ちょっと昔のレビュー(5)*1993年・ベルリンドイツオペラ・トリスタン*
ちょっと昔のレビューシリーズも第5弾ですが、今日のはほとんどどんな演奏だったか覚えていない。後日、映像になって発売もされてた大歌手グィネス・ジョーンズの回を避けてウラキャストで購入。なんか・・・あの歌い方が苦手なもんで。
------
1993年10月3日
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」
ルネ・コロ(トリスタン)、ジャニス・マルティン(イゾルデ)、ハンナ・シュヴァルツ(ブランゲーネ)その他
イルジ・コート指揮/ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団・合唱団
(NHKホール)
つい一週間前、イギリス・ロンドンにぶっとんでいたのだが、そちらでは本場のロイヤル・オペラ・ハウスへ出かけ、本場のオペラを、と思ってたところが、「チョーチョーサン」はえらい不作で、そーやなあ、本場だからっていって年がら年中ドミンゴやらパヴァロッティが出ているわけではないし、指揮者もなんか鼻くそほじくりながらやってる感じで、幕はあかなくて(何小節が演奏したあと)最初からやりなおすし、装置も衣裳もインチキだし(歌は素晴らしかったけど)、まことにキンチョー感のないものでありました。
というわけで、東京のトリスタン。NHKホールってでかいんだなーという素直な感想(ヨーロッパのオペラハウスって結構小さい)とともに、器は何でもいいもんはいいんだということに気がついた。オペラハウスの引っ越し公演って「有名料亭の折詰」みたいに考えていたんだけど、結構それ以上のものがあると思ったな、今日は。だって引っ越し公演ってそのオペラの一番いいものを持ってくるわけですから(たまにそうでもないのがあるのかもしれないけど)。器がNHKホールだろうが文化会館だろうが、よいものはよいはずです。
(それにしても・・・イギリスに飛んでまで日本を舞台にしたオペラ、そして東京に戻ってイギリスを舞台にしたオペラって・・・いったい)
「トリスタン」は、ドイツ・オペラの基本形だと思う。そして「トリスタン」ほど色々な分野の芸術や文学に影響を与えたオペラはないと思う。ワーグナーといえば「トリスタン」、ドイツ・オペラといえば「トリスタン」なのである(と思う)。もっともわかりやすく、もっとも難しい。
演奏や歌手、演出や美術について何か言うのもばかばかしいくらい、何もかも基本的な公演だった。ルネ・コロのトリスタン、ジャニス・マルティンのイゾルデ、ハンナ・シュヴァルツのブランゲーネ、おまけに舞台美術はギュンター・S・ジームセンである。ゲッツ・フリードリッヒの演出にしては普通だったし(クルヴェナールが第1幕で船員らに向って?「ピー」と笛を吹くところくらいか、普通でないのは)、ホンマ基本的な公演ですな、こりゃ。
歌唱は全てが素晴らしかったけれど、ジャニス・マルティンの美しさといったら!!(外見じゃなくて声) 彼女は「影のない女」でファンになって、わざと(表キャストのグィネス・ジョーンズじゃなく)彼女の番を取ったけど、自分的には正解でした。ルネ・コロは私は見るのは4度目だけど(ジークフリート、パルシファル、ヴァルター、トリスタン)、彼は日本において穴がない。どの役も素晴らしい。今日のトリスタンもクライバー盤のと同じで素晴らしい。(・・・ただ、ハンナ・シュヴァルツは疲れてた。惜しい)その他の歌手も素晴らしい。美術はさすがジームセンといった感じで(とくに第2幕の二重唱のところ)美しかった。
------
| 固定リンク
コメント