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2007年7月12日 (木曜日)

アバド・グレの歌(怒りの鉄拳編)

028943994422 シェーンベルク:「グレの歌」
ジークフリート・イエルザレム(ワルデマール王)、シャロン・スウィート(トーヴェ)、マリアーナ・リポヴシェク(山鳩)、ハルトムート・フェルカー(農夫)、フィリップ・ラングリッジ(道化)、バルバラ・スコヴァ(語り)
クラウディオ・アバド指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、アーノルド・シェーンベルク合唱団、スロヴァキア・フィルハーモニー合唱団

過去記事:H・ケーゲル・グレの歌

フィレンチク・グレの歌は意外と。



本日は、アバドの「グレの歌」。これは、(前にも他の項で書いたが)とちゅうまで何の滞りもなく、名指揮者アバドとウィーンが世界に誇る名オーケストラと名合唱団と名歌手たちが、名ホール・ムジークフェラインで素晴らしい演奏を繰り広げておきながら。

さあ、あともうちょっとでフィナーレというときに。

どこから沸いてきたのか。この女は。どこの病院から連れてきたのか?というくらいの恐ろしい(狂った)語りでもって締めくくられるという稀代の名演奏。

シェーンベルクも存命中は自分の作品の上演で相当ヒドイ目に遭い、それだけではなく自分の弟子の作品の上演中にちょっと(好意的に)笑われただけで大激怒し、そんなに悪い雰囲気でもなかった演奏会を自らメチャクチャにしてしまうような、間の悪い作曲家だが。

前衛的な作品のせいでウィーンを追い出され。ユダヤ人のためにヨーロッパからも追い出され。絵はヘタだし悲惨な人生。

そんな中、(やや不本意ながら)存命中は唯一評判の良かった浪漫的なこの「グレの歌」(マーラーにおける「千人の交響曲」のような)。ウィーンの香りたっぷりのこの素晴らしい演奏の最後に。

なぜかこの違和感たっぷりな語り。

本当に泣きたくなるよ。フィレンチク盤のパツァーク、シャイー盤のホッターがどんなにまともに聴こえるか。

アバド盤、歌手は↑ご覧の通りなかなかのメンバーを揃えている。イエルザレムはシャイー盤でも歌っているけど、シャイー盤のほうがやや立派に歌っていると思う。シャロン・スウィートは取り立てて美声ってわけでもないけど、声量もありスケールの大きい歌唱。

バイエルン国立歌劇場の誇る名歌手、リポヴシェクももちろん立派な歌唱を繰り広げる。彼女はいつも貫禄たっぷりよ。

よりすぐりの名合唱団の歌声も美しいし、最後は迫力満点。ラングリッジだって軽妙な歌唱だし。それに応えるウィーン・フィルのソロ奏者もうまいし。あの難しいトランペットのソロもばっちりだし。

なのに、ああ。この突然の高い声が耐えられない(・・・いいかげん、もうこの記事やめよう。きりがないし)

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この記事読んでから聴くと、結構普通に聴けるかもよ。
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コメント

前にも話してましたよね・・・確かにウィーン・フィルの美音に夢中になってる中ではかなり異質ですけどね^^;

それはそうと、ショスタコーヴィチとの関わりでヒール役になってしまっている(?)フレンニコフのCD(三曲の交響曲)を見つけて早速聴いてみましたが、ショスタコの音楽から鬱的な部分を取ってしまって、躁的な部分をより野放図にした感じがしてかなりすごかったです。

投稿: Shamshyraq | 2007年7月12日 (木曜日) 22時35分

>絵はヘタだし悲惨な人生

ヘタですよね。
「クリムトがピアノ曲書いたら興味を持って楽譜を買う人
 がいるのと同じように、私の絵も物好きには売れるかもしれない」
とか言っていたみたいだけど、ずうずうしい親父です。

投稿: シロクマ雄 | 2007年7月14日 (土曜日) 00時52分

横からすみません。
でも、結構この女声のシュプレッヒシュテンメ、好きなんです。シェーンベルクがこの後しばらくして書いた「ピエロリュネール」の世界が近づいてきて。当然過ぎるほどにアッバードとウィーン・フィルの美音は素晴らしい。それに比べりゃ、ラトルとベルリン・フィルのはろくな音じゃない。ギーレンとアッバードの二つがあれば「グレの歌」は十分です。
そういえば「ピエロリュネール」の語り、男声がやるという蛮行はさすがにない・・・か。まぁ当然ですが。

投稿: IANIS | 2007年7月14日 (土曜日) 01時19分

>>Shamshyraqさん
フレンニコフという作曲家は存じません。なんか面白そうなので今度探して見ます・・・と言ってる間にすっかり名前を忘れてしまってショップに出向いてしまうのですけどね。

>>シロクマ雄さん
日本で「ウィーン分離派展」とかやるとたまーにちょこまかと展示されていますが、クリムトやシーレと一緒にかかってると悲惨です。ベルクの等身大の絵とか、ベルクの奥さんの絵まで描いています。ま、気持ちはわかるかなという感じ。クリムトが作曲してもろくなもんじゃないと思うけども。

>>IANISさん
こういったご意見を待っていました。まー、この日の記事を書いたあとあらためて聴いてみると、「慣れたせいなのか、そんなに・・・違和感ないかも」と思いました。そうそう、女声だとピエロリュネールの世界になりますね。アバドもそのへんの考えで彼女にしたのかもしれないですね。

ギーレンのは聴いたことがない・・・と思ったらギーレンのは結構最近ですね、発売されたの。さすがIANISさんチェックが早いですね。

投稿: naoping | 2007年7月14日 (土曜日) 11時12分

某所からのコピー
「オーストリアの作曲家シェーンベルクは、1874年9月13日に生まれた。13は縁起の悪い数とされており、7と6をたすと13になるから、彼は76歳で死ぬと思い込んでいた。1951年、76歳になった年の7月13日の金曜日。その日が来ると彼は用心してベットから一歩も外に出なかった。そしてその日がいよいよ終わろうとする午後11時47分、彼は死亡した。」

だそうです。
という事で昨日はシェーンベルクを聴くには相応しい日でありました。

>そういえば「ピエロリュネール」の語り、男声がやるという
>蛮行はさすがにない・
それが最近あったのです。
http://tierkreis.web.infoseek.co.jp/weblog/archives/2007/05/post_131.html

投稿: シロクマ雄 | 2007年7月14日 (土曜日) 11時14分

>>シロクマ雄さん

シェーンベルクは全般的にわかりにくい作品に反して、結構面白いエピソードの多い人だと思いますね。今年の7月13日も金曜日だったんですね・・・。

男声のピエロ・リュネールってのも私は意外とオツかなと想像します。美輪明宏さんと江原さんが交互に歌うとか・・・いいかも。そうそう、今年の草津音楽フェスティヴァルでH・ベーレンスがピエロ・リュネール歌うらしいです。


投稿: naoping | 2007年7月14日 (土曜日) 23時37分

遡ってやってまいりました。

私、この語り手、Barbara Sukowa、好きです・・・かなり。

ピエロ・リュネールも演じてみえます。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000001SP5/mixi02-22/

このアバド盤も、この方を目当てに購入したのでした。
ただ、アバド&ウィーンフィルの響きからは、ちょっと浮いている気がします。

女性が語り手のグレは、他にヨーゼフ・クリップスのライブ盤を聴きました。こっちは、子ども(妖精風)のような感じ、ドラエモンのノビ太君みたいで可愛いく元気なシュプレッヒシュテンメです。
これはイケマス。

投稿: ちょ | 2007年8月 7日 (火曜日) 17時47分

>>ちょさん
コメントありがとうございます。
このシュプレッヒシュティンメが好きって方が結構いらっしゃるんだなあとしみじみ思いました。まあ、慣れればそんなに悪くないのかなあとも思い始めました。(あくまで慣れれば。)

のび太くん風グレの語りっすか。聴いてみたいです。おーいドラえも~ん。起きてよー。またジャイアンがリサイタルを始めるよ~。

投稿: naoping | 2007年8月 7日 (火曜日) 22時06分

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