ブリテン/カーリュー・リヴァー
ブリテン: 歌劇 「カーリュー・リヴァー」
狂女 … ピーター・ピアーズ(テノール)
渡し守 … ジョン・シャーリー=カーク(バス)
修道院長 … ハロルド・ブラックバーン(バス)
旅人 … ブライアン・ドレーク(バリトン)
幽霊の声 … ブルース・ウェッブ(ボーイ・ソプラノ)
他
リチャード・アドニー(フルート)
ニール・サンダース(ホルン)
セシル・アロノウィッツ(ヴィオラ)
スチュアート・ナッセン(コントラバス)
オシアン・エリス(ハープ)
ジェームズ・ブレーズ(打楽器)
フィリップ・レッジャー(オルガン)
[音楽監督] ベンジャミン・ブリテン、ヴィオラ・タナード
(なんか、クラシック音楽ブログだから、世相のこととか世の中の事件のこととかあまり書くべきではないのかもしれないけど、ちょっと導入として読んで。)
こないだあった、母親が(愛人とか知人と一緒に?)自分の子供を虐待した末、死亡させてしまった事件のことを見て思ったこと。テレビを見てて、あの捕まったおかあさんは以前の映像を見るととても優しそうな奇麗なおかあさんだったのに、事件後は信じられないくらい人相が変わっていた。お能に出てくる般若(はんにゃ)の面みたいで怖かったな。あんなに変わっちゃうんだ、人相って。
で、(普通はそんな発想はないけど)思い出したのはブリテンのオペラ、「カーリュー・リヴァー」だった。ここに出てくる母親は子供を殺したわけではないけど、誘拐された子供を探し求めて、狂女となって登場する。
このオペラは、ブリテンがピアーズとともに日本に旅行に来たときに観たお能「隅田川」に感動してそれを元に作られている。筋書きなどはまあほとんど能と一緒だが、キリスト教の教会劇として作られている。音楽は笙のような響きが全体的にちりばめられていて非常に神秘的である。
ところで、この「隅田川」にはイングランドの人の心に触れるものがなんかあるんだろうか。かのジョン・レノンもオノ・ヨーコと来日時に歌舞伎の「隅田川」を観て感動のあまり涙を流したらしい。
何年か前、私はこのオペラをナマで観た。(どっかで書いたかもしれんが)能楽堂で能「隅田川」とオペラ「カーリュー・リヴァー」を同じ日に上演したのである。あ、言っとくけど「ナクソス島のアリアドネ」みたいに全く同時にやったわけじゃないからね。
この試みは、面白いと同時にとても難しいなあと思った。私が行った能楽堂というのは残響音がほとんどなかった。場内を歩いても(コンサートホールみたいには)靴音が響くことはない。音はすべて床に吸収されるような感じがした。能楽堂で西洋音楽をすることはほとんどないだろうが、楽器があんまり響かなくてかなり違和感があったのを覚えている。
とはいえ、とてもこの日は感銘いたしました。ブリテンが日本の伝統芸能をリスペクトしてこのオペラを作ったのがとてもよくわかった。伝統芸能好きの日本人としてはそれはとても嬉しいこと。
さて、簡単な筋書き。
オルガン伴奏による出演者の入場。
狂女と旅人が渡し守の舟に乗ってカーリュー川を渡ろうとしている。狂女は一年前に姿を消した自分の子供を探している。
渡し守は川を渡る途中、ある少年のことを話す。その少年は一年前、ブラック・マウンテンズの近くになる家から誘拐され、この場所にやってきた。
しかし少年は病気だったので川のほとりに置き去りにされた。少年は地元に人々に保護されたものの息を引き取った。少年の遺言により埋葬された。
川沿いに住む人は少年のお墓が神聖なものとし、祈りを捧げることによって心身の病を癒すと信じている。
渡し守が物語を語るにつれ死んだ少年が狂女の子であることが明らかになってくる。狂女はお墓に祈りを捧げる人の中に加わる。そのうち少年の声が聴こえてくる。そして少年の霊が姿を表す。少年は語る。
「安心して行ってください、おかあさん。死者は蘇り祝福の日に私たちは天国で会えるでしょう。」
狂女の狂気は癒される。そして最初と同じく歌を歌いながら出演者は退場する。
紹介のCDは自作自演のもので、ピアーズの熱演はもちろんのこと、渡し守役のシャーリー=カークの歌唱が非常に感銘深い。ていうか好きな歌手なんだけども。ブリテンお得意の、少年の声も清らかで胸を打つものがある。
しかし、実際のところCDで聴いているだけだとそんなにドラマティックでもないので、少年の霊が出てくる最後に行き着くまでは音楽的には結構退屈かもなあと思う(・・・うーん)。やっぱりこれは実演でないと。小さな音楽用ホールで、または教会かなんかで上演してもらいたいものである。(・・・別件だが新国立劇場で「ピーター・グライムズ」やってほしい。)
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コメント
来月、大阪で「隅田川」と一緒に上演ありますよ。行けませんけど。
来々シーズンからは新国の芸術監督は尾高さんだからイギリスものも多少は期待できるんじゃないでしょうか。
少なくとも「ピーター・グライムズ」ぐらいは。わたしゃ「オーウェン・ウィングレイブ」が観たいです。
ところで今、ドリームライフのハーディング指揮の「ねじの回転」DVDが安く出ていてお買い得ですよ。
投稿: フィディ | 2009年4月28日 (火曜日) 04時49分
naopingさん、こんばんは。
あの事件はほんとに嫌な後味を残しますね。
そんな馬鹿な親たちに、真摯に向き合って欲しい能舞台とオペラ作品ですよ。
ブリテンの偏愛はいろんな意味で優しいものだったものだと思います。
子供や、弱者、虐げられたものへの強烈なメッセージがその根幹にあって、今後ブレイクする音楽ではないかと思ったりもしてます。
尾高さんは、ピーターGを新国でやると公言してますので、期待しましょう。
ついでにディーリアスの「村のロメオ」も!
投稿: yokochan | 2009年4月28日 (火曜日) 23時43分
>>フィディさん
んまあ。大阪で上演あるんですか・・・東京だったら絶対行くのに。なかなかブリテンのオペラって実演やらないんですよね。
尾高さんが監督だったらブリテンやってくれそうな感じですね。いいイギリス人テノールが来てほしいです。「オーウェン・ウィングレイブ」は実は未聴・・・前にブリテンにはまってCD集めてたんですが、有名どころ集めて力尽きてしまったもので。勉強不足ですねえ私(恥)。
>>yokochanさん
うーん。私も子供がいないながら、世の中のそういうことをする親の気持ちがさっぱりわかりません。自分の子供がいなくなったら頭狂うでしょうよ、普通。
尾高さん、ピーター・グライムズやって下さるのですね・・・。いや~それは期待しまする。村ロメジュリもぜひやってもらいたいです。そういえばこないだ札響の楽屋に乱入したとき言うんだった・・・(後悔)。
ピーターGも村ロメジュリも船(舟)で沈むオチだから、新国立の舞台セリをフル活用できそう・・・と想像します。
投稿: naoping | 2009年4月29日 (水曜日) 14時23分