若杉さんの新ウィーン楽派コンサート
第745回サントリー定期シリーズ
マーラー:交響的楽章「花の章」
ベルク:七つの初期の歌
ウェーベルン:交響的牧歌「夏風の中で」
シェーンベルク:交響詩「ペレアスとメリザンド」
若杉弘指揮/東京フィルハーモニー交響楽団
林美智子(メゾ・ソプラノ)
(サントリーホール)
急遽、思い立って当日券で鑑賞。
いや、ほんとに今年は恐ろしい位仕事がスムーズで。賞与計算があっというまに終わって今日は定時。絶対ムリだと思って券取ってなかったけど、聴けてほんとにハッピー。
こんな魅惑的な曲目のコンサート、聞き逃す手はナイでしょ。あたしの大好きなウィーンがここにある。いかにも若杉さんらしい選曲。
とはいうものの。
とっても恥ずかしい事実。実はこの曲目の中のマーラーとシェーンベルクのは全く初めて聴くものである。もしかしてベルクも初めてかも。
ええ~~~~~???
アンタ、シュレーカーやコルンゴルトのオペラはさんざ聴いておいて、これらは聴いてないのかい!!!
・・・と思われても仕方ない。
でも、ま、ある意味。
これらの曲の初めてが、ここらへんの曲の日本の第一人者である若杉さんの指揮で、ナマで、サントリーホールで聴けるなんて、幸福な出会いでないこと?
ないこと?
いや、本当に幸福な出会いではあった。なかなかこんなコンサートは何度もあるとは思えない。
まったく絶妙な選曲。マーラーとウェーベルンはどちらかといえば朝とか昼間の春・夏の明るい爽やかな雰囲気。そしてベルクとシェーンベルクは深い夜のオトナな雰囲気。それが交互に選曲されている。
まず、「花の章」。ご存知のとおり、交響曲第1番の第1楽章と第2楽章の間に入るように書かれた小品である。とっても可愛らしい、初期のマーラーらしい曲。
ベルクは、色々と雑多にCDを集めていて歌曲も何枚か持ってたので、もしかしたら持ってたのかもしれない。初期に書かれた歌曲を、後年(ヴォツェックも書き終わってかなり作曲家としても円熟してきた頃)ピアノ伴奏をオーケストラに編曲したものである。・・・ということで、編曲は本当にベルクらしく魅惑的である。マーラーの曲(勿論大オーケストラである)からかなり楽員さんの数が減り、室内オケみたいになってしまった中で紡ぎ出されるベルクの音楽のなんと美しいこと。漆黒の闇の中で繰り広げられているような音楽である。
ウィーンらしい。
独唱の林美智子さんは、多分どこかで舞台を見ていると思うんだが(忘れた)とっても清楚な感じの美しい女性である。また、たまにオペラ歌手が「ほこりにまみれたフランス人形」みたいな衣装で現れて閉口することもあるんだけど(誰とは言わないけど)、今日の彼女の衣装はとってもセンスがよくて(白地に黒で花が描かれてあるたっぷりとしたドレス)、まるでクリムトのオリエンタルな絵画から飛び出てきたような感じ。オクタヴィアンとかケルビーノとか得意だそうだが、合ってるな~。歌も清楚な感じでよかったです。
そして、大好きな「夏風の中で」。
以前レビューを書いたブーレーズ盤は輸入盤であったので、解説は読んでなかったが、この曲のもとになったブルーノ・ヴィレの詩「夏風の中で」のドイツ語詩と日本語訳がコンサート・プログラム本に載ってたのはすげえなと思った(しかも長いし)。別に歌手が歌ってるわけじゃないのによ。
ウェーベルンはこの曲が演奏されたのを自分では生前聞いたことなかったらしい。、初演は1962年。へええ。爽やかな初夏の風のような、名演。
・・・と、それよりも文句一つ。
常々思う。他のオケのコンサートと比べてコンサート前のご注意が異様に多い東フィル。(今日なんか補聴器の調整もしろなんて言ってたぜ)
東フィルで以前、(私は行かなかったが)マーラー6番の演奏始まってすぐ携帯の着信音が鳴ったという事件から、ずいぶん注意が厳しくなったようだが。(東フィルの友人は「その日はやる気なくした」とほざいてた)
コンサート中に携帯の着信音が鳴ったのは私が行ったコンサートでは今日が初めてだと思う。オケの後ろの席から「ピロピロピロ」と5回ほど鳴った。
腹立たしい。
休憩のあと。メインの曲「ペレアスとメリザンド」。
おお、初めてである、この曲。本日デビュー。41分もあるんだって、へええ、長いんだね。
印象としては。
「浄夜」と「グレの歌」を足して声楽抜いたみたいな感じ。
で、長い曲で色々強弱の変化や曲の盛り上がりはあるものの、「浄夜」もそうなんだけど、全体的にずっと同じであくまで官能的な夜の印象。退屈なのではなく、ずっと同じところに向かっているという、いい意味での。41分もずっと同じな感じ。
そのことは、シェーンベルクの絵画を思い出す。
彼の絵は(本物を何枚も見たことがある、ウィーンや日本で)、中心となる対象物とバックの風景がまったく同じ風に書かれているためにとても平坦な感じがするのである。(ま、デッサンも狂ってるし一言でいえばヘタクソなんだけど、作曲と違って)
後年の(無調になってからの)曲は正直よくわかんないのだが、初期のまだ聴きやすい曲は何か同じ印象がある。(若杉さんの指揮はそれをかなり補っているようだが)・・・そこがシェーンベルクの好きなとこでもあるんだけども。
初めて聴いたので、そんな感じの印象ですが、あっているのでしょうか。
とにかく、今日の演奏会はとてもよかったです。ウィーンにまた行きたくなっちゃった。ベルベデーレとか行きてェ~。クリムト見てェ~。
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コメント
おやご一緒してましたか(笑)携帯の着信音は2F後方、わたしのすぐ傍でも長々と鳴っておりました(涙)
それにしてもウィーンにどっぷり浸かった感じの一夜ではありました。林さんはもちろん東フィルもなかなかいい音出してたし。
14日のシティフィルも捨てがたいプログラムなんですが残念ながら行けません(林英哲の太鼓を聴きに行きます)
投稿: 白夜 | 2007年12月11日 (火曜日) 23時30分
>>白夜さん
あ、いらしてたのですね。
ホントにいいコンサートでした!でも携帯の着信音は残念。ならしちゃった本人はきっと焦ったろうな~。私も気をつけなくちゃ。
14日・・・コルンゴルトですね。これは、行くべきか・・・行かざるべきか・・・翌日はエルガーだし・・・迷うとこです(悩)。
投稿: naoping | 2007年12月11日 (火曜日) 23時43分
行かれましたか、プログラム見ただけでも夢のようなコンサートだけど、楽しまれて来たようですね。ペレアスは大好きな曲の一つだけど、オケの編成も巨大でびっくりでしょう(まあグレの歌ほどではないけどネ)。初演の時にマーラーがスコアを手にして聴いていてもスコアを追って行くのに苦労したと言うくらい複雑な曲だけど、信じられないくらい美しいですね。
今調べてみたけど、今日と明日のN響の定期もなかなか魅力的なプログラムでしたよ(http://www.suntory.co.jp/suntoryhall/perform/today.shtml)。このプフィッツナーのヴァイオリン協奏曲のためにも聴きに行きたいくらいですね。
投稿: Shamshyraq | 2007年12月12日 (水曜日) 20時14分
>>Shamshyraqさん
はい、素敵なコンサートでした。頭の中にウィーンがいっぱいになり、幸せな気分でした。独唱の女性も可愛くてベルクにぴったり(←何故)。
ペレアス、CD買おうかなあと思うんですが、おすすめありますか?やっぱりブーレーズかしらん。初演のときに批評家が作曲者を「病院に送るべきだ」と言ったといいますね。
N響の今日の分は売り切れで当日券ナシですね。NHKホールではなくてサントリーだからかしらん。
投稿: naoping | 2007年12月12日 (水曜日) 21時26分
カラヤン/ベルリン・フィルとブーレーズ/シカゴ交響楽団が双璧だけど、個人的にはブーレーズ盤がおすすめです。福岡塔で輸入盤で見つけたけど(10年くらい前から持ってたけど、友達に貸して行方不明・・・)、収録曲は他に管弦楽のための変奏曲、ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲という超お得盤です(指揮は全部ブーレーズ、協奏曲はロンドン交響楽団)。
ペレアスは他にシノーポリ/シュターツカペレ・ドレスデンやティーレマン/ベルリン・ドイツ・オペラ管による演奏もあるけどまだ聴いてないです。そういえばベームも録音していたような・・・あとこれも聴いていないけど、バルビローリも録音していますよ。
投稿: Shamshyraq | 2007年12月12日 (水曜日) 23時09分
>>Shamshyraqさん
ご回答ありがとうございます。
カラヤンはなんか普通っぽいのでブーレーズかな~。しかしバルビローリも聴いてみたいですね。
タワレコのHPで見ていたら、ミトロプーロス&NYPの「期待」ってのを発見して、聴いてみたいなあ~と思ってしまいました。好きなんです、この曲。
投稿: naoping | 2007年12月13日 (木曜日) 20時33分
こんばんは。このご馳走コンサートは行こうと思ってたのですが、意外にチケット高いのしか残ってないし、財布も疲弊中とあって断念しました。
いいなぁ、いずれも生で聴けるのって貴重ですよ。
愛聴盤サー・ジョンをTBしますね。
投稿: yokochan | 2007年12月13日 (木曜日) 22時52分
>>yokochanさん
こんばんは。そうそう、高い席しかありませんでしたね。私も「うーん・・・」と一瞬考えたのですが、そうめったに拝めない品揃えなので行きました。しかし「シブイ曲目?」と思い油断してました。結構人入ってたし、ここらへん好きな人多いんだなあと改めて思いました。こんなんばっかりしょっちゅうやってたら破産してしまいます、私。
ペレアスは、やはりサー・ジョンをお聴きなのですね! 探してみようっと。
投稿: naoping | 2007年12月13日 (木曜日) 23時07分