ブリテン/ピーター・グライムズ
ブリテン:歌劇「ピーター・グライムズ」
ピーター・ピアーズ(ピーター・グライムズ)、クレア・ワトソン(エレン・オーフォード)、ディヴィッド・ケリー(ホブスン)、オーウェン・ブラニガン(スウォロー)その他
ベンジャミン・ブリテン指揮/コヴェントガーデン・ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団・合唱団
ああ、とうとう来ちゃったわね、12月。(怯)
12月は、一人で出かけるのがおっくうになる。ま、コンサートなんかは基本的に一人で行く主義なのでまー、いいんだが。
一人で買い物なりお散歩なり出かけると。
いやおうなく、「赤色の衣服を着用した白髪白髭の翁」や、「哺乳綱偶蹄目シカ科の角をはやした四足歩行動物」や、「数限りない発光ダイオードを設置された常緑針葉高木」や、「それを見ながら『まあ、綺麗ねえ』『いや、キミのほうが綺麗だよ』とかほざくバカッポー」などの攻撃にさらされることになる。
ああ、憂鬱だ。どうやって切り抜けよう。(怯震泣)
こんな憂鬱な気分を更に倍増させる、「ピーター・グライムズ」。
いや~、良かった。ホントに良かった、ブリテンがこのオペラを書いといてくれて。
これだけ今の私の心情にぴったりなオペラはあまりあるもんじゃない。冬の海のように荒涼とした私の心にピッタリフィット。ソフィボディフィット。
冬の海は厳しい。(このオペラの季節はいつ?)
このオペラの示すように、漁師の仕事は厳しいのだ。よく借金取りが「マグロ漁船に乗って稼いで返せ」とか言うらしいが、マグロ漁船に乗るのはかなりタイヘンな事だ。一回船に乗ってしまうとかなり長い間家に帰れないし、その間病気になったり大怪我しても医者にはかかれないし(死ぬこともあり)、ただしかなりまとまったお金がもらえるらしいが。
漁船は男ばっかなもんで、たまにホ○○クシャルな人も乗ってくるというし(ホワンとした雰囲気と、エ○本とか持ってこないからわかるらしい)。
しかし、本当にキツイ漁船は蟹を取る漁船らしい。波は荒いし、冬の海は冷たいし。命の保証はない。だから蟹はあんなに高いのかな?
(以上、「裏のハローワーク」(草下シンヤ著)より覚えていることを参考に。現在、上司の息子に貸したら返してくれない。余談だが、この本を読んだお陰で前に○ューハーフの女性?と飲んだときに、「牛の解体作業で稼いだお金で○転換手術した」って話をされて「あ、知ってる~!お金は儲かるけどかなり危険な仕事だよね~」とか言って、初対面なのにかなり話が盛り上がった。元気かな~?)
裏のハローワーク 著者:草下 シンヤ |
えーと。曲に戻ろう。
今回初めて(え~?)この曲を聴いて、思ったこと。
この曲は我が愛する「ヴォツェック」にすげ~似てるではないか、曲の構成といい登場人物といい。ま、曲そのものが似てるってわけではないけど。ベルクを尊敬してたブリテンだけあるぜ。
でも、天才ブリテンにおいては「まねっこ」というよりもベルクへの強いリスペクトとして理解する(ぶっちゃけて言えば、「わかるわかる~うける~それ」)。
私が、似ていると思った点。
場面場面の合間に美しい間奏曲。ベルクの「ヴォツェック」も「ルル」も、場面の間の間奏部分がえも言われぬ美しさである。「ピーター・グライムズ」の間奏曲はご存知の通り、「4つの海の間奏曲」として独立した管弦楽曲となっている。
主人公は、周囲から受け入れられてない人物であること。相手の女性とは婚姻してないこと(ブリテンだから男女の恋愛としては描かれてない)。少年(子供)が出てくること。主人公(など)の死がドラマティックというよりもかなり残酷で極めて印象的に描かれていること(ピーターの場合はボルストロード船長の「舟を沈めなさい」という、歌ではなくセリフで。「ヴォツェック」のオペラの最後、「お前のかーちゃん、死んだよ」という無邪気な子供のセリフと同じ位の衝撃)。
あと、「もう、これはおんなじ!」と思ったのは、第3幕の前の美しい間奏曲のあとに、突然に現れる舞踏会の俗っぽい音楽。この対比の素晴らしさは、「ヴォツェック」のあの強烈な管弦楽の強奏のあとに突然現れる飲み屋のダンスの場面を参考にしたものと考える。
そんな感じで。本日のCDは「戦争レクイエム」と並び、ブリテン音楽鑑賞において基本中の基本の自作自演。ブリテンの曲を聴くにあたっては、またはこの曲を上演するに当たっては、必ず通らなければならない録音。
ま、私は今回初めて聴いたので、その衝撃は充分。あまりに良くて昨日だけで2回も聴いてしまった。ブリテンのこの曲には「ヴォツェック」の影響を感じ取ったが、「ヴォツェック」を初めて聴いたときは、ベルクの神であるマーラーのシンフォニーの影響を強く感じた。こうやって音楽史は回っている。それでも地球は回っている、byガリレオ・ガリレイ。福山雅治のガリレオ面白いね。明日楽しみね。
-------
泣いちゃだめ。クリックして。
| 固定リンク
コメント
おをっ、いよいよ取り上げましたね。
ご指摘の通り、この救いのないオペラは、「ヴォツェック」に近いものがありますね。
ブリテン自身をも重ねることが出来るくらい・・・。
この自演盤は、確かカルウョウの録音ですよね(違いましたっけ?)
効果音満載の生々しいリアルな録音が素晴らしいと思います。
これは劇場でも観てみたいものですね!
TBさせていただきました。
投稿: yokochan | 2007年12月 2日 (日曜日) 13時09分
>>yokochanさん
ひさしぶりにTB成功!相互TBありがとうございます。
ま、ブリテンはピアーズという一生の伴侶に恵まれて幸せだったと思います。色々と風当たりは強かったでしょうけどね。
この自作自演盤はカルショーではないのですが(エリック・スミス)、エンジニアは私も大好きなケネス・ウィルキンソンです。私が買った新しいのはハイビットリマスタリングで音が良くなっているみたい(前はどんだけか知りませんが)です。しかしロンドンの外の車の音がたまに入っているような気がします・・・気のせい?
投稿: naoping | 2007年12月 2日 (日曜日) 14時27分