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2006年11月13日 (月曜日)

新響:トリスタンとイゾルデ

ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」抜粋
成田勝美(トリスタン)、緑川まり(イゾルデ)、長谷川顯(マルケ王)、小山由美(ブランゲーネ)、成田博之(クルヴェナール)
樹の会、栗友会(男性合唱)
飯守泰次郎指揮/新交響楽団
(2006年11月12日(日)東京芸術劇場大ホール)



土曜日に何気に「アド街ック天国」って番組を見ていたら、この日は十条の特集で、なんだか新交響楽団のコンサートのリハーサルをやっていて(本部が十条らしい)、曲はトリスタンだった。「そーいえば、やるんだったなあ」と思って翌日新響のHPを見たら「当日券あり」という。

半信半疑(何が?)で出かけてみた。当日券SS席は残り少ないながら残ってたので購入(4千円)。2階席の前から4番目であった。

私の列の並びは当日券ゲットの方々だったので「いかにもワグネリアンですう」といったふぜいのお兄さん&おぢさんだったが、私の前の列に並んでいるのは、人類学上最もワーグナーと遠い存在かも?のオバサマ方でした。外見では「巣鴨のとげぬき地蔵」から拉致されてきたような面々だった。もしかしたら十条の商店街からきたのかもしれない。
なんかお茶とか席で飲んでたり菓子配ったりしてな。

でも曲がはじまると、「歌がなくてオーケストラの部分は喋っていいと思ってる」と思えばそんなでもなく、比較的おとなしくちゃんと聴いてらっしゃった。あまり外見では判断できないなあ、と反省。

で。

それでもって、新響ってご存知のとおりアマチュア・オーケストラである。私はあまりアマ・オケは聴きに行ったことはない。なので、ちょっとどうかなあ?と心配したけれど。それは杞憂だった。

「意外と良かった」っていうより。

「ものすごく良かった」といっていい。

歌手の皆さんはかなりメジャーの歌手でいらっしゃる。しかしワーグナー、ことに「トリスタン」ということで一筋縄ではいかない。イゾルデ役の緑川さんはあいかわらず「どこか別の国からやってきたような」歌い方ではあったが、現在日本人で彼女のレベルほどワーグナーが歌えるソプラノがいるかというと「?」である。難役イゾルデとなると尚更。あの巨大なオケを潜り抜けてちゃんと声が聞えるのはエライ。指揮者のテンポがゆっくりなのでやや走り気味になってしまって指揮者にあちこち止められていたけれど。

トーキョー・リングの「神々のたそがれ」でハーゲンを歌っていた長谷川顯さんは、ワーグナーな声の出る数少ない日本人バスである。大体、昨日は彼が目当てで行ったようなもの。しかし。ただでさえ歌うとこのすくないマルケ王がかなりカットされていて、ちょっと私、欲求不満気味である。さすがに素晴らしかったが。

長谷川さんがヴォータン歌ったら絶対見に行くのになあ。

クルヴェナール役の成田博之さんも、あまりにも出番が少なくて気の毒。(なんだか「ハイヤー、ほいやはー」みたいな掛け声程度の出番しかない)

とはいえ。

この日の主役はオーケストラであった。ワーグナーは本当に悪魔的な曲をお書きになった。弦楽器の皆さん、本当に何かに憑かれてしまったようにギコギコ弾いている。前奏曲からすっかりヤラレタ。日本有数のワグネリアン指揮者・飯守さんのややゆっくりめなテンポ。ワーグナーを完全に自分のものにされているのがよーーーくわかる。

実演でなかなかここまでの前奏曲を聴けるものではない。

今回は抜粋ということで、全曲ぶっ続けに慣れている私は曲を飛ばされるたびに「ありゃりゃ」と頭の中でズッコケてしまう。でもなかなか実演で聴けることのないトリスタン。CDで何度聴いても「クル」第一幕の最後。二人が「媚薬」を飲んでからの圧倒的な盛り上がりは、本当に感極まって涙出るほど。もう、ホントにワーグナー天才。

第2幕も、オケは完全にイッちゃってた。歌手二人はとりあえず歌ってはいたけれど、オケが凄かっただけに「まあ、歌手いたかな」くらいの感じで聴いてた。二重唱がどんどん盛り上がって早くなると、歌手のほうはちょっとついていくのがやっとな感じがあった(とくにイゾルデ)。
そこでマルケ王。本当に声がワグネリアンしている。メロートが出てないのでそこの部分空白になってしまいまたちょっと気が抜けてしまう。仕方ないか。

第3幕。もはや私の前には荒涼な海しかなかった。あの絶望的な出だし。あの音が実演で聴けるなんてうれしい。イングリッシュホルンのソロの人も立派だった。聴き入っていた。
トリスタン役の成田勝美さんの熱演もすごかった。トリスタンが死んで、メロートとクルヴェナールが戦う場面のあたりでは、ややオケに乱れが生じ、歌手と一緒にオケも戦ってしまっていた。でも本当に私も一緒に手に汗握ってた。
そしてやっと「愛の死」。緑川さんもここは歌いなれているのか、ここは素晴らしかった。曲が終わってからもすぐに拍手にならない。暫く沈黙があってから指揮者が腕を下ろしてからみんな我に帰って拍手が始まった。そんな観客の皆さんもすごく素晴らしかった。

なかなか実演で「トリスタン」を聴くのは日本では難しいが、昨日は本当に出かけてみてよかった。ありがとう、新響のみなさん。

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コメント

昨日はどうしても外せないアポがあり、これ行けませんでした。痛恨です。1週間前くらいから、新響のHPを見ながら、「いいなぁ~。行きたいなぁ」とため息ばかり。
「今夜に演奏会のリビューでもあるかな…」と思っていた矢先、naopingさんがアップ…しかも凄くいいときました…うらやましい!!

投稿: Niklaus Vogel | 2006年11月13日 (月曜日) 22時48分

>>Niklaus Vogel さん
コメントありがとうございます。
もーしかしたらー、会場のどこかにいらっしゃるかな・・・と思ってましたが、行かれなかったのですね(残念です)。まあ、細かいことを言えば色々もっと書きたいことはあるのですが・・・。
それよりも指揮者と新響の皆さんのワーグナーの音楽に対する深い愛情がひしひしと伝わってきて、何ものにも代えがたい感動を与えてくれました。出来れば音楽を作り上げていくところから見たかったなあ、って思うほどです。

投稿: naoping | 2006年11月13日 (月曜日) 23時03分

おお、これ行かれたんですね。
私はかなり前から情報を得ていたんですが、このところのコンサート続きで、さすがに家族の目もあって断念せざるをえなかったのです。こんな弱気は、ワーグナー聴きには禁物ですな。
記事拝見して、自分のバカ!と怒ってます。とほほ。

飯守氏が名古屋フィルの常任だった頃、同じ主役で、これも同じ抜粋を演奏しました。当時名古屋に単身赴任してたもんですから、聴きましたよ。名古屋がドイツの地方都市になったかのような本格演奏でしたね。お客さんは、寝てみえましたが。(コレ名古屋弁だでね)

投稿: yokochan | 2006年11月14日 (火曜日) 00時15分

>>yokochanさん
もーしかしたらー、会場のどこかにいらっしゃるかな・・・と思っていたのですが(コメント一緒ですいません)・・・。最近、blogを拝見しててコンサートよく行かれてるなあと思ってたので、もしや・・・と思ったのですけど。マゼールはあきらめて「トリスタン」を見たほうが良かったかも?なんて、なかなかうまくいきませんね。
でも。名フィルの「トリスタン」に行かれたのなら、良かったではないですか!きっとその日も同じように素晴らしかったってことは想像がつきますよ。お客さんは寝てみえた。はあ、それこそもったいないですね。

投稿: naoping | 2006年11月14日 (火曜日) 20時24分

誘導されてきました。
トリスタン・コミュで品田さんが直接いらっしゃってその伝で行ったのですが、とても良かったですね。

>長谷川さんがヴォータン歌ったら絶対見に行くのになあ。

激しく同意です。
外国の歌い手さんと比肩できる方ではないでしょうか?
(短かったですが実力の程が窺えるようでした)

成田氏の熱演も良かったですし、仰るとおり

>曲が終わってからもすぐに拍手にならない

この一瞬の静寂がとても素晴らしかったです。

(内心総てをぶち壊すフライング・ブラボーが飛び出すのではと思い冷や冷やしてました)

投稿: あやかしのとら | 2006年11月15日 (水曜日) 20時29分

>>あやかしのとらさん
ようこそおいでくださいました。コメント頂いてすいません。
いや、ホントにトリスタン素晴らしかったですね!飯守さんの指揮がとくに。そうめったにこんなに素晴らしいワーグナーは日本で聴けるものではありません。外国でもどうだか。

長谷川さんは、トーキョー・リングの「黄昏」のときは他の外国人歌手をさしおいて(藤村実穂子さんとともに)最も印象に残った歌手です。ハーゲン、めちゃくちゃかっこよかったなあ。

投稿: naoping | 2006年11月15日 (水曜日) 21時38分

naopingさん、こんばんは!
上記ご紹介の録音のことを拙ブログに書きましたので、飯守氏つながりで、naopingさんのこのエントリーをご紹介させていただきました。
今から来年秋(鬼が笑う?)の「トリスタン」が待ち遠しいのですが、それよりもまず来春の「ローエングリン」を聞きに行かなくては!
また楽しい日記を楽しみにしています。

投稿: Niklaus Vogel | 2006年11月17日 (金曜日) 21時30分

>>Niklaus Vogelさん
いつもトラックバックありがとうございます。コメント遅くてすいません。
飯守さんのCDは(掲載しておきながら)聴いたことがありません。(新響のときも売っていたと思うんですが)さぞや素晴らしい演奏だろうなあというのは容易に想像がつきます。私も買っちゃおうかなぁ・・・。
いまだに頭の中に流れるのは第3幕のカレオールの海・・・あの音は本当に絶望的だったなあ。

投稿: naoping | 2006年11月18日 (土曜日) 11時06分

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受信: 2006年11月17日 (金曜日) 20時35分

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