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2007年11月 5日 (月曜日)

R・シュトラウス/皇紀弐千六百年奉祝音楽

P1000843 R・シュトラウス:皇紀弐千六百年奉祝音楽(Japanische Festmusik)
リヒャルト・シュトラウス指揮/バイエルン国立歌劇場管弦楽団





また!R・シュトラウスの管弦楽曲でな。

今日のCDは、昨日のベーム盤同様に3枚組で自作自演を集めたもの。ドンファン、ティル、ドン・キホーテ、死と変容、英雄の生涯などの交響詩のほかにオペラや劇音楽からの抜粋が含まれている。

このCDで、何が一番貴重かっつーと。そりゃ。

あの、日本(大日本帝国)の依頼で書いた(つか、ナチスに書かされた?)皇紀2600年奉祝音楽の曲。私にとってはこれがあってのこのCD。

久しぶりに聴いて、本当に懐かしいと思った。

シュトラウス・ファン、またはブリテンのファンの方だったら、ご存知なことだと思うが、日本の皇紀2600年(1940年)の記念に、ヨーロッパ各地の著名な作曲家による祝典曲を依頼したという。

ところで、皇紀とは。

初代天皇の神武天皇の即位を元年(紀元)とする日本の紀年法である。

・・・のだそうだ。ようわからんがそんな感じだ。




で。

以下のような当時有名な作曲家によって曲がつくられた。
・イベール「祝典序曲」(フランス)
・ピツェッティ「交響曲イ調」(イタリア)
・シャーンドル・ヴェレッシュ「交響曲第1番」(ハンガリー)
・ブリテン「シンフォニア・ダ・レクイエム」(イギリス)

ご存知のとおり、ブリテンの曲は「お祝いなのにレクイエムとはけしからん」ということで、日本の外務省より拒否された・・・ということになっているが、本当はもっといろんな事情があったものと思われる。

まあ、そのへんはまたブリテンの曲のときに(いや、ここらへんは複雑な問題なので、書くかどうかわからないけれど)でも。今日はシュトラウスだ。

で、この日本の依頼をヨゼフ・ゲッベルスはドイツの最も有名な作曲家R・シュトラウスに割り振った。シュトラウスは作曲中のオペラ「ダナエの愛」を中断、この曲にとりかかった。

シュトラウスは、親ナチということでずっと色々な議論をされているが、実際のところは息子のヨメさんがユダヤ人だってってことで、そのへんでナチスとの関係を良好にしておく必要があったということだ。というわけでこの仕事を引き受けたのだ。

遠い昔に。

テレビのドキュメンタリー番組で(昔は民放でもクラシカルないい番組をたくさんやっていたのですよ・・・)、この曲について日本のテレビ局がドイツまで取材をしたものがあった。確か日本テレビだとおもうんだが。シュトラウスの息子だか孫だかもインタヴューに答えてたな。ハゲ具合が似ていたのをよく覚えている。

また、それと同時期に読売日響?がコンサートでこの曲を取り上げるにあたり、本来は15個のゴングが楽器に指定されているものを日本の曲ということで、日本中のお寺より鐘を大きいものから小さいものまで(音の高さを測って)借り出してコンサート会場に持ち込んだ。これは本当に楽しい企画だった。実際に聴きには行かなかったけれど、テレビでは全曲聴いた(見た)。

えっと。曲の構成は以下の通り。

1、海の情景 Meerszene
2、桜祭り Kirschblütenfest
3、火山の噴火 Vulkanausbruch
4、サムライの突撃 Angriff der Samurai
5、天皇頌歌 Loblied auf den Kaiser

まあ、ゆったりとした優雅な曲調に始まるところは、シュトラウスの遠い未知の島国に対するイメージが感じ取れる。ほほう、当時のドイツの人はこんなイメージを持ってたのか。つか、火山は噴火するわ、サムライは突撃するわ、なんだかしっちゃかめっちゃかで笑える。シュトラウスどうしちゃったの?よっぽど困っちゃったのか?がんばれシュトラウス!と応援したくなる。

「祝典前奏曲」とか「ヨゼフの伝説」なんかとともに、シュトラウスのあんまり演奏されない曲に入るようだ。でも、私はこの「皇紀弐千六百年奉祝音楽」が大好きだ。(公的な)初演はあの歌舞伎座でN響ってのも時代を感じさせてよい。今や歌舞伎座にN響が乗っかることはないしなあ。

またこの曲やんないかなあ、どっかで。

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コメント

 僕もこのCD、輸入盤で持っています。

 ピツェッティの交響曲とヴェレッシュ交響曲第1番の2曲は未聴なんですが…。

 梵鐘を日本から送ったが、撃沈されたかなにかでレコーディングに間に合わなかったため、電子音で鐘っぽい音を作って録音したとか、でーやんがラジオで言ってました。ほんとうかどうかは存じませんが…。

投稿: なおらー | 2008年12月 5日 (金曜日) 07時24分

>>なおらーさん
こんにちは。この曲のドキュメンタリーがもう一回見たいなあとか思う今日この頃。でーやんの言うことはなんか信じていいのかどうかわからないのですが(失礼?)、ありそうな話ですね。
というか、「でーやん」の話を今時されるのがとても懐かしいです。

投稿: naoping | 2008年12月 6日 (土曜日) 10時46分

私の実父が昭和15年12月14日&15日東京歌舞伎座で
中央交響楽団員の一人として、ホルンを演奏しました。
その時の楽曲譜面本を母が保存しています。
何処かに記念保存されたい。母は現在87歳です。
 実父は松葉正経 と申します。

投稿: 三ヶ尻 | 2010年8月22日 (日曜日) 17時47分

>>三ヶ尻さん
貴重なコメントありがとうございます。
お父様は歴史の証人でいらっしゃったのですね。何か想像するとうるうるしてしまいます。初演された歌舞伎座は東京大空襲で燃える前の建物ですね。

どこか、博物館とか藝大とかで貴重な譜面本は保存されるといいのに・・・と思います。

投稿: naoping | 2010年8月22日 (日曜日) 20時47分

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