N響定期 マーラー交響曲第6番 アシュケナージ
マーラー:交響曲第6番「悲劇的」
ウラディーミル・アシュケナージ指揮/NHK交響楽団
(サントリーホール)
さっき帰ってきたばかり。7時にコンサートが始まり、家にちんたら帰ってきたのが9時。
いやいや、「うちはこんなに六本木に近いんでっせ」と自慢しているわけでは別になく・・・本当に演奏会が短かったのである。プログラムには演奏時間80分ってあったけど、そんなになかった気がする。終わったとたん時計を見たけど8時20分だったし。歌舞伎じゃないので7時きっかりに演奏が始まったわけではない。正味75分弱だったんじゃないかな。もっと短い気が。
で。
今日のコンサートは突然行かれなくなった方から急きょ回して頂いた貴重な券である。会員券なのか、とにかく一階のかなりいい席である。普段貧乏席ばっかりなので感動もひとしおである。
んは~、すげ~、サントリーの一階席ってこんななんだなあ~
とか心の中で叫びつつ、着席。券はすでに売り切れていたはずだったのだが何故か空席もちらほら。私の隣もあいていた。で、そのまた隣の席の紳士が「この席、空いていますからもしよければどうぞカバンをおいて下さい」と声をかけて下さった。なんて素敵。さすがN響会員席だ、レデェーの扱いも違うぜ。
というわけで、N響の人々が舞台に入ってきた。で、初めて指揮者のアシュケナージ氏をナマで見たのだが。
小さい。
なんと小さい人なのだろう。私とあんまり変わらないかもしれない(そんなアホな)。指揮する姿も短い腕をぶんぶん振りまわして、何かとてもカワイイ。カワイイ・・・か?
で、とりあえず業務連絡。
1.演奏は次の順序で行われた。
第1楽章 アレグロ・エネルジコなんちゃらかんちゃら
第2楽章 アンダンテ・モデラート
第3楽章 スケルツォ
第4楽章 終曲
・・・という感じで普通の演奏での第2楽章と第3楽章が入れ替わっている。これはアシュケ氏の意向によるものです・・・とちっちゃいメモがはさんであった。
2.第4楽章のハンマーは2つ。
以上、業務連絡終わり。
第2楽章と第3楽章が入れ替わることについてはどっちが正しいんだか本当のところ謎なのでどっちでもいいことになっている。でも。アタシは普通の形に慣れているのでどうも違和感が。古い時代の女なのよ、アタシ。やっぱり1・2楽章で激しくしておいて、第3楽章で第4楽章に備えてゆっくり一息つきたいっていう女ごころなのよね~。
で。まあそろそろ演奏のことについて手短に。
N響はうまい。近頃いろんなことを言われている気がするがやっぱりうまい。安心して聴いていられる。そしてサントリーホールは本当にいいホールである。凄くよく聴こえる。
しかしアシュケ氏については思った通りに書かさせて頂く。とにかくテンポが早い。まあただ早いだけではなく。
この指揮者には・・・曲の緩急というものが全くないような気がする。(ピアノ演奏はどうだったんだろうか)
まあ、もちろんスケルツォ楽章とアンダンテの楽章は全くテンポが違う。当たり前である。小学生でもそんなのわかる。
だが。
具体的に言えば。第1楽章で「ずん、ずん、ずん、ずん」と始まり、怒り狂ってるようなやりきれないような感じからちょっと静かになり、あの「アルマの主題(アルマが勝手に書いているだけで本当はマーラーは「え?何のこと?」とか墓の中で思ってるのかもしれんが)」が輝かしく、華々しく入ってくるのだが。
今日の演奏、そこらへんほとんど全部テンポ同じだった。
・最初にゆっくりやって、アルマの主題のところから急に早く演奏するか(ベルティーニがそうだった気が)。
・最初に早くガンガンやって、アルマの主題のところはゆっくり存分に歌うか。
どっちかにしてほしいと思うのは私だけだろうか。全く同じなのはこの曲に対して萌えない。(まあそれは人の好みなのだが)
楽章中間の、カウベルが鳴ったりちょっと高原の岩清水的な雰囲気を醸し出している部分も同じテンポだったし。
あと、どことは言い難いが、ちょっと次の部分に移るときに軽くリタルダンドしてほしいなと思うとこでも全く普通。オケが歌ってほしいと思うところでさらさらと流れてしまう。N響はもっと表情豊かにできる子なのに惜しい。(それとも、最近のマーラー演奏のトレンドはコレなのよ、とかなのかなあ。もしかして、あたしの頭がヒストリカル?)
第4楽章は、(私の勝手なイメージで申し訳ないが)始めのほうの影のように暗い部分は(作曲時点では幸福の絶頂のはずだったのに)、マーラー夫婦が夜穏やかに眠る可愛い子供たちの姿を眺めながら・・・何かこれから迫りくる暗いイヤな予感を察して、「見てはいけない・・・」「いや、これから何か起こるのを見なければ・・・」みたいな精神の葛藤みたいなものを表してるような気がする。するんだが普通は。
今日の演奏は。なんだかあっさりと流されてしまい。まるで星飛雄馬の練習を陰からちらちらと眺めるお姉ちゃんくらいの心配事にしか聴こえなかった。
演奏は本当に素晴らしく、とにかくこの第4楽章後半の超特急の早さの演奏についていくN響はやっぱりうまいんだな、と思った。ソロヴァイオリンもさすがっ、凄く聴かせる。でもマーラーの「悲劇的」な要素はどこにいってしまったんだろう。この曲をナマで聴くと思う、胸倉をつかまれるような、ガツンとくるようなあの感じがあんまりない(インバルん時は随分凄かった記憶があるんだが)。明日の仕事にも響いてしまうようなものが、ない(ウィークディなのでありがたいことなのかもしれんが)。ハンマーの音はガツンときたけど。他の観客の人はどう感じていたのだろうか。
とはいえ、よい演奏であった(のであろう)。アシュケ氏はとても大満足な表情で観客に応えていた(何かすごく嬉しそうだった。きっと大好きなんだなマーラー指揮するの)。ブラボー、あったのかな。私のところからは聴こえなかったが。
ということで、この日はカメラが入ってたので(何かオンドマルトノとかの不思議な楽器なのかと思ったら、黒い布をかぶせたテレビカメラだった)放送はされるのであろうな。ふむ。
と、こんな感じで正直に書かせて頂きました(すいません)。色々書きましたが本当に楽しかった。楽しませて頂いて本当にありがとうございました。
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コメント
こんばんは。
N響のサントリー定期は、会員の方が手放さないので、一般発売がありません。ラッキーでしたね!
ウィーンフィルの定期のように世襲性となるかもです。ゆえに、年齢層も高めかもですね〜
で、アシュケさんのマーラー。拝読して、どんな演奏か手に取るようにわかりましたよ(笑)
なにも引っ掛かりのないマーラーといえよう。
投稿: yokochan | 2010年6月17日 (木曜日) 19時52分
アシュケナージさん、背が低くて腕が短い上に指揮振りがなんとなく不器用そうで、見ててかわいいですよね(笑)
アシュケさんの音楽性は仰る通り、コントラストが淡くひたすら心地よく流れていくという印象です。ただN響の団員のブログをのぞいてみると、今回の早いテンポにはアシュケさんの強いこだわりがあるようで、また団員は少なからず根を上げているようで、逆にわたしはテレビを見るのが楽しみになりました(笑)
N響はここ数年で相当数のメンバーが定年を迎え、急速に若返りました。それに伴って演奏レベルもV字回復を果たしつつあるように感じます。(一時はかなりガタガタだった)そういう時期だからこそ、意欲のある音楽監督なり常任指揮者なりを迎えて腰を据えた音楽作りをする必要があるように思います。
投稿: 白夜 | 2010年6月17日 (木曜日) 21時09分
>>yokochanさん
こんばんは。貴重な体験でした。名演かどうかはおいといて、面白かったです。
券を譲って頂いた方にもどんな演奏か伝わるよう一生懸命感想を書きました・・・通じたでしょうかね?
是非、yokochanさんもテレビ放送ご覧になって下さいね。「なるほど!」と思うと思うんで。
本当に、まるでジェットコースターに乗っているようなマーラーといえよう。
投稿: naoping | 2010年6月17日 (木曜日) 21時33分
>>白夜さん
どうもです(笑)。
アシュケ氏がお小さいのは写真で見たことあったので覚悟はして行ったのですが、おや、まあ・・・楽員さんたちより小さいのですね。指揮はテレビでも見たことなかったので本当に「うああああ」と思いました、色々な意味で。
演奏は本当に何もひっかかりがなく、何があろうと「そんなの関係ね~(古い)」的な感じで進んでいくので、楽員さんは「もっと歌いたいのに~」って叫んでいるような気がして面白かったです。でもいろんな演奏があっていいんだと思います。個性的で。ただ、こんなスリリングな演奏なのにそんなにハラハラしないで安心して聴いていました。N響うまいです。
投稿: naoping | 2010年6月17日 (木曜日) 21時41分
こんばんは。
6番は9番、大地の歌と甲乙つけがたい大好きな曲です。私は第1楽章とスケルツォを一体のものと認識しています。つまりアンダンテをはさんだ3楽章の交響曲として聴いているので、アンダンテが第2楽章にくると曲そのものが理解できなくなります(笑)
いろんな演奏があっていいと思いますが、想い入れの深い曲なので複雑です・・・第2楽章アンダンテは実際のところどのくらいの観客に受け入れられているんでしょうね?
投稿: 大分のワグネリアン | 2010年6月17日 (木曜日) 23時55分
おヒサシでございます。
アシュケナージさん、N響でグリモーさんとの共演を見ましたが、グリモーさんの方がずっと背が高かったす。
指揮のお姿には縦にエイッ!ヤー!!と刻むような印象がありまして。幅とか奥行きという感じはあまりないのかな~~と。
マーラー6、ワタシはアンダンテ・スケルツオの順序でもオッケーです。新響で聴いたときにしっくりと聴けたので。手持ちCDはみな逆なんですけどね。
投稿: 左党 | 2010年6月18日 (金曜日) 00時11分
こんにちは。私は都響&インバルの復活を聴いてきました。
こちらも満員でしたよ^^
アシュケナージについては、どうも批評家が張りたがる
レッテルに引きずりまわされ、「凡庸」で「小粒」という
イメージしかないのですが…いずれは自分の耳で確かめる必要性を感じています。
マーラーの六番ですが、ミトロプーロスのライブが
一番好きなのに、今月のレコ芸で宇野さんが「もう忘れかけられてる指揮者」と…
ちょっとショックでしたね。
投稿: kyrie@鬱病◆Debha1lQgc | 2010年6月18日 (金曜日) 17時24分
>>大分のワグネリアンさん
そう、6番は普通に交響曲として捉えることができるのでマーラーの交響曲の中でも聴きやすいし人気があると思います。
アシュケ氏が楽章を入れ替えたのは・・・あとで考えたのですが、第3楽章と第4楽章を続けてつっぱしりたかったんじゃないだろうかなあと。アシュケ氏の意見も聞いてみたいものです。
投稿: naoping | 2010年6月18日 (金曜日) 23時11分
>>左党さん
グリモーたんより小さいのですが、アシュケ氏は。グリモーたんが特に大きいという印象はないのですが(外人だしなー)。
うんうん、エイ!ヤー!って感じでしたわ。何か、今まで自分が良くみていた指揮者がすべてスタイリッシュに見えるくらい。不思議でした。
逆に、CDで今回の順番ってのはあるのかな~と思いました(まあ、自分でひっくり返して聴けばいいのですが)。
(あ、すいません、『マーラー』の記述を勝手に延ばさせて頂きました。父の教えに従いまして。)
投稿: naoping | 2010年6月18日 (金曜日) 23時13分
>>kyrieさん
こんばんは。インバル、いいですね!きっと相変わらず大熱演だったのでしょうね。
アシュケ氏は「小粒」ですが(体が)、「凡庸」ではないと思います。今回のマーラーだけで言えば恐ろしく個性的です。あんなマーラー初めて聴いたゎ。いいのが悪いのかわかりませんが・・・。
ミトロプーロスは確かに、ここで取り上げるとあんまり反応がないんで忘れられてる指揮者なのかもしれません。私も好きな指揮者なんですけど。コウホウ先生のおっしゃることは子供の時からほとんど信じてないですけどね。
投稿: naoping | 2010年6月18日 (金曜日) 23時14分