さんはすごく頑張ってたけどやっぱりここはロシア人には難しいんじゃないかなあ、スタジオ収録ならまだしも。でも、本当に嬉しい!!ここの部分をナマで聴けるなんて!!しかもオペラのちゃんとした舞台で!!もうホントこれだけで今回高い席を奮発してよかったよかった~~~。
その場の盛り上がりと緊張感は比類なく(ちゃんとできるのか?的な)、私ももう少しで決壊しそうになりつつ耐えていたんだが・・・「私は飲みません!!」の苦悶の叫びとともに、助かった皇帝の声が・・・何だか「ハ~~イ 呼んだぁ?」みたいな感じでいかにもヘルデンテナーとはかけ離れていたため、出るべき涙がひっこんでしまった。あの場面はよっぽど注意しないとギャグになりかねないということがよくわかった(こないだの新国とともに)。
その後もカットなく(たぶん)。ここらへんはよっぽどゲルギエフはこだわったのだろう。なんせ、このオペラでもっともカッコイイ、盛り上がる素晴らしい部分が通常上演ではばっさばっさとカットされている傾向にあるのだから。なので、本当に今日は嬉しかった。大好きな最後の4人の重唱も本当に素晴らしく・・・いや歌手は色んなところで何度も入りを間違えたりしてたので何だかもうめちゃくちゃになってるとこもあったんだけど・・・でもいいじゃないか。とにかく聴けたんだから。「エ~ンゲルズィント~~(そう言っているのは天使です)」って皇后が歌う大好きなとこ、聴けたし。涙をこらえるのが必死でしたわ。というかだんだん風邪薬が切れて気が遠くなってきました。くらくら。
最後は合唱団が一般人のようないろんなカッコで出てきて舞台に登場。何かバイロイトのシェロー演出の「神々の黄昏」を思い出した。
歌手のこと。皇后の人はとてもせくしいな感じは最初しましたが、高音は(苦しいながらも)出してたしよかったと思いました。あの難役をよく引き受けたものだ。
バラクの妻の人は指揮者の次にブラヴォーを受けていました。普通のバラク妻レベルには達していました。容姿もセクシーダイナマイトでまあ・・・ちょっとイメージと違うけどよかったです。
乳母の人は最初は入りを間違えたりオケと合わなかったりちょっとヒヤヒヤしたけど怪しい雰囲気は出てたし演技とかよかったんじゃないでしょうか。ロシア人で初めてあの乳母役を歌った人らしいです。
あとは・・・まあいいや。
ゲルギエフは・・・この曲が好きなんだろうなあ。かなり愛情を持ってやってるような気がした。しかし最初っからバリバリオケを鳴らさせるというよりは最後のほうにちゃんと盛り上げるために、最初は抑えていたような気がする。第3幕の盛り上げは見事だった。演奏の傷は数えきれないほどたくさんだったけど。いいんだ。
ということで、私は(私は、だよ)こないだの新国立で聴いた「影のない女」よりもよっぽど心惹かれる演奏だった(歌手のレベルは下だったけど)。つか、前は席が悪くてオケがあんまり聴こえなかったので(実は・・・黙ってたけど)欲求不満気味だった。もう・・・こんなんでいいの?(涙)くらいな。今日は一階席で前から16番目だったし、オケもすごく鳴ってたので何か「気が済んだ」って感じが今回はした、とりあえず。演出楽しかった。とりあえず以上。
| 固定リンク
コメント
こちらも日本「影のない女」愛好協会会員の業務連絡。昨日の集会では席が近かったみたいですね。集会の後、旅行会社とか、ブックオフとか回ってから家に着いたので、へとへとで、コメントが遅れました。
私には未だに、同じ会場でドホナーニが指揮したときの音響が耳についていて、ここはもっと繊細に、もっと鋭く盛り上がるはず、なんて思ってばっかりでした。でも、この曲は、やっぱりいいですね。
投稿: にけ | 2011年2月14日 (月曜日) 17時43分
>>にけさん
集会はボチボチの入りでしたね(というか「影のない女」協会を本当に作ったら何人集まるんでしょうね)。
私はドホナーニの日本初演は見てないんですけど(残念まだ社会に出てなかった・・・しかもこのオペラ知らなかった)、サヴァリッシュ&猿之助を最高としまして、そのあとはもう比べちゃダメなんだなって思いました(前回の新国立の時に悟った)。でも、昨日のはなかなかよかったです。決して歌手もオケも上手ではなかったですがこの曲に対する愛を感じました。私はそれで十分。
演出で町工場が舞台だったので会社の近所が町工場だらけで嬉しくて「影のない女」を歌いたくなります。まあ歌わないですけど。
投稿: naoping | 2011年2月14日 (月曜日) 22時03分
こんばんは。
楽しまれましたね。
読ませていただき、舞台が彷彿としました。
そして、ロシア女歌手は見てみたかったです。
ぴあのサイトに舞台写真がのってるを発見しましたが、記事のとおりでしたので笑えました。
皇帝はなんだか不明な人物ですな。
ゲルギーにはいつもだまされてしまうのですが、執念のシュトラウスだったのですね。
パルシファルやトロイ人、トゥーランドットもやるという超絶倫軍団には驚きを禁じえませんよ!
投稿: yokochan | 2011年2月15日 (火曜日) 23時59分
日本「影のない女」協会のご報告、楽しく拝読しました。
私も協会への入会、希望したいです。
80年代に見た上演と比べてもしょうがないので、私もなるべく楽しむようにしていますが、新国のときは、指揮者のテンポがゆる過ぎて、睡魔との戦いでした。
今回の方が満足度は高かったです。
拙ブログにも「影のない女」の話はよく書いています。
またこれからも、よろしくお願いします。
投稿: 打楽器奏者 | 2011年2月16日 (水曜日) 02時33分
>>yokochanさん
こんばんは。
始めから音色とかに凄い違和感がありましたが(リズムの取り方とかがドイツ系のオケと微妙に違う)、ロシア語のローエングリンをよく聴いていましたのですぐに入り込むことができました。歌手も・・・何か根本的に違うんじゃないかなあとは思いましたが、はてこの曲を日本人がどのくらい歌えるかとか考えると疑問ですし、ずいぶん頑張ったんじゃないかなと、マリインスキー。
ゲルギたんの実演は私はたったの2度目ですが、前回のマクベス夫人もすごく印象深くて私は幸いにもいい印象しかないです。今回は他の演目も観たかったけど、私は「影のない女」でせいいいっぱいでした。
投稿: naoping | 2011年2月16日 (水曜日) 22時07分
>>打楽器奏者さん
初めまして(ですよね?)。いや~よかったですよねマリインスキー。
今まで何度もこのオペラをご覧になっているのですね。私はたったの4回なので(うちサヴァリッシュ2回ですがw)羨ましいです。この先何年もこの曲は上演されないのかなあと思うと暗澹たる気持ちになります。初演が観たかったと思う気持ちはあるのですが、どう考えてもその頃は学生でした。
いっそ日本「影のない女」協会、本当に作ったらどうかなとか思ってる今日この頃です。10人くらいは入りそうな感じがします。会合ではみんなの秘蔵の音源や映像を持ち寄ってあれこれと語りあいたいなあなんて勝手な想像をしてしまいます。
投稿: naoping | 2011年2月16日 (水曜日) 22時24分