ベーム/トリスタンとイゾルデ
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」
ヴォルフガング・ウィントガッセン(トリスタン)、ビルギット・ニルソン(イゾルデ)、クリスタ・ルードヴィヒ(ブランゲーネ)、エバーハルト・ヴェヒター(クルヴェナール)、マルッティ・タルヴェラ(マルケ王)、ペーター・シュライアー(若い水夫)、エルヴィン・ヴォールファールト(牧童)、ゲルト・ニーンシュテット(舵取り)
カール・ベーム指揮/バイロイト祝祭管弦楽団・合唱団
(1966年)
いやー、もう昨日はまいった。久しぶりにやっちまっただ。死神見たっていうか。うん、死神の後ろ髪くらいは見たかもしれない。
泥酔・・・いやちょっと飲みすぎただけだが。いつものように会社帰りに飲んでいて、「いやー、たまにはあたしがおごるわよ、年上だし」とかいいつつ、そんなたいしたお勘定でもないのに大威張りで支払い、レジでもらったおつりを店内に撒いてしまい・・・ここらへんまでは記憶があるんだが。
動物の帰巣本能というのは不思議なもので、こんなへべれけになっていても気が付いたら終点まで電車に乗ってしまってたり、渋谷の地下でダンボールに包まれて目を覚ますとかそんなことは一度もない(私は)。ちゃんと家の布団の中で目覚めるのである。Heil dir, Sonne!
が、昨日はそんな爽やかな気分ではなく、夜中にハタと気が付いた。非常に気分が悪い。致死量を超えたか。いや、量よりも一時間にジョッキ4杯がヤバかったのか。もしやこれは救急車呼んだほうがいいのであろうか・・・。
結局一晩中苦しみ、「ああ、あたしのバカバカ!」と思いつつ朝を迎えたのであり。
しかし、そんなことはすぐに忘れてきっとまた同じバカをやらかすのであろう。
・・・。
さて、そんなことはおいといて。本日は「これぞトリスタンの鑑!」みたいな古式ゆかしいベームのバイロイトのトリスタン。こんな古典的な録音を前に、今更この私が何を語ろう。
ニルソンとウィントガッセンのコンビは、まるで伝統の一戦、阪神対巨人みたいである。(野球に興味がないので今はどうなんだか知らんが)
おまけに、端役のすみずみまでゴーカ。最初に歌う若い水夫がペーター・シュライアーなんて。早死にした性格テノール、ヴォールファールトが牧童。おお、豪華。
この録音は、ライブといえばライブなのだが、1回の公演の回しっぱなしではなく、ゲネプロと2回の本番のイイトコ取りなのだそうである。どうりで、ミスもなく、観客の咳払いとかも非常に少ない。年代のわりに録音もよい。40年も前か、おお。時の流れは早いものだ。
はて、名演の誉れ高いこの録音。不思議に思うのは、このヴィントガッセンとニルソンの歌うトリスタンとイゾルデの間には愛情のカケラも感じないということ。
ニルソンはとくにそう思うんだけど。
ニルソンは何を歌ってもニルソンで(ブリュンヒルデでもトゥーランドットでも)、この曲のエロティックさとは無縁である。ただ透明な素晴らしい声を披露しているだけのような。立派な歌唱だとはすごーく思うんだけど。なのに最後は圧倒的に感動するんだよな~。
不思議な歌手である。
それとはうってかわって?、ここでのブランゲーネのルードヴィヒの血の通った歌唱の素晴らしさよ。ブランゲーネのベストかと。本当に素晴らしい歌手だ、ルードヴィヒ。
ベームの指揮だが。これもまた不思議である。妙に平坦な感じ。テンポがあまり動かないというか。現在聞きなれた演奏では第2幕の二重唱の「こうして私達は死んでいく」あたりもっとぐっとテンポを落とすのでは、と思うのだが、ベームの指揮は極端にテンポが遅くなったり急に早くしたりはしない。
なのに最後は圧倒的な大迫力で感動するのである。どうして?
ところで、この録音と同じヴィーラント演出で、あの伝説の1967年大阪でのバイロイト・フェスティヴァルのヴィデオがこの世には残っている(DVDでは売ってないのか?)。白黒で、その上抽象的な舞台セットなので映像はぼんやりとしか記憶しかないが、ニルソンとヴィントガッセン(そしてホッター)の共演の記録は貴重であろう。妙にニルソンのボディコンシャスな衣装が印象的。
あれを生で観にいった人が(時代的にも地理的にも私はムリだが)ホントに羨ましい。
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コメント
こんにちは。おぉ、なかなかの武勇伝ですな。
私は歳とともに酒に強くなってきたと思ってますが、焼酎とか残らない酒にシフトしたからにすぎないのかな? とも感じてます。
若い頃は、ともかく無茶しましたよ。記憶が飛んでも朝は家にいる。
ホント不思議な本能です。今は飲まなくても、思い出せないことがたくさんありますがね、とほほ・・・。
さて、二日酔いにはワーグナー!
定盤トリスタンですな。数々持ってますが、何を隠そうNO1はベームと思ってます。
<圧倒的な感動>・・・全体にみなぎる熱気と劇場的な広がりがそうさせるのではないでしょうか。
レコードの5枚目のB面に、リハーサル風景が収録されてますが、ベームのねちっこく、くどく、厳しい練習は面白いですよ。
そうした下地があって、本番で爆発するジイサンだったのでしょうか。
投稿: yokochan | 2007年7月 1日 (日曜日) 11時23分
ベームのトリスタン
音質のよいトリスタンの中では、一番好き!
一番好きなのは、音質最悪のメルヒオールがトリスタン役のものだったりするんだけどね(微笑)
投稿: 川越名物☆税務と会計のビックリ箱 | 2007年7月 1日 (日曜日) 15時18分
>>yokochanさん
コメントありがとうございます。・・・いやあ、お酒って本当に困りものですが、やっぱり音楽とともに私の人生には不可欠なものです。はあ、確かに最近は飲まなくても物忘れはヒドイですね。
私の好きなトリスタンNo.1は、反論は沢山あるのを覚悟でやっぱりクライバーのグラモフォン盤です。でも、一般的にいえばベストはやっぱりベームなのかもなあとは思います。
5枚目のB面て・・・いみのわからないよいこはおとうさんにきいてみよう!
>>川越の税理士さん
えっと・・・私も歌唱のベストはメルヒオールとフラグスタートのコンビであります。あの方たちはもはやネ申ですから。たまーにレコードのビーチャム盤を聴くこともあります。フラグスタートの激しいトチリが聴きものです。
投稿: naoping | 2007年7月 2日 (月曜日) 00時17分
naopingさん、こんばんは!ご無沙汰いたしております。花火大会にカッポーが闊歩する今日この頃、師匠は如何お過ごしですか?
実は私、「トリスタン」をいくら聞いても、所謂「官能的」なものを全く感じないのですが、それだからこそこのベーム盤が最も気に入っているのかもしれません。(でもオーケストラは部分的にこれ以上瑞々しい響を聞かせてくれるものも他に見出せませんが。)
ところで、クーベリック&バイエルン放響による部隊新星採点劇(パソコンで変換したら、こう出ました(笑))「パルジファル」ですが、録音年代によるところが大きいとは思いますが、同じコンビによる「マイスタージンガー」とは幾分志向性が異なると思います。「パルジファル」が静的とすれば、「マイスタージンガー」は動的。ともに歌手は素晴らしいと思います。
それでは、またお邪魔します。お元気で!
投稿: Niklaus Vogel | 2007年8月 6日 (月曜日) 20時33分
>>Niklaus Vogelさん
こんばんは!お久しぶりです。お仕事は順調ですか?
私はというと、花火大会へカッポーするカッポーにガンを飛ばすただの酔っ払いです。
クライバー盤「トリスタン」がでた頃、「第2幕聴いていると独り者には辛いなあ」などと書いていたリスナーがいたのを思い出しますが・・・私はそんなこと一度もないですね。「まちゆくカッポーを見てムカツク」とかとは違います。(←重症)
部隊新星採点劇とは自衛隊の新入りを採点する催しのような感じですね。
クーベリックのマイスタージンガーも聴いてみたいものですが、もうなんだか最近暑くて。もうちょっと涼しくなったら購入を考えたいです。
投稿: naoping | 2007年8月 6日 (月曜日) 22時50分