ズーターマイスター/歌劇「ロメオとジュリエット」
ハインリヒ・ズーターマイスター:歌劇「ロメオとジュリエット」(ロメオとユリア)
アドルフ・ダラポッツァ(ロメオ)、ウルスラ・コシュト(ジュリエット)、テオドール・ニコライ(モンタギュー)、アレクサンダー・マルタ(キャピュレット)その他
ハインツ・ワルベルク指揮/ミュンヘン放送管弦楽団、
バイエルン放送合唱団、テルツ少年合唱団
Heinrich Sutermeister (1910 - 1995)
Romeo und Julia
Dallapozza, Adolf (Tenor), Gruber, Ferry (Tenor), Grumbach, Raimund (Bass), Hansen, Paul [Tenor] (Tenor), Hillebrand, Nikolaus (Bass), Koszut, Urszula (Soprano), Laurich, Hildegard (Alto), Malta, Alexander (Bass), Nicolai, Theodor (Bass), Rosner, Anton (Tenor), Weber, Heinrich (Tenor), Wewezow, Gudrun (Mezzo Soprano), Wilsing, Joern (Baritone)
Wallberg, Heinz
Tolzer Knabenchor, Bavarian Radio Chorus, Munich Radio Symphony Orchestra
↓HMVより購入できます。
Romeo Und Julia: Wallberg / Munich Radio O Dallapozza Koszut
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やや滞ってた「珍しいオペラ」カテゴリーだが。久しぶりに新発見があったのでやっと書ける。珍しオペ好きとしては本当に嬉しい限り。まあ誰もこんなの待ってないと思うけど。
ズーターマイスター作曲の「ロメオとジュリエット」。このオペラがイイ!って知ったのは、ずいぶん前に例の新橋量販電気屋のCD投げ売りコーナーで入手したCDがきっかけ。
Abc Der Gesangskunst Vol.2
このCD、ちょっと昔のドイツの歌手の歌った有名オペラアリアを名字のABC順に並べて収録してあるもの。2枚組が全部で5種で、そのうちの2番目(1はどうした・・・)。とはいうものの、著作権の関係かそれともわざとなのか選曲がテケトー。ホッターがファルスタッフだったり、グリュンマーがチャイコフスキーのオペラだったりとか。必ずしもその歌手の代表的な役柄ではないのがミソ。
で。久々に引っ張り出してみたら、我が愛するクリステル・ゴルツ様が歌ってるのが「おおロメオ~ロメオ~」で始まる「ロメオとジュリエット」(の二重唱)だったわけだ。もちろん全然知らない作曲家なのだが。やや現代的な響きながら官能的で、なんかトリスタンな雰囲気。うしょ~~これは絶対よさそう。
と思い、調べたら全曲盤がデジタル録音であるということで、先日すかさず塔で購入。値段はかなり高かったけどまあしょうがない、全曲聴けるならば。
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←ハインリヒ・ズーターマイスター(1910 - 1995) はスイスの作曲家。カール・オルフやプフィッツナーに学んだ。
「ロメオとユリア」は29歳の時に作曲した2幕のオペラ。台本はシェイクスピアの原作をもとに作曲者が書いた。初演は作曲の翌年の1940年、カール・ベームの指揮でドレスデン・ゼンパーオパーにて行われた。主役ユリアは当時の人気歌手マリア・チェボタリが演じた。初演は成功を収めた(らしい)。
カール・ベームは「ハインリヒ・ズーターマイスター、私がドレスデンで初演した<ロメオとユリア>の作曲者は、現在のヨーロッパの音楽シーンにおいて最も偉大な才能の持ち主である。」と言ってたそうだ。新進作曲家の新作オペラがドレスデンで初演されちゃうところがヨーロッパらしい、しかもベーム。
では、あらすじと音楽の印象を簡単?に。実は解説書はドイツ語の歌詞しか載ってないので、ドイツ版ウィキペディアを参考にかなり想像で補っています・・・違ってるかもしれん。
第一幕
キャピュレット家とモンタギュー家の激しい闘争が描かれる。荒々しいファンファーレとシンバルが印象的。カッコイイ。命令により戦いは止められる。芸達者なグリューバーの歌唱とダラボッツァの陶酔的な高音(ドイツのいろんな録音で活躍してるね、この二人)が印象に残る。
オルフの「カルミナ・ブラーナ」や「賢い女」などで登場するような、歌手数人の重唱が活躍(以下場面転換であちこち出てくる)。ここらへんは師匠の影響受けまくりだ。
キャピュレット家別荘のパーティ。間違ってロメオが招待される。バレエのシーンがチェレスタで始まり静かでとても印象的、そのあと重唱と合唱が加わる。二人は出会い恋におちる、官能的な二重唱。
二人はすぐに(家族によって)お互いが敵同士だと知ることになる。苦悩する二人。そして有名なバルコニーの場面。美しい二重唱はワーグナーの「トリスタン」とオネゲルのオラトリオのような現代的な響きがまじりあった感じ。途中で何故か少年合唱が加わり、星が降るような美しさ。混声合唱が加わり音楽はますます壮大に。(ちなみに前記CDでゴルツが歌ってたのはこのバルコニーのシーンの断片で、調べたら指揮はS=イッセルシュテットだそうな)
最後は名を呼び合い静かに幻想的に幕を閉じる。
第二幕
出だし、羊飼いの少年の歌声がすがすがしい。
ロメオとユリアは密かに信頼するローレンス神父を訪ねる。重唱のあとの管弦楽~合唱が何とも言えない美しさ。琴線に触れるってこういうことを言うのかな~という音楽。
ユリアの部屋、ロメオとの逢瀬中に両親が(逃げろやロメオ!)。ユリアに縁談が伝えられる。すぐにパリへ行って結婚しろと(ここらへん音楽が結構サディスティック)。ユリアが神父に相談すると神父はユリアに(例の)瓶を与える。ユリアは瓶の薬を飲む。うばが気づき、お嬢さまが死んだと大騒ぎ。無伴奏で美しい女声合唱。
ロメオはユリアが死んだと思い、ドラマティックなアリアを歌い、あとを追う。ダラボッツァ大熱演。オペラ最初のファンファーレと戦いの音楽が再現。目が覚めたユリア。傍らに自殺したロメオを見つける。ユリアはまるでイゾルデみたいに悲しみのあまり死んでしまう(どうやって死んだのやら)。女声合唱とともに天に召される。曲は長調で静かに終わる。悲劇というよりは何か成就された感。
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・・・という感じなのだが、最後のほうは筋書きに手を入れてかなり作曲者が苦心したあとが見える。台本が作曲者なせいかかなり陳腐なかんじは否めないが、それでも音楽は(若書きながら)素晴らしい。例えば外国の非常に細密に描かれた絵本の絵を見ているような・・・そんな夢見がちな気分になる。
ただ、あちこちで「トリスタンっぽい」という表現が(ここで)出てきたけど、ワーグナー(またはシュトラウス)の影響を受けまくってるのかというとそんなでもない。分類から言うと現代オペラの範疇なのだがとても聴きやすいし、これは何風というのだろうか。少し違うがシュレーカーかコルンゴルトのオペラがお好きな方はほとんどハマるのではないか。あと・・・ややドビュッシーにも近いかも。
なお、指揮は日本でおなじみワルベルクで、色々な音楽を詰め込んだこのオペラを非常によくまとめている(と思う)。職人技といえよう。ユリア役のソプラノ歌手はまったく知らない名前だが、なかなかの熱演で聴かせる。
この作曲家は他にもオペラ(「黒蜘蛛」という曲のCDが出ている)があるので、いずれ聴いてみたい。
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コメント
こんにちは。暇なもので、サボって拝見中。
こりゃまた、ワタクシの好奇心を刺激するエントリーでございますね。
ズーターマイスターはまったく初聴きの名前。
いまヨセフ・ズーダーという、同時代の作曲家のオペラに挑戦中でして、ぞのズーダーの先生なのかしらん(笑)
指揮もキャストもよさそうで、魅力的です。
コシュートってワーグナーなんかをよく歌ってたはずで、なかなかの実力派だったと記憶します。
内容理解までに苦労しますが、こうしたオペラをお気に入りにする喜びは大きいといえよう(笑)
投稿: yokochan | 2010年8月 9日 (月曜日) 13時40分
>>yokochanさん
また新しいものを見つけてしまいました。
コシュートって知らない歌手ですがなかなか魅力的です。
端役までみなさん実力派のようです(微妙な音程で歌うの難しそう)。録音が比較的新しいのも有り難いです。
で、曲ですが聴いてると何か私の弱いところをツンツンされているような気持ちになります。美しい音楽なのに、途中で不協和音出てくるとこなんかヤバイですよ。合唱大活躍なのもいいし、ピアノやチェレスタとか少年合唱とか、あちこちでコルンゴルトを思い出します。でも・・・スイス人なのでどこかオネゲルっぽい。是非聴いて頂きたいです。
ほんのちょびっとだけ試聴できますが・・・これじゃわからない。
http://www.jpc.de/jpcng/classic/detail/-/art/Heinrich-Sutermeister-Romeo-Julia/hnum/9185767
えーとヨセフ・ズーダーって知りません。どんななのか気になる。
投稿: naoping | 2010年8月 9日 (月曜日) 20時52分