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2008年12月 7日 (日曜日)

マスカーニ/イリス in 芸術劇場

Pa0_0324マスカー二:歌劇「イリス」
指揮・演出:井上道義 
チェーコ(イリスの父):ジョン・ハオ イリス:ミナ・タスカ・ヤマザキ 大阪:高橋淳 京都:大島幾雄 ディーア:国光ともこ 芸者:小林沙羅 乞食:鈴木寛一
踊り子:橘るみ(東京シティ・バレエ団) 人形師:ホリ・ヒロシ
合唱:武蔵野音楽大学 管弦楽:読売日本交響楽団

(2008年12月6日 東京芸術劇場)

過去記事:マスカーニ・イリス




ということで、待ちに待ったこのオペラの上演。私のブログの人気カテゴリー「珍オペ」に咲く一輪の花、イリスちゃんに久々に出会えるのである。「久々」っつーのは1985年の日本初演の舞台から久々って事なんだけど、ま、日本初演はテレビだったのでナマで見るのは私は初めてである。きっと「両方ともナマで見ました」って方もおられるに違いない。

初演の時は、正攻法な舞台で普通の時代劇な感じであった。その頃あまり日本人のイタリアオペラ歌手を知らなかったので、イリス役の松本美和子さんの少女姿(オカッパのカツラをつけてたと記憶)がデフォルトであると信じてた。何か別のコンサートにてコンサートドレス姿で長い髪の松本さんをテレビで見て「あ、普通のオペラ歌手なんだ」って思った。

そういえば、私が生まれて初めて見たオペラって実は「カバレリア・ルスティカーナ」と「道化師」二本立てなんである(もちろんテレビで見た)。当時は「えー、イタリア人ってこんな色恋沙汰の殺し合いばっかしてんの?日常茶飯事?」とか思った(はあ)。「椿姫」に出会う更に前で、男と女の間の長くて深い河はまだよくわかんなかった(今もよくわからんが)。

で、イリスに話をもどそう。そんな日本初演はやっぱり今夜と同じミッチーが指揮してたのである。それほどまでにこの曲に思い入れがあるのか。指揮者みずから演出までして、執念の上演であると感じる・・・何年か前の「死の都」の上演みたいだ。←またやってほしいよ死の都。

会場に入ると舞台の面積が多い。イコール、客席数がずいぶん普段より少ない気がする(ほぼ満員だったが合唱団のご家族も多かったのでは)。私は2階席の前から4番目だったのだがずいぶん前のように感じた。舞台装置はもちろん「シアターオペラ」とのことなので簡素。オケの間を突っ切って黒い石段があり、オケの後方に舞台がある。オケがよく見える。(ついでに言えば、第2幕で気づいたのだが普段はハコの中にいるはずのプロンプターさんが見えてたのが面白かった。総譜を前に、横には指揮者の小さなモニターを見ながら格闘している姿を客席に見せるのは珍しかった。指揮者のように歌手に合図を送ったりもするのが見えた。)

ドラが3回鳴ってさて席に着く(トゥーランドットかい)。最初っから盛り上がりまくるこの曲だから(珍しい出オチな曲である)、期待大である。コントラバスの低ーい音のソロから始まり、どんどん音楽が大きくなってそこら中の入り口から普段着?の大学生の若者たち(武蔵野音大)が入ってきて歌を歌う。オルガンまで加わって大迫力で終わる。もうここでブラボー言って帰ってしまいそうである。

http://jp.youtube.com/watch?v=88M-yzBzq4k

主役のイリスは当初発表の人と違って、ミナ・タスカ・ヤマザキという知らない歌手(まあ、どっちにしろ知らないのだが)になった。ずっと「ミス・タナカ」だと思ってたけど違ったみたい。

まあ、少女というにはかなりキツイ・・・のはオペラの世界ではしょうがない。お声は海外で活躍されている方のようなので(この曲はCDを聴きなれているのでもう一声欲しいなあと思うこともあったけれども)声も2階席までよく届いてたし素晴らしかったと思います。ふうむ。蝶々さんもそうだが、こういう「役は清楚なのに歌はドラマティック」な役は難しいね。

盲目のおとうさん役のジョン・ハオというバス歌手の方は、まだお若いし写真で見るとなかなか素敵なのでもっとカッコイイ役で見てみたいわ。おお、長谷川顕さんに師事なんてなおさら素敵。

お声がまた素敵だったのは最近大活躍の高橋淳さん。ドイツものしか聴いたことなかったんだが、おお、イタオペもよいではないですか。ピンカートンとかやってほしい・・・いややっぱりワーグナーやってね(彼の性格テノール化に期待)。大島幾雄さんはいつも素晴らしい。日本のシェーン博士。

ディーア役の国光ともこさんという初めて聞く歌手のお歌も印象に残りました。個人的には主役の方よりうまかった気がし。

第1幕は少女イリスが好色なオオサカ&吉原のやり手のオッサンのキョウトにさらわれるというのが主なあらすじだが、まあ、マスカーニの音楽の奇麗なこと。筋書きのむちゃくちゃさとのコントラストがすごい。着物(浴衣?)着て川で洗濯しながら歌う少女たちの美しいメロディーは全然日本じゃなくてイタリアのナントカ地方(どこか知らんが)の娘さんたちみたい。ティモテって感じ。そしてどんどん怪しい人たちが入ってヘンな人形芝居を繰り広げる。もはやどこの国かわからん。服も洋装なのか和装なのか。オオサカさんは裃(かみしも)と軍服の合体なのか。

イリスを惑わすための人形劇の人形だけは日本初演よか豪華だったかも。ホリ・ヒロシさん登場。三味線や太鼓の人々も登場。全然メロディは日本じゃないのに三味線。うーん。

イリスはさらわれて、盲目のお父さんには手紙とお金だけが残る。そこへ通りかかった郵便局員と黒猫大和と佐川急便に手紙を読んでもらい事の成り行きを知る。お父さんカワイソス。

第2幕は吉原。ヨシワラって外国で有名なのか? ここでも日本初演と同じように「大蛸にオカされる海女」?の絵が舞台に見える(私、この絵ってイリスの舞台でしか見たことないんだが)。この絵はこの曲のキーワードなのだが、2幕でイリスによって歌われる「ある日お寺で」はある意味凄い・・・どう考えても大蛸が登場するオペラ・アリアは古今東西これだけだと思うんで(歌詞訳を見ながら聴くと大変興味深い)。

第3幕はイリスが投身自殺を図った暗い地底。「吉原遊郭に谷底なんてないでしょ」といった感じの言葉が解説書にはあったが、あたしは絶対にイリスは井戸に身を投げたと信じてる。(のちの貞子である)

最後はまた最初の合唱団が出てきて壮麗な大合唱で終わる。「まあ、結局は何が言いたいのかわかんないオペラだけど最初と最後の音楽が感動的だからよかったんじゃないけ?」って思って帰る人もいたかもしんね。

http://jp.youtube.com/watch?v=0X_5a2CPBsA&NR=1

最後はなかなかの大拍手でありブラボーもあり。「今日はよかったわねえ」と話しながら家路ににつくご婦人方も多く見受けられ。終わりよければすべてよし。よかったよかった。皆さんお疲れ様でした。武蔵野音大の方も熱演素晴らしかったです。

台本はルイージ・イッリカ。ジャコーザと組んでプッチーニの傑作オペラのいくつかを担当しているのは有名である。
この「イリス」での経験から、のちのプッチーニの大傑作「蝶々夫人」が生まれたのかもしれない。(蝶々さんよりイリスが先なのだ!)

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コメント

おぉ、終わってしまいました??
厚手のペーパーのチラシを一目見たときから、こりゃいかなぁアカンと思いつつ、日々を過ごしてしまいました。
naopingさん、ご推奨の「イリス」、私もチロチロと聴いてまして、その愛らしさ、旋律の美しさに大いに興味を覚えておったのです。
秋から12月のトーキョー音楽会ラッシュは、財布にも体ににも、スケジュールにも過酷であります!
行きたかったなぁ・・・。

投稿: yokochan | 2008年12月 9日 (火曜日) 00時08分

 ご無沙汰しています。
   
 「イリス」は、そのタイトル名しか聞いたことがなかったですが、花の「アイリス」の意味ですよね?
   
 「アイリス? おや、まぁ」みたいな名前の会社もあるような気がしますが。
   
   
 2006年の過去記事ととともに読ませていただきました。登場人物名があれなんでストーリーを見下してしまいそうな気持ちになりますが、(お国文化の認識のズレがあったとしても)ドラマティックなエンターテインメント性を構築できているならば悪くないのではないかという気が個人的にはします。   
 よく承知しませんが、オオサカが吉原での「身請け」というプロセスを踏んでおくのは、のちのち問題になったとき「イリスの生い立ちそのほかこの吉原に来るまでの詳しいいきさつは知らないが、ともかく俺はイリスを気に入ってしまい、しかるべく彼女を身請けしたんだ」としらを切るための方策、あるいは所帯を持つなり何なりのステップに進むうえでも必要だったからかも知れません。また、イリスの父親に金が渡ることで少しでも罪悪感を払拭せむとしたためかも知れないですね。日本史や法制度・しきたり、歌舞伎、時代小説に詳しい人に解説いただきたいところであります。   
   
 「大蛸に○○される海女」の絵というのは、北斎のあれでしょうか。   
 この「絵柄」については知っている人も多くやはり有名だと思うのですが(教科書に載ったことはないと思われ、にもかかわらず女性陣が知っているのは、はて、たとえば 「 微 笑 」 などの雑誌にでも載ったことがあるのかいなと思ったこともありますが・笑)、分類としては 春 画 に該当するのではないかと思います。北斎のあの作品には実は文章(文字)が書き添えられており、絵柄だけでは海女さんが終始不本意なのかどうか判然としないのですが、文章の内容はそのあたりを明確に描いており、やはり 春 画 でありましょう。イリスの心の動きもストーリーもよく知りませんが、上の点と合わせてイリスにマッチするならばこれはきわめて興味深いオペラ作品と思えますし、マッチしないのならば舞台セッティングの点で「うーん」と唸りたい気もします。   
   
   
 別稿の関係になりますが、「インカのめざめ」・・・ポテトか何かの入ったパンなのでしょうか。   
 「ホワイトナイル」というビールがあったはずですが、それよりもアピールある命名ですね。なぜかA.スカルラッティの「ガンジス川に陽はのぼり」を連想してしまいました。  
 パン屋さんを営むなら「アルゼンチンのまどろみ」とか「黒沢さんよりクロワッサン」という商品を発売してみたいと思います。

投稿: クラシカルな某 | 2008年12月 9日 (火曜日) 20時02分

>>yokochanさん
こんばんは。おや行かれなかったのですね。
結構イリスのあのチラシはかっこいいなあと思います。ポスターもセンスいいし。実際の舞台装置はあまりお金かけられなかったのか、ちょっと・・・と思うことはあったのですが、曲を楽しむには十分でした。慣れない曲の演奏にオケも歌手の皆さんもちょっと戸惑ってたかなとも思いましたが、なかなか聴けない曲なんで感謝の気持ちでいっぱいです。ミッチーもものすごく頑張ってらしたし(「死の都」の時と同様、ちょっとテンポ遅いかなと思いましたが)。
今年の12月は仕事が忙しいのでおそらく21日のスコアールで終了(倒れてなければ)です。今年に比べると去年の12月はヒマだったなあ・・・。


>>クラシカルな某さん
こんばんは。おひさしぶりです。
イリスはアイリスですねえそういえば。土曜日の舞台でもあやめだかしょうぶだか咲いてましたな、造花ですけど。

実はウチには「イリス」の対訳はありませんのでね(対訳を見たのは遠い昔に見た日本初演と、昔知り合いに借りたのとこないだのゲイゲキのとき)、吉原の件についてはよくわからなかったのですよ。で、今回見まして、次のことがわかりました。

・金持ちで気まぐれのオオサカの事だから、もし自分がイリスに飽きてしまったり手に負えなくなったりしても返品可能になるのでは、ということで吉原のやり手のキョートの力を借りた。

・イリスは(あくまで役の上では)かなり年若く性のイロハも知らん年代だと思う。ましてやイナカ育ち。そんな女の子を我が物にするにはちょっとオオサカは経験が浅すぎる(第2幕でキョートがそのように歌うシーンがある)。ドシロートの女の子をAVに出すような手腕はオオサカにはない(あれは凄いです。やはりああいう口八丁手八丁が必要なのね。)。

>「大蛸に○○される海女」の絵というのは、北斎のあれでしょうか。
そうだと思います。舞台上ではそんな凄い印象でもなかったのでこの絵を最初リンク貼ってたのですが、本物は意外と克明に描かれてたのでリンクやめました(私はもとは絵描きなんでぜんぜん春画は大丈夫だけど、清純な音大生の方がご覧になることもあるかなと思ったので)。タコの春画って結構色々あるんだなあとネットで調べてて思いました。タコ美味しいのに。

「インカのめざめ」はご指摘のように北海道産のじゃが芋「インカのめざめ」がボコボコとパンに入っているのですね。断面を撮影してUPしようかと思ったのですがあっというまに食べてしまいました。インカのめざめ大好きなんですよ。なんでこの名前なんだかは知りません。


   

投稿: naoping | 2008年12月 9日 (火曜日) 22時37分

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