ミトロプーロス・エレクトラ
R・シュトラウス:歌劇「エレクトラ」
ジーン・マディラ(クリテムネストラ)、インゲ・ボルク(エレクトラ)、リーザ・デラ・カーザ(クリソテミス)、マックス・ローレンツ(エギスト)、クルト・ベーメ(オレスト)、アロイス・ペルネルシュトルファー(オレストの養育者)その他
ディミトリ・ミトロプーロス指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団(1957年8月、ザルツブルグ)
シュトラウスのオペラも佳境に入ってきた。別に全部紹介しようという気はさらさらないんだけど。(結構なげやり)
ご存知エレクトラ、非常に激しいオペラである。血みどろっつーか。耳で聴くホラー映画。殺しのシーンの「ぎゃー」とか超こえー。こんな猟奇殺人事件ものオペラって、他にあるのかな? 「ルクレツィアの陵辱」とか? 「カルメル派修道女の対話」とか?
(因みに、プーランクの「カルメル派・・・」はレコードで持っているが、本当にコワイので改めて聴くことができない。音楽的には素晴らしいけれど、最後のギロチンシーンが震え泣くくらいコワくてダメだ。)
この「エレクトラ」、あの優美な「アラベラ」や「バラの騎士」を作った作曲家&脚本家が作ったとは思えない。このコンビとしては最初の作品らしいが、最初がこれか。
(ま、スピルバーグ監督&ジョン・ウィリアムズだってヴァラエティの富んだ映画を撮っているから、似たようなものか。)
このオペラ、残念なことに私は一回も実演を観たことがない。見てみたい、と常々思っているのだが。映像は、カール・ベーム指揮ゲッツ・フリードリッヒ演出のヴァルナイがコワイお母さん役で出ているのをヴィデオで持っている。モデルみたいに綺麗なカタリナ・リゲンツァが妹役で出てたっけ。
CDは対訳つきのザヴァリッシュ・EMI盤を以前はよく聴いていたのだが、実家においてきてしまった。アレも結構好きだったが。
本日ご紹介の、ザルツブルグ音楽祭実況録音であるミトプー盤は名演の誉れ高いものである。モノラルなので(曲の性格からいえばステレオであってほしい)多少我慢が必要だが、この時代としては普通の音質かと。
キャストはエレクトラやサロメ歌いとして有名なインゲ・ボルク、対照的なおとなしい妹役にアラベラやマルシャリンで有名なリーザ・デラ・カーザ。シュトラウス歌いとして激しい人と優美な人の代表歌手の共演。二人ともうまい。とくにボルクはいい。ほんと好きな声だわ。
ミトプーの指揮ぶりは最初から最後まで緊張感が途切れないで突っ走る。聴くほうはずっと鳥肌立ちっぱなし。いやー、これ実演で聴いてたらさぞや凄いことだっただろう。それにしても、R・シュトラウスのオペラはやっぱりウィーン・フィル(またはドレスデンという説もあり)であってほしいね。
余談だが(余談すぎる)、封入の解説書(私の持ってるのはオルフェオ盤)に載っているミトプーを囲む主役女性3人の写真が・・・コワイ。トランプのカードみたいな化粧のマディラ、いつもお綺麗なデラ・カーザ、そして本当は美人なのに役のせいでIKKOさんみたいな顔(どんだけー?)になってるボルク、となんだかバラバラな化粧が不思議でたまらない。
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コメント
こんばんは。
以前、蛙オペラの話題のときにコメントしたことがございます。
さて、今回のこの「エレクトラ」ですが、インゲ・ボルク、いいですね。わたくしはその声に聴き惚れますし、ミトロプーロスの演奏のせいもあって音楽に没入し、録音がモノラルであることなどは完全に忘れてしまいます。しかし、と申しますか・・・異論あるかも知れませんが、威力あるミトロプーロスの指揮に感心しつつも、やはりおのずとボルクに注意が向いていってしまう上演かと思います。それだけ芯の強い魅力を備えた歌手なのだと理解しています。
「余談」とおっしゃる写真の件ですが・・・女性陣と一緒のミトロプーロスの表情が実によろしいと、わたくしは思います(その、生涯独身ほかの話・真相など思うにつけても)。
たまたまですが・・・ボルクがザルツブルク・デビューした1955年、彼女が主役を務めたエック作曲「アイルランドの伝説」のCD(Orfeo d'Or盤)も、それがセル指揮であったため得たことがあります。そこでもボルクは独特の魅力を感じさせる張りのある声で頑張っています。音楽のほうは終始、奇妙・風変わりなもので、わたくしが楽しめるのは最終幕のみでありますが。
投稿: クラシカルな某 | 2007年6月14日 (木曜日) 20時30分
>>クラシカルな某さん
こんにちは!コメントありがとうございます。
ボルクは、ホントに魅力的な歌手だと思います。(同様にサロメ&エレクトラ歌いのクリステル・ゴルツも気になる存在です)
ボルクはちょっとまえにこのblogに書きました「モナ・リザ」の主役も歌っていたのですね。これもなんとも妖艶なうたいぶりです。
ミトプーは何故か共演者とにこやかにパチリ☆した写真が他の指揮者より心なしか多いような気がするんですが、気のせいでしょうか。単に記念写真好きなのかもなあ、と思っていました。また、ザルツブルグのライブでいいものが多いですね。
エック・・・昔、「聖アントニウスの誘惑」って歌曲集を持ってました。今手元にないのできっと売ってしまったのしょう。確かディム・ジャネットが歌ってたのです。エックのオペラは残念ながら聴いたことがありません。おそらくあんな感じ・・・?という想像が付きますが。(これが「なかなか面白いですよ」なんてコメント頂くと「これは意地でもさがさなくっちゃ!」となるのですが・・・逆にホッとしました。)
投稿: naoping | 2007年6月16日 (土曜日) 11時19分
こんにちは。亀レスです。少しずつ過去ログを読んでます。
このレコードも名盤ですね。いろいろな音が聴こえる「エレクトラ」だと思います。デラ・カーザは大ファンなので(80%くらいはあのバーグマンみたいな容姿で)、ここでのクリソテミスも女性的で好きです。ただ、ちょっと線が細いかな?ボルクはベーム・スタジオ盤の歌唱に比べて、安定度はゆずりますが、より情感がこもっていると思います。エレクトラの録音を10数種類もっていますけど、この盤はトップ3に入ります。
ちなみにに私の中のトップは、1965年のベームのエレクトラのライヴで、このキャストは凄い。ニルソン、リザネク、レズニック、ヴィントガッセン、ヴェヒター、それから端役にヤノヴィッツ、マストロヴィッツまでいます。ライヴということで、ベームとリザネクとニルソンがぶち切れていますし、ヴィントガッセンは叫び声がジークフリートしています。これまた廃盤ですけど、たまにAmazon.comで中古がありますので、見かけたら逃さずにどうぞ(今二つあります)。
ただ、エレクトラ歌いとしては、ボルクの方が好きですね。ボルク、若干華やかさに欠けたせいか、録音に恵まれませんでしたけど、本当に素晴らしい歌手だと思います。彼女、実はコロラトゥーラも巧いんですよ。http://youtube.com/watch?v=aGGBwPqCDsk技術とパワーを兼ね備えた稀有の歌手だと思います。
投稿: Ervin | 2007年9月 6日 (木曜日) 09時29分
>>Ervinさん
コメントありがとうございます。あわてずゆっくりとついてきて下さいますよう(・・・っつか、私も昔の記事をたまに読み返して「こんなの書いたっけ?」と思うくらいの健忘症なのでよろしくお願いします・・・←何を?)。
そうそう、デラ・カーザはほんとにキレイですね。ソプラノ歌手ではイチバンかも?女の私でも舞台姿の写真はうっとりしてしまいます。またあの多少危うげな歌い方も容姿にピッタリですね。
ベーム盤は凄そうですね・・・。とくにニルソン、リザネック、レズニックが3人で攻めて来たら私は荷物をまとめて逃げ出してしまいそうです。
ご紹介のYoutubeのボルクのマクベスもすごくいいけれど、ジェス・トーマスとのフィデリオの二重唱がものすごく萌えてしまいました。ボルク、私も最近好きなんですよね~。何か個性派女優さんっぽくて、あこがれてしまいます。
投稿: naoping | 2007年9月 6日 (木曜日) 22時30分