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2008年2月16日 (土曜日)

ワーグナー「妖精」東京オペラ・プロデュース

Pa0_0219 東京オペラ・プロデュース公演
ワーグナー:歌劇「妖精」

福田玲子(アーダ)、羽山晃生(アリンダル)、鈴木慶江(ローラ)、秋山隆典(モラルト)、工藤志州(ツェミーナ)、高橋華子(ファルツァーナ)、羽山弘子(ドロッラ)、西塚巧(グンター)、新保堯司(グロマ)、西垣俊紘(ハラルト)、その他
マルコ・ティトット指揮/東京オペラ・プロデュース管弦楽団・合唱団





えっと。全然行く予定なかったんですが。券も取ってなかったし。
なんで取ってなかったのかっつーと。以前見た「ルイーズ」が頭にあり。

実は私、このblogの中では、「(これを読むであろう)日本人による演奏会やオペラ公演は、基本的にけなさない」ということをモットーとしている。

だから、アマチュア団体であろうと、プロの団体であろうと、なるべく好意的に書いている。

ということで、前回観にいった同じ団体の「ルイーズ」の感想をどう書いていいかすごく困ってしまった。

演出とか、歌手の方はとくに文句はなかったのだが(知らない人ばっかりだったから、こんなもんだろうと思った)、とにかくしまりのない指揮がひどかった。この曲を深く愛している私にとって、これは屈辱だった。初めて観にいった団体だが、「次、観にいくのどうしようかな」くらいに思ってた。とにかく1万2千円払って、これはないだろうと思うほどだった。指揮がひどいとオケまでヘタに感じるから困る。

・・・で、何で今日観にいこうと思ったのかというと・・・・単にヒマだったからでえす。当日券もあるっていうし。で、6千円の券をゲット。前から6番目の端から2番目でも、とてもいい席。この値段だったら、ちょっとくらいひどい演奏でもいいや、ワーグナーのこの曲は滅多に演奏されないんだから参考ていどに・・・くらいに思ってた。

ところが。

思ったより良かった。というか、かなり裏切られるくらいいい上演だった。オペラ第1作目(現存のもので)とはいえ、さすがワーグナーだ。やっぱり。

ワーグナーの「妖精」のあらすじ(ちらしより)
妖精アーダと王子アリンダルの愛の物語。
8年前、王子は狩の途中で行方不明になる。妖精の国に迷い込みアーダと出会い共に愛し合うようになる。しかしアーダは妖精、国の掟で8年間は身分を問わぬように王子に願う。王子は期日直前に誓いを破ってしまい、故国へ戻されてしまう。しかしアーダは王子の前にもう一度現れ、時を取り戻したいなら試練に耐えるように命ずる。しかし王子にとってその試練は耐え難いものばかりで、またもや失敗、アーダは石になってしまう。王子は狂乱するが、妖精達や魔法使いグロマの助力により再び愛を取り戻し、故国を妹夫婦に譲り、彼は妖精の国の王となる。



という感じなのだが、もっと筋は実は入り組んでいる。そんで、オペラを色々見ている人には「このオペラって、色々なものに似ているな」と感じると思う。

たとえば。

・「魔笛」・・・全体的に童話チックな雰囲気。

・「影の無い女」・・・妖精アーダは石になってしまうが、夫の愛によって助けられる。人間と妖精の世界を行ったりきたりという設定が同じ。

・「ローエングリン」・・・妻の身分を問わぬよう夫に言う。

・「タンホイザー」・・・ハープを弾きながら歌う。

・「ニーベルングの指環」・・・第3幕のRPG的なところ。ジークフリートが武器を得て戦うみたいな感じが似ている。指示を出す魔法使いグロマがヴォータンぽい。あと、直接指環は出てこないが、歌詞に出てくる。

という感じで、ドイツ・オペラ好きには色々楽しむことができる。とくに、第2幕の狩人ゲルノートと侍女ドロッラの出てくる場面では、ワーグナーのオペラではあるまじき(ビックリ!こんな音楽も書いてたんだワーグナー)、恋のさやあてみたいなシーンはすごく可愛かった。まるでパパゲーノとパパゲーナの「パパパの二重唱」を思い出す。これを歌った羽山博子さん(小柄)と秋山隆典さん(長身)のデコボココンビはとっても可愛かった。あれ見ただけでも今日行った甲斐があった!って思ったくらい。拍手喝さいを受けていました。
(羽山さんは6月の二期会アリアドネでエコーを歌う予定。とっても楽しみ。)

他の歌手の方で、印象に残った点。

このオペラの主役、アーダを歌った福田玲子さんは初めて聴く歌手ですが、引き込まれるぐらいの歌唱でした。ドイツ語の発音とかはどうかな?と思うこともあったのですが、とにかく声の威力が素晴らしい。声が高音に行けば行くほど、どんどん美しくなるのである。ことに高音のピアニッシモの声がすごくよくて、かのモンセラ・カバリエに絶賛された、と解説書にあるがうなずける感じ。こんなマイナーな役でなくてヴェルディとかプッチーニとか聴いてみたい。とにかくスゴイ。

相手役の羽山晃生さんも、なかなかの美声で聴かせていた。容姿もなかなか「ナントカ王子」の役っぽい(カッコワルイ人はやっぱり王子役はダメだよ~)。ワーグナー・テノールという感じの声ではなくリリックだったので後半やや辛そうだったがよく乗り切りました。
(羽山さんは6月の二期会アリアドネで士官を歌う予定。とっても楽しみ。つか、夫婦か?)

紅白や他のテレビでお馴染み、鈴木慶江さんはやっぱり華があるというか美人。何か、見ただけでトクした感じがする。お声もなかなか素晴らしい。色々とアリアを歌うシーンがあり、第2のヒロインといった役であります。(明日はブロガー松尾香世子さんが歌います。こちらもお美しい方なので見たかったんですが・・・)
鈴木さんはブラヴォーも多かったですが、何故かブーもあり。いいじゃん綺麗なんだから、許して。

・・・他の歌手も方も「え?なんで?」という方もなく、それぞれよかったと思います。何かと大活躍の妖精さん2人もよかったです。

演出やセットはちょっと「?」と思うとこはあったけれど、予算上仕方ないし(ホントにそうよ)、例えば「影の無い女」上演ばりに大変な設定だと思うんでかなり頑張ってたと思う。こんな設定、舞台じゃムリじゃあワーグナー。だから今まであんまり演奏されなかったんでしょ?

明日はほとんど違うキャストなのでなんとも言えないのですが、指揮もなかなか引き締まっててよかったので、かなり楽しめるんじゃないかと思います。とくにワーグナーが好きな人は「へえええ~」と思うとこがたくさんあると思うよ。



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コメント

むむむ。
来週が「ワルキューレ」2回に「黒船」とハードスケジュールなんで
今週はゆっくり休んどこうかと思ってたんですが
人身御供さまのおかげで様子もつかめたことだし
やっぱり当日券で駆けつけてみようかしらん。

投稿: 白夜 | 2008年2月16日 (土曜日) 23時58分

>>白夜さん
こんばんは、人身御供です(爆)。
私もワルキューレ2回なんですけど、やっぱり気になったので行ってしまいました。
明日はキャストが全然違うのでなんとも言えないのですが、今日はなかなか面白かったです。曲のメロディとかは、頭に残るようなものは全然ないですが、確かにワーグナーでした。

投稿: naoping | 2008年2月17日 (日曜日) 00時10分

うわー。行きたかったですねー。
でもおかげさまでこの曲聴いてみたくなりました。
CD買ってみようかな。
ありがとうございます(^.^)。

投稿: ココアカ | 2008年2月17日 (日曜日) 09時49分

>>ココアカさん
こんにちは!
なかなか面白かったです。今日は2回目だからもっと舞台進行とか良くなるかな?と思います。人間世界に突然妖精さんが普通に出てきて「え?」という感じはしましたが。CDはサヴァリッシュ盤やダウンズ盤などがありますね。聴いたことないですが。

投稿: naoping | 2008年2月17日 (日曜日) 10時33分

こんばんは。
行かれないのかと思ってました。
席も近かったようですね(最前列の右より)
音楽はかなり聴き込んでいったのですが、不安な気分のまま舞台を迎え、結果は大正解。
かなり楽しみました。日本人歌手もここまで来たか・・・、との思いもありますよ。
本職の歌手風の綺麗なオネイサンが会場に結構いまして、ビール片手にキョロキョロしちまいました。
窓辺にビールを持って佇んでいたのが拙者でありますぞ。

投稿: yokochan | 2008年2月17日 (日曜日) 21時16分

>>yokochanさん
そうそう、朝起きて急に思い立って行きました。全く予習なしで行ったのが新鮮で良かったかもです。場内、最初は「どうかな~?」みたいな感じだったのが、「今日はいい上演~」的オーラが第2幕後半くらいに観客から出てました。

それにしても、オペラ歌手のオネイサンって綺麗な人多いですよね。女の私でも見とれちまいました(←ヘン?)。因みに私は休み時間はビールも飲まずに客席であらすじ必死で読んでました(汗)。

投稿: naoping | 2008年2月17日 (日曜日) 21時41分

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