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2007年12月 8日 (土曜日)

飯守さんのワーグナー/日フィル

P1000863 日本フィルハーモニー交響楽団
第596回定期演奏会

<オール・ワーグナー・プログラム>
歌劇「タンホイザー」序曲
楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死
楽劇「ワルキューレ」より
ワルキューレの騎行・魔の炎の音楽
楽劇「神々の黄昏」より
夜明けとジークフリートのラインへの旅
ジークフリートの葬送行進曲
ブリュンヒルデの自己犠牲と終曲
飯守泰次郎指揮/日本フィルハーモニー交響楽団
緑川まり(ソプラノ)



このプログラムの表紙はどうかと思うが。



待ちに待った、飯守さんのワーグナー。
実を言うと、飯守さんのワーグナーをプロのオケで聴くのは全く初めてである。だから、今日はとっても楽しみだった。

サントリーへ向かう途中、いや朝起きたときから頭の中は一曲めのタンホイザー序曲が鳴り響いていた。南北線の中から踊りだしたいくらいだった。もうね、「こんなふうかな、あんなふうかな」とか頭の中で想像をめぐらせてね。

こんなに楽しみにしてたの、私が一番かも?と思うくらい。

でも、実際にホールで聴いた音楽は、まったく想像をはるかに超えていた。
席は、一階の前から2番目ほぼ中央(ちょっと左より)。素人の取る席だ。しかし、私は飯守さんのワーグナーの波に呑まれたかったので、あえてかぶりつきに近い席を選んだ。

それは正解だった。少なくとも緑川さんが出るまでは。

・・・

タンホイザー序曲から、私はサントリーにはもういなかった。
ヨーロッパのオペラハウスにいた。これからタンホイザー全曲を、素晴らしい歌手で聴くような感じになっていた。

最初の一音から、天使が舞い降りてきた感じだった。
終始マエストロは唸り、一緒に歌いながら指揮台の上を踊りまくっていた。譜面台も指揮棒もなく、彼はただワーグナーの音楽を伝えるイタコのようであった。

唖然とするほど素晴らしいタンホイザーであった。全曲聴きてー。

そして、今年2回もナマで聴いた(バレンボイムで)トリスタン。おそらく指揮だけで言えば飯守さんはバレンボイム以上のトリスタンを振ることができると思う。

ここで、緑川まりさん登場。このときはなんか渋谷109のお店の中にありそうな白いクリスマスツリーみたいなドレスで「イラッシャイマセぇ~」といった感じで登場。彼女はプリマドンナ版柳原可奈子ちゃんみたいだ。

前奏曲の最初の一音から、私は暗い海の上にいた。絶望の海に投げ出されたような。こんなに素晴らしい演奏で、「トリスタン」前奏曲を聴けるのは本当に幸せ。ああ、このまま全曲聴きたいなあ。

しかし。

今日の私の席は、オケを聴くだけだったらこの上ない幸せだったが、ソロ歌手がいるってのを全く計算に入れてなかった。

緑川さんのワーグナーについては、去年聴いた新響のトリスタンの時にも書いたが、相変わらずどこの国からきたお姫様なんだか謎で。「み~るどうんとらいせ~」とか歌ってて。(ライゼではないのか?)

いや、そんなことよりも。

私の席のたった2メートル先でワーグナー・ソプラノを聴くということがどういうことか、みんなわかると思うけど。
いきなり「村おこし大声コンテスト」の審査員になっちまったかと思うくらいの惨状でして。

結局、歌についてはでっかすぎて良かったんだか悪かったんだかわからなかった。

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<intermission> 
左隣の席のご夫婦の、「この指環ってのは、映画のアレとは違うのか?巨人とか小人とか出てくる・・・」「違うんじゃない?」という会話に、どう反応したらいいのかわからん・・・。根っこは一緒だと思う。

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後半は、「ニーベルングの指環」から有名どころの抜粋。

ワルキューレの騎行は、歌ナシで聴くとマヌケなもんだと思ってたが、今回はそうでもなかった。というか、ショルティの全曲盤で育ったせいか、こんなにオケに強弱があるんだなあ、ワルキューレの騎行にも、というどーでもいい発見。とにかく大迫力ですごかった。頭の中ではソロ歌手になって歌ってたけど。

魔の炎の音楽から、俄然私はニーベルングの世界に入ってた。もう、てきめんにニーベルハイムとかそのへんにいたし。ローゲになってたし。ま、曲はローゲを呼ぶあたりからしかやらなかったので短かったけど。

次は、リングの音楽でも一番大好きなジークフリートの夜明けからラインの旅。もうね、私はここらへんの音楽とだったら心中してもいいくらいよ。右隣のオヤジは寝てたけどね。死ね

ああ、ずっと聴いていたい。もう、このコンサート5時間くらいやって欲しいと思った。または「黄昏」プロローグから1幕全曲やってもらいたいくらい、私はワーグナーに包まれていた。ジークフリートのホルンがちょっと「アレ?」という感じだったけど、そんなことはいい。ずっとこの音楽に包まれていたかった。

「葬送行進曲」もまた、物凄い迫力だった。こんな大迫力の葬送行進曲は初めて聴いた。オケがピットの中でなかったから余計そう思ったのかも。

それでま~。また緑川さん登場。さっきのドレスの色違いの黒いドレスで現れた。ああ、あの長いアリアを耐えなければならないのか。こんなの私自身が自己犠牲だわ、ほんと。

声なしでオケだけでやってくれたら、どんなによかったかなぁ。

しかし、自己犠牲は素晴らしかった(オケが)。ああ、なんてワーグナーは深い音楽をお書きになったのでしょう。本当にライン川が決壊して大洪水になってた。ああ、本当にリングが終わるんだわ(全部聴いた気分)。最後のほう、涙出たわ、ほんと。

頭イテェ~。


演奏が終わると、やはりブラヴィー、ブラヴォーの嵐で(ブラーヴァはない)。飯守さんはご満悦で、緑川さんにちゅーとかしてた。

しかし、こんなに拍手したのに、アンコールはなし。コンマスの木野さんが飯守さんに連れられて「それじゃー」といって退出してた。

ああ、ジークフリート牧歌くらいやってほしかったよ。


P1000862_4















ところで。去年より地味じゃね?


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関西フィルのワーグナーのときはもうちょっと後ろを取るわ。

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コメント

わたしは初日だったんですが、二日目も角笛は心もとない感じだったのですかね。あそこはなんとか頑張ってもらいたかったなあ・・・何はともあれ来年の「ワルキューレ」と「トリスタン」に期待が膨らむコンサートでした。
関西フィルもやっぱり行かれるんですね(笑)

投稿: 白夜 | 2007年12月 9日 (日曜日) 01時01分

>>白夜さん
前日に行かれたのですね。
あのホルンはなんだか入りのタイミングが微妙にずれてたような。他はとくに気が付いた点はなかったので、残念です。まあ、コンサートでよくやる曲だったのでオケは慣れてると思うんだけど。
「トリスタン」は9月でかなり先ですが、できれば2回とも行きたいなあと考えます。しかもノーカット!

関西フィルのワーグナーは値段が安いので是非行きたいです。(オケはどうかな・・・)

投稿: naoping | 2007年12月 9日 (日曜日) 11時06分

おお、やはり良いですか!
今回は都合で行けませんなんだ。昨今、飯守さんのワーグナーは引っぱりだこですね。本当に嬉しく思います。
あんだけ気を入れて指揮して、出てくる音楽は全然重くない。
飯守さんとホルスト・シュタインの二人は近年最高のワーグナー指揮者だと思います。
マルチ・バレンボイムとは違う次元で。
緑川はんは・・・そうでしたか。残念です。
彼女のワーグナーはもう過去の思い出です・・・・。
サントリーホールのイルミネーションようやく始まったのですね。

投稿: yokochan | 2007年12月 9日 (日曜日) 20時08分

naoping さん、こんばんは。

私も飯守さんのワーグナーのファンですので、エントリを拝見してわがことのように嬉しいです(^^/。関西フィルは我が地元のオケなので、ミミの肥えられた東京の音楽ファンの方々にどう評価されるのか、これまたわがことのように心配です(昨年は好評だったみたいで、ほっとしてます)。

今回は不出演の藤岡さんはオバサマ方にモテモテですが、関西では声質と話し方が大植さんとウリ二つであることが驚愕をもって受け止められておりますことをここにご報告申し上げたいと思います。

投稿: shu | 2007年12月10日 (月曜日) 18時52分

>>yokochanさん
こんばんは。ご出張でしたか?
いやほんと・・・素晴らしかったです。時節柄?ワタシちょっと気がふさぎがちだったのですが、演奏会後何故か物凄く気が晴れて元気になりました。これが音楽療法っていうのかしら~。

そうそう、飯守さんのワーグナーは全然重くなくてクリアな音楽ですね。テンポも強弱もわざとらしくないし、ことさらデモーニッシュでもないのがいいです。ワーグナーの音楽そのものを感じます。

まりちゃんは、いつも飯守さんのコンサートに出てくるから、お気に入りなのかもしれませんね・・・。

>>shuさん
コメントありがとうございます。
今年初めて関西フィルのコンサートは行きましたし、来年はまたワーグナー・コンサートと「ナクソス島」も行く予定ですので飯守さんのファンになってから何かとご縁のあるオケです。関西フィルだけでなく飯守さんのお陰で、前はなかなか情報が入らなくて行かなかったアマ・オケのコンサートにも足を運んだりして、世界が広がった気がします。

ワタシ、藤岡さんはあまりにかっこよすぎて演奏に集中できません・・・(恥)。

投稿: naoping | 2007年12月10日 (月曜日) 19時41分

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