薄命女流作曲家Ⅱリリ・ブーランジェ
リリ・ブーランジェ:「詩篇24」「ピエ・イエス」「深き淵より」
ジャネット・プライス(ソプラノ)、ベルナデット・グリーヴィ(コントラルト)、イアン・パートリッジ(テノール)
ナディア・ブーランジェ指揮 BBC交響楽団・合唱団
やー、「ダフネ」のおかげでよい反応がたくさん。いつもよりアクセスもやや多いしね。どうも有難うございます。
が、こんなときこそ、マイナーな作曲家の紹介のチャンス!(おいおい、順位下がるぞ)
女流作曲家ってカテゴリーを作りながら、いまだに一人しか紹介してない。情けない、ずっと頭にあったんだけどね。
前回のヴィーチェスラヴァ・カプラローヴァってチェコの作曲家には反響は全くなかった。実際、手に入りつらいレーベルではあったけれど、これはヒドイなあ。ちょっと書くの早すぎたっつーか。本当にイイ曲書いている女の子だったのになー。気になったら聴いてみてね。
で。
待望の(?)第2弾は、リリ・ブーランジェ。
私が頻繁に聴いていたン年前よりは確実にこの作曲家のCDは増えていると思う。リリ・ブーランジェ、ホントにいいんだから~。暗くて。
このひとは幼少から病弱で、結核でたった24歳で死んだ。なのに、女だてらに力強い曲を書いた。
今日紹介のCDは、聴く人を奈落の底に落としかねない。「わーい、明日はバレンタインデーだ~、何個もらえるかな?ワクワク」なんて思っている人は是非聞くべきである。浮かれている場合ではない。
(え~?)
リリ・ブーランジェ(1893年 - 1918年)フランスの作曲家。
音楽一家に生まれる。著名な音楽教師ナディア・ブーランジェはリリの姉である。ブーランジェ夫妻の子供のうち健康で長寿を保ったのはナディアだけで、リリーは臓器に障害があって医師に短命を予告されていた。にもかかわらず2歳で神童ぶりを発揮し、家族によって英才教育をほどこされた。
4歳の時から姉にくっつきパリ音楽院の講座にもぐりみ、音楽の知識を吸収。長じてリリ自身も正式の学生となり、オルガンをルイ・ヴィエルヌに師事しながら、音楽理論と作曲を最初は姉ナディアに、次いでポール・ヴィダルやジョルジュ・コサード、フォーレに学ぶ。
1913年にカンタータ「ファウストとエレーヌFaust et Hélène」でローマ大賞を受賞。
免疫系が冒される気管支肺炎を2歳で発症したのに始まり、ついには腸結核を併発して24歳で若い命を散らすまで、リリの生活と活動は宿痾の病に苛まれ続けた。(ウィキペディアより引用)
ま、こんな感じで。このところ何故か脳天気なわたくしめ(ヒャッホー)とは正反対に、いつも死と隣り合わせでの一生を送ったのである。
だもんで、曲も死の影がいっぱいである。おそらく、こんな暗い曲は他で聴くことはできないだろう。オネゲルの「火刑台のジャンヌダルク」と同じ匂いを感じる。
ということで、オネゲルの声楽曲が好きな人だったらたぶんハマル。・・・ていうかオネゲルが逆にL・ブーランジェの影響を受けているようであるので。
同じ曲目で、イゴール・マルケヴィッチのCDもあるんだけれど(・・・実家に)、今回はお姉さんの指揮による演奏で。リリー・ブーランジェの没後50年記念のコンサートからの録音。比較的有名と思われる声楽曲が3曲。これらの曲のあとに、師匠のフォーレの有名なレクイエムが収録されている。
「詩篇24」は、やや攻撃的なオルガン前奏から始まる。主に男声合唱とテノール独唱によるものである(後半女声も入る)。たった4分の曲ながら心に強く訴えるものがある。もっと長く、何曲も続けば素晴らしいオラトリオの大作が生まれたかも?と思わせる。
「ピエ・イエス」は色々な作曲家によって同じ歌詞で歌われているアレであるが、聴いていると死の床に一人いて誰も助けに来てくれないみたいな深い悲しみと諦めに包まれてくる。
作曲者絶筆の曲だという。口述筆記で完成させたあと昏倒して永眠した。自身の葬式で歌われたらしい。
落ち込んでいる人、失恋した人などに聴かせたらほとんどてきめんに効果を発しそうである。(ダメよ、きかせちゃ)
(私自身のこの曲の印象としましては、何かの事故で地球に帰れない宇宙船に一人取り残された宇宙飛行士みたいな感じ。宇宙を一人さまよっているような。)
いつくしみ深き主、イエスよ
かれらに安息を与え給え
永遠の安息を与え給え
Pie Jesu, Domine,
dona eis requiem,
sempiternam requiem.
「深き淵から」もやはり暗い感じで(詩とぴったり)、聖書の有名な「われ深き淵よりなんじを呼べり・・・」で始まる詩篇より採られている(「火刑台上のジャンヌ・ダルク」にもこの詩は出てくる)。聴いているとどんどん重ーい深みにはまっていく。この暗さといったら「水ヲ下サイ」と張るかも。少し違うか。
合唱にコントラルトとテノールの独唱がついている。途中曲調は攻撃的となり、死への抵抗が感じられるが、最後は安らかに終わる。
(ちなみに。指揮のナディア・ブーランジェは、ローマ賞の2位を獲得するほど作曲の才能もあったというが、妹リリの才能を見て、作曲の筆を折ったといわれている。)
うー。
・・・・これ書きながら3回も立て続けに聴いたから、今晩うなされそうである。
次回はもっとご陽気な音楽をキボンヌ。
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コメント
リリ・ブーランジェはわたしも好きな作曲家です。夭折が惜しまれる作曲家のひとりですね。
ガーディナー盤(ロンドン響、モンテヴェルディ合唱団ほか)で聴いていますが残念ながら文字通り絶筆となった「ピエ・イェス」が入っていません。マルケビッチ盤が聴きたいと思いながらなかなか巡り会う機会がなくて・・・
夭折といえば同じく24歳で亡くなったルクーのチェロ・ソナタが聴きたくて、明後日はブルネロを聴きに行く予定です。
投稿: 白夜 | 2007年2月14日 (水曜日) 01時17分
こんにちは。
おお、「リリブー」ですね!(←殴られるぞ)。
マルケヴィッチ盤を持っておりますが、確かに暗くて重い音楽です。
傑作ぞろいなのでしょうけど、聴いているとユーウツになってきます。
カップリングされた「ヴァイオリンとピアノのための3つの小品」
という曲は、峻厳な中にも、ほのかに明るい作品です。
投稿: 木曽のあばら屋 | 2007年2月14日 (水曜日) 18時17分
>>白夜さん
こんにちは。
ガーディナー盤てストラヴィンスキーと一緒のグラモフォンのですね?確かにピエ・イエスないですね。マルケヴィッチ盤はピエ・イエスの独唱がボーイ・ソプラノなんですね、確か。聴いてるとナンだか死の床についている子供みたいな感じがして苦しい~。
ルクーのチェロ・ソナタをやるんですか。(←早速調べた)情報ありがとうございます!
>>木曽さん
リリブーですな。
マルケヴィッチ盤ってのは廃盤なのかしら~。実は手元にないのでカップリングのことなどすっかり忘れてしまいました。まあ、ブーランジェのほかのCD(ファニー・ヘンゼルとクララ・シューマンと一緒のやつ)の合唱曲はまーまー普通に明るい、美しい感じの曲です。
ほんと、紹介のCDはあまりに暗いので、後半演奏されるフォーレのレクイエムが明るい曲に聴こえてほっとするほどです。
投稿: naoping | 2007年2月14日 (水曜日) 21時02分
いいですねー、リリー・ブーランジェ!
私はナディア最後の弟子とかゆう(ウラはとってませんが、なナディアとの対話には登場します)エミリ・ナウモフの室内楽・歌曲集(ナディアの曲も入ってます!マルコポーロ盤)が気に入っております。
>この暗さといったら「水ヲ下サイ」と張るかも。
ワロタ(^◇^)
投稿: ちょ | 2007年2月14日 (水曜日) 23時15分
>>ちょさん
お久しゅうございます(・・・そーでもないかな?)。
L・ブーランジェのファンが結構多いということがわかりました。おねいさんのナディアの弟子も錚々たるメンバーだってこともあり、天才姉妹ですね。本当にリリーちゃんの夭折が惜しまれます。ナウモフ、モフモフ?・・・知らないですね、探してみましょう。
投稿: naoping | 2007年2月15日 (木曜日) 11時08分