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2007年1月16日 (火曜日)

知られざる、でも大好きな作曲家ガーニーについての続き

先日の続きである。

紹介の「戦争のもえさし」というCDは、最初ジェラルド・フィンジの曲"Only a man harrowing clods"(「レクイエム・ダ・カメラ」からのバリトン独唱。この曲のCDはシャンドスから出ている)から始まる。
フィンジは、ガーニーとは直接面識はなかったが、ガーニーの作品を本人に代わって目録にし、校訂し、出版できるようにした。というわけでフィンジがいなければ、ガーニーの歌曲を耳にすることはできなかったかもしれない。

フィンジの曲についで、ガーニー作曲の「フランドルにて」"In Flanders"が歌われる。これはハーヴィーの詩による。

(対訳がありませんが、英語なので雰囲気は味わえると思います)

In Flanders (F. W. Harvey)

I’m homesick for my hills again—
My hills again!
To see above the Severn plain
Unscabbarded against the sky
The blue high blade of Cotswold lie;
The giant clouds go royally
By jagged Malvern with a train
Of shadows.  Where the land is low
Like a huge imprisoning O
I hear a heart that’s sound and high
I hear the heart within me cry:
“I’m homesick for my hills again—
My hills again!
Cotswold or Malvern, sun or rain!

My hills again!”

ガーニーは戦地でも作曲を続けていたという。この「フランドルにて」はその中の一つで、戦地フランスより故郷イギリスの田園風景を思い出しつつ作曲したのであろう。この曲だけで、私はノックアウト。

打たれたね、雷に。ガツーンと。

ピアノの語りかけるような前奏から、故郷の丘へ思いをスティーヴン・ヴァーコーは切々と歌う。(ガーニーの曲はとにかくピアノ伴奏がさりげなくて素敵である)
この作曲家の歌曲の歌詞と音楽のピッタリ感は他に例えようがない。後半、
“I’m homesick for my hills again— My hills again! Cotswold or Malvern, sun or rain! と熱く歌われる部分は心をわし掴みにされるようでかなりクル。ヴァーコーは本当にうまい歌手なのである。

ヴァーコーは、来日したりしているが、日本ではあまり人気ないみたいで、バロックオペラのチョイ役とかみたいなので出ていたみたい(ファンなのに見に行かなかった。なんか悲しいので)。英国歌曲のリサイタルは、イアン・ボストリッジでさえ日本では近頃あんまりやらないし、知名度のないヴァーコーが日本でソロ・リサイタルなど夢のまた夢なのかもしれない。

ヴァーコーはディーリアスの「村のロミオとジュリエット」(メレディス・ディヴィス盤)では「農民1」と、マーティン・ヒルとともに「遊園地の係員のオッサン」みたいな役で出演している。ま、オペラではこんな感じの扱い。

・・・ということで、ずっとヴァーコー(と、マーティン・ヒル)でこの「戦争のもえさし」のCDを推し進めてほしかったのだが、惜しいことにバス歌手のマイケル・ジョージって歌手がかなり歌っている。ま、このひとも全然悪くはないが。曲の声域の問題もあるんだろうけど。

まあぶっちゃけ歌曲なのでいちいち説明するより、このCDに溢れる「切々感」を聴いて頂くしかない(といって逃げる、てへへ)。
ガーニーの歌曲だけのCDはハイペリオンからPaul Agnewという歌手とジュリアス・ドレイクのピアノ伴奏によって歌われている盤が出ている(CDA67243)。これも歌唱はよいのだが、個人的好みからいうと「戦争のもえさし」でのクリフォード・ベンソンの流れるようなさりげないピアノ伴奏のほうが、ドレイクのピアノよりも私には好ましい。あくまで好みの問題なんだけども。

「戦争のもえさし」のCDでは他に、戦死した作曲家の曲が何曲か収録されている。フィンジの先生であったが徴兵されて戦死したエルンスト・ファーラーが6曲、「シュロップシャーの若者」でお馴染み、1916年のソンムの戦いで狙撃されたジョージ・バタワースの曲が1曲(オスカー・ワイルドの詩による「Requiescat」は大変悲しい歌である)、あまり知られてないがWデニス・ブラウン(最後に収録されている「踊り歌うグラティアーナに寄せて」という曲はボストリッジもEMI盤で歌っているが本当に美しい)が4曲、フレデリック・ケリーって作曲家の曲は1曲(シェイクスピアの詩によるこれもしみじみといい曲である)。

・・・どれもしんみりとして心に迫るいい曲たちである。英国歌曲、もっとみんなが聴いてくれるといいなあと思うので、追々、うちにあるいろいろな盤を紹介したいと思います。

実は英語がダメなので、ちょっと力足らずかと思いますが・・・許して。


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シブイ選曲ですが、
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コメント

ハイペリオン、シャンドスは英国音楽の宝庫ですね。ま、英国レーベルだから当然なのかもしれないですが。
でも、売価が高いからあまり持っていないんですよ。でも英国合唱曲はやはりこの2レーベルを外すことは出来ないので仕方なく買っています。

全然お題と関係なくなってしまった。失礼しました。

投稿: ピースうさぎ | 2007年1月17日 (水曜日) 18時47分

>>ピースうさぎさん
そうそう、ハイペリオンやシャンドスはお高いですね。私は英国音楽にハマり始めた頃はまだ自活してなかったもので、金に糸目をつけずに買いまくりました。
ところで、合唱の世界では(ブラスバンドと同じように)英国系の作曲家が幅を利かせているようですね。合唱はマーラーの8番歌っただけで満足してやめちゃったのでよくその世界は知らないのですが・・・。

投稿: naoping | 2007年1月17日 (水曜日) 20時37分

英国の合唱曲は北欧系の合唱曲と共にディープですね。
ウォルトン、エルガー、ディーリアス、フィンジにハウエルズにラター。いったいどれだけ曲を書いているんだか分からないほどいますね。
ディーリアスの「夏至の歌」など結構はまったなあ。楽譜まで持ってます。

私がいる合唱団は北欧の合唱曲をここ何年も取り上げています。ノルウェーやスウェーデンだけでも音楽の宝庫。

>合唱はマーラーの8番歌っただけで満足してやめちゃった

もうそれだけで宝物ですよ。私は高校1年の時、千人~を歌い損ねてからいまだ歌ってないですから。

投稿: ピースうさぎ | 2007年1月17日 (水曜日) 23時35分

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