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2010年3月27日 (土曜日)

新国立劇場/神々の黄昏

Pa0_0454 ワーグナー楽劇「ニーべルングの指環」第3日
「神々の黄昏」

【ジークフリート】クリスティアン・フランツ
【ブリュンヒルデ】イレーネ・テオリン
【アルベリヒ】島村武男
【グンター】アレクサンダー・マルコ=ブルメスター
【ハーゲン】ダニエル・スメギ
【グートルーネ】横山恵子
【ヴァルトラウテ】カティア・リッティング
【ヴォークリンデ】平井香織
【ヴェルグンデ】池田香織
【フロスヒルデ】大林智子
【第一のノルン】竹本節子
【第二のノルン】清水華澄
【第三のノルン】緑川まり
【指 揮】ダン・エッティンガー
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

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いや~観てきた。上演時間6時間ちょい(二度の休憩含む)。こんなに長いのに6時間という時間がこんなに短く感じられるものって他にないだろう。私は今まで(今回含めて)4回ほどこの楽劇をナマで見聞きしたが、その感じはいつも変わらなかった。3時間くらいにしか感じず。休憩時間(45分!)がやけに長く感じるくらいで。

で、見聞きした4回のうちの2回はこのトーキョーリングということになる。初演を観たわけだが、凄く衝撃的で凄く面白かった印象は残っているものの・・・結構忘れていることのほうが多かった。

初演で覚えていること、と言えば。
・まずは長谷川顯さんハーゲンのかっこよさ。
・グートルーネがミニスカート。
・ジークフリートのラインの旅の時、スクリーンに地図が映ってジークフルートのバーチャルリアリティみたいになってたこと(ここがもう一度観たかったんで券取った)。森の小鳥さんが出てくる。
・ブリュンヒルデがおうちごとずるずる引っ張られてきたこと。
・ラインの乙女の3段腹。
・最後にジークフリートが燃やされるときにカウントダウン。
・パズルの一個を最後にぽいっとしてハマるところ。

・・・とこのくらいだが、結構記憶ってあやしいものだ。「こんなんだったかなあ・・・」的なこともしばしば見受けられた。「ラインの旅」の時、あんなにすぐにかくれ兜をぽいって脱ぎ捨ててたっけかなあ。ラインの旅の曲の間中ずっとかぶってた印象があり。で、あそこで出てくる映像のうちラインの乙女3人が出てきてそれがぱあああっと魚に変身して泳いでいくところが大好き。

しかし、前に観たときはそんなに細かく観てなかった気もする。初めてでいろんなことが起こりすぎて「あれも、これも」と思ってるうちに終わっちまったんで、今日は細かい所を色々オペラグラスでチェック。

プロローグが終わり、第一幕。前回初演時ののギービヒ3兄妹はなかなか外見的に役に合ってたし美しいものがあり、長谷川さんのハーゲン(今回はカヴァーだった)、蘭子さまのグートルーネ、トレケルのグンターは魅惑的であったのですが(つか、主役カッポーを忘れてしまうほどよかった)、今回は・・・えーと。ミニスカート、なかなか難しいね。ただ、恵子さまはたまに舞台上をたったたったとお走りになる場面がありまして、これは結構萌えましたけど。歌手も大変だな。恵子さまお声相変わらず素晴らしいです。

そうそう、ジークフリートのクリスティアン・フランツもずいぶん私、見慣れましたわ。最初は「こんなジークフリートやだ~」って思ってたんですけど、もうね、あの体型であの声でキタナイTシャツにスニーカーのジークフリートしか私、ジークフリートに思えなくなりましたわ。「あんなに美しくて、強いのに、けち!」って言われても「そうだよなあ」とか普通に受け入れてしまうほどよ。

で、肝心の「(わたし的には)主役のはずの」ハーゲン様ですが。なんか長谷川顕さんの印象が強くて(なんで日本人じゃねえの?的な)、最初ちょっと受け入れられない感があり。しかしそのうち観慣れた。プロレスの悪役みたいな感じだな、ハーゲン。この3人兄妹、妙にイチャイチャ。

今回、改めて気になったのは・・・大事なはずの「指環」だの「かくれ兜」だの結構そこらへんにぶん投げたりしてそのまんまだったりした所だった。いや、このスキに取れるじゃん指環・・・みたいな感じ。

でまー今回、「(わたし的には)主役はハーゲンね」って思いながら観たんだけど、やっぱり今回の主役は(フツーに)ブリュンヒルデっていわざるを得ない。イレーネ・テオリンというどこか違う星からやってきた(と私はオモタ)、とてつもない大きな声が出る新生物によって。私、今日は2階席の一番後ろだったんですけど、2幕の真ん中辺くらいから頭痛くなりました。テオリン、声でかすぎやしませんか?今晩間違いなく夢に出ます。あの声はホントびっくりです。

細かいことだが、「兄弟の契りを交わす」シーンで、注射器で血を取って酒に混ぜて飲むんだが、飲む前にジークフリートとグンターがちゃんと腕を押えて各々止血してるとこがなんか萌えた。

第2幕(なんかテキトー)。リングで一番盛り上がる、ギービヒの家来を呼び寄せるシーン(やっと合唱が出てくる)。家来はみんな胸だか腕だかに「G」の文字の下に4ケタの社員番号をつけている。ハーゲンは「H」なのな。家来のうち一人だけハーゲンに毒を盛られて、みんなで楽しそうに歌ってる間中舞台前面でぶっ倒れてヒクヒク。ストレッチャーで運ばれていく。ある意味美味しい役といえよう。もしトーキョーリングに出るならば、あの役を希望す。

で、家ごと引っ張られてブリュンヒルデ登場。合唱の女の人はみんなグートルーネと同じ衣裳と髪形。まるで怪しいマッサージ店の制服みたいである(よく知らんが)。怒り狂うブリュンヒルデ、いつにも増して怖すぎる。トラウマになりそう。こんなに恐ろしい女、ヨメに貰いたくないわ。ブリュンヒルデとグンター、ハーゲンの3人のシーンはまるでアメリカン・コミックから抜け出てきたよう。

第3幕。ラインの乙女たちは、黄金の返却を待ちすぎて待ちくたびれたんだか、すっかり体型も人相も変わってしまった。水着の下は見事な三段腹である。なんでだろう、30過ぎた頃からラインの乙女、イライラする。あれやこれやでジークフリートを誘惑したり脅したりするが、ジークフリートは右から左にきき流す。森の小鳥かぶり物とか毒入り水筒とかの「ジークフリート思い出セット」が舞台上に並べられ、ジークリート殺人の場。なぜころたしハーゲン。でも演出ではグンターが槍をハーゲンに渡してるじゃないかぁ。

ジークフリート葬送の場。ブリュンヒルデが舞台奥にいる(本当はグートルーネ)。瀕死のジークフリートは舞台上を這ってブリュンヒルデのいる方へ向うが、息絶える。舞台上は血のあとが(ギャー)。

ブリュンヒルデホームはくるりと回ると焼却炉へ変身(便利ね)。これから死体を焼くのよん。ハーゲンの家来が槍をバキバキ折って焼却炉へ。最後にブリュンヒルデも槍を折って火の中に突っ込んでひとしきり長いアリアをそれはでっかい声で歌ったあと、指環をそのへんにぶんなける。指環、大事なのかそんなでもないのかは不明。ラインの乙女がいつの間にやら登場、もの影から突然顔を出すので、なんだか心霊写真のようである。

で、歌い終わったブリュンヒルデ、グラーネのちっちゃいレプリカとともに焼却炉へ入る。皆がカウントダウンして何か色々と爆発したり水が流れてきたり(映像だがよく出来てる。映像と指揮とのタイミングは難しくないんだろうか)。最初のラインの黄金の映画館のスクリーンが出てきて、足りなかったパズルの1ピース(指環だね?)をぽいっと合わせて、これですべてが解決(なの?)。最後は人間たちが神々の事の顛末を映写機で映すのを見ながら、幕。ここらへんの細かい作りがとっても素晴らしくて、曲ももちろんカッコイイのだが・・・泣いてしまう。何でだろう。

終わってからはもちろん大ブラヴォーだったし、特にテオリンへのブラーヴァは物凄いものがあったが・・・やっぱり指揮者ダン君へはブラヴォーとブーが混在で。しまいにゃブラヴォーの人とブーの人が喧嘩っぽくなってて、おいおいここは日本だよ、バイロイトじゃないんだからね。喧嘩はやめようね、でも何か面白いね。

私はどう思ったかっつーと。今回の指揮はそんなに悪くはなかったし、よく考えられていて工夫はされているなと思った。例えば、普通だったら元気いっぱいに奏でられるべきプロローグの中のブリュンヒルデにジークフリートが指環を渡す場面(あなたの知恵との交換として、この指環をあげよう)はことさら意味深げにゆっくりと演奏される。「なるほど」とは思ったが、決して音楽的には共感はできなかった。私が速く演奏してほしいところは、大体遅い。そして私がたっぷりゆっくりやってほしいところは概して早い(葬送行進曲など)。

ただ、「ワルキューレ」の時よりは全然良かったし、全体的に見れば素晴らしい演奏だと思えた。東京フィルさんも長丁場本当に頑張っておられた。最後に「オーケストラ・ブラヴォー!」と叫んだ人がいて、やっぱりみんな拍手していた。全くお疲れ様でした。いい演奏でした。ありがとうございました。




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ヴォルフガング・ワーグナー氏が今月の21日に亡くなられたので、大ホール入口に遺影が飾られていました。昔、日生劇場ロビーで出っくわした時は凄い大きな人だなあと思いました。合掌。

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コメント

今回も同じ日でしたか(笑)
エッティンガーは初日のブーイングがこたえて、テンポを速めたそうです。(15分も短縮)
そんな簡単にテンポ変えちゃうエッティンガーにちょっと萎えました。

投稿: FiDi | 2010年3月28日 (日曜日) 01時37分

僕も27日観ました。テオリン、凄かったです。第1幕は「ちょっと」という面もありましたが、2幕以降、この長大な楽劇を完全に動かす「核」となって、まさに圧倒的存在感でありました(席はR4)。エッティンガーのブーイング、出来る人って何を基準にしているのか、疑問。僕は盛大にブラヴォーしましたよ。

投稿: IANIS | 2010年3月28日 (日曜日) 01時46分

わたしは21日に行きましたが、エッティンガーへのブーイングが物凄くてビックリしました。おとなしかった日本の劇場でもあんな盛大なブーイングが起きるようになったんですねえ。それとも熱狂的なワグネリアンだけの現象でしょうか。
実際のところ、特に第1幕で部分的に死にそうに遅くて、遅いだけならわたしは全然かまわないんですが、比例して緊張感が失われていくのには参りました。おかげでワーグナーで睡魔に襲われる(!)というわたしとしては極めて珍しい経験を致しました。それも一階の中央で・・・
とはいえブーイングするほどでもないとも思いました。東フィルはいつもの東フィルでしたので、N響はよかったなとしみじみ思い出しておりましたけれども。
去年荒川バイロイトに行けなかった分、オペラの森の「パルシファル」を楽しみにしたいと思います。こっちは安い席なんですが(笑)

投稿: 白夜 | 2010年3月28日 (日曜日) 02時28分

>>FiDiさん
同じ日だったのですね。
初日はテンポ遅かったんですか・・・ブーイングでテンポ変えたとしたら、漢じゃないなあ・・・とか思いますけど、私からしたら行ったの昨日で良かったなあとか思います。
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>>IANISさん
テオリン、凄かったです。凄いというか・・・何かこの世のものとは思えないような、コワイ感じです。長い間慣れ親しんできた、私の中のブリュンヒルデがどっか行ってしまいました・・・。
私はダン君とはどうも相性悪いらしく、テンポは共感できない所もあったのですが(何か考えがあってやってたのかと思ってたけど・・・もしかしてそうでもないのかしら)、今回はブーってほどでもないですね。
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>>白夜さん
21日だったのですね。ということは初日・2日目ともに遅いテンポでプーイングだったってことですかね。私はワルキューレの時に(感想に書きましたが)あまりの遅さに「指揮者、ぶっ倒れてるんじゃないか」って思うほどでしたので、今回も心配してたのですが、まあ大丈夫でした。ワーグナーで睡魔は・・・私はたまにありますけど(笑)。
今日はメルクル指揮N響・初演の時の「ジークフリート」のビデオを観ていましたが(今となっては貴重!)、やっぱりメルクル&N響はホントに素晴らしかったですね。4月にメルクル&N響でリング・抜粋の演奏会するんですが、オーチャードがあんまり・・・サントリーでやって欲しいです。

投稿: naoping | 2010年3月28日 (日曜日) 20時31分

おはようございます。
ワーグナー祭り開催中です。
楽しかっただけに、終わってしまった寂しさもひとしおですね。
いろんなことがありすぎて、何をいいたいんだか絞りきれないですが、それもウォーナーの狙いだったかもしれませんね。
テオリン様は、どちらも大絶賛。
私も一声かけちゃいましたよ。
トリスタンはまた人気になりそう~
 荒川・蘭子さま、まだチケットとってないけど、悩み中です。

投稿: yokochan | 2010年4月 3日 (土曜日) 08時17分

>>yokochanさん
いやあ、ずいぶん詳細に記事を書かれましたのですね(ひゃ~)。これで次回公演があった場合、予習ができますね・・・って次回公演はないのかしらん。私なんてテキトーに印象を並べただけなんでまた忘れそうです。

オペ森パルシファルは財政難なのでパスしましたが、かわりに飯守さん&小山由美さまコンサートと・・・たぶん貧民席で荒川に行きそうです。結局・・・何にもお金の節約になってないですが。嗚呼。

投稿: naoping | 2010年4月 4日 (日曜日) 17時29分

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受信: 2010年3月29日 (月曜日) 10時54分

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再び新国立劇場で「神々の黄昏」を見ました。 既に2004年春の上演されたものの再演ですが,演出は今回も微妙に違うような気がします。 自分はこの演目を既にフランクフルトのオペラ座,ベルリンの国立歌劇場(ウンター・デン・リンデン)でも見ていますので,2004年に新国立劇場で見たのと併せて4回目となります。 序幕では,パンクのような不思議な風貌のラインの乙女(ノルン)が現れ,次いでジークフリートとブリュンヒルデの登場です。ジークフリートはブリュンヒルデのBと書いたシャツを,ブリュンヒルデはSと書いたシャ... [続きを読む]

受信: 2010年3月30日 (火曜日) 06時16分

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受信: 2010年4月 3日 (土曜日) 08時18分

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