エルガー/生命の光 大友直人/東京交響楽団
<東京芸術劇場シリーズ第106回>
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番
エルガー:オラトリオ「生命の光」(日本初演)
ローラン・アルブレヒト・ブロイニンガー(ヴァイオリン)
小林沙羅(ソプラノ)
永井和子(メゾ・ソプラノ)
クリストファー・ジレット(テノール)
クエンティン・ヘイズ(バリトン)
大友直人指揮/東京交響楽団
(10月30日 東京芸術劇場)
過去記事:尾高忠明&東京交響楽団/エルガー 交響曲第1番
(ポーランドラジオ聴きながら執筆。頭はいまだにポーランド脳な事をお許し下さい。ヤン・フォテックという作曲家の「女声と管弦楽のためのダンスソング」は妖怪人間ベムみたいなジャズィな感じがカッコイイぜ。)
台風接近で物凄い大雨の中(券を取っちまってたので)防水ブーツまで当日朝に新調して参戦。いや~ブーツ欲しかったんでちょうどよかったわ。
しかし。やはり当日に「行こうかなどうしようかな~」という客の足を阻んだのか、客席は6割の入り。伝説の晴れ男・大友様の力を持ってしても台風の接近は防げなかったようだ。あたしのせいじゃないからね。
マエストロのちょっとした雑談のあと、ブルッフ。あらあらまたもやブルッフよ。前もエルガーの前に聴いたじゃないのよどんだけブルッフ好きなのよ大友さん、と思ったらカンチガイで前は尾高さんでミューザだった。ごめんなさい、私と一緒に聴いてたお友達(ここ読んでないと思うけど)。
今回は3階席の前から2番目。普通他のホールだったら「結構よくね?」みたいな感じなのにさすがゲイゲキ。思ったようにヴァイオリンの音が届いてこない。しかもこの所の超求心的なショパコンのコンチェルトを聴いていたので、なんだか心に届くものがない。ぶっちゃけゆるい。
(昔、チャイコフスキーコンクールのテレビ取材をしてたスワナイ嬢が本選を聴いていて、あまりに心に迫るコンテスタントの演奏を聴いていられなくなり衝動的に会場を出て行ったのを思い出した。やはりああいう所のパワーって普段の演奏会の演奏とは違うんだな~と思う)
その上。
前回、尾高さんの演奏会の頃はブルッフの協奏曲は好きでバルビローリ指揮のを毎日聴いていたくらいなのである。なのに、知り合いのいらぬ入れ知恵で(ヴィレッジシンガースの亜麻色の髪のなんちゃらに似てると)この曲を聴くたびにそれを思い出してとうとうあまり聴かなくなった。似てないし。オマケに今回の演奏会の解説書にまで書かれてしまい、どうしてもっと強くあの時に「絶対似てない。絶対にだ。」と言わなかったのだろうと強く後悔。せめて「ヴィレッジシンガースなんて今の時代誰も知らないよ。あたしも知らないし。せめて島谷ひとみって言おうよ。」とか言うべきだった。
まあいいや。今回のメインディッシュさえちゃんと聴ければいいのだ。
エルガー、事前のお勉強はばっちりだ。しかし全く初めて聴いて内容も知らんかったという一緒に聴いていたお友達(別々に券取ったのにたまたま隣の隣だった。偶然ってあるもんだな)も「いいわ~、素晴らしいわ~」とか言ってた。うん、本当にいい曲である。舞台横にあるべき字幕がなかったのでちょっと辛かったけれど(しかも客席が暗くて解説書の対訳が読めない)、内容がわからなくても曲としてはかなり聴ける。オペラじゃないんだし。
まあ、キリスト万歳ハレルヤ音楽ではあるが、音楽が分かりやすいのと内容もシンプルなので意外と入りやすい曲だと思う。終わってからの大拍手もブラヴォーも(恐らく初めて聴いたお客さんが大半だったと思うが)それを示している。ずっと鳴りやまぬ拍手。
まあとにかく大友さんの執念の初演というか、その気迫は素晴らしかった。ショパコンを忘れさせるものはあった。合唱も毎度おなじみ辻さんの合唱指導が素晴らしく、英語が不自然には聴こえない(すくなくとも私の耳には)。日本人て「フロイデシェーネ」のドイツ語の歌詞に慣れてしまい、かえって英語って難しいのかなと思うけれど。馴染みのない曲をここまで仕上げられてて、感謝感謝。
独唱。全く初めて聴く小林沙羅さんというお若いソプラノの方は、「盲目の男のお母さん役」ということなので始まる前は違和感があったけれど、オペラじゃないので曲として聴けば全然違和感はなし。お綺麗な方とのことでオペラグラスまで持って行って見たが(おっさんかよ私)、お声が外見にとても合っていて清らかである。オペラの舞台よりも声楽曲のソリストが似合う感じ。マーラー4番はもちろんのこと、「千人の交響曲」の栄光の聖母役とか、「復活」のソプラノとか。マタイ受難曲や、はたまた「戦争レクイエム」もいいかなと思う。ヴィヴラートが少なくて私の好きなオランダのソプラノ歌手ヨー・ヴィンセントを思わせる。まだ20代とのことで、要チェックである。(しかしウィーン在住とのことなのであまり日本には来ないのかな?)
相当息の長い歌手の永井和子さんは安定感のある素晴らしさ。(終演後楽屋口でお見かけしたけど、オペラ歌手のオーラを感じた。素敵。)
で。
私の言いたいのは。
これまで何度も言ったような気がするんだけど、何でわざわざ非力な外人を遠い異国からはるばる呼んでソリストに立たせるのかなあということである。イギリスものだけでなく何でもそう。こないだの滋賀のへなちょこトリスタンだってそうだ。まあヘルデンテノールは人材不足なので仕方ないとしても。日本人の実力は今や昔とは違うのだから、わざわざイギリスから非力なテノール歌手を呼んでくることないんじゃないの? 日本にだっていいリリックテノールはいるんだし。望月さんとか(前に聴いたブリテンは素晴らしかった。英国ものもイケる人だ)。合唱指揮に忙しいだろうが辻さんが歌ったほうが良かったんじゃないのとさえ思った。バリトンの人はちゃんと声が届いていた。
で。
家に帰ってコンサートちらしを事業仕訳していたら、次回の大友さん英国物のチラシがあった。
「大友直人の真骨頂。やはり最後はイギリス音楽」
パヌフニク:交響曲第3番「祭典交響曲」
ラヴェル:ピアノ協奏曲
スタンフォード:交響曲第3番「アイリッシュ」
一曲目のパヌフニクがどっちのパヌフニクだか記述がない。英国音楽ってことでお嬢さんのロクサンナさんのほうかと一瞬思った。でも説明文読んだらポーランド人のお父さんアンジェイのほうだった。なんか紛らわしい。チラシの背景写真がどう見ても英国の町並みだし。まあ何にしろ現代ポーランドものは日本では珍しい。
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前から気になってたんだが。この名前の店はいったい日本にいくつあるんだろう。これはウチの近所にある店の看板だが、行ったことはない。無論アルバン・ベルクの音楽が流れてるとかは絶対ない。
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コメント
エルガー、やっぱ、いったのですね?yokochanさんもいかれたのでしょうか(エルガーだもんネ)?ところで、そうなんです。そのパヌフニク(アンジェイ)、新潟でもやるんですねぇ。意欲は断然支持します。支持しますが、如何せん客の入りが悪くって・・・。前回のオール・エルガー・プロは6割程度。今回はもっと危ない!
投稿: IANIS | 2010年10月31日 (日曜日) 22時55分
今晩は。
下記URLは評論家の山崎浩太郎氏のサイトですが、トップページ右上にリンク設定されている、10月31日付の「可変日記じゃない日記(2)」にこのコンサートのことが書かれています。
http://www.saturn.dti.ne.jp/~arakicho/
ご参考まで。なお、既にお気づきのことでしたら、失礼の段をお許し下さい。
で、末尾のスナックの件ですが・・・「ルル」ならぬ「上海帰りのリル」くらいならば、店内にたまに流れている可能性もありそうですね(カラオケ)。
投稿: クラシカルな某 | 2010年11月 1日 (月曜日) 19時18分
>>JANISさん
yokochanさんは仕事の関係で行かれない・・・ということでした。ものすご~く残念がってらっしゃいました。ここの文章読まれたらきっと悲しみも倍増してしまうのでは・・・と心配です。
おお、新潟でパヌフニク。それっていったい何の肉?って感じですが・・・ポーランド好き&英国好きの私でさえ二の足踏んでしまいそうなプログラム。心配です。
投稿: naoping | 2010年11月 1日 (月曜日) 21時08分
>>クラシカルな某さん
今晩は。山崎さんのサイトは知りませんでした。やはり物書きの方の文章は読みの深さが違うなあと感服してしまいました。 教えて頂いて大感謝です。
「上海帰りのリル」や「シナの夜」など大陸歌謡がカラオケでなく普通にBGMとして流れているスナックがあったら嬉しくて通ってしまいそうです。
投稿: naoping | 2010年11月 1日 (月曜日) 21時17分
大友さんの「生命の光」も尾高さんの「ベルシャザール」も行けなかった白夜です。
今日はポーランド・ラジオでアンジェイ・パヌフニク祭がありますので記念に書き込み(笑)
このひと早くにイギリスに逃れてサーの称号ももらってますから、あれもらっちゃうとイギリスの人みたな感じになっちゃうのかもしれませんね。それにしてもロクサンナが54歳の時の子だということにびっくり!わたしもまだまだ老けこんではいられませんな(笑)
投稿: 白夜 | 2010年11月 5日 (金曜日) 19時59分
>>白夜さん
おお、行かれなかったのですね。私はベルシャザールには行けなかったのですが(「かえる通信」の『ベルシャザールでござーる』というメールにはドン引きしました)、演奏はどうだったのでしょうね。
パヌフニク、「ファンタジア・ポルスカ」ではセミレギュラーな感じなので私の中ではすっかりポーランド人なんですけど(ほとんどパリで過ごし半分フランス人のショパンも・・・)。パヌフニクは「サー」を貰っちゃってるわけですね。そういえば私、お父さんよりロクサンナさんのほうが知ったのは先です。ロンドンで買った音楽雑誌の表紙写真を(タヴァナーとともに)飾ってたので。ロクサンナさんの下に息子さんもいるようですね。すごい。
フィギュアに夢中でノーチェックでした、パヌフニク祭りを聴かなくちゃ。
投稿: naoping | 2010年11月 5日 (金曜日) 21時04分