ブーレーズ/ルル組曲
ベルク:「ルル」組曲
ジュディス・ブレゲン(ソプラノ)
ピエール・ブーレーズ指揮/ニューヨーク・フィルハーモニック管弦楽団
あの。
←左にある最近の検索フレーズのランキングで(ここ一ヶ月で算出してある)、やけにベルクのヴァイオリン協奏曲が上位だね。それってなんだろう。そんなに急にベルクは人気者になっちゃったのかね?
って、ちょっと不審に思ったんだけど・・・まあ予想通りのことが起こってた。
さては、この曲「のだめ」に出てきたな。(←もちろんいまだに読んだことなし。オナゴ・クラオタでは珍しい?)
いまに、ベルクの協奏曲目当てに、コンサートホールに「のだめ・ファン」が殺到するということもありうるのだろうか・・・(複雑な気分)。
・・・ということで、今日は同じベルクの作曲したオペラ「ルル」から作られた「ルル」組曲(Lulu-Suite)。これはこの長いオペラのまさに「映画の予告編」みたいな内容である。これに普通に映像つけたらまさにそんな感じ。まーこれを聴いて「あら、なんだか面白そうね、全部聴いてみようかしら」なんて思う人がはたしているのかどうかは知らないんだけど。
なかなかイイトコ取りの音楽集である。
内容はこんな感じ。
1.ロンド。第2幕のアルヴァとルルの会話の管弦楽部分。
2.第2幕のオスティナート。シェーン博士を撃ち殺したルルが警察に捕まってから釈放されるまでの一部始終を描いた映画の音楽。
3.ルルの歌。第2幕のルルがシェーン博士に向かって歌うアリア。「人が私のために自殺したって、私の価値が下がったことにはならないのよ・・・」
4.変奏曲。第3幕第1場の終わり、ルルが警察にまたもや捕まりそうになって逃れる部分の音楽。
5.アダージョ・ソステヌート。ルルが切り裂きジャックに殺されるシーン。恐ろしい悲鳴が聞こえる。ルルを慕う女性、ゲシュビッツがルルのあとに刺され「ルル、私の天使!もう一度あなたを見させて・・・」と歌って死に、幕が下りる。
・・・なんて書くと、「まあなんてものものしい、火サスもまっ青な内容なのでしょう」と思われるかもしれんが、このオペラは軽くそこらへんのサスペンスドラマを越えている。
しかし、音楽はいいようもなく美しい。とらえどころのない魅惑的なルルを描く音楽はなんだか女の匂いがぷんぷんするような気がする。男を(いや女でさえも)惹きつける香水のような。 そして身にまとった薄いドレスのサラサラとした音とかが聞こえてきそうである。
色っぺー。
ご存知の方はご存知だけど、ベルクはヴァイオリン協奏曲の作曲をヴァイオリニストのクラスナーに頼まれたために(当面のお金が必要だったし)、この「ルル」の第3幕の完成を先送りにし、その後病を得て亡くなってしまった。なので3幕は未完成になっていた。
この組曲の4曲目と5曲目はオーケストレーションが完成してたから、そのまま使われていて、他に未完成な部分は作曲家フリードリヒ・ツェルハが補筆完成した・・・異常にやきもちやきな未亡人、ヘレーネ・ベルクには内緒で。
ベルクの伝記(シェルリース著)によると、第3幕でオーケストレーションが完成していた部分は合計19分、議論の余地なく明瞭なのが17分、他の部分等から類推できるのが20分で、不確実なのは残り8分だけだったという。ツェルハが自分の考えで付け加えたところはないそうである。
・・・しかし、いつも聞くたびに不思議なのはこの組曲4曲目の変奏曲。ルルはこれから必死に逃げなければならないのになぜかここはとても美しい、やや夢見がちな音楽なのである。ルルはこれからロンドンに逃げ、娼婦にまで身を落とし、実在の人物「切り裂きジャック」に刺し殺されるのに・・・不思議。
さて。
紹介のCDは、3幕版の初演者ブーレーズによるもの。まあ、ジャケット写真の若いこと。まだ肌がツヤツヤしている。演奏はさすがに隙がなく、オーソドックスにうまく聴かせる。さすがブーレーズだ。
ルルを歌っているジュディス・ブレゲン(なんとなく懐かしい名前だな~)は、全曲盤のストラータスよりは明るい、やや可愛らしげなルル。タイプはぜんぜん違うけど、これはこれでいいかも。断末魔の悲鳴がコワイですが。
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コメント
何という偶然、たった今ブーレーズのルルの全曲盤を聴き終えたところです!
ルル組曲はシノーポリ/ドレスデン盤を持ってるけど、確かにオペラ全曲を期待させるのに打ってつけな美しさですよね。
投稿: Shamshyraq | 2007年12月17日 (月曜日) 23時27分
>>Shamshyraqさん
おお、ブーレーズのルル全曲。それは至福の時間でしたね。
私はこないだ安売りでマゼール&ウィーン国立歌劇場盤(全曲)を買ったのですが・・・なんだか居心地が悪くてまだ第1幕も終わってません。こんなにこの曲好きなのに、どうしてかしらん。やっぱりブーレーズの振るベルクは最高です。
投稿: naoping | 2007年12月18日 (火曜日) 20時06分
>それは至福の時間でしたね。
まあ至福といってもオペラの中身を考えると・・・^^;
このCD、叙情組曲に「ワイン」まで入っててなかなかお得ですね。これに「三つの管弦楽曲」も入ってると尚お得ですね(笑)。
ブーレーズとマゼールってシャープな音楽作りは似ているけど、たまにマゼールはそれが足を引っ張るところあるから、それで違和感感じてるんじゃないですか?
ちなみに僕が持っているツェムリンスキーの叙情交響曲はマゼール/ベルリン・フィルの演奏で、最初に聴いたからしっくり来ているけど、ツェムリンスキーにはまっている友達に言わせれば、ガサガサで聴いていられないって・・・
投稿: Shamshyraq | 2007年12月18日 (火曜日) 22時02分
はじめまして。
こちらのCD持っています。
ルル私も好きです。ルイジ指揮の実演を気に入って、ろくに字幕を読まずに音楽に聴き入ってました。
でもnaoping様が一番好きとおっしゃる死の都には、あまりのめり込めずうたた寝してしまいました…。
シュレーカーのはるかなる響きは気に入りました!
新ウィーン楽派、なかなかいいですね。
投稿: TM | 2010年8月12日 (木曜日) 02時00分
>>TMさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
えー、ルイジ指揮のルルなんておいしそうなものをご覧になったのですね。なんかそれだけで羨ましいです。死の都ももしや実演なんでしょうか。(もしもラインスドルフ盤をお聴きになって「寝ちゃった」ということであれば、それは曲と相性悪いのかも?・・・と思います。まあ好みは人それぞれですので。)
新ウィーン楽派、正直ダメなものも私はあるんですが(ウェーベルン・シェーンベルクの調がない曲)ベルクは何故か大体好きです。
投稿: naoping | 2010年8月12日 (木曜日) 22時35分
死の都はウィーンでフォークト&デノケで聴きました。指揮は誰だったんだろう…(笑)
CDをあまり持っていない不勉強者です。
はるかなる響きも実演ですが、オケも指揮者も歌手もマイナー所です。
シェーンベルクの期待は、ブーレーズ&ポラスキだったのにさほど入り込めませんでした。
シュミットとかヒンデミットとか、なんだか素敵そうに聞こえるので(笑)、機会があれば聴きに行きたいと思ってます。
投稿: TM | 2010年8月13日 (金曜日) 01時37分