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2010年5月28日 (金曜日)

新国立劇場/影のない女(その2)

昨日の続き。これから観に行かれる方、読まないほうが無難かと。
影のない女(その1)


<第二幕>
この幕のハイライト(わたくし的に)のバラックが乞食たちを集めて食事をふるまう場面・・・は結構豪華なホームパーティみたいになっている。ピザとかおいしそう。天井から電飾が降りてきたりな。これはなんじゃろうか。みんな黒い衣裳で(セミフォーマル?)身なりがいいのである(乞食じゃねーし)。ヴァイオリンを弾いてる人もいて、みんなで音楽に合わせてダンスを踊ったりする。何故か乳母もその中の一人と腕を組んで一緒になってダンスしたりしてる。あらキュート。しかし音楽はややノリが悪い。指揮者のせいなんだろうか。何かここでバラックの心が通じない悲しみと妻のイライラみたいなのがあいまってとても悲しく身につまされる感じがあるんだが・・・今回はあんまりなかったな。

皇帝のアリア。大隅タンの「鷹」が可愛らしい。しかし「鷹」という役は全曲にわたって同じメロディ?しか歌わないので歌っててあんまり面白くないかもなあと思う。皇帝はこのキャストの中ではいまいちだが・・・まあそんなには悪くない。だが衣裳からもそうなのだがこの役のオーラが感じられない。もうちょっと・・・。

舞台上で何か不気味な雰囲気が漂う。バラックの妻が「あなたが眠ってる間に浮気してたのよ!」とウソをつきバラックは妻を殺そうとするがその姿を見て妻はほれなおす・・・というか二人はなんだかちゅーちゅーしはじめ幕が下りるまで舞台上でくんずほぐれずになってしまう(おや、まあ。)。しかし、これではこのオペラが途中でハッピーエンドになってしまうのでは、とちょっと心配になった。

<第三幕>
R・シュトラウスのオペラの中で一番美しいと思うバラック夫妻のデュエットだが(わたし的に)・・・舞台はさほど変化してなくて普通にいままで住んでたおうちで歌っている。乳母によってはなればなれにさせられたというよりは・・・ただなんどなく面映ゆいとか照れくさくて今さら一緒にいられないみたいな雰囲気である。そんなんでいいんだろうか、このオペラ的に。つか、3幕通じてそんなにセットに大きな変化があるわけではないので、スペクタクルな演出を求めている者(あたしも含めて)にとってはいまいちおもんない。(正直、第三幕はオケをオペラグラスで眺めていた。そのほうが面白いんだもん。コレ、演奏会形式でやってくれんかな。)

(中略)

皇帝が石になって閉じ込められているのは例の金網の中に石がたくさんつまっている柱を円形にならべたものの中である。その外で皇后が苦しんでいる。「しきいの護衛者」がグラスに水をくんで持ってきて「飲め飲め」と皇后に迫る。苦悩する皇后。その時のオケは本当に凄い迫力で(二幕までどうしてあんなに面白くなかったのだろう。第三幕は突然凄かった)、ああ、生で「影のない女」を聴きに来たんだなあという実感がやっと湧いてきた、今頃。

「私は飲みません」と苦痛の叫びのあと、石の囲いの中から皇帝が現れる・・・がここのところがやけに嬉しそうで、しかも銀色の衣裳でスポットライトを浴びて出てくるもんだから、なんだか・・・引田天功とかデヴィッド・カッパフィールドが奇跡の脱出に成功して出てきたみたいな感じがした・・・のは多分あの劇場の中ではあたしだけだ。そのあと(影を強調するために?)歌手たちにスポットライトを強く当ててその中で皇后夫妻が嬉しそうに歌っているので・・・なんだかハリウッドのショーの舞台みたいでなんかワラタ。いやそんなのあたしだけだ、たぶん。(ところでグラスハーモニカ、なかったのかな?ウチの席からは聞えんかった。)

今まで平面的にばらばらだったおうちが一つに繋がり一つのおうちになる。皇帝皇后夫妻とバラック夫妻が最後の輝かしい歌を歌うとき、男女の子供たちが走って出てくる。ここは結構ぐっときて(だから子供と動物は出しちゃダメだって何度言ったら・・・)思わず涙がぽろっと出てきてしまった。もしかして思い切って30人くらい子供がいっぺんに出てきたらきっと大号泣してしまうだろう・・・いやそんな大家族スペシャルいらんがな。二人の子供はじゃんけんみたいなあっちむいてホイみたいなことして遊んでる。

最後は大拍手と大ブラヴォー。やっぱり女性歌手3人の拍手とブラーヴァが多かったが、乳母の人が一番人気。バラックの妻の人もその次くらい。私は個人的には皇后の人が一番いいなと思った。今回は事前に頭痛薬を飲んで臨んだのでこの大声大会の中、頭痛は起こらなかった。テオリンほどでもなかったのかな。それにしても・・・まだまだいるもんだなあドラマティック・ソプラノは。大豊作。

バイロイトからやってきたバラックの人もまあまあ喝采を浴びていた。まあ・・・この役には合ってたんじゃないかな?

指揮者はブーもあったが・・・仕方ないんじゃないんだろうか。2幕目まで結構指揮がゆるい感じがして「うーん」とか思いながら聴いてたけど・・・私からしたらこんな演目よくやったな、と思うくらい。この演目は正直言ってとっても難しいと思う。作曲者R・シュトラウスでさえホフマンシュタールの難解な台本に「アレ・・・コレどういうこと?」みたいな感じで作っているかもなあと思う時がある。R・シュトラウスの大スペシャリストのベームとサヴァリッシュ(およびVPOやバイエルンのオケ)ばっかり聴いているもので、どうしてもその凄い演奏に耳が慣れているのである。ところで日本人オケがこの曲をするのは初めてなのかな。

で。どう考えてもコレは若杉さんが振る演目なので、亡くなってしまったのは本当に本当に残念であった。本当に・・・やりたかっただろうなあ若杉さん(泣)。

今回、私は2階席の前から二番目の右寄り。前の席の人が何故か来なかったので大変見やすかった。しかし、隣の席のお兄さんが第一幕の乳母と皇后が人間界へ降りてくるあの素晴らしい管弦楽のシーンからコックリコックリと舟を漕ぎ始め・・・頭をカックンカックン振りながら観賞・・・じゃなくて全体的にほとんどお休みになっていた(ようだ)。日本「影のない女」協会会員(今作った)の私からすれば、プログラム本の背で眉間をはったおしてやりたいくらいな衝動にかられたが(ウソで~す)・・・もしかしておもしろくなかったのかしら。そういえば比較的ゆるい場面では後ろの人々からから始終「はあ・・・。」みたいな溜息がきこえてきて、「あらつまんなくて・・・ごめんなさい」みたいな申し訳ない気持になってしまった。別に私が作ったわけじゃないのにね。

あ、書くの忘れてた。カットの問題ですが慣習的なカットはたくさん。やっぱり完全盤(版)に慣れていると「ぷつっぷつっ」とヘンな違和感が。シュトラウスはカットされた部分で管弦楽曲集をつくるべきだった(「影のない女」交響的幻想曲はバラク夫妻中心だからな)。

はあ・・・終わっちゃうとさみしいなあ。もう一回券とればよかった。

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ということでコメント・・・お待ちしております。

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コメント

こんばんは。
解禁でしょうか?
師匠、日曜日に聞いてきました。一階二列目通路席で快適でした。空席かなり有り。女性3人とも、大変素敵な声でした。感激。音楽は緊張感なし。演出はあまり興味ありませんが、照明はきれいでした。バイオリン対向配置、コンマス外人男性、ホルン左壁際、楽しみのグラスハーモニカは見あたりませんでした。4時間長いと感じませんでした。

投稿: Mie | 2010年5月29日 (土曜日) 20時40分

>>Mieさん
解禁です(笑)。お待たせして申し訳ありません。
一階前のほうだったら随分ド迫力の音で聞こえたのではないでしょうかね(いいですね~2階はイマイチ)。しかし・・・空席あったのですか(謎)。私の行った平日は8~9割くらいの入りでした(3階席は知りませんけど)。

はっきり書いてしまうと指揮も演出もイマイチでしたが、まあまあ楽しめたのでは、と思います。グラスハーモニカも結構期待してたのですが日本ではやっぱり珍しい楽器らしくて難しかったのかなあと。

投稿: naoping | 2010年5月29日 (土曜日) 21時16分

シュトラウスとホフマンスタールは黄金コンビのように言われがちですが、
実際には方向性の違いから衝突が絶えず、シュトラウスも観念的過ぎるこの作品の台本には入り込めなかったようです。
「第三帝国のR.シュトラウス」という本やホフマンスタールとの往復書簡集なんかをご覧あれ。
因みにグラスハーモニカは、ヴィブラフォンを弓で弾く奏法(ゲンダイオンガクではよく出てくる)で代用したようです。

投稿: フィディ | 2010年5月30日 (日曜日) 12時49分

>>フィディさん
そうですか・・・やっぱり「影のない女」は作りづらそうな感じはしますね、台本的に。私はシュトラウスという人間自体に興味があまり湧かないので伝記とかの本自体読んだことないです(マーラーとは大違いで)。機会があったら見てみようかなと思います。

>代用
そういえば、グラスハーモニカじゃない音がかすかに響いてましたなあ・・・。

グラスハーモニカについては公演を見たあとWikipediaで、この楽器の歴史についてちらっと読みました。「オンド・マルトノ」の如くあんまり日本には奏者がいない感じですね。サヴァリッシュさんもレッケルトさんて奏者をドイツから連れてきてましたし(Wikipediaに名前載ってました)。そう考えるとあの猿之助さん演出の公演って相当お金かかってたんだなと思いました。

投稿: naoping | 2010年5月30日 (日曜日) 17時41分

最終日を見てきました。慣れでしょうか、オーケストラはなかなかよかったですよ。若杉さんに振らせてあげたかったですね。
それにしても女声3人は本当に素晴らしかった。声と容姿がこれだけ役柄にマッチしたキャスティングはなかなか望めないものだと思います。湯婆婆とは言い得て妙(笑)
貧弱な舞台装置や黒子の群れなど不満が多い演出でしたが、本心では夫の愛を切望してやまないバラクの妻の、内なる心の叫びの投影としての皇后の演技には魅了されました。バラクの妻が夫に心にもない罵声を浴びせて立ち去る場面では、皇后が自分を責めるかのように悲しげにうつむく。バラクが妻を抱きしめる場面では、皇后が歓喜と陶酔の表情を浮かべる。などなど、ふたりは常にセットで扱われていたと思います。皇后が鏡に映ったバラクの妻の姿を演じている場面で気づきまして、なるほどプログラムにあった妄想云々はこういう意味だったのかと思いました。そしてその解釈がリブレットと完全に一致していたのが素晴らしい。バラクの妻だけを追っていると、心理描写が一面的な煮え切らない演出と見えてしまう危険もあったかもしれません。

投稿: 白夜 | 2010年6月 2日 (水曜日) 02時57分

>>白夜さん
最終日に行かれたのですね。それが正解だったのかも・・・と思います。かなりオケも慣れたのでしょう(新国のHPの感想を見ても、あとの公演は良かった感じがします)。私の行った日の聴衆の雰囲気は、第一幕は「よくわかんないけど・・・まあ拍手・・・」第二幕は「おお、結構いいんじゃね?拍手」第三幕は「すげえ~~素晴らしい~~~ブラヴォ~~!!」という感じで演奏もしりあがりに良かったです。 おっしゃる通り女性3人は圧倒的に素晴らしかったですね。しかし私が一番好きな音楽の多い第一幕は「圧倒される」感が意外とイマイチなかったので、もう一回もうちょっと前の方で観たかったなあと思いました(そんな予算はありませんが)。

投稿: naoping | 2010年6月 2日 (水曜日) 06時53分

記事を楽しく拝見しました。
私も新国立劇場でR.シュトラウスの「影のない女」を鑑賞してきましたが、音楽が大変斬新に感じました。
私の感想などをブログに書きましたので是非読んでみてください。
http://desireart.exblog.jp/10678873/
よろしかったらブログの中に書き込みして下さい。
何でも気軽に書き込んでください。

投稿: dezire | 2010年6月 2日 (水曜日) 11時39分

こんばんは。
遅ればせながら最終日に感激の観劇、晴れてコメントさせていただきます。

最終日とあって、歌手もオケも全力全開、熱演に思いましたよ。指揮者の評判悪いみたいでしたが、私はすごくよかった。ブラボーも飛んでました。
 それでもって、アメリカ女3人がすべてでございました。
私はマギーちゃんが好きなもんですから、彼女が一番。
次いで気の毒妻フリーデ、お茶目なヘンシェル、といった感じ。
演出は欲求不満が募りましたが、まぁ、余計なことをしてないところが救いでした。

来年のゲルギエフの「影のない女」、なんでよりよってゲル・・・、って気分ですが、観てみたい気も・・・。
以上「影のない女」協会会員no2より、でした。

投稿: yokochan | 2010年6月 3日 (木曜日) 00時51分

>>yokochanさん
(音楽の面で)大絶賛でしたね(笑)。 yokochanさんは席が良かったのでオケが良く聴こえたのではないでしょうか。私は2階席の前のほうだったにも関わらず、何故か第一幕~第二幕の中間くらいまではあまり迫力が感じられなくてちょっとがっかりしました。こないだの「神々の黄昏」よりいい席だったのにオカシイなあ。A席とケチらずもっと奮発すべきだったな~と悔やんでおります。

ゲルギたんのシュトラウス、なんだかネットリ濃そうですね。歌手もオール「おロシア」メンバーなのかしら。怖いような、楽しみなような。何せ日本「影のない女」協会の私たちですから(会員募集中?)是非足を運ばなくてはです。

投稿: naoping | 2010年6月 3日 (木曜日) 20時51分

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