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2008年4月 8日 (火曜日)

グリエール/イリヤ・ムロメッツ

グリエール:交響曲第3番「イリヤ・ムロメッツ」
ドナルド・ヨハノス指揮/チェコスロヴァキア放送交響楽団

過去記事:荒川選手の原点/グリエール・赤いけし



ロシアのまーまー知ってる人は知ってる作曲家、グリエールって言ったらバレエ音楽「赤いけし」。そう相場は決まってる。少なくとも私にとったら。

しかし。グリエールは、実は交響曲も素晴らしい。それどころか聴いていて「ひょー!」と叫んでしまうほどかなりの傑作であるぞ、この交響曲第3番。ま、このCDはね、ずっと聴かないまま死蔵されてたの、ウチに。で、今日ふと思い出して聴いてみたのです。

いやー、交響曲というよりは、劇音楽に近い。つか、昔の映画音楽とかに近い。壮大な力強さはロシア音楽というよりワーグナーの管弦楽曲にも近いかも。壮大でありながら叙情的な部分は非常に瑞々しい響き。また第2楽章の官能的な響きはR・シュトラウスを思わせる。

しかも、交響曲のくせに75分半もある。演奏するほうも疲れそうである。

「イリヤ・ムロメッツ」という物語はちっとも知らなかったのだが、調べてみたら結構面白いというか奇想天外、ロシアのドン・キホーテ(ディスカウントショップではない)って感じの物語であった。

なげぇので、かいつまんで。

ロシアの口承抒情詩「ブィリーナ」に登場する英雄の物語。
イリヤは老夫婦が子供が授かるように祈った末生まれた子だったが、生まれつき手足が動かなくて30歳まで家を出たことがなかった。

しかし、ある日3人の旅の老人が家を訪れイリヤに声をかけると彼は立ち上がり、薬によって強大な力を得た。老人たちは「国を乱す者と戦い弱い者を助けるためにこの力を使う」ことを約束させて去る。

イリヤはキエフを目指して旅立つが、その途中巨人スヴャトゴルの妻サルイゴルカに誘惑される。サルイゴルカは応じなければイリヤに乱暴されたって言いつけるわよというんで、しかたなく彼は応じる。しかしスヴャトゴルに見つかる。イリヤは正直に話しスヴャトゴルは妻を追放、イリヤとは兄弟の契りを交わす。

二人は旅を続けるが、スヴャトゴルは巨大な棺に入れられて死ぬ。このときスヴャトゴルの体から泡が溢れ、イリヤはこの泡を身につけるとスヴャトゴルの力と勇気を受け継ぐ。

イリヤはチェルニーゴフの町に着き、町を包囲していた軍勢を追い払った。人々に恐れられていた盗賊ソロウェイの右目を射抜き捕らえた。

キエフに着くと、太陽公ウラジーミルに迎えられ英雄たちと交誼を結ぶ。この地の幽霊や城に住む化け物を退治する。

しかしある日ウラジーミル公が宴会を開いたのにイリヤを招くのを忘れた。怒ったイリヤは町の建物を破壊して売って金にし、町の酒場で宴会を開く。ウラジーミル公は謝罪し、あらゆる酒場を貧乏人に3日間開放することを条件に仲直りする。

年老いたイリヤの前に強敵ボドソコリニクが現れ、互角の戦いになるが、相手は実は自分の子(サルイゴルカとの子)であることを知る。いったん二人は和解するが、ボドソコリニクは気が変わって槍でイリヤを刺す。しかし、イリヤは付けていた十字架に槍が当たって助かる。イリヤはボドソコリニクを雲の高さまでぶん投げて殺す。

ママイ率いるタタールの大群がキエフを襲う。イリヤはママイを殺し、5日間の戦いの末勝利する。しかし仲間の一人が慢心の言葉を吐いたため、敵軍の死者たちが起き上がり、5倍にもなって大群で襲ってきた。6日後また敵は増えた。イリヤが後悔の祈りを捧げると敵は地に倒れ伏し、勇士たちは全員石像と化した。

曲の構成は以下の通り。

第1楽章「さまよえる巡礼者、イリヤ・ムロメッツとスヴャトゴール」
第2楽章「山賊ソロウェイ」
第3楽章「ウラディーミル公の美しき太陽宮殿」
第4楽章「イリヤ・ムロメッツの武勇と石化」

こんなふーに。筋書きはあまりに奇想天外すぎて一瞬ヒクが、曲は本当にイイ。(昔話なのに何故か数字に細かくて、やたら3の倍数5の倍数とか出てくるからいちいち「世界のナベアツ」を思い出した)

コレ知らない方は是非聴いてみて(この曲がどのくらい有名なのかは知らんが)。ナクソスの他にもいくつか録音はあるみたいだが、とりあえずこのナクソス盤の演奏は壮大で迫力があり素晴らしい。

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コメント

僕も持ってますよ、このCD。シャンドスにもありますが、そちらのほうがパワーと翳りがあるような気がします。でも、曲の出来としてはあまり印象に残んない。グリエールといったら小曲のほうがメロディの美しいものがありますね。たいした演奏会ではなかったけれど、そこで聴いた夜想曲(OP.35-10)の美しさに痺れました。
ロシアの交響曲といったらミャスコフスキーに止めを刺します。

投稿: IANIS | 2008年4月 9日 (水曜日) 02時33分

 こんばんは。   

 グリエールは或る時期、日本に滞在して東京散策を楽しんだとのことです。
 浅草はもとより、残された書簡によれば、台東区入谷、中央区日本橋室町のあたりが印象深かったものと窺えます。   

 隠れたる秘話でありますため、やたら口外していただいては困るのですが、その折りの心象を音楽にしたのがこの交響曲第3番。   

 副題もちゃんと付いてますね:   

 「いりや・むろまち」。   

 ・・・な話は無く、上のはすべてがデタラメです。   
   
 さて、わたくしが聴いたことあるグリエール作品は、「赤い花」から「ロシア水兵の踊り」(ミトロプーロス)や「ホルン協奏曲」(ノイネッカー)くらいのものではないかと。後者の協奏曲は、(演奏スタイルのせいかも知れませんが)颯爽としたもの、まどろみ、ロマンチックなもの、その他を感じさせる音楽です。官能の域にあるものは感じられなかったように思いますが、しかし魅力的なものでした。第2楽章など思い浮かべると、この作曲家はバレエ音楽や描写音楽が上手そうに思われます。第3楽章は「ロンドン橋、落ちた」っぽいメロディが(笑)。しかし、繰り返しになりますが、魅力的な、適当な長さの曲であります。   
   
 ご案内の交響曲もいずれ聴いてみたく思いました。   

投稿: クラシカルな某 | 2008年4月 9日 (水曜日) 19時53分

「イリヤ・ムロメッツ」はオーマンディ/フィラデルフィアで持ってます。曲想があのコンビには向いてる気がしました。一度ぜひ実演で聴いてみたいものですね。

投稿: 白夜 | 2008年4月 9日 (水曜日) 23時30分

>>JANISさん
こんばんは。シャンドス盤はボッツタイン先生の指揮ですね。こっちも聴いてみたいです。
ミヤスコフスキーの交響曲も何曲か聴きましたが、全部は聴いてはないのでこれから開拓したいかなと思っています。


>>クラシカルな某さん
入谷あたりはいい風情ですね。私も東京下町散策は大好きでよく行きます。浅草でたまたまグリエールにも出っくわしました。
グリエールは、私は何曲も聴いてないのですが、昔のロシアの絵本をめくっているようなカラフルな楽しさがあります。ホルン協奏曲もあるんですかー。


>>白夜さん
この曲でオーマンディ/フィラ管!なにやら王道ですね。実演でやらないかな~。できればアニメかなんかにしてスクリーンで上演しながら演奏してほしいです。すみトリで。

投稿: naoping | 2008年4月10日 (木曜日) 20時43分

グリエール、ホルンのコンチェルトもいいけど、
好きなのはハープのです。

なんかもう、のどかな春の野原を、
パンダの子供がころんころん転がってるよな曲。
ちょっと中華風味ありかも。

投稿: ぜん | 2008年4月11日 (金曜日) 00時26分

>>ぜんさん
グリエールって何気に中華風味なんですね。「赤いけし」はまーおそらくそういう話かと思うのでいいとして、「入谷」も何故かそんなとこありです。ハープ、ホルン、チェックしておきます。

投稿: naoping | 2008年4月12日 (土曜日) 11時36分

古い記事への書き込み大変失礼いたします。
グリエールの名前があったのでたまらず投稿いたしました。

「イリヤ・ムウロメツ」、私も好きです。
ボッツタイン指揮/London Symphony OrchestraのCDを持っています。
仰るように壮大さと叙情性のバランスが素晴らしいですね。
試みに所有しているグリエールのCDを数えてみたら、交響曲1~3番・ヴァイオリン協奏曲・ハープ協奏曲・七重奏曲・八重奏曲・弦楽四重奏曲1~2番・チェロとピアノ作品集等8枚ばかりありました。
うーむ、いつの間にこんなに溜まったんだろうw。

でも私が一番好きなのが「コロラトゥーラ・ソプラノ協奏曲」なのです。
これは曲名から想像するような技巧を全面的に誇示する曲ではなく、ラフマニノフのヴォカリーズにも匹敵する美しい旋律と纏綿たるロシア情緒に満たされたそれはそれは素晴らしい曲です。
聴いておかれて損はありません。

いろんな録音が出ていますが、ナタリー・デセイ歌うこのCDは絶対のオススメです(TOCE 14129)。
色んなヴォカリーズを集めたCDで、ラフマニノフのも入っていますが、グリエールは勿論のことアリャビエフの「ナイチンゲール」などは絶品かと思います。

投稿: カルちゃん大好き | 2010年5月30日 (日曜日) 18時23分

>>カルちゃん大好きさん
コロラトゥーラ・ソプラノ協奏曲、存在は知ってるのですが(歌物好きなので)、そういえば聴いたことなかったですね。デセイよさそうですね。お金に余裕があったら買ってみます。

投稿: naoping | 2010年5月30日 (日曜日) 22時56分

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