ちょっと昔のレビュー(10)*1996年・インバル/マーラー6番*
先日N響で6番を聴いたのでそれにちなんで、かなり前に行ったインバルの感想を。日本でも今も元気にマーラーを振っているインバルは、当時はどんな指揮をしてたんでしょうかね。
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マーラー:交響曲第6番イ短調「悲劇的」
エリアフ・インバル指揮/NHK交響楽団
(1996年5月22日(水) NHKホール)
先日、レコ芸の広告を見て驚いた。「このかっこいい指揮者は誰だろう?」と。よくみたら「エリアフ・インバル」とある。そ、そんなばかな。禿げあがったあのオッサンが、そんな美青年なわけは・・・れれ? これはもしかして、若いときのインバルなの?うっそー。それは今から17年前の、彼がまだ40代の頃のインバルなのでした。
それにつられてってわけでもないけど、突然私はインバルのコンサートに出かけてまいりました。今日のコンサートの素直な感想は、「近頃こんなに笑えるコンサートはなかった」という感じ。
何か可笑しいかというと、まず始めにあんなにカッコイイ写真を見た後、現実の彼を見たこと。いや、あんなに人間て変わってしまうもの? 人間の外見てあんなに儚いものなのね、という感動というか絶望というか。
次に可笑しかったのは、彼の指揮ぶりだ。普通指揮者というもんは、合わせる所さえ合っていればあとは適当に手を抜くもんだと思っていたが、ヤツは違う。オケから出る音は全部振るのだ。もうちょっと手を抜かないかあ?おい。その上一挙一動が激しい。私は燕尾服の後ろが切れちゃうんじゃないかと心配でした。その上凄い唸るし。そこで思い出したのは、マーラーの指揮ぶりを描いたカリカチュアです。マーラーってもしやこんな風に指揮したんじゃないかなと思ったりして。
そして、オケの一番の見ものは、ビオラの弦が切れたことだ。生では初めてみた。ビオラの人が後ろを振り向いて何してんだろ?と思ったら、後ろから次々と楽器が送られてきた。やった!初めて見たぞ、楽器のリレー。
てなわけで、いろんなことが気になって肝心の演奏は?というと、これが凄かったのだよ。弦が切れるくらいだもの。こんなに燃えてる指揮者はこの頃は久しぶりだった。鬼気迫るというか。前から2番目だったからかしら、余計そう思ったのかもしれませんね。
私がこの曲を初めて聴いたのはカラヤン盤で、ドライな演奏でした。そのあとベルティーニとアバド盤を聴いていたわけですが、やっぱりややドライでさわやかな感じ(細かいところはそれぞれ全然違うけど)。今日のように燃えていて、テンポの動かし方一つ一つに意味を持たせるような行き方の演奏はすごく好きなので(最近ずっとフリッチャイの悲愴を聴いていた影響もある)、よかったと思う。
最後はブラボーの嵐でしたが、オケに対してのブーはありました。インバルさんはやけに上機嫌で、なんだかオーケストラの一人一人に握手を求めたり、立たせたりしていてそれがやけに長くて、なんか・・・怖そうに見えて本当はいい人なのかもしれないと思いました。でもあの体型を見て、「甘いものは控えたほうがいいよ、インバルさん」と心の中でつぶやいた私でした。
(後注:当日のフィルハーモニー誌に「インバルさんはチョコレートが大好き」という記述があった気がする)
↓2008年のインバルさん
http://www.youtube.com/watch?v=trS0-NXFUMk
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マーラーの6番には指揮者を魅了する何かがあるのかなあとか思う、今日この頃。
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コメント
はじめまして!
「全然知らない人だけど面白いブログ」として、サイドバーに貼っていただきありがとうございます。
これからも、がんばります!
投稿: MUUSAN | 2010年6月19日 (土曜日) 17時53分
>>MUUSANさん
コメント頂いてありがとうございます。ここ何週間かですが楽しく読ませて頂いております。(こんな所に書くのもなんですが)検査結果が良好だといいですね!
投稿: naoping | 2010年6月19日 (土曜日) 18時11分
97年に都響とインバルの幻想交響曲を生で聴きましたけど、第1楽章の開始の辺りでオケが走るのを抑えてたのと、第4楽章の最初でチェロの方に向かって凄いドライブをかけてたのを覚えてます。第5楽章の鐘へのキューで1回鳴らなかったのも(どっちが間違えたのか?)。
児玉桃さんとのラフマニノフ2番との組み合わせ。
投稿: 蜜 | 2010年6月19日 (土曜日) 22時39分
インバルを初めて見たのはマーラーの1番、日本フィルとの演奏でした。高校生だったので、70年代。きっと、その若くて格好良い頃ですね。覚えてないけれど。
投稿: ガーター亭亭主 | 2010年6月20日 (日曜日) 08時10分
インバル氏の灰汁の強いマーラーは、生で聴くと本当にお腹いっぱい堪能できますね。6番は07年の都響との演奏を聴きました。今回の「復活」も素晴らしかったです。おそらくアシュケ氏とは両極端(笑)
6番の快速演奏というと、例によってカットが多いシェルヘンを別にして(1時間切ってる)、何かの衝動に駆り立てられるようなクーベリックのライブと、爽やかに駆け抜けるパパ・ヤルヴィのロイヤル・スコティッシュ盤がともに72分ほどでした。比較のために予習してみました(笑)ドホナーニはさほど早くなかったのが意外。
投稿: 白夜 | 2010年6月20日 (日曜日) 10時21分
>>蜜さん
インバルはマーラーと並んでベルリオーズのスペシャリストでしょうから、凄い演奏だったのではないでしょうか。いいですな。
私は何年か前(いや、かなり前)はインバル指揮でマーラー7番とともに「ファウストのごう罰」のCDをよく聴いておりました。
投稿: naoping | 2010年6月20日 (日曜日) 20時03分
>>ガーター亭亭主さん
それは、女子高校生だったらキャーキャー言ってしまいそうです。
私は(前にも書きましたが)30歳くらいの初来日サロネンをナマで見てすごくカワイイなと思いましたが、ちゃんと指揮できるのかすごく不安になりました。結局大名演でしたが。
投稿: naoping | 2010年6月20日 (日曜日) 20時07分
>>白夜さん
アシュケ氏の6番は何日か経ってますが「なんかトンデモないものを聴いた(←いい意味で)」という感じと、指揮者のスヌーピーみたいな無邪気な笑顔が心に残っています。テレビ放送が待ち遠しいです。
「復活」に行かれたのですね。曲も指揮者も人気あるだけあってさすがに評判はいいようです。そういえば「復活」はなんだか自分から進んで演奏会に聴きに行ったことないですね。(人に誘われて2回) なんでだろう・・・。
投稿: naoping | 2010年6月20日 (日曜日) 20時30分
まだ、日本中で半ドンを楽しんでいた昔。小生、埼玉営業所に配属されておりました。営業所っていったって、所長、課長、私の3人だけ。で、土曜日、所長は週末営業会議といって本社、午後から個別四者会談(つまり麻雀)、課長は同業者会議と言って4社区分会議(つまり麻雀)で午後は不在(ま、朝から不在)。私一人、たまった見積書、請求書の整理、苦情のまとめを午後からしておりました、といってもちっとも苦にならない、なぜなら、土曜の午後はFMクラシックリクエストアワーで、小さなラジオだったけど、聞きながらの雑務処理は愉悦のひととき。
ある土曜日の昼下がり、マーラーの6番がリクエストされたんですな、そこでかかったのがバルビローリ、ニューフィルの演奏のもの。レコードであったとはいえ、壮絶な音の響きで、9番がいかに絶賛されたか、思いを至らせる凄さ。
聞きほれましたな、あの午後は。
アナウンサーも、演奏が終わった後も言葉を忘れて、少々の間が空いたのを今でも覚えております、絶句していたもの、「凄い演奏でした」というようなことを言っていましたっけ。
ただね、そこで私がバルビローリで買ったってぇとそうじゃないですな、実は、6番、カラヤンの例の虹のジャケットに惹かれていて、とはいえ、カラヤンでマーラーをくださいなんて今さら言えますかって、言えないでしょ。ついに、マーラーの交響曲、6番だけLPで持っちょらんのですよ。CDになって、シノポリで買ったけど。ずっと後になって、LP中古店にたまたま入ったら、6番はもとより虹の5番もあって買ったけど(カラヤン、ブル8もあわせて)。
しかし、ほんと、バルビローリの6番は凄かったな、最近になってだが、CDで買っちゃったのだよ、ほんとはね。
投稿: 面久院滅多坊 | 2010年6月20日 (日曜日) 20時31分
>>面久院滅多坊さん
エッセイ・・・?どうもです。
土曜日は昔はリクエストアワーがあったから学校から帰るの楽しみでした。マーラー特集のときにリクエストして、ハガキの名前読まれたことあります。小学生だったかな。
バルビローリの6番、実は持ってないです。持ってそうな気がしたんですが(ニュー・フィルってのがなんとも)。買わなきゃ。虹ジャケは私は山野楽器の輸入セールで買いました。ハコに入ってて綺麗。まだまだ中学生だったので余裕の購入でした。
投稿: naoping | 2010年6月25日 (金曜日) 04時42分