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2008年5月31日 (土曜日)

ケンペ/ジークフリート

ワーグナ-:楽劇「ジークフリート」 
ペーター・クライン(ミーメ)、ヴォルフガング・ウィントガッセン(ジークフリート)、ハンス・ホッター(さすらい人)、オタカール・クラウス(アルベリヒ)、
フレデリック・ダルベルク(ファーフナー)、ジャンネッテ・ジンクレール(森の小鳥)、ビルギット・ニルソン(ブリュンヒルデ)


(1957年10月1日ライブ)



過去記事:ケンペ/ラインの黄金

ケンペ/ワルキューレ

こんな雨の日はワーグナーを聴くんだ。出かけても風邪を引くだけだしね。

で、今日はジークフリート。タワレコでもとくに「素晴らしい公演」とかで当時の批評が載ってたヤツだ。確かに演奏は素晴らしい。ジークフリート役のウィントガッセンが若くて元気いっぱい。ヴォータンのホッターもふかぶかといい声を聴かせている。

はてしかし。やっぱり想像通りだけどこの演奏の中心はケンペ指揮のオーケストラだと思う。なんでこんなにオケうまいの?と思う。

注目の「森のささやき」の弦の音のみずみずしいこと(そもそもここの部分はどんな演奏でも美しいのだが)。木管も小鳥さんみたいできれい。モノラルで音があんまりよくないけど、それでもわかる。このオペラではここの場面がいちばん好きなんだけど、ずっとここにいたいな的な感じ。

小鳥さん役のジャンネッテ・シンクレア(って読むんじゃないかと思う)が2度目に「ハーイ」と声を出すときに途方もない外れた高い声だもんで笑える。なかなか綺麗な声でいいのにな。ところでアルト歌手のモニカ・シンクレアとは関係あんのか?(グイ指揮のグラインドボーンのフィガロで両方出てる、勿論未聴)

小鳥さんで思い出したが。(どっかで書いたかもしんない)
ま、小鳥さん役ってのは本物の姿は普通出てこないわけですが、私が観たので唯一出てきたのはご存知「トーキョー・リング」のときですね。菊池美奈さんという歌手です。最初頭は全身鳥の着ぐるみで登場(中の人は別?)。ジークフリートがファフナーの血をなめたあと、鳥が言葉で歌うようになってからは頭の被り物をぬぐんですけど・・・その彼女がほんとにかわいくってね。私、女なのに結構萌えまして(←え)。そのあと菊池さんは着ぐるみをきて宙乗りしてたわけですが、ぴょーんと飛んだり、空中を一回転したり。いや、勘三郎さんも真青ですわ。この日、一番チョイ役のはずの小鳥さんが一番の主役だと思いました、私。第3幕では火を避けるために消防士の服きて出てきたのが可愛かった。よっぽど評判がよかったのか、「神々の黄昏」でも小鳥さんでてきた、菊池さんじゃなかったみたいだけど。

(何故か2幕の最後で体の着ぐるみも脱いで肉じゅばんになるんですけど、これはナンデ?)

あ、この話は関係ないね。スマン。

第3幕で、管弦楽が激しくなり一番かっこよくなる部分でのホッターはやっぱり見事だし、神がかってる感じ。3幕になってもまだまだ元気なジークフリート。やっぱりすごいよウィントガッセン。(つか、このオペラ変じゃね?前から思ってたけど。ジークフリート出すぎ。)

ウィントガッセンといえば。
前に読んだ本(メトの支配人?が書いたかなんか)に書いてあったんですが、ウィントガッセンが第1幕でノートゥングを鍛え始めてすこしして、ふと「・・・アレ?完成形のノートゥングが手元にナイ!」と気が付いたのだそうです。これじゃいつまでたってもノートゥングが完成しないじゃないか。歌いながらウィントガッセンは試行錯誤の末、ちょっとづつ舞台袖に移動して、やっと袖までたどりついた。で、めでたく完成したノートゥングを受け取り、事なきを得たそうです。

さてさて、最後だけ登場のブリュンヒルデ。「男ぢゃない!!」
このシーンでのブリュンヒルデ役のニルソンの話は有名。これもメトでの話かもしれない・・・。舞台上でジークフリートに起こしてもらうのを待って横たわるブリュンヒルデ。多分ホテルから持ってきたんだろう、ドアノブにつける「邪魔しないでください」って札を持って寝てたらしい。←これっていろんなとこで何回も読んだけど、都市伝説?

(そういえば「トーキョー・リング」でのベッドサイドの目覚まし時計もなかなかいいなと思ったけど・・・勿論演出。)

もちろん、ずっと寝てたブリュンヒルデは元気いっぱいである。「あ、私を起こしたのはジークフリートなのね!!」と大地も裂けんばかりに大喜びだが、あたしだったらガッカリだな~。だってぶっちゃけ、血の繋がった甥だもん。「・・・あの、念のため聞くけど、もしかして別のジークフリートさんじゃないですか?(涙)」って言うと思う。甥はムリだあ。しかし、そこはワーグナーのオペラなのでどーでもいい。スルー。

ベームのリングでは「ジークフリート」の最後では力尽きてたが(まだCDでは聴いてない。何故かレコードでハイライトを持ってたので知ってる。)、さすがまだ若いぞヴォルフガング。最後までほとんど疲れてない。えらい。最後ぼ拍手&ブラヴォーもキモチイイ。そんで、こんな恐ろしい曲を書くワーグナーはキ○ガイイ。

・・・で、「神々の黄昏」に続く。

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コメント

ケンペの指揮は、観客を自然にドラマの中に引き込んでいくとても優れたものだと思います。オケとの信頼感もとても高かったのではないでしょうか。でなければワルキューレ第一幕の幕切れの情熱や、森のささやきの情感は表現できないと思います。

歌手については、私が今さら言うまでもなくみんな素晴らしい!
小さな役まで良い声をそろえていますが、バイロイト勢以外はちょっと緊張気味な気がします(笑)。

投稿: 大分のワグネリアン | 2008年5月31日 (土曜日) 19時11分

例のを買って以来、今までにないくらいワーグナーにはまりっぱなしです。元々苦手なワーグナーでしたけど(破門だけはご勘弁を~)。このケンペのリングもずっと福岡塔で見ているけど、最近、財布の調子が悪くて開かないです(笑!)。

で、たまには気分を変えて別な音楽も聴いているけど、今はベルクの三つの管弦楽曲と「ヴォツェック」断章を聴いてます(どんな気分転換ぢゃろうか???)。

ニルソンも様々な逸話の持ち主ですよね・・・カラヤンが演出も担当した「トリスタンとイゾルデ」の舞台リハで、暗い舞台だったのでヘッドランプ付きのヘルメットをかぶって出てきたそうな

投稿: Masahiko | 2008年5月31日 (土曜日) 21時53分

 こんにちは。
   
 ブリュンヒルデとジークフリートとの「続柄」は確かにそうですね。
   
 しかし、誰もが思うのと同様に、むしろ「ヴァルキューレ」におけるジークムントとジークリンデのほうが気になってしまいます。リアルに妹がいる身には「おお妹よ、フンディンクから救ってやろう」との思いは理解できるものの、「間違っても二人して恋には落ちないし、嬉しそうに歌い交わすなんて冗談じゃねえな、その先もちと考えられん」であります(笑)。しかし、「指環」における設定では幼くして別れ別れになってしまっていたとのことなので、うーん、ああいう展開もありなのでしょうか。   
 わたくしにしてみるとむしろブリュンヒルデが魅力的に映ります。レヴァインのDVDのヒルデガルト・ベーレンスのせいもあるでしょうし、他のCDでの歌唱からの先入観でも。   
 「ヴァルキューレ」第2幕における、ブリュンヒルデからジークムントへの「死の告知」の個所でジークムントは「あんたはん、若くてきれいだけど、冷酷やねんなー」と歌いますが、わたくしだったらこの言葉の前後をひっくり返したうえでさらに次のようにしてみたくもなります:   
   
ジークムント:「あんたはん、冷酷なこと言いよるけど、しかし見れば見るほど美しい。戦乙女よ、たまには休息も必要ではないのか?・・・っとっとっと、これはこっちの話。そうだ、ヴァルハルの話をもう少し聞かせてくれないか。ジークリンデはいま気を失ってしまっているが、ここをしばし離れ、今宵ふたり語り明かそう」   
・・・とか何とか言いながら ナ ン パ する(爆)   
   
 ジークムントは、ブリュンヒルデと異母姉弟関係にあることを知らないわけですよね? こういう展開も不自然でないのではないかと。しかし、こうなるともうフリッカの怒りはさらに大きくなり・・・ま、ストーリーの混沌は増し、そして鑑賞する側も「あら、ジークムント素敵っ!」なんていう女性ファンはいなくなってしまうでしょうが。   
   
 すみません、最初のちょい部分以外はかなり脱線でした。

投稿: クラシカルな某 | 2008年6月 1日 (日曜日) 11時31分

>>大分のワグネリアンさん
こんばんは。毎度どうも。
本当に、ここでの管弦楽は素晴らしいと思います。叙情的なトコがほんとにイイ。ハイティンクを思い出しました。

>バイロイト勢以外はちょっと緊張気味な気がします(笑)
やっぱりイギリス人は当時はまだあんまりワーグナー歌いなれてないんですかね? そうそう「神々」でのイロシュファイなんてバイロイト常連組はやっぱ貫禄だな~なんて思いました・・・あ、これは次の機会に。


>>Masahikoさん
こんばんは。毎度です。
おお、ワーグナーニガテだったのにバイロイト箱買われたのですね!これでワーグナーは楽勝楽勝。うーん、ケンペはバイロイト箱に比べてちょっと録音がアレですわね。

ベルクは全作品が少ないのがよいですね。本人は遅筆なのを恥じてたらしいけど、内容が濃いので許す(←何故上から目線)。

ニルソンは、偉大なワーグナー・ソプラノというより「おもしろいオバサン」という認識です。暗がりの話もなかなかオカシイですよね。想像すると笑える。


>>クラシカルな某さん
こんばんは、毎度アリです。

レヴァイン盤だとたしかに、ベーレンスのほうが(ジークリンデより)魅力的なのかもしれませんね。これはいたしかたない(メトの法則)。しかし、サヴァリッシュの映像だとベーレンスよりヴァラディのほうが美人だし(それは主観が。いやどっちも好きな歌手なんですけど)、やっぱりジークリンデがいいかなと思います。

もし、ブリュンヒルデ役がカタリナ・リゲンツァとかだったら危ないかなあ・・・(ウソ)。

でも、ワタシは日本ジークムント・ファンクラブ(会員1名)なので、ジークムントはジークリンデ一筋だと思いますよ。つか、思いたいです。

それにしても、ブリュンヒルデとジークフリートはオバとオイの関係だってのはオペラでは全然触れられてない。私もこれに気が付いたの大人になってからでした。

投稿: naoping | 2008年6月 1日 (日曜日) 22時33分

こんばんは。
着々とお聴きですな。
私は、ビニールを破いて中身を眺めただけで、まだ聴いてません。つーか、たどり着きませぬ。(このビニール、頼りないし、ケースに付着して跡が残ってしまい、なんだか安っぽい感じでした)
肝心の演奏は、すごく良さそうですねぇ。楽しみでなりません。
ベームのヴィントガッセンもすごいですが、ご指摘のとうりお疲れモード。そりゃ、ローゲやトリスタンも同時に歌ってたんですもんね。年も年だけど。

それから、トーキョーリングの肉じゅばん、私は失笑してしまいましたが、あのサーカス並みの動きは凄かったです。
それと、2幕のアルベリヒとミーメのやりとりが、ラブホテルみたいな部屋同士で電話を交わすという設定が、面白かった。
あら、脱線しました。

私は、夏のバイロイト時期に自宅で、汗かいて聴きます。

投稿: yokochan | 2008年6月 3日 (火曜日) 00時00分

>>yokochanさん
途方もないカメレスすいません(何でコメント返すの忘れちゃったんだろう?)。その後、ケンペ盤聴かれたのでしょうかね。

明日(2010年3月27日)の「神々の黄昏」の予習に取りだしたのは、やっぱりケンペ盤。録音はさすがにカイルベルトやベームに比べるとひどいものですが、自分にはテンポとか一番しっくり来るようです。明日の指揮者、あんまり私の好みと合わない人なので、初演の時の準メルクルよりは期待してませんが、仕掛け満載の演出と恵子タンのグートルーネの歌唱が楽しみです。

投稿: naoping | 2010年3月26日 (金曜日) 22時51分

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